大海賊時代より……美少女船長の生・配・信! ─West India Company─ 作:海凪ととかる
アボットの率いる貿易船はアフリカ回りの航路でインド方面に向かう途上で海賊の襲撃を受け、海賊を撃退して沖に逃れたところで嵐に遭遇して船が沈み、幸い誰も失われずにボートで逃げ出して漂流していたところを通りがかったジョージの船団に救われたが、各々が持ち出せた私物やお金はごくわずかで、生き残った乗組員がこれから路頭に迷うことは火を見るより明らかな状況だった。
それで、アボットは生き残った乗組員たちに少しでも当座の必要を
言葉が通じないイングランドの植民地よりも言葉に不自由しないオランダの植民地の方が高く買い取ってもらえるので、このイングランド領サンファンでの奴隷市の後、近隣のオランダ植民地にて自分たちを売ってもらい、その代金を乗組員たちに分配してもらう予定だった。
しかし、その計画はくノ一の
アボットとアネッタが身売りした代金を分配されたところで自分たちの故郷はあまりにも遠すぎて帰ることはできないし、人種も言語も違う自分たちは自由の身でもどうせまともな職には就けないからいっそ3人一緒に奴隷として同じ主人の元に売ってくれた方がかえってありがたいし、オランダ人であるアボットとアネッタなら当座の資金さえあればいくらでもやり直せるはずだから、と。
その理由に納得したジョージはショーゴたち3人の計画に乗ることにして、アボットたちには秘密で3人を売ることにし、実際に買い手がついたので連れ出そうとしたが、そこでアネッタに見咎められて計画が明るみに出てしまい、事態に収拾がつかないまま約束の時間が迫ってきたのでとりあえず当事者全員を連れてきた、というのが事の顛末だった。
「なるほど。そういう事情だったのね。納得したわ」
事情を正しく理解したサミエラは情報を整理するためにしばし黙考し、それからアボットたちにオランダ語で問いかけた。
「Jullie situatie begrijp ik. Wat willen jullie eigenlijk doen?」(「あなたたちのおかれている状況は理解したわ。それで、あなたたちはどうしたいの?」)
「Ik zou willen dat jullie het plan om Shogo en de andere twee tot slaven te maken, laten varen. Er is geen reden voor hen om zo’n offer te brengen. Die verantwoordelijkheid zou in de eerste plaats bij mij moeten liggen」(「ショーゴたち3人を奴隷に、という話は無しにしてもらいたい。彼らにそんな犠牲を払う理由はない。その責任はまず私が負うべきものだ」)
そう言い切ったアボットにショーゴたちが抗議する。
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「……We praten langs elkaar heen. Maar wat mij betreft, er zit wel een kern van waarheid in de redenering dat, aangezien een van de redenen waarom deze drie zich hebben verkocht is dat ze zelfs als vrije mensen geen behoorlijke baan kunnen verwachten, het beter is als ze met z’n drieën samen slaaf worden onder dezelfde meester. Mensen met een Oosters uiterlijk lijken op Indianen, dus vooral hier in West-Indië worden ze doelwit van slavenjagers. Is het niet juist beter om als slaaf onder de bescherming van een meester te staan?」
(「……平行線ね。でもアタシとしては、この3人が身売りを決めたもう1つの理由である自由の身でもまともな職に就くことは期待できないから、いっそ3人一緒に同じ主人の元で奴隷になった方がいいと考えたのには一理あるとは思うわ。東洋人の顔立ちはインディアンに近いから、特にこの西インド諸島では奴隷狩りに狙われるわよ。奴隷として主人の保護下にいる方がかえっていいのではないかしら?」)
「Mmm……. Maar ik ben hun beschermer. Nee, deze drie zijn voor mij al als eigen kinderen. Om vrijheid te kopen met geld van de verkoop van kinderen… bij de levende God, dat kan ik nooit doen!」(「むぅ……。だが、私はこの3人の保護者なんだ。いや、この3人は私にとってもはや息子や娘のような存在だ。子を売ったお金で私が自由を得るなど、生ける神に懸けて、私にとってあり得ないことだ!」)
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サミエラの意見の理を認めつつも気持ちの上で認められずに葛藤するアボットをショーゴたちが説得する中、サミエラはジョージに訊ねた。
「んー、ねえパーシグ会頭、アボット氏と娘さんはオランダの植民地で奴隷になったらどれぐらいの値が付くのかしら?」
「む、そうですな。アボット氏は船乗りとして熟練しておりますのでその技能を活かせるなら120ぐらいにはなるでしょうが、一般奴隷としてですと、年齢的なものも考えると付いても80、アネッタ嬢は器量も良いですし、作法も身についておりますので、貴族や有力者の
奴隷娼婦として売られた場合、娘のアネッタは10年以内に梅毒で死ぬことになると言外に
「Nou Abbott, ik begrijp heel goed dat het voor jou onverdraaglijk is om zelf vrij te blijven terwijl deze drie, die voor jou als eigen kinderen zijn, alleen slaaf worden. Maar jij zou toch moeten weten hoe gevaarlijk het is voor deze drie Oosterlingen om vrij te zijn zonder voogd. Als jij slaaf wordt, verliezen ze hun voogd, dus in elk geval is er een nieuwe voogd nodig.」(「さてアボットさん、あなたにとって我が子同然のこちらの3人だけが奴隷になるのに自分が自由の身で居続けるのが堪え難いことである、という気持ちはよく分かったわ。でも、東洋人であるこの3人が後見人もいない状態で自由の身でいることがどれほど危ういことかが分からないあなたではないはず。あなたが奴隷になったらこの3人は後見人を失うことになるんだから、いずれにしても新たな後見人が必要だわ」)
