東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第六十話 強すぎる特効薬

「優斗、優斗ー! 起きてー!」

 

 大妖精の遠くからの声で頭が覚醒した。時計を見るともう8時。眠りつづけた12時間が光のごとく進んでしまった。

 

 今日は待ちに待った弾幕ごっこ大会だ。大妖精の雄姿をぜひこの目に焼き付けたい。問題はインフルエンザが完治しているかどうかだが……なんとなくわかってしまっている。

 

 ほおを触ってみるとまだ熱い。体を動かすと筋肉痛でもないのに痛い。起き上がろうとすると脳が霧に包まれたように動かない。これは完全に、

 

「カゼはどんな感じ……まだみたいだね」

 

「パッと見でわかるくらいまだまだ治ってないな」

 

 額に置かれた大妖精の手からひんやりとした感触。まだ治っていなかった。

 

 まあ初めから覚悟はしていた。外の世界なら特効薬のタミフルやリレンザを用いれば、一晩で治ることもある。だが科学技術のかけらもない幻想郷では仕方のないことだろう。

 

「じゃあゆっくり寝ててね。今日試合は午前中だから、午後には帰ってくるよ」

 

 ありがたいお言葉が胸に刺さる。だが今は……それを拒みたい。

 

「試合が午前中なら、その試合だけ見ることはできないか? 午後は休むから」

 

「だーめ。そうやって無理したから倒れたんでしょ。きちんと寝てないと長引くよ」

 

「そこをなんとか……」

 

「いくら優斗の頼みでも譲れないよ。だって……もうあんな思いは……」

 

 ぐう、そこを突かれるとツライ。

 

 家に帰ったら玄関に同居人がぶっ倒れていた。不安になって当然であろう。その全責任は俺にあるので、反抗するわけにもいかない。

 

「わかった。じゃあこっちからも1つお願いがある」

 

「なに?」

 

「今日は帰らないで1日学校にいてくれないか?」

 

「帰らない? なんで?」

 

 なんでって……どこまで純粋なのだろうか。昨日から罪悪感が胸を支配しっぱなしだ。

 

「たまにはみんなでワイワイやったほうが楽しいだろ? 昼ご飯とかはさとりに面倒見てもらうからさ」

 

 ずっと世話をしてくれるのはありがたい限りなのだが、少しは俺のことを忘れて楽しんでもらいたい。そのくらいのわがままは通させてもらうぞ。

 

 そんな覚悟を決めていたが、大妖精はあっさりと首を縦に振った。

 

「じゃあずっと寝ててね。見に来たりしないでよ」

 

「わかったわかった」

 

 大妖精はこちらを何度も振り返りつつも、鼻歌を刻みながら学校へ向かった。

 

 では弾幕ごっこ大会見に行くか。

 

 ……大妖精には大変申し訳ないが、わがままパート2だ。年に3回しかない弾幕ごっこ大会、見逃すわけにはいかないのである。

 

 といってもこのまま無理をして出かけても、あの時の二の舞になるだけである。

 

 そうなると、久しぶりにあれをやるしかない。

 

 困ったときに何とかしてくれるあの人を呼ぼう。いつもは仕事を俺に押しつけまくっているのだから、こんな時ぐらいは何とかしていただかないと困る。

 

 動きづらい身体を気力で起こし、大口を開け、肺の奥までたっぷり空気を充満させる。そしてありったけの声で、叫ぶ。

 

「助けて~! ゆうかりん~!」

 

「はいはーい!!」

 

 さすが、どこでもドア妖怪。天井からゆっくり降り立った姿も様になっている。

 

「それで何の用?」

 

「この熱を治してほしい」

 

「そういうのは永琳の仕事じゃないかしら~」

 

「どうせ永琳から薬もらってるんだろ? さっきのやり取りも全部聞かれてるだろうし」

 

「あら、幻想郷のなんたるかがわかっているじゃないの」

 

「個人情報も減ったくれもないってことだけは、身体で覚えさせられた」

 

 ホント……外とかけ離れてるよな。いい意味でも悪い意味でも。

 

「その学習能力のご褒美に、この薬をあげましょう」

 

 手渡されたのは、カプセル状のたった一錠の飲み薬。

 

 一見すると即効性はなさそうだが、月の世界を甘く見てはいかない。すぐに治る優れものだろう。

 

「永琳から伝言されたこと言っておくわ」

 

 そうつぶやくと紫はのどを軽くさすって、裏声を出した。

 

『本当はアポトキシン4869くらいの強いやつも作れるけど、あなたの体が持たないからただの解熱剤にしておくわ。飲んだらすぐに平常に戻るけど、激しい運動とか蝶ネクタイで声を変えたら、熱がぶり返すから気をつけなさい』

 

「なんでコナン知ってるんだ。あと声マネうまいな」

 

「さっき大急ぎで準備していたのよ。じゃ、頑張ってね~」

 

「連れてってくれないのか?」

 

「それは甘え過ぎよ。ホントは私を呼ぶだけで、国家予算クラスの大金が発生するのよ?」

 

「幻想郷に国家なんてないけどな」

 

「じゃ、ばいばーい」

 

 俺のツッコミはきれいにスルーされ、再びスキマに消えていったのであった。

 




第六十話でした。話を伸ばしたいときは紫を使いましょう。

また外に出る優斗ですが、今度は無事に帰ってこれるのでしょうか……

では!
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