大海賊時代より……美少女船長の生・配・信! ─West India Company─   作:海凪ととかる

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アーカイブ再生(【天気晴朗ナレドモ波高シ】【バトル・オブ・ブリテン ─鉄十字のゼロ戦─】)

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 時代は流れて明治十年。政争に負けて中央の政治の舞台から追われた西郷隆盛が新政府への不満を抱く士族たちを率いて起こした西南戦争。

 最大の激戦地となった熊本県の田原坂の戦いが終わり、今だ硝煙が燻ぶり、新政府軍兵、士族軍兵の死体が諸共に残されたままの戦場に一人の政府軍の制服を着た男の姿があった。銀色の飾りの帽子から警視庁の抜刀隊に属する者だと分かる。

 

「我は官軍我が敵は天地容れざる朝敵ぞ。敵の大将たる者は古今無双の英雄で、これに従う兵は共に剽悍決死の士。鬼神に恥じぬ勇あるも、天の許さぬ反逆を起こせし者の昔より栄えたためし有らざるぞ……か。西郷さん、維新の時とは立場が逆になっちまったなぁ」

 

 しみじみと呟く男の名は藤田五郎。幕末においては新選組に属して維新志士たちと戦い、戊辰戦争は会津藩士として西郷隆盛ら新政府軍と戦った。そして今は新政府軍の精鋭部隊として名高い警視庁抜刀隊に所属してかつてとは逆の立場で再び西郷隆盛と戦っている。

 

 戦場跡を行き巡っていた藤田は、まだ息のある士族軍の若者を見つけた。見たところまだ十代半ば。袈裟懸けに斬られて血塗れであるがまだ傷は浅い。かつての自分であれば迷わず止めを刺したであろうが、藤田はその少年に肩を貸して立ち上がらせ、政府軍陣地後方に向かって歩き出した。

 

「……なぜ殺さぬ? おいは敵じゃぞ」

 

「戦は終わった。今は俺もお前もただの日本人だ。そうだろう?」

 

 そして政府軍陣地後方に設けられた野戦病院の天幕に入ると、血に汚れた割烹着と三角巾で頭を覆った背の高い女が駆け寄ってくる。

 

「藤田さん! また怪我人を連れてきてくれたと? ありがとうねぇ! すぐ診るけんこっちにお願いするっちゃんね」

 

「お、女の医者じゃと!?」

 

「大人しくしろ。女といえど西洋の医術と蘭学を修め敵味方関係なく治療してくださる立派な先生だ。元新選組の俺が明治政府の警察におり、維新の大英雄たる西郷さんが反乱を起こした。女が医者になっていてもおかしくはあるまい。時代は変わったのだ」

 

「うふふ。元新選組一番隊長の斎藤一さんば言わすと説得力ばあるっちゃんねぇ」

 

「な!? おんし、あの新選組の斎藤一じゃと!?」

 

「今は警視庁の藤田五郎だ。昔の俺ならお前を殺していた。だが、戦が終われば皆平等に日本人だから助けたいと言うのがこちらの桜先生の望みゆえ協力している」

 

「…………そげんか。ほんなごつ時代ば変わったったい」

 

 しみじみと呟く少年はなにか憑き物が落ちたような表情をしていた。

 

 歴史の裏舞台、西南戦争戦場の片隅に敵味方関係なく治療に当たったハーフの女医がいた。彼女の名は坂上桜。

 政府軍の軍事顧問として従軍していた英国軍士官は後に本国にこう報告する。「敵も味方も関係なく治療する彼女の高潔さたるや、さながら東洋のナイチンゲールであった」

 

 

 ゲームタイトル【天気晴朗ナレドモ波高シ】

 

 

──名作キタ────ッ!

──切り抜きは西南戦争の場面か。渋いチョイスやなぁ。

──え? こんなタイトルのゲームあったのか。

──俺も知らんかった。

──通称、天晴波高。地味だけど間違いなく名作。

──戊辰戦争で桜に命を救われた斎藤一が西南戦争で士族の少年兵を救うのがまたエモい。

──この少年、桜を師事して名医になるんよな。

──最後は奉天まで同行するよね。

──ちょ、また観たくなるやん。

──未履修だけどそんなに面白いの?

