「ふああ……」
一仕事終えてから数十分、暖かいお茶をすすってゆっくりしていた。
もちろん汗は結構掻いたのだか、足はあまり重くない。走り慣れている成果がこんなところで出るとは複雑だ。もちろん永琳の薬の効果もあるのだろうが。まだまったく眠くないし、出せる弾幕は強力だし、いったい何が入っているのやら。
ところで、湯呑みの中に入っているこの緑茶、月原産のものだろうか。どこぞの神社で出されるやつとは段違いで深みがある。そもそも月で茶葉が作れるのかさえ分からないけど。
「それは地上の世界から仕入れてるのよー」
そんな俺の疑問を見抜いたのか、弾幕の解析を終えたであろう永琳が肩を叩いた。
「え、そうなのか」
「そもそもこっちじゃお茶の需要があんまりないわよね。みんな桃の水分で十分らしいわ。味気ないと思わないのかしら。私はごめんだから地上から仕入れてるけど」
「それ平気か? なんかこう……穢れがどうのこうのとか文句でないのか?」
「そんなのあなたたちと戦った時にすっかり無くなったわよ。あのスキマ妖怪は骨抜けにされて悔しがってたけど」
「それならいいんだ。で、弾幕の分析終わったか?」
「もちろん。まあいろいろ小難しい話はできるんだけど……まっ、とりあえず口開けなさい」
「ん?」
反射的に半分ぐらい指示に従うと、マッドサイエンティストの手が伸びてきて……
「食べなさい!」
「グホォ⁉」
「優斗⁉ 何されたの⁉」
「ああ、あなたもちょうどよかった。はい、あーん」
「あ、あーん……――うえっ……なにこの苦いの」
俺の声を聞いて駆け付けた大妖精もろとも薬を飲まされた。てか、なんで俺だけこんな乱暴なんすか……。
「多分それで相手に有効打与えられるはずだから。あいにく2錠しか作れなかったけど」
「え、マジすか……だったらもうちょっと強い人に」
「そうですよ、紫先生とか」
「こういう時はあなた達、って相場が決まってるのよ。その方がいろいろ対応できるでしょ?」
母親が子供に向けるに近い微笑が浮かべられる。
連携が取れるから、ということだろうか。それだったら綿月姉妹にお願いしたかった。
「それに紫は喜んで裏方に回ってくれるだろうし。彼女、なんだかんだ手を回してくれたでしょ?」
「確かに」
結界は全部紫のおかげだ。
少しの沈黙があった後、永琳は声のトーンを下げた。
「さて、これでぜーんぶ、準備はできた。――覚悟はいい?」
「それってつまり……」
「ええ、こちらに手の内が知られた以上、もう相手は出し惜しみしないでしょうね。あなたたちが帰ってきてから1時間弱……そろそろかしらね」
「おい、その弓矢は」
いつの間にか永琳の手に握られていたのは、全体が白光する幻想的な武器だった。
あれは……永夜抄で使ってたやつか。これすなわち、
「先生……本気出すの?」
「あら、むしろ手を抜く方がおかしいと思うけど? ちなみにスキマも閻魔様ももう戦闘態勢バッチリだけど」
「え、……あ、みんな目が笑ってない」
「大妖精、残念ながらあそこの変態は一切変わってないぞ」
大事なところで真面目になるのが幻想郷の重鎮だと理解していたが、例外もいたようだ。
そんなKYは放っておいておくとして、今まで数々の経験をしてきた不老不死の予測は伊達ではなく、
ドンドンドン!
「……来たか」
「いよいよ、だね」
警備兎の救助要請だろうか、入り口が激しくたたかれた。
第八十八話でした。明日投稿しようとしたけど話のつなぎが全く思いつかなかった……
これでようやく最終決戦でしょうか。適当で名をはせるうp主のことなので脱線するかも
では!