東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第六十九話 ラストスペル

 普段は俺を貶めることに全力を注いでいる早苗だが、その裏には確かな実力がある。普段チャラいやつが実は強い、そんなお約束な展開のあれだ。

 

 そもそもあちらは自称人間の半分神様。人為的に豊作にさせたり、海を割るなんてお手の物だ。対してこちらは幻想郷最弱とも揶揄されている種族の、きわめて普通な妖精。ハナから不利な勝負なのだ。

 

 ――だが逆に考えれば、もし早苗に勝てたらジャイアントキリングということだ。

 

「ほらほら、どんどんツッコみますよ。――逃げてばかりでは勝てないですよ?」

 

「……だから挑発には乗らないって」

 

「ふむ、まあそのくらいはわかっていますけど、結局こちらから行くだけですけどね!」

 

 早苗がお祓い棒を高々と上げると、その先端から諏訪子のように蛙弾が放出される。

 

「さらにもう1個」

 

 今度はお祓い棒を横になぎった。すると今度は細かい粒弾。物量が違うな。

 

「さあさあ、今度は『フォーメーションケロケロブレイク』とでも題しましょうか! 弾けろっ‼」

 

 2種類の弾幕が交差し、わずかな間だけ融合するように混ざり合い、

 

「うわっ! ――……しょうがない、魔符『フェアリーズマジック』!」

 

 爆発四散した。完全ランダムでしかも高速の融合弾が、大妖精の四方八方を取り囲む。

 

 たまらず2枚目のスペルを発動させて何とか弾消しを図ろうとする大妖精。今の状況を数学らしく表すと、早苗の通常弾=大妖精のスペルカードということだ。

 

「ふふ、これで使い切りましたね? 私の記憶が正しければ、あなたはこれしかスペルを持っていない。まあ3枚目を撃てる余裕があるか怪しいところですが」

 

「……っ、ずいぶんと余裕だね」

 

「そりゃこっちだって、日々霊夢さんに追いつけるよう精進していますからね」

 

 息を切らしながら声を絞りっ出す大妖精に対し、薄ら笑いを浮かべる。

 

 ああ、もうこれは――、

 

「おや、まさか大妖精さんが負けるとでも思いですか?」

 

 終始心を読んでいる地底の主が車いすの下から聞いてきた。

 

「あんまりネガティブな思想は好きじゃないんだがな。1対1に持ち込まれた時点で相当厳しいと思うぞ」

 

「それは愛しの大ちゃんを裏切ったと判断してよろしいので?」

 

「あくまで事実を言ったまでだ」

 

 愛しってなんだ愛しって。

 

「そんなんだからいつまでもチキン野郎って言われるんですよ」

 

「それは大妖精が言われて無かったか。ほら、もう1人の大妖精に」

 

「論点ずらさないでもらえます?」

 

「サーセン。でもやっぱり弾幕の濃さが……」

 

「はあ……」

 

 大きなため息をつくと、さとりは車輪の隙間からこちらに目線を合わせてきた。珍しく、まるでゴミを見るかのような目で。

 

「ですから、その時点ですでにネガティブなんですよ! あなたは大妖精さんの一番の理解者でしょう? 信じなくて誰が大妖精さんを惚れさせるんですか?」

 

「わか、わかってるけどさ! ――あとちょいちょい恋愛要素入れてくるのやめろよ……頼むから」

 

 それをされると正常な思考ができなくなりそうだ。

 

 なぜか、なぜだか頭がぽーっとする。熱のせいだとすがりたくなるが、そんなことではないと体の奥からアピールされている。まったくもって不思議だ。

 

「ふーん。話変えますけど、結局わかったんですか。その動悸と息切れの原因」

 

「いや、まったくもって」

 

「はあ……もう誰かに相談しては?」

 

「言われなくてもその予定だ」

 

 俺1人ではどうしようもない、きっと大妖精に話すしかないのだろう。大妖精ならきっと、分かってくれる。これも根拠は微塵もないが、なぜだか断定できそうな気がする。

 

「ったく、ここまでヘルプしたのにまーだ足りないんですか」

 

 ぼそっ、とあまりに小さい独り言をつぶやく。その後彼女は車いすを跳ね飛ばし、不意に立ち上がった。

 