「
「Hoe meer geld er is om te verdelen onder de overlevende bemanningsleden, hoe beter, toch? Als het je onverdraaglijk is dat alleen deze drie slaaf worden, waarom komen jij en je dochter dan niet ook naar mij toe? Ik kan voor jou en je dochter tot 250 betalen. Ons handelshuis heeft nog steeds meer mensen nodig, en we hebben schepen, dus we zoeken mensen die die kunnen besturen. Natuurlijk moet je ook ander werk doen, maar ik beloof dat ik de twee meisjes geen klanten als prostituee laat aannemen. Zo kun je als voogd van deze drie — nee, van de vier als we je dochter meetellen — bij hen blijven en over hen waken. Dat is toch geen slechte deal?」(「生き残った乗組員たちに分配できるお金は多いほどいいのでしょう? この3人だけを奴隷にすることが忍びないなら、あなたと娘さんも一緒にアタシの元に来ない? アタシはあなたと娘さんに250までなら出していいわ。うちの商会にはまだまだ人手は必要だし、船もあるから動かせる人間が欲しいのよ。もちろん、それ以外にも仕事はしてもらうけど、娘さんたち2人に娼婦として客を取らせることはしないと約束するわ。この3人、いえ娘さんも含めるなら4人の保護者として引き続き傍で見守ることもできるし、悪い条件ではないと思うわよ?」)
「…………」
悪くないどころか願ってもない条件を提示されて、アボットは何か裏があるのではないだろうか、と考えた。そもそもこのサミエラと名乗る
そう考えたところでそのような想定に意味などないと気付く。奴隷になるということは一般的な雇用関係ではなく、生かすも殺すも主人次第の所有物になるということなのだから。
だが、普通に奴隷堕ちしたならこれほどの条件はまず望めない。そもそも奴隷は主人を選べないのだからどんなに過酷な労働条件にも甘んじなければならない。それこそアネッタが娼館に買われたら、先ほども指摘された通り、購入費用を回収するために次々に客を取らされていずれ性病を
ゴールディ商会がどんな商売をしているかは知らないが、アネッタとナミに客を取らせないと約束してくれている、それだけでも親として拒む理由はないし、この4人がこれからも一緒にいることができて、自分自身、その成長を見守っていけるならそれに優るものはない。
不安要素としては、サミエラが事業に失敗した場合に所有物である奴隷は再び売られてしまう可能性があるが、そうならないように支えることが自分たちの役割だろう。
「Wat denk je? Ik vind dat ik dit aanbod moet aannemen.」(「どうだろう? 私はこの話を受けるべきだと思うが」)
アボットが4人に訊ねると、全員が迷わずに頷いたので、アボットも腹をくくり、サミエラに向き直って頭を下げた。
「Begrepen. Nee, ik begrijp het. Ik en de kinderen zullen voortaan onder uw zorg staan. Meesteres.」(「わかった。いや、わかりました。私と子供たち共々これからお世話になります。ご主人様」)
アボットに続いて残りの4人も頭を下げ、サミエラは彼らを安心させるように満面の笑顔で両手を広げた。
「Jullie zijn welkom. Welkom bij Goldie Handelshuis.」(「あなたたちを歓迎するわ。ようこそゴールディ商会へ」)
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【その時、歴史を動かしたCh公式 WIC感想欄】
──んー? これってサミエラ、英語とオランダ語を切り替えて喋ってたりする? どっちも知らんけど声の響きというかアクセントが違う気がする。
──そやで。よう気づいたな。
──脳内に多言語翻訳インプラントのある
──それが分かる古代地球語の有識者がいることにビックリだわ。
──うわー。マジで使えねえ無駄知識。
──ニッチな趣味なのは認める。
──ちょ、サミエラって何気に凄いことしてない?
──マジで凄いよ。このゲームはダイブ中は多言語翻訳インプラントは無効化されるから、アバターそのものに初期設定でインストールされている言語とプレイヤー自身が身に付けてる言語以外理解できなくなるからね。
──その不便さが歴史ゲーの醍醐味でもあるからな。
──シューティングやアクションゲーだと自動翻訳ありがデフォだからこれは歴史シミュレーションならではのリアリティだよな。
──プレイヤーが元々身に付けてる言語は使えるわけだからマサムネみたいに過去にいろんな国を舞台に歴史ゲーをプレイしていると有利ではある。
──……それさぁ、言うは易しの典型やで。
──歴史ゲー好きでも普通は同じ国でプレイするんよ。
──言語も文化も歴史的背景も違うとガチで頭の切り替え大変やねんで。
──そこがマサムネの凄いとこでもあるんよな。本人のプレイヤーネームとアバター的にルーツは日本だと思うからノブナとサクラは分かるけど、ハイジとムーランはようやったなって感じ。あと今のサミエラも。
──どこの国でプレイしてても違和感ないし、そもそもキャラクターの個性が完全に切り替わってるのがとんでもないんよ。
──それなー。どのゲームやっててもプレイヤーの個性が毎回同じって配信者多いもんな。
──その点、マサムネキは全員個性強いよな。
──みんな違ってみんないい!
──脱線しすぎや。みんなそろそろ本題に戻ろうず。
──ごめんやで。
──……