「よう! 様子を見に来たぜ!!」
「私も来たよー! どれどれ……わあ、驚かせられないほどの熱だね!」
午後5時ごろ。あいかわらずベッドで寝ていたが、玄関のほうから騒がしい声が聞こえてきたのでベッドの上で起きていた。
すぐに俺の横にやたらハイテンションな2人がやってきた。ただその後ろに歯止め役がいて少し安心。
「魔理沙に小傘、大きな声を出さないでくれ……頭に響く」
「ほらほら、優斗もそういってるんだ。一回静かにしないか」
「そんなこと言われても霖之助、私達はこれから特訓するんだぜ? 気分あげてかないと途中で飽きるんだぜ」
「いつもそんな感じじゃないか」
「むー! そんなことないよ!! 私の傘で興奮しちゃえばいいんだ!」
「いや、霖之助先生の言ってるとおりだぞ。あとその言い方は誤解を招くぞ小傘」
「確かに……小傘ちゃんはいつも驚かせようとして失敗してるからね」
「大ちゃんまでそんな殺生な!?」
「どこで覚えたんだそんな言葉」
数十分前とは打って変わってとても賑やかになっているが、魔理沙と小傘はすぐに行ってしまうらしい。
というのも、明日はみんな大好き弾幕ごっこ大会なのだ。小傘と魔理沙がタッグを組んで出場するらしいのだが、それが決まったのがなんと今日。
当然連携も何もできているはずもなく……これから霖之助を巻き込んでの特訓らしい。
だがその前に、向こうで小傘が抗議しているみたいだ。
「大ちゃんはオトナだから驚かなくてもしょうがないんだ!」
「そんな得意げな顔で言われても……」
「みんなを驚かせてこその唐傘妖怪だものな」
大妖精と魔理沙の冷静なツッコミに小傘は顔を真っ赤にして反論する。
「驚いてくれる人が驚けばいいんだ!」
「なんだかすごく卑屈に聞こえるのは私だけ……」
「心配するな。私もだぜ」
3人が向こうでいろいろとしゃべっていて、男二人は取り残されている。
だがこの方が好都合。この時間を利用して、ただ今霖之助と会議だ。
「頼まれてた例の品、過不足なくそろえておいたよ」
「ありがとうございます。では明日、手筈通りに」
「わかっているが……大丈夫かい? 明日来れる体調には見えないのだけれど」
「ご心配なく。一晩寝れば治りますよ!」
「そうなることを願ってるよ」
3人に聞かれないようにこっそりと、すばやく話したので時間が余った。
あちらの会話に耳を傾けると、
「じゃあどうすれば驚かせられるの?」
「自分が驚くようなことをすればいいんじゃないか?」
「私が?」
「それもそうだね。自分で体験してみるのが一番いいよ」
「ふっふっふっ、それはできない相談ですなおふた方」
「なんだその口調」
小傘は腰に手を当て、得意げな表情。大妖精のように表情がころころ変わるな。
突然変なしゃべり方になったものの、まあ小傘の言いたいことはわかる。つまり、
「私は驚かす側。つまり! 驚かされる側なんてできるはずがない!! だって何事も怖くないもん!!」
ということだ。こんなに高らかに宣言して平気だろうか。
「ほう……」
ああ……魔理沙がものすごくイイ笑顔になっている。首と肩をポキポキ鳴らしていて臨戦態勢が整っているぞ。
「おい優斗、聞いたか。どうやらこいつは何しても平気らしいぞ」
こちらに話を振らないでほしい。
「まあほら、話の流れってものがあるから」
「おや? 小傘をかばうのか。それならお前がこれを食らうことになるぞ」
言うと同時に魔理沙の指が滑らかに動き出す。
一瞬で察してしまう自分が嫌になる。あれは以前の拷問でもやられたことがある強力な技だ。あの指が脇の下や首まわりに入って滑らかにかき乱されたら……想像しただけで笑ってしまいそうだ。
小傘には申し訳ないが、こちらは病気の身。くすぐりの犠牲になってくれ。
「魔理沙……俺は何も見てなかったことにしてくれ」
「それでいいんだぜ」
満足げな顔で首を縦に振る魔理沙。とりあえず当面の危機は回避……
「優斗……小傘ちゃんを売るの?」
……されなかった。もはやおなじみ、大妖精のデススマイルが全身に刺さる。肩に置かれた大妖精の手から何か冷たいものが流れ込んでくる。
前門の魔理沙、後門の大妖精。絶体絶命どころの話では無くなってきた。確実に……散る。
必死の思いで唯一の仲間に視線を送る。ありがたいことにしっかりと感じ取ってくれたようで、
「ほらほら、あんまり優斗を困らせるとまた熱が上がるぞ。もうそろそろ練習に行こう」
「霖之助がそう言うなら……命拾いしたな優斗」
「なんで俺がメインターゲットみたいな言い方になってるんだ」
「ほら、行くぞ小傘。今夜は眠らせないからな」
「望むところだい!」
霖之助のつるの一声で3人は特訓へと向かっていった。あとで香霖堂で目いっぱい買い物をしておくことにしよう。
その夜、身体も少し楽になってきた。みんなでワイワイ話すと体内のウイルスが外に出るのだろうか。
夕食は消化によさそうな煮込みうどん。だが胃に優しくても心には逆効果で……
「どしたの?」
「いや……ほんとに何でもないから……」
なんだろうこの既視感。
本気で申し訳なく思っているのだが、相変わらず食べさせていただいていた。
しかもタイミングの悪いことに大妖精は風呂上がりだった。まだ水滴のついている艶やかな緑髪から、蒸気を感じる。いつもより血色の良いほっぺや、普段まじまじ見ることがなかった髪を下している姿に思わず見入ってしまう。
うっかり下を見たあかつきには、
「!? ……あぶな」
禁忌のパジャマの中が見えそうになる。普段の服よりさらに首回りがゆったりしていて危険度が数倍アップしている。
なにか作為的なものがあるのだろうか……考えすぎか。
夕食を食べたらすぐに就寝。明日には治っているといいのだが。
第五十九話でした。小傘と大妖精の書き分けって難しそうでわりと簡単ですね。
やっと優斗が倒れてから一日が終わりました。二十四時間をこんなに細かく書いたのは初めてです。疲れた……
では!