「まだまだっ、スパイスが足りないですっ! 優斗さんはそんな平坦な人生でいいんですか」
「まったくその通りだが?」
大妖精とかとまったり過ごせてればそれで幸せだから……。さとりはいちいち副交感神経に悪くて。
「とにかく次ですよ! 大妖精さんとこあさんには抜けて頂いて……咲夜さん、永琳さん、1回だけお付き合いください!」
さとりが遠くの方で手を振ると、2人がやれやれといった様子で歩いてきた。
「今忙しいから手早くお願いね?」
「さとりさん、能力の使用は許可されていますか?」
ちょっと待てメイド長。堂々と反則しようとするな。
「え、構いませんが? 私だって皆さんの番号は手に取るようにわかりますし」
出来レースとはこのことか……。反則級の能力持ちばかりだ。
俺にできるのは、ただ祈ることばかり。頼む、もう少しこの幸運、続いてくれよ。
「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」
今度は5番。そろそろ王様引いても確立上問題ないんだけどな。
「王様は私です。別に能力は使っておりませんよ?」
俺の横で銀髪メイド兼看護師が手を挙げた。
さっきまで悪く言ってたものの、咲夜なら場をわきまえた言動をしてくれるだろう。幸いなことに、ここにスカーレット姉妹はいないし。
「そうですねー……では、4番の方」
「ふわっ⁉」
咲夜の反対隣りで声が漏れ出た。
「あのー、反応すると不利ですよ?」
こっそりと耳打ちで注意を促すが、いまだその震えは止まっていない。こんなわかりやすい言動をするプレイヤーはこの中で1人しかいない。ねえ、映姫先生?
ただ、咲夜のことだからもう命令は決まっているだろうが。
「この異変が終わったら、紅魔館で1日メイド体験して頂くということで」
「え、ええっ⁉ な、なんてこと命令するんですかあなた!」
額に青筋を浮かべた映姫が顔は真っ赤にして、咲夜に詰め寄る。
「く、首絞めないでくださいっ! たまたま、たまたまですから! ――校長といえども絶対守っていただきますけどね」
「そ、そんな……」
ありゃー、ツイテなかったな。これ、もし俺が当たってたら多分女装させられてたな。くわばらくわばら……。
「その際はぜひ文々。新聞で取材させてください!」
当然カーテンの奥から記者モードのブン屋が飛び出してきた。
キッ、と力強く睨み返す映姫だが、それくらいで怯むはずもない。相変わらずパシャパシャ撮影していて機嫌がよさそうだ。
「文、2ショットは撮れたのか?」
「はい、そりゃあもうバッチリ!」
現像した写真をみんなで覗き込むと、
「おお……すっごく仲よさそうだな」
「紫先生も依姫さんもいい顔してるね」
「さすが文さんです。こいしに見せたいんで後で焼き増しお願いします」
「私はお嬢様に」
「それ、依姫のとこだけ切り抜けるかしら? 写真立てで飾っておきたいの」
「やめなさいあんたたち!」
「ここで拡散するってなら切り捨てますよ⁉」
遠くでギャーギャーわめいてる2人はいなかったことにしよう。
「どうします依姫さん、もう1回やりますか?」
すでに多くの人が恥ずかしさで耐えられなくなってるのに、まだやるのか……。
しかも依姫をあおるなんて……これでは、
「ええ、やってやりますよ!」
乗ってしまうではないか。場を盛り上げることだけなら天下一品だな。
よっし、もう1度、切り抜けてみせる。
「いいですね、その意気込み。さあみなさん、クジを手にかけて!」
今度は俺、依姫、さとり、大妖精、小悪魔、早苗の6人。
「今度こそ、王様を引いて見せます! 姉上、頼みましたよ!」
「任せておいてー。ちなみに王様になったら何をお願いするの?」
「変顔の写真を撮っていただきます!」
ありゃ、根に持たれたな。けど、これくらいの命令なら可愛いもんだよ。
少しだけ安心したが、まだ気は抜けない。なにせさとりがいるからな。さとりがいるからな。大事なことなので2回言いました。
「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」
「来いっ!」
依姫の大声が重なる。案外熱中してくれたみたいでなにより。
さあ、結果は……。
「いよっし、今日はついてますねー!」
キャー、サナエサーン。
「もう決まってますよ! 誰かが誰かに全身マッサージをしていただきます」
俺と早苗以外から安堵の息が漏れる。表面的にとらえるなら、特に害はなさそうに見える。
しかし俺は油断しないぞ。もしやる側がさとりだったら……マッサージ(性的)になること間違いなしだ。マッサージの定義が広すぎるんだよ。
「うーん、どうしましょうかねー。皆さんいろいろな表情をされてて迷いますねー」
早苗すっごく楽しそう。俺もあの輝くクジを引きたい。
「……決めました。奇跡よ起これ!」
頼む、あたるなっ……!
「3番が、」
「おほっ♪」
向かい側から聞きたくなかったさとり妖怪の笑い。
これで絶対負けられなくなった。お願いだから、2番と呼ばないでくれ。
「1番に!」
よっしゃ! では犠牲者は……。
「あ、あちゃー……。依姫、ごめんなさいね」
「はあああああああああ⁉」
いいだしっぺの法則、ここで発動。
うわー。さっきの写真といい、悲惨だな。王様ゲーム嫌いにならなきゃいいけど。
そんな俺の危惧はつゆ知らず、ひさびさにサトリックスマイルが解放されていた。
「ふふふ……動けないなら好都合。さとりさんの指テク、ご披露いたしましょう。――あ、大妖精さんには過激だと思うのでカーテン閉めといてください」
「かしこまり! 楽しんできてください!」
早苗もウキウキだ。目配せとかしてないよな?
「少しお話しません? ほら、私怪我してますし。天人なのでマッサージとか必要ないんですよ。だからこの権利はどうぞほかの方に……あ、ちょっとどこ触って……」
「権利じゃなくて義務なんですよー‼」
「ふわあああ……ダメです、そんなとこ……やめ……やめてぇっ!」
「大妖精、目と耳塞いでおきなさい」
「うん、そうだね……」
俺と大妖精は仲良く、見て見ぬふりでやり過ごしていた。
第八十三話でした。キャラの書き分けが大変だー。
珍しく一日で投稿できました! やったねゆうちゃん、見てくれる人が増えるよ!
話は変わって、のんびよの映画化が発表されましたね! いまだ興奮さめあらぬ気持ちです! 絶対、絶対見ます!
では!