──めっちゃ面白いけど長いぞ。

──幕末から明治維新、日清日露戦争までの激動の時代を舞台にした超大作。

──プレイヤーの数だけ違う物語があるけど、マサムネ……いや、桜さんの物語は涙なしには観れない。

──……

 

 

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 時と場所は変わって1940年7月。フランスを降伏させたドイツ軍は次なる戦略目標としてイギリス本土上陸作戦に取り掛かろうとしていた。それに先駆け、イギリスの制空権を奪い上陸作戦の妨げとなる沿岸防衛設備や艦隊を破壊する目的で、ドイツは戦闘機と爆撃機からなる航空艦隊をドーバー海峡を越えてイギリス本土に差し向け、それに対しイギリスはレーダーによる早期警戒や迎撃戦闘機で対抗し、第二次世界大戦の欧州戦線における大きな山場の一つとなる数ヶ月に及ぶ航空戦──バトル・オブ・ブリテンが始まった。

 

 ドイツから仕掛けた戦いではあったが、それまで空軍戦力をあくまでも陸軍の補助的に用いてきたドイツ空軍にとって、空軍戦力だけで海峡を渡って作戦行動をするというのはそもそも想定外の運用であり、そのための準備も圧倒的に足りていなかった。

 大量の爆弾を積める戦略爆撃機は開発が間に合っておらず、主力爆撃機のドルニエDo17の爆弾積載量はわずか1000kg。制空任務を担う主力戦闘機のメッサーシュミットBf-109は航続距離が短く、行きと帰りでドーバー海峡を渡ることを鑑みると作戦空域に留まれる時間が短かすぎて制空任務を果たすには力不足だった。

 その意味するところは、爆撃機の地上目標への火力不足と戦闘機の制空能力不足。すなわち冒す危険に対して成果が少なすぎるハイリスクローリターン。そのリスクは主に爆撃機の搭乗員に降りかかった。

 足が遅く小回りが利かない爆撃機を護衛するはずの戦闘機が、燃料切れを恐れてさっさと引き上げてしまうので、爆撃任務を終えて帰る途中の爆撃機には護衛が付いておらず、イギリス空軍の迎撃戦闘機にとって絶好のカモになってしまっていた。

 

 爆撃任務を終えて帰投する5機のDo17の小編隊。渡り鳥のような逆V字編隊の左翼後尾に位置している4番機の爆撃手兼下方銃座手のハンスは追ってくる敵戦闘機がいないか注意深く索敵の目を光らせていた。

 昆虫のトンボに似たシルエットのDo17は、元々は戦闘機から自力で逃げられる高速爆撃機として設計されたものの、戦闘機の性能向上が著しい今となっては敵のハリケーン戦闘機やスピットファイア戦闘機に最高速度で100km/hは劣る。1分の敵機発見の遅れが致命的な結果に繋がりかねない。

 自機から見て左後方の下方に違和感を感じたハンスが注視していると、太陽光がコクピットに反射してキラリと光るのが見えた。

 

「敵機発見! 8時下方! あれは……ハリケーン3機!」

 

 ただちに情報が編隊内で共有され、編隊長の命令で5機のDo17は散開してそれぞれ別方向に逃走し始める。戦闘機の護衛がない爆撃機が一機でも多く生還できるよう考えて編み出された『蜘蛛の子戦術』だ。バラバラに逃げることで戦闘機に狙われた一機は確実に撃墜されるが、残りは無事に逃げ(おお)せる犠牲(スケープゴート)ありきの戦術。

 そして、今回のスケープゴートに選ばれたのはハンスの乗る4番機だった。

 ドーバー海峡まであと少しというところでついに追いつかれて戦闘が始まった。Do17は4人乗りで全員が機体前方のコクピットブロックに乗り組んでおり、防御銃座は前方、上部、下部に合わせて6丁の7.92mmMg15機銃。下部後方を守るのはハンスの操る1丁だけなのでささやかな牽制程度にしかならない。対するハリケーン戦闘機は1機で7.7mm機銃を12丁も積んでいて、それが3機となれば万が一にも勝ち目はない。

 敵が本気であればあっという間に撃墜されたであろうが、どうやら敵の戦闘機パイロットのうちベテランは隊長機1機だけで残りの2機は新人(ルーキー)らしく、ルーキーたちの実戦教材扱いで隊長機は手を出さずにまずはルーキーたちが交互に攻撃を仕掛けてきた。ルーキーゆえに飛行技術も射撃技術も拙く、Do17のパイロットの必死の回避運動で多少の被弾はしつつも致命的な損傷は受けずにギリギリで立ち回る。

