東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第九十三話 突入

 ジェットコースターの浮遊感はあまり好きではないが、あれは数瞬で終わるから我慢できるし、別に乗らなければいいだけの話だ。ところがこの1年で何度パラシュート無しスカイダイビングを敢行しただろう。

 

「……考えてみれば声出す必要もないか」

 

「なんでこんな状況で落ち着けるの!?」

 

 幻想郷にきて身についたことといえば、危機回避能力と自由落下への耐性だろう。もし元の世界に戻ったら嬉々としてジェットコースターに乗れるのだろうか。嫌な慣れだ。

 

「もう何回も経験してるし、今更驚くのも」

 

「苦労してるね……」

 

「ほら、もう着くみたいだ」

 

 ぐるぐる身体が回転しているので時たま下が見える。少しずつ厚みが1メートルくらいの白いクッションが大きくなるのを確認し、ほっと息を吐いた。いつもはこっちが行動しないと叩きつけられるのがお決まりなのだが、ここの主は心優しいようだ。

 

 そのままクッションに身を任せ、何回か跳ね返った後、ようやく運動が止まった。

 

「ようこそいらっしゃいました♪」

 

 一度聞いたことのある声。えーっとこの人、いや、このバクは、

 

「ドレミーか」

 

「はい、ここは夢空間ですよ」

 

「俺に優しいからやっぱそうだよな」

 

「はは、どう受け取ればいいのでしょうね」

 

『彼にとっては非日常が日常ってことだ』

 

 サグメも隣でホワイトボートに文字を走らせていた。そういえばサグメがドレミーを引っ張った後から姿を見ていなかったが、ずっと夢空間にいたのか。

 

「とりあえず降りてきたらどうですか?」

 

「ああ。大妖精、立てるか?」

 

「う、うん。まだちょっとクラっとするかも……」

 

「じゃあこのまましばらく。で、なんでここに……」

 

「あ、少々お待ちを。もう1人補助が必要な妖怪がいるので」

 

 サグメが俺たちの右横の向きに指をさすと、同じようなクッションがまた出てきた。真っ白なそれに対比されて、黒い影がどんどん大きくなっていく。

 

 あー……サードアイがあるよ……。

 

「いやっふうううううう!!」

 

 よっぽどスリルがあったのか、大声をあげながらボイーンと跳ね返り、こちらのクッションまで飛んできた。

 

「いやー、ジェットコースターみたいな爽快感でしたね!」

 

「なんでお前がそれを知ってるんだ」

 

 もうすっかりお馴染みのさとりさんが珍しくさわやかな笑顔で額をぬぐった。

 

 そのまま仰向けで寝そべっている大妖精のほうへ笑みを向け、

 

「おや、元気がないようですね大妖精さん」

 

「ちょっとね……」

 

「そんなんではこれからの戦いについてけませんよ」

 

「分かってるけど……」

 

「それっ!」

 

「きゃあっ!?」

 

「目が覚めましたか?」

 

「おいコラどこ触ってるんだ」

 

 しかも両手で両胸いったよこのセクハラ妖怪。

 

「嫉妬ですか? あなたも女の子に生まれてくればよかったのに」

 

「そうでないことは分かってるだろさとり妖怪なんだから」

 

「確かに。ところで前より揉み心地が良かったんですけど」

 

「いや知らないよそんなこと」

 

「胸って揉めば揉むだけ……ってのは有名な話ですし、つまり優斗さんが」

 

「そんなわけあるか」

 

 ここまで来て変わらないのは逆に称賛すべきなのだろうか。いや、俺の精神安定的に絶対認めてはならない。

 

『コントみたいだな』

 

「まったくです。ところで、大妖精が自分で揉んだという可能性は……」

 

「そ、れ、で、俺たちを呼び寄せたからには理由があるんだろう?」

 

 ドレミーまで参加すると収集つかなくなる。

 

「そうですね。先ほど、ヘカーティアが襲い掛かってきたでしょう?」

 

「ああ、とんでもないパワーだった」

 

「先生たちがあんなに苦戦するところ見たことなかった……」

 

「紫さんも永琳さんも大概チートですが、それを上回る変態っているんですね」

 

『このままでは長くはもたない。しかし、希望もできた』

 

「というと?」

 

『ヘカーティアが来た道を逆探知し、こちらも相手の親玉の』

 

 一度字を消し、また書き直す。

 

『場所を特定した。それで君たちを呼んだわけだ』

 

「なるほどな。で、もう繋いであるか?」

 

『ああ。ただ、1つ問題がある。』

 

「敵がかわいい女の子だったら私が攻撃できないことですか?」

 

『さとり、君の攻撃は効かないんだ』

 

「永琳さんの薬を飲まないと弾が当たらないらしいですよ」

 

 完全にスルーするとは手厳しいが、今はさとりに構っている場合でもない。

 

「あともう1つ、敵が2人いるという事です」

 

『クラウンピースとかいう妖精と、もう1人の正体が分からない』

 

「もしバラバラで襲ってきたら、優斗さんと大妖精さんが分かれて戦わなければなりません」

 

「そしたら私がクラウンピースと戦うよ。妖精は妖精が倒さないと」

 

「そしたら私はどちらのヘルプに入ればいいんでしょうか」

 

『場合によるとしか……』

 

「じゃあ好きにやらせてもらいますね」

 

「ひっ!?」

 

「指をそれらしく動かすな」

 

 逃げるようにクッションから降り、ドレミーの近くまで向かう。当然さとりも追いかけてくる。

 

「では、準備はよろしいですね?」

 

「ああ」

 

「いよいよ、だね」

 

「これが終わったら……彼氏と結婚するんです」

 

「やめろフラグになるから」

 

『頼むぞ、命運は君たちの手にかかっている』

 

 どうも雰囲気がふんわりしている……本来ならばもっと感動的な場面なのだろうが。

 

 幻想郷にきてからというのも大ごとが小事になったというか、めったなことでは驚かなくなった。あれほどの経験をしたら当然だが。

 

「では空間を開けます。飛び込んでください! 3、2、1」

 

 さあ、最終決戦だ。

 

「それっ!」

 

「走れっ!」

 

「キャハハッ!」

 

 3つの声が同時に放たれた。……3つ?

 

 明らかに甲高く、不自然な声。これはまさか……。

 




第九十三話でした。長期休みになるとやる気出ます

これからも頑張ります。では!
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