「おい、映姫に見つかるぞ」

 

「構いませんよ、今度こそ決めてくださいよ」

 

「何を?」

 

 俺の質問をまるっきり無視して、さとりは2人が戦っている方へ首を傾けた。

 

「大妖精さん、ちょっといいですか?」

 

 突然自分の名前呼ばれ、大妖精はとっさにこちらを向いた。

 

「は、はいっ⁉ ――さとり先生?」

 

「おっ、教育的指導ですか。どうぞごゆっくり」

 

 早苗も空気を読んで弾幕を一時停止してくれた。いったいどんなさとり劇場が始まるのか。

 

「なんかですねー! 優斗さんが言うにはあなたが早苗さんに負けるらしいですよー!」

 

「ちょちょちょちょ、とんでもないこと告げ口するな⁉」

 

 ただのチクリだった。

 

「……本当?」

 

「私は心を読む妖怪ですよ?」

 

 しかも大妖精も信じてる⁉ いやまあ、状況が不利なことは動かしがたい真実だけどさ。

 

「優斗?」

 

 出ましたデススマイル! 俺は死ぬ。

 

「そ、そんなことはない! 絶対に勝てるって信じてる、やれるから! こんな似非心理カウンセラーは信じるな!」

 

 インフルエンザもびっくりの必死の弁解で説得する。こんなに大声を出したのは久しぶりだ。

 

「男は信用できませんからねー。どこまで信じてあげれるか……」

 

「信用できないことは無いと思うけど……不安だね」

 

「じゃあこうしましょう。もしこの勝負にあなたが勝ったら、優斗さんの二人きりで話をする。これなら優斗さんの本心もわかりますよ。ちょうど彼も言いたいことがあるそうですしおすし」

 

「なんでもいいよ」

 

「あの、俺の意見は取り入られないんですか……」

 

 大妖精もバトルで熱くなっていつもの冷静な感じじゃなく、どんどん話が変な方向に向かっていく。

 

「じゃあそういうことで。中断させてしまいすみませんでした」

 

 ぺこぺこと周りに謝り、事後のケアも忘れない。

 

「おい、どういう魂胆だ」

 

「私としてはあなたの願いをかなえたつもりですが。まっ、大妖精さんの頑張り次第ですね、いろんな意味で」

 

「はあ?」

 

 さとりが言い終わった瞬間、今度は大妖精が口を開いた。

 

「早苗、私にチャンスをくれない?」

 

「おお、ついにやる気になってくれましたか!」

 

「このままやっててもジリ貧だし。それなら一縷にかけた方がいいかなって」

 

 いつにもない自信に満ち溢れた表情が新鮮だ。今日は大妖精の熱い一面を見たような気が……

 

 ドクン

 

「かはっ……!」

 

 心臓が高らかに鳴り響く。だからなぜだって何回も言ってるんだ。なぜ経験したことのない感情がわく?

 

 俺の葛藤はさとり以外には誰にも知られず、大妖精は続ける。

 

「お互いスペル1枚ずつで勝負するの。もう逃げも隠れもしないよ」

 

 まさか、大妖精が3枚目のスペルを持っていただと? 俺が倒れている間にいつの間にそんな……。

 

「それは構いませんが……そんな悪条件でよろしいので?」

 

「自分からわざわざ不利な条件を仕掛けると思う?」

 

「おお、今日はいつにもまして強気ですね」

 

「今日は何が何でも絶対、勝たないといけないの。こあちゃんのためにも」

 

「……そしてあなた自身のため、でもあるわけですか。いいでしょう、いざ尋常に」

 

 一陣の風が2人の間を通り抜ける。会場で無駄話をしているものは1人もおらず、静寂が包み込む。

 

 さあ、本当のほんとにこれで、――決まる。

 

「ではっ‼」

 

「勝負だっ‼」

 

 お互いのおそらく最強であろうスペルが取り出され、

 

「大奇跡『八坂の神風』!」

 

「『妖精の円舞曲(ロンド)』!」




第六十九話でした。投稿遅れてすみません。(デジャヴ)この前買ったBF1が面白すぎたのだ……。

結局さとりさんの出番かー。まあいいけど。(艦これネタですみません)

次回決着になると思います。しかし、優斗との延長戦がまだ残っていたり……。

ではっ!

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