永琳は再び治療室に戻り、いつものメンバーで東都の端に到着した。
『ではみんな、再確認だ。弾幕の準備はできたな? あと心の準備……いや、聞くだけ無駄かな』
とうとうサグメに諦められた。このノリに慣れてしまったということでもあるが……。
『東都での私たちの任務は、豊姫の援護、また、敵戦力の全滅だ。しっかりと集中する……いや、こちらの話だ』
「それは言うべきだろ」
それとも信用されてるのかね。ポジティブに捉えるのならば。
サグメはさらに続ける。
『作戦なんだが、古典的だが正面突破でいく。まず私たちが豐姫様と合流する。横からドレミーと紫でサポートするという作戦だ』
「なるほど、この獏とどっちが使えるか勝負するのね」
「争いごとは勘弁なのですが……そういえばこれ戦争でしたね。いいでしょう、ゆかりさんに負けないくらいかき乱してやりましょう」
『やる気があるようで何より。じゃあ頼んだぞ』
サグメが言い終わるやいなや、2人の瞬間移動スキル持ちは、それぞれの持ち場へと消えていった。
『よっし、突撃ー!』
戦時中の日本兵のごとく、全員スペルを握りしめて全力で駈ける。
その中でも一番速かったのは、
『豐姫様ー!』
「あのー、ホワイトボードにそんなこと書いても意味ないかと」
豐姫の部下、サグメだった。夢の中からドレミーが困り顔ををして追いかける。
「おやおや、サグメさんってあんな情熱的な性格でしたっけ? そこらへんドレミーさんはどう分析します?」
「詳しいことは知りませんが彼女、豐姫さんの直属の部下だったような気がします」
「それって私が映姫先生を尊敬するようなもんですか? ――さっぱり分かりません」
オイコラ。咎める暇無いからってさらっと爆弾発言するな。
そんなこと言ってる合間にも歩みは止まらず、ビル群の隙間を縫って進み、少しだけ開けたところにでる。すでに地面の舗装はなく、月表面の堅い感触が伝わってくる。
「ああ、あれか……」
「そうそう、あの帽子、間違いなく豊姫さんだね!」
遠くの方に見えてきたのは、長いドレスに右手には扇。間違いない、月世界のお姫様だ。
ここからでも、多くの式神が襲い掛かっているのがよく分かる。もちろん、アイツらを扇を払って簡単に打ち倒す華麗な姿だって。
「豊姫ー」
「え? ――あら! 優斗に大ちゃん! どうしてこんなところに?」
「ちょっとサグメに助っ人を頼まれてな」
「私の? あら~、私そんな信用されて無かったかしら……」
「そんなことないよ! きっと万が一のことを考えて、危機管理してくれたんだよ」
「そんなこと言ってもねー。正直私一人で十分なのよね」
こちらを向いて話す豊姫だが、その片手間で式神たちを消滅させていっている。その顔は余裕綽々だ。
「やっぱりちょっと過剰戦力だったか……」
「今は、だけど」
「へっ? それってどういう?」
ちょっとだけ凛々しい顔に戻って、少しだけ早口になって、
「もちろん、この敵だけだったら苦労してないわよ。依姫がやられたって聞いた?」
「ああ」
「私も詳しいことは分からないけど、どうも人型のやつがいるらしいのよ。そいつに傷つけられたらしいわ」
「依姫が……か」
依姫の強さは十分に理解しているつもりだ。油断するようなタマでないことも。
簡単な話、少なくとも依姫より実力者だということだ。正面突破で行けるのかね。
「まあいい。ここはもう安全だから、他へ加勢してくれ」
「え、それってまさか……」
チラリ、豊姫のジト目が俺の後ろへ向かう。思わず振り返ると、スキマ妖怪がいつの間にか回っていた。
「何よ、文句あるの?」
即座に紫がかみつく。視線と視線がぶつかり合い、ピリピリした空気があたりを包む。そういえなこの2人、前に因縁があったな。
「ちょちょ、2人とも……」
「ケンカは良くないよ!」
俺がたしなめようとしたけど、その前に反応した妖精が1人。
「今はそんなことしてる場合じゃないの! 月と幻想郷が仲悪いって前聞いたけど、それより重要なことがあるでしょ!」
ツルの一声とはこのことか。睨み合っていた2人の口角が下がった。
「ちょっとー、大妖精にそんなこと言われたら引き下がるしかないじゃないのー」
ため息が紫から漏れ出る。
大妖精のお説教に勝てるのなんて、いるわけないだろう。
「紫、あなたいい生徒を持ったわね」
「羨ましい?」
「少しだけね」
相変わらず少し距離があるけど。
第七十九話でした。儚月抄四コマの依姫さんがいい味出してて溶けそう。
土日暇なかったので、今日投稿しました。そのせいか、少し適当になってるような……
では!