かなり重要なターニングポイントです。ここから見始めても十分お楽しみいただけますが、第1話から見始めることをお勧めします。
そんな暇ない!という方は、第51話から見ていただくと最低限の流れが分かるかと思います
ボスっ、と鈍い音を立てて現人神に勝利した妖精は降り立った。
何が起こってるのか分からないと目をぱちくりさせているその表情はワルツのように華やかで、それでいてロンドのように爽やかで。
「はれ……? どういうこと?」
「とりあえず夢じゃないってのは確かだな」
「うん……――なんでいるの?」
ベッドで向かい合って数秒。特に驚かれもせず、真顔で質問された。ただ、それの返答は非常にしにくいのだが。
「まあ1番はさとりに……いやなんでもない、ちょっと話があってだな」
さとりに促されたのは事実だ。だが、本意はそこではない。
「ふーん。なになに?」
「――そうだな、何から話せばいいか……」
大妖精が無防備にこちらへ顔を向け思わず目線を逸らす。大妖精も大妖精で疲れてあまり冷静な思考ができていないのだろう。
「まずはおめでとうって言っておくよ。まさか早苗に勝つなんてな……正直厳しいと思ってた」
「大番狂わせだったでしょ! 優斗も応援してくれてるし、絶対に負けないって思ったら、ほんとに勝っちゃった」
「最後のスペル、自分で考えたのか?」
「うん、こあちゃんと2人で作ったんだ。会心の出来だよ!」
「まさか追尾弾とは……成長したな。7色でとても綺麗だった。早苗の意表を突く、素晴らしいスペカだったと思うぞ」
俺が見てないところでどんどん大きくなっていくんだな。
俺の本音に歯を見せて笑った大妖精は、
「妖精が下剋上するためには頭を使うしかない。そう教えてくれたのは優斗だよ?」
「そういえばそんなことも言ったな。大分昔の話だ」
「そうだね、優斗が来たのがもう10カ月も前……なんだかもっと長く感じるよ」
「外の世界の科学によると、つまらない時間ほど長く感じるらしいぞ?」
「へっ? ――いや、べ、別にそういうことではないよ⁉」
「すまん、冗談だ。俺もすごく長く、幸せだ。そう思ってる方が幸せだしな」
なぜか今だけは、心からの本音が言える。さとりが能力でも使ったのだろうか。
「それならよかった。あの時はほんとに急に人間が現われて……どうなることかと」
「あそこでお前がいなかったらチルノに凍らされて生きてなかっただろうな」
「それで何の因果か……不思議だね」
「ああ、まったくだ」
レミリアではないが、運命というのはほんとに数奇なものだ。
まさか幻想郷が実在していて、公式では立ち絵さえない大妖精とこうして暮らして。1年前、高校に上がる前まで誰が想像できただろう。
「初めはスペルさえ持ってなかったもんなー」
「そうだね。これで3枚目……弾幕ごっこ大会で戦えるくらいにはなったよ。――それで、話って?」
「ああ、そうだな……」
「終わってさあ落ちようと思ったらいきなりこんな……まだ理解が追い付いてないよ」
「確かに。――って、試合後は倒れること前提なんだな」
「むー……だってそうしないと勝てないもん」
思わずクスッと笑ってしまう。確かにその通りだが、頬を軽く膨らましながらだとなんだかほほえましい。
「いや、まあいろいろ聞きたいことはあるんだけど、なんて表現すればいいのか……」
「なになに、そんなに迷うことなの?」
「そうだな、何から話せばいいのか……」
まずはあたりさわりのないとこから。
「ほら、まだちゃんと話せてなかっただろ? まだインフルエンザが完治してなかったこと」
「そうだね……って、やっぱり無理してたの?」
「いやいや、永琳の薬は最上級だぞ。――インフルエンザはそれを上回るけど」
今度は打って変わって不安な顔。くどいようだが、ここまで感情表現が豊かな女の子を今まで見たことがない。
「けど、結局何とかなったからいいじゃないか」
「もう……優斗らしくないよ」
「はは、確かに。それだけ周りが見えてないってことかな」
「堂々巡りになるけど、なんでベットで休んでなかったの? どうして車いすになるまで動き回ってたの?」
「う……」
顔を寄せられ、文もびっくりの素早さで質問攻めされる。視線は先ほどからずっと俺の目の中だ。
「なんでかなー……」
返す刀で1つ、息を大きく吐いた。
言い表しがたい、不思議としか言いようがない感覚だ。自然と身体から力が抜けていく。
特にそれに抗うこともせず、俺はベットにあおむけに横たわった。
「ただ確実に言えるのは、大妖精、――お前の試合が見たかった」
「え?」
「どうしても、永琳からの怪しいクスリ服用したとしても、雄姿を拝みたかった」
一つ一つ、次にいう言葉を慎重に選んでいく。
「おかしいよな、いままでここまで強い感情は生まれなかったのに」
「そ、それってどういうこと⁉」
大妖精が興奮したように覆いかぶさってくる。両手で支えを作り、髪を垂らしてこちらを覗き込むようにしていた。
「そうなんだよ、それがさとりが言ってた俺が質問したい事柄だ」
「うん、話してみて」
あっさりと引き受けてくれた大妖精は、呼吸が軽く乱れていた。そんなに驚くべきことか?
