東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第七十話 最終戦の前哨戦

 八坂の神風……確か風神録では早苗が最後に放ったスペカだったな。

 

 粒弾が弧を描くように早苗の周りを一回転し、そのあと中弾とともに一気に襲い掛かってくる物量重視の技だった気がする。

 

 背筋がきゅっと引き締まり、さらに緊張感が高まる。早苗が出した最高のスペル、大妖精はいったいどうやって返していくのか。

 

 先に展開が終わったのは早苗で、大妖精の左右まとめて、弾幕を向かわせる。

 

 高速で襲い掛かる弾幕。今にも大妖精に当たりそうになったその瞬間、

 

「それっ!」

 

 一気に跳躍。今まで見たこともないスピードで空を駆け、早苗の上を取る。

 

 そのまま大妖精の身体の周りに数々の弾幕が展開されていく。赤、青、緑、黄、オレンジ、紫、水色と色とりどりの小弾だ。

 

「これは……」

 

「おそらく虹をイメージしているのかと」

 

「ああ、なるほど」

 

「ほら、大妖精さんの反撃開始ですよ」

 

 だがこのスペルを見た早苗は一笑して、

 

「なるほど、きれいな弾幕ですね。ですが、数が! 量が! 圧倒的に足りませんよ!――さあ我が弾幕よ! 八坂の風で大妖精さんを倒せ」

 

 弾幕を上に傾け、勝負を決めに掛かる。

 

 確かに大妖精の弾幕は薄い。7色の弾が……5セットで35個くらいだろうか。対して早苗はその何十倍もある。

 

「悪いけど、この勝負貰いましたかね」

 

「弾幕は量じゃないよ」

 

「ほお? だったら証明してみてくださいよ!」

 

「今からそうする! いけっ!」

 

 その35の弾が移動を開始する。

 

「……なんですかこれは。遅すぎません?」

 

「さあ、どうだろうね」

 

 早苗の言うとおり、虹の弾幕は致命的にまでゆっくりだった。

 

「どうするんですか、これではすぐに消されますよ」

 

 さとりが怪訝な表情で聞いてくる。

 

「へえ、そりゃ珍しいな」

 

「へっ?」

 

 さとりにしては少し短絡的な考え方だ。理由もなく大妖精がこんなことするはずもない。

 

 速度は遅いし、量も少ない。ではこのスペルはどこにリソースを割いているのか。それを考えればいい。

 

 ただ体力がなくなったから? 違う。では、1発の威力が高い? 違う、弾幕ごっこは1回でも当てれば勝ちだからな。

 

 ではこのスペルの最大の利点とは、あれしかない。

 

「あの虹弾を吹き飛ばしちゃってください!」

 

 早苗の真っ直ぐな弾幕が7色弾と相殺するために移動する。

 

 2人の弾幕が交差する直前、

 

「ふへっ?」

 

 早苗が間のぬけた声を出した。

 

 無理もない、だって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そしてまた少しずつ、早苗に接近していく。

 

 早苗も何とかしようと次々と向かわせるが、結果は同じだった。

 

「まさかっ……!」

 

 ようやく早苗がそのカラクリに気付いた。

 

「……()()()()()()()()()()()⁉」

 

「その通り、よく気づいたね……」

 

 会場全体がざわつく。今までにないタイプのスペルカードだ、当然だろう。

 

 目標物に当たるまで決してその歩みをやめない、相手にとっては恐怖の弾幕。けどこちらから見れば、その華麗さはまるでロンドを踊る妖精のようで。

 

「さあ、倒しちゃって……はあ、はあ……」

 

 しかしこれを出すには相当な労力が必要らしい。すでに息絶え絶えで、弾幕を回避するだけで精いっぱいのようだ。

 

「……ならば当たる前にあなたに私のを当てる!」

 

 大妖精の限界が来るのが先か、弾幕に出すのに必死な早苗が被弾するのが先か。

 

