大海賊時代より……美少女船長の生・配・信! ─West India Company─ 作:海凪ととかる
「さて、俺がこれまでプレイしてきたRTSはどれも、その時代を専攻する地球古代史の
──西インド会社?
──あ、絶対好きなやつー。
──帆船時代っていつ?
──ロマンに溢れる冒険航海時代!
──wktkが止まらない。
──カリブ海ってアメリカよね。なんで? インド関係ないじゃん。
──次は海賊ものかぁ! 楽しみぃ!!
──海好きの俺氏大勝利!
──……
「お、今いいコメントあったね。俺もなんで西インドなのよ? って思って調べてみたんだ。とりあえず地球の地図共有するから見ながら説明してくね」
マサムネがディスプレイをポンポンと操作してメルカトル図法で描かれた地球の地図を表示する。ヨーロッパが中心で右に極東、左に南北アメリカが描かれているタイプだ。
「この地中海の北側が
──マサムネ先生の歴史講座キマシタワー。
──理解した。
──おけおけ。
──まだ大丈夫。
──だいじょうぶ。わたしはかしこいから。
──嘘だろ。もう大丈夫じゃない奴おるで。
──……
「で、このヨーロッパではインド産のスパイスがめちゃくちゃ貴重で物凄く高額で取引されていたんだ。胡椒が同じ重さの金と交換されるぐらいね。それでこの胡椒を含めたスパイスを仕入れるために元々は中東経由の陸路が使われていたんだけど、中世時代にはこの中東から地中海の南側の北アフリカまでがイスラム教を奉じる国々の支配下になってしまって、イスラム教国と敵対していたヨーロッパの国々はスパイスを手に入れる手段を失っちゃったわけだね」
マサムネの操作によって地図上のイスラム教国が赤く塗りつぶされる。
──ほうほう。
──まだついていける。
──地図あると分かりやすいね。
──アフリカ大陸のイスラム圏の南は砂漠だから通れないんだな。
──……
「それでもどうしてもインドのスパイスが欲しかったヨーロッパの国々は、アフリカ大陸の沿岸沿いを船でぐるっと大回りしてインドに直接スパイスを買い付けに行こうと考えたわけだ。大航海時代の始まりだね。そして、このインド航路開拓競争はポルトガルとスペインが競っていたんだけど、最終的にインド航路開拓に成功したのはポルトガルの方で、ポルトガルはアフリカ沿岸沿いから東南アジアまで広大な植民地を獲得した上にインドからのスパイスを独占販売できるようになったからめちゃくちゃ裕福な強国になったんだ」
地図上の当時のポルトガル水上帝国の勢力圏が青く塗りつぶされる。
──すご。これ全部ポルトガルの勢力圏か。
──頑張ったなポルトガル。
──富国強兵。
──スペインは泣いていい。
──本国めっちゃ小さいのにな。
──……
「そう、スペインとしては面白くないよね。でも、アフリカ沿岸がポルトガルの勢力圏にあるからアフリカ回りでインドに行きたくても補給できる場所がない。でもインドのスパイスは諦めたくない。それでスペインが思い至ったのが西回り航路の開拓なんだ」
──西回り? まさか……
──アフリカ回りが東回りだから逆は……
──いやいや途中にアメリカあるし。
──無謀なことを。
──……
「みんな気づいたみたいだね。そう、大西洋を西に進んでいけば反対側からインドに行けると当時のスペイン人たちは考えたんだ。それでその冒険航海に名乗りをあげた商人のクリストバル・コロン、一般的にはクリストファー・コロンブスとして知られている人物を支援して大西洋を西に向かわせたんだ。その当時はまだ南北アメリカの存在は知られていなかったから、西回りで直接インドに行けると思ってたんだ。まあ、結論としてはコロンの船団はカリブ海の島に到達しただけでインドまでは行けずじまいだったわけだけど」
──まだアメリカそのものが未発見だったのか。
──コロンブスの名前だけは聞いたことある。
──ほー。勉強になるわー。
──……
「アメリカそのものが未発見だったから、コロンも最初はインドの東の方にある島に到達したと考えていたんだ。それで自分が見つけた島々をヨーロッパから見て西にあるインドの島々ということで【西インド諸島】と名付けたんだ」
──あー、そこに繋がるのか。
──それでアメリカなのに西インド諸島なんだ。
──アメリカ先住民をインディアンとかインディオって呼んでたのはその名残か。
──分かりやすい解説乙。
──西インド会社ってのは?
──……
「西インド会社っていうのはこのゲームでのオリジナル名称みたいだけど、史実ではEast India Company……東インド会社ってのはあったみたいだね。これは本国から遠く離れたインドと東南アジアの植民地における経済活動を総括する権利を国王から勅命で与えられた勅許会社で、本国への納税の義務はあったものの、植民地における総督権とか徴税権とか軍の編成権とか他国の植民地との交戦権とか、とにかく植民地支配のあらゆる権利をほぼフリーハンドで与えられたとんでもない会社だったらしいね」
──すげえな東インド会社。
──ほぼ副王じゃん。
──俺ならその権限でもって独立国にするわ。
──利権の温床。
──本国から遠すぎるからそれぐらいしないといけないか
──……
「ゲームには事前説明ないし、そもそもこのβ版でそこまでいけるかは不明だけど、西インド会社ってタイトルからしてカリブ海における勅許会社を目指すのが最終目標なんじゃないかな?」
マサムネの爆弾発言に一瞬のタイムラグ後にチャット欄が大荒れする。
──ブフォッ!! ちょ、おまw
──うわぁ! マサムネまじぱねぇ!
──運営涙目www
──始める前からいきなりネタバレ乙w
──マサムネはこの技で実況界のエースになったんだ。
──やってくれると信じてた。
──スパチャが投げられないぃー!
──これだから地球古代史の専門ゲーマーは……
──ヘタな専門家よりヲタクの怖さよ。
──それ、正規版のリリースから10年ぐらいして明らかになる情報じゃw
──確実にここチェックしてる運営が焦ってるぞ。
──キタコレ!!
──なーほーね。正規版がリリースされたら最初から勅許会社目指して立ち回るが最適解っと。
──運営ドンマイw
──……
「……というわけで、カリブ海における勅許会社に至ることを目標に経済活動をしてのしあがっていく、というサクセスストーリーが主軸になるんじゃないかな、と思ってるんだ。……じゃあ次は、初期設定とキャラクターメイキングに進んでいくよ。といっても一通り終わってるからステータス公開ってことだけど」
──最初から目標が定まってるのがいいね。
──キャラメイク楽しみぃ!!
──世界観気になる。
──楽しみすぎる。
──いきなりリスナー置いてきぼりでゲーム始めるんじゃなくて、下調べしてちゃんと共通の土台据えてくれるマサムネやっぱ最高!
──さすがマサムネ!! さすムネ!!
──さすムネ♪
──……