東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第五十二話 執念の一日

「う……クシュン! あー……」

 

「あれ、風邪?」

 

「まあちょっとな」

 

 結論、さらに風邪がひどくなった。

 

 確かに八目鰻は絶品だった。おかげで目がすごく冴えている。

 

 ただ日本酒をのどに突っ込みながら、ミスティアにテストの採点について愚痴ってたらいつのまにか凍えるような風が吹き荒れる屋台で爆睡していしまった。見るに見かねて起こしてくれたが、家に帰ってきたのが朝の四時半。三時間ほどは寝れたが、もう仕事だ。

 

 食べることより睡眠が必須だと身を持って……

 

「……おっと」

 

 目の前が白くなり一瞬だけ体の自由が利かなくなったが、右足で踏みとどまった。重苦しい頭が地につきそうだった。

 

「じゃ、先に行ってるから」

 

「う、うん……。無理しないでね」

 

「全然平気だって。こんなに目が開いてるだろ?」

 

「じゃあその場でジャンプしてみて」

 

「簡単だ。――ほら、霊夢みたいにこんなに高く飛べる」

 

「どこが!?」

 

 実際は10センチほどしか飛べないほど足がなまっていた。しかも着地すると、頭に石が落ちたような衝撃がかかった。

 

「まあ無理してないって言ったらウソになるけど、休むわけにもいかないからな」

 

「わ、わかったけど……。1つ約束してね」

 

「ああ、きつくなったら休むってことだろ? 今日は授業が終わったらすぐに帰るよ」

 

「そうだよ! 今日は私が全部やるからゆっくりしててね?」

 

「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうか。――もう時間だ。じゃあ学校で」

 

 大妖精の優しさをひしひしと感じ、昨日よりさらに冷え込んだ幻想郷に耐えながら学校へ向かう。

 

 

 

 

 

「おはようございますー」

 

「おはよう。ここが今日の範囲だ」

 

 慧音から授業計画表をもらい、軽く目を通す。

 

「っつ……」

 

 少し文字を追っただけで頭がふらつく。

 

「お、おい。風邪か?」

 

「ええ。けどこのくらいなら平気です」

 

 俺のおでこに手を置いた慧音は一瞬でその手を離し、驚いていた。

 

「熱っ! このくらいって、相当高いぞ。帰ったほうがいいんじゃないか?」

 

「いえ、問題ないですよ」

 

「お前がそう言うのならいいが……あんまり無理をするんじゃないぞ」

 

「大妖精にもそう言われました」

 

「へえ……」

 

 級に慧音がジト目になった。そんな不機嫌にさせるようなことは言ってないと思うのだが。

 

「乙女心を全然わかってない……」

 

「はい?」

 

「いや、こっちの話だよ。今日は教室の後ろで休んでおけ」

 

「ご配慮ありがとうございます」

 

 普段は厳しい慧音先生がここまでとは……風邪をひいてもいいことはあるものだ。

 

「今日は早く帰ってゆっくりするんだな」

 

「大妖精にそう言いました」

 

「乙女心をわかってるじゃないか……」

 

「何ですって?」

 

「いや、こっちの話だ」

 

 こっちってどっちだよ。

 

 

 

 

 

「ぐわー……」

 

 多くの生徒が心配してくれたのが功を奏したか、5時間の授業を終え。だが、満身創痍で身体の節々が重く、痛い。朝より熱が上がってきていることが体の奥から伝わってくる。

 

「お疲れ様。あとは私がやっておくから帰れ」

 

「はい……ありがとうございます……」

 

「ほんとに辛そうだな。あれだぞ、きちんと大妖精に感謝の一つでも言っておくんだぞ」

 

「そうですね」

 

 今日だけは慧音が天使に見える。調子が悪いから幻覚を見てるのかもしれない。

 

「ついでに言うと、頭の一つでもなでてやるともっと効果的だぞ」

 

「いつも妹紅先生が慧音先生にやってるみたいにですか?」

 

「んなっ……! その重い頭に私の石頭をぶつけてやろうか?」

 

 いや、天使は言い過ぎだな。普段とのギャップがありすぎて良く見えるのか?

 

「ほんの冗談ですよ」

 

「ほら、さっさと帰る!」

 

 

 

 

 

 今日の幻想郷は真冬日だった。昨日の夜のように、冷気がコートを突き抜けて全身を駆け巡る。

 

「はあ……はあ……」

 

 雪山で遭難したかのように、足が少ししか前に進まない。気を抜くとすぐに下を向いてしまう。それでもなんとか前へ前へと向かおうとする。メロスはこんなにつらかったのだろうか。

 

 ビュウウウ

 

「ぐあっ……」

 

 一段と強い風が吹き荒れ、また進めなくなる。少しおさまってから進むを繰り返してなんとか家に着こうとする。

 

 大妖精たちは弾幕ごっこ大会の話し合いがあるようで、放課後も残っている。頼れるのは自分だけだ。そんなことを心の支えにしていた。

 

 一歩、また一歩と進み、30分後。

 

「着いた……」

 

 やっと霧の湖の近く、つまりは大妖精の家に到着した。 ほっ、と息が漏れる。ここまでくればもう大丈夫だ。

 

 ドアにもたれかかり、左手でドアノブをしっかりと握る。

 

 回すと、体重でドアが開き、見慣れた光景が飛び込んでくる。

 

「ああ……」

 

 ふわっとした暖気が体を包み込む。なんて気持ちいいんだろうか。

 

「…………」

 

 だが、その暖気は俺の脳に強く作用した。頭にかかっている白いもやが、暖かさでさらに濃くなっていく。

 

「…………」

 

 それに対応するかのように、視界が真っ白になっていく。何も考えられなくなっていくことがわかるのに、どうすることもできない。

 

「…………」

 

 力が抜ける。ひざが地面に着く。目が強制的に閉じる。

 

「…………」

 

 うつぶせの状態になって倒れこむ。起き上がろうとしても、金縛りのように指一本動かせない。

 

 そのまま、意識が遠のいていく。

 




第五十二話でした。これを書いてる時に、僕も風邪で三日寝込んだのはなにかの呪い?

慧音先生は普段が厳しいから、優斗には優しく感じてしまうのかな? 普段はどんな感じなのでしょうか……

では!
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