 このまま安全圏まで逃げ切れるかと僅かな希望が生まれるが、業を煮やした隊長機がただの一斉射で上部銃座を破壊して銃手を殺してみせたことでただ敵の手のひらの上で生かされていただけだと思い知らされる。

 頭上からの滴ってくる血を浴びながらハンスが死を覚悟したその時──

 

 

【挿絵表示】

 

 

──タタタタタタ……

 

 ハンスの眼下、Do17の下を後方に向かって曳光弾が幾つも流れていき、それを追って一機の友軍戦闘機がDo17の下をすれ違いで通過していく。

 Do17の真後ろについていた隊長機が真正面からの何発もの直撃弾を受けて一瞬で火だるまとなって墜ちていく。

 隊長機を失って右往左往する2機のルーキーのハリケーンも宙返りして戻ってきた友軍戦闘機にまたたく間に撃墜され、空には三条の黒煙だけが残るのみとなった。

 

「助かった……のか?」

 

 目の前で起きたことが未だ信じられずにいるハンスが呆然とする中、友軍戦闘機がDo17の横に並ぶ。塗装こそドイツ空軍の黒と灰色の迷彩と鉄十字のエンブレムであるが、今まで一度も見たことのない機体。空冷星形エンジン独特の太い機首、全体的に丸みのある女性的なデザイン。見慣れた無骨なドイツ軍戦闘機とは設計思想からして違うことが一目瞭然な優美ともいえる新型戦闘機。そしてそのパイロットは──

 

「女!?」

 

 よほど急いで駆けつけてくれたのか、飛行服も飛行帽も身に着けず、作業服姿で長い金髪を後ろで雑に結んだ碧眼の若い女性が不敵な笑みで敬礼してくる。手信号でDo17をこのまま基地まで直掩すると伝えてくる彼女の頼もしさにハンスは思わず呟く。

 

戦乙女(ヴァルキリー)

 

 

 同盟国である大日本帝国から密かに供与された設計図を元に試作されたドイツ版零式艦上戦闘機。その設計技師兼テストパイロットを務めたアーデルハイド・フォン・クローゲンシュニット。

 バトル・オブ・ブリテンの期間、味方からは『戦乙女(ヴァルキリー)』と讃えられ、敵からは『ドーバーの魔女』と怖れられた後のドイツ空軍大将となる女性パイロットの輝かしい戦歴の始まりであった。

 

 

 

ゲームタイトル【バトル・オブ・ブリテン ─鉄十字のゼロ戦─】

 

 

──鉄ゼロキチャー!!!!

──バトル・オブ・ブリテン!!

──ジークハイル! ジークハイル!

──やっぱ熱いよな。鉄ゼロ。

──リリースして100年以上たってもなお大人気タイトル。

──ハイジ閣下の初陣シーンとか分かってるな。

──姐さんかわよ。

──ハイジが最初に危機を救うDo17の銃手視点ってのがまた臨場感あっていいじゃん。

──ゲーム実況だと基本的にパイロット視点のFPSだけどリプレイだと別視点も見れるんだよな。

──ていうかドルニエの武装貧弱すぎんか?

──元々戦闘機を振り切れる高速爆撃機として設計されてたから初期型は武装すらなかったらしいぞ。

──おい、まじか。

──マサムネの配信者としての原点にして出世作だな。

──初代マサムネコ。

──ハイジ姐さんかっこよ。

──ゼロ戦のルフトバッフェ仕様、フォッケっぽくてよき。

──バトル・オブ・ブリテン当時に、 狼(ほっけおおかみ)あったら戦況変わってたよな。

── 狼? ……あ、ほっけうるふwww

──お、待機画面に戻った。

──いよいよ配信開始だ。ワクワク。

──過去作の名場面切り抜き集楽しかったな。

──のっけからこんなに期待値のハードル上げちゃって大丈夫か?

──過去作の方が面白いとか言われちゃわない?

──まあ、バトル・オブ・ブリテンの大バズリのあとの風万と天晴波高が不遇扱いなのは否めない。

──いうて風万も天晴波高も固定ファンしっかりついてるし、コケたわけじゃないし。大バズリこそしなかったけど。

──いやでも今回は海賊ものだろ? 人気ジャンルだしバズリ確定だろ。

──始まるぞ!

──ワクワク。

──wktk。

──……

 

 

 

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 そして、新たな伝説の幕が上がる。

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