 息もつかせない攻防が長針1週分くらい続いた。

 

 ――結果は、

 

「……ダメですか。ここまでのスペルでも避けきりますか……!」

 

 早苗の勢いが弱くなる。すでに弾幕の密度も薄くなり、それに反比例するように大妖精の弾幕は早苗の首を絞めていき、とうとう、

 

 ピチューン

 

「勝者、大妖精!」

 

 被弾と同時に、霖之助が高らかに宣言する。

 

「やった!」

 

「さすが大妖精さんですね! こんな青春的興奮したのは久しぶりです!」

 

「青春的興奮ってなんだよ」

 

「性的ではないということです」

 

「うん、いつも通りで安心した」

 

 いつもの変わらないさとりとの掛け合い。このまま何事もなく家に帰って、いつも通り過ごせればありがたいのだが、

 

「では優斗さん、覚悟はよろしいですか?」

 

 今日ばかりはそうはいかない。

 

「大妖精さんは私との契約通り、試合に勝ちました。今度は優斗さんが約束を守る番です」

 

「……極めて不本意だがな」

 

「けどそちらの方はいいでしょう? そのモヤモヤ、スッキリしたくありません?」

 

「お前がその正体を言ってくれたら早いんだけどな」

 

「ですからそれでは意味がないって言ってるでしょう? あなたは頭いいんですから、そのくらい自分で判断してください」

 

「……ふん、そこまで言われて逃げたら1生文句言われるな」

 

「ではいきますか、ちょうど大妖精さんも落下してますし」

 

「いつでも……――はっ?」

 

「ほら、体力を使い果たしたらしく」

 

 そちらを見てみると、確かに大妖精がふらついていた。意識はあるのだろうが、いくら羽を動かしてもその高度が維持されることは無かった。

 

「こっからは延長戦です、ぜひ勝利してもらえるとありがたい。優しい優しいさとりさんの情けで心読まないであげるので、全部ぶちまけちゃってください」

 

 柄にもないウインクがちょっとかわいいと思ってしまった。

 

 今は気づかれないので、心の中で思っておこう。

 

 ありがとうさとり、お前のおかげで真の自分と向き合えそうだ。

 

「では、大妖精対朝霧優斗、試合開始っ‼」

 

 大妖精と俺の真下にスキマが広がり、一気に落下する。

 

 

 

 

 

 

 

 ボフッ

 

 落ちたのはベッドの上だった。

 

 ゆっくりと息を吸って、吐く。

 

 その途端、甘いにおいがぶわっと入ってくる。ミントのようにさわやかだけど、それでいてバターのように芳醇。まさか、

 

「これ大妖精のベットか……」

 

 あまり彼女の部屋には入ったことないのだが、相変わらずきれいに整えられていた。ベットの横にある白いクッションがいかにも女子の部屋だ。

 

 あの机の上には……アルバム? 文からもらった写真だろうか。

 

 いずれにしても、ここにいると心が落ち……

 

「つかねえよっ!」

 

 自作自演ノリツッコミなんて初めてだな。それだけ精神が乱れているということか。

 

 もう一度、深呼吸……落ち着いて、落ち着いて、

 

 ふわっ

 

 無理。なぜかここの空気を吸うたびに、ぽわーんと頭が霞む。

 

 まあガンジーのように平常でいろなんて無理な話だ。これはただの勘でしかないが、なにか大きく、人生が変わりそうな気がする。

 

 視界にちらっと映った天井を見上げると、もう一個スキマが現れた。

 

 そこから出てくるのはもちろん、いうまでもない。

 




第七十話でした。何回でも叫びたい、さっとりん!さっとりん!

ホントは最後まで書き切りたかったのですが……時間がないんだ時間が。あと一時間あればなあ……

今週めちゃくちゃ忙しいので、来週末投稿できないかもしれないです。って、いつものことか……

では!
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