どっちにしろ好都合。教師としても、できるだけわかりやすく伝えよう。
「看病された時からか……それとももう少し前か……。なんだか、顔が赤くなったり、胸がドキドキするんだ。インフルの影響かと始め思ったが、どうもそれとは関係なく突発的に出る」
「どういうときに?」
「お前だ」
「はいっ?」
意味が分からない、といった様子で首をかしげている。当然だ、俺もわからないことをつらつらしゃべっているだけだから。
「おかゆを食べさせてくれたときとか、弾幕ごっこを一生懸命やってるときとか、お前の優しいところとか、そういうとこを見ると、思わず目を背けたくなる。あ、もちろん悪い意味じゃないぞ」
これ以上眺めていたら、なにかの一線を越えてしまう。そう身体が言ってる気がして。
「それって、もしかして……」
「ん? わかるのか?」
「……本当に見当つかないの?」
「ああ、サッパリ」
大妖精の呼気がさらに荒くなる。どういうことだ、そんな変な質問したか?
「優斗、それって、もしかして、」
1文節ごとに区切るように、大妖精がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「…………」
だが、肝心の中身の手前で、止まってしまう。
しばらく沈黙が続く。よっぽど場をつなぐ何かを言おうと思ったが、寸でのところで踏みとどまる。
――どのくらい経っただろうか。突然大妖精が、
「こういうことっ⁉」
一瞬にして距離を詰めた。彼女の体を支えていた腕がとめる暇もなく、俺の背中に回る。布団と背中の間に隙間を開け、指と指が絡まったのが感じ取れた。
その腕に力がこもる。さらに、吐息がわかるくらいにまで大妖精の顔が近づいていく。
ドクドクドク、俺の心拍数が急上昇する。今までで一番激しい反応だった。
つまり、これはすなわち、
「……大妖精、これは」
「……ぎゅってしてるの」
やっぱり。
「どう、優斗。私の心臓の音感じ取って」
上から覆い被さられているので、心拍音がじかに伝わっている。
そちらに意識を向けたと途端、
ドクドクドクドクドクドクドクドク
「……俺と一緒で速いな」
「でしょ? それに私、とっても暑いの」
「つまり、俺と一緒の感情を持ってるってことか?」
「そういうこと……でいいね?」
「はえっ?」
今強い要求をされた気が。
「私とおんなじ、そうでしょ?」
「ああ、そうだと……思う?」
「そうだよね?」
「はいっ‼」
ニコッ、十八番のデススマイルが飛び出した。なんでこのタイミングで……。
「よかった。それなら、もうためらうこともないや」
今度は安堵の顔になった。
ためらうって何のことだ? そんなに話しにくいことなのか?
「ずっと前から想ってたよ。この感情は、」
大妖精の口から、ずっと探し求めていた答えが飛び出ようとする。
走馬灯のように、ゆっくりゆっくり、時間が1フレームごとに進んでいく。
いよいよ、時を迎える。
「す――うわあっ⁉」
だが、大妖精が答えを言うことは無かった。
なぜなら、
「……これは、何だ?」
「……矢、だね」
「もちろんそうなんだけどさ、見ろ、矢文だ」
スコッ、と軽い音を立て、突然天井から矢文が飛んできた。俺の横、わずか数十センチのところに刺さっている。
今さら天井から降ってくることに驚きはしないのだが、さすがに手紙が降ってきたのは初めてだった。
「どれどれ……」
大妖精と話したいのはやまやまだが、まずはこれを確認しなくてはならないだろう。
身体を起こし、矢文から手紙を取り出して広げる。
「なんて書いてあるの?」
両手で手紙を持ち、とりあえずさらっと一読……。
「……はあ?」
できなかった。書かれている内容があまりにも衝撃的すぎて。
横から覗き込んでいる大妖精もみるみる青くなっていく。
「……紫、さとり、永琳‼」
即座に判断し、いつもなら頼りたくない3人を即座に呼ぶ?
「ゆっかりーんて呼びなさいよ」
「どうしました? まだ終わってないんですか?」
「ちょっと、これから審判なんだけど」
ものの数秒で3人が軽口をたたきながら飛んでくる。
「そんなこと言ってられなくなったぞ。これを見てみろ」
飛んできた手紙、それは、
『月世界、正体不明ノ敵ニヨリ侵入ヲ受ケテイル。現在、相当劣勢ナ状況。至急、応援求ム。豊姫』
月世界からの
第七十一話でした。さあ、終わりの始まりです。
お待たせいたしました……いつもの倍くらい書いたので許してくださいなんでも(ry
話は変わりますが、チルノのさんすう教室⑨周年版が発表されましたね! もう20回は聞きました!
ではっ!