大海賊時代より……美少女船長の生・配・信! ─West India Company─ 作:海凪ととかる
「さて、じゃ早速キャラクターメイキングに進むよ。あ、そうそう、前回の天下布武もそうだったけど、この時代って男尊女卑がすごくてさ、女性アバターを選ぶとかなり不利になるんだよね。まあその代わりに初期資金とか身分とかである程度優遇することでバランスが取ってあるんだけどさ。……でも、最初だけバフかけてその後ずっとデバフかかりっぱなしになるから、ぶっちゃけ男性アバターの方が絶対楽なのは間違いないよね。それでも俺は女性アバターを選ぶわけだが!」
──わかってたw
──それでこそマサムネ!!
──女性アバターでバトルオブブリテンと戦国時代を勝ち抜いた奴が言うと重みが違う!!
── 一般人女性でありながら東郷平八郎を顎で使っていた女傑はやはり違う。
──さすが孝烈将軍!
──それでこそさすムネ!!
──やっぱり応援するなら可愛い女の子がいい。
──さすムネ♪ 分かってるねぇ♪
──……
「というわけで、今回用意したアバターはこの子だ!」
直後、マサムネの姿が一瞬で変貌する。
そこにいたのは、健康的に日焼けした小麦色の肌に碧眼でキリリとした表情を浮かべ、癖の強い長い赤髪の十代後半の美少女だった。
頭に革の三角帽を被り、首に絹の白いチーフを巻き、革の防刃ベストを身に着け、紺地に金糸と金ボタンをあしらったジャケットを羽織っている。
帆布の丈夫な膝丈の半ズボンと白いタイツ、大きなバックルの付いた革の靴。
手には装飾の施された前装式のフリントロックピストルを構えている。
「どうだい? これがアタシさ」
女性にしてはやや低めながら力強さや艶っぽさのあるハスキーボイスにチャット欄が沸き立つ。
──マサムネキきたぁぁ!
──ネキ〜♪
──女船乗りスタイルいいね!
──カッコイイ!! 可愛い!!
──推すわ! うわぁぁ〜スパチャできないぃー!
──歴代マサムネキで一番タイプかも。
──俺は先代推しだが嫌いじゃないぜ。
──姐さんって呼びたい。
──ワイルド系美少女。
──ビジュ良っ!
──声も合ってる!!
──はい、最推し決定!
──……
次の瞬間、声と姿がいつものマサムネスタイルに戻る。
「はいはい、事前公開はここまでだよ。メタな話をするこのバーチャルマイルームではこのマサムネスタイルが俺のルールだからね。彼女の活躍は是非ゲームの中で見てほしい」
──おけおけ!!
──ますます高まる期待。スパチャできないぃー!
──くっ……また嫁が増えてしまう。
──ちょ、まだ見足りない。
──マサムネのキャラメイク相変わらずハイセンスだわ。
──歴代マサムネキを一同に並べたい。
──……
「さて、じゃあ初期設定を続けるね。性別の次は年齢と名前だけど、この時代は10代後半で一人前だったから年齢は17歳。名前はマサムネをいじってサム・マネからの、サムを女性っぽくサミエラにして、マネをマネー=お金ということでゴールド。ゴールドそのままだとあけすけ過ぎてやらしーからちょっと崩してゴールディで、サミエラ・ゴールディというキャラ名でいきたいと思います」
──おぉ、いいじゃん。
──十代で一人前とか過酷な時代やな。
──サミエラ姐さん!
──ゴールディの姉貴!
──おけまる!
──愛称はサミィかな。
──うん。外見とも合ってる気がする。
──……
「次は、始まりの町なんだけど、ゲーム開始時の時点では全部で60の港町があるらしくて、それを4つの国、スペイン、イギリス、フランス、オランダで分割統治しているみたいだね。だからどの町を選ぶかで所属国が決まっちゃうんだ。
あと、このゲームそのものがプレイヤーの存在が歴史に及ぼす影響を検証する実験でもあるらしいから、1つの町につきプレイヤーは1人だけという制限があるんだってさ。すべてのサーバーはスタート時はまったく同じ状態でNPCも共通だからプレイヤーがいなければすべてのサーバーは同じ歴史を辿るらしいけど、プレイヤーという異物がどれほどのバタフライ効果を及ぼすかを調べるのがこのβ版の目的の一つらしいね。
そんなわけで1サーバーにつきプレイヤーは上限60人でスタートして、プレイヤーがリタイヤして減っても基本的に補充や統合なしで進めるみたいだね。サーバー数は1000あるってことだから最大6万人までプレイできるってことだね。……あ、ちなみに事前予約でもう人数上限は埋まってるから今は予約を打ち切ってるよ」
──間に合わなかったorz
──β版とはいえ1サーバー60人って少なすぎ。
──わい、998サーバー。ギリギリじゃった。
──申し込んだけど間に合わんかった。
──562サーバー。
──マサムネはどこ?
──……
「おぅ、悲喜こもごもだね。ちなみに俺のサーバーは内緒だけど1~100サーバーのどれかだから見つけてもそっと見守ってくれると助かる。ちなみに1~100は運営が直接声をかけた招待枠と応募者からランダムに選ばれたプレイヤーが入ってるらしいね。俺は運営に招待されたクチだけど」
──マサムネ呼ぶとか見る目あるじゃん。
──マサムネの経済効果はヤバイからな。
──人気実況者から良ゲー認定されたゲームの運営は勝ち組。
──バトルオブブリテンも天下布武も殿堂入りしてるもんな。
──マサムネの実況で予習しつつ正規版のリリース待つわ。
──……
「あ、今、正規版のリリースを待つってコメントあったけど、条件は分からないけど、今回のオープンβで目覚ましい活躍をしたプレイヤーのキャラクターはNPCとして正規版にも実装されるんだってさ。つまり、例えばこれでサミエラが選ばれたら、正規版のプレイヤーはゲーム内でサミエラに会ったり、ライバルとして切磋琢磨したり、なんなら戦ったりもできるってわけ」
──おい、まじか。
──なにそれ、最高じゃん!
──サミエラと一緒にゲームできるの?
──それ絶対楽しいやつ。
──サミエラは是非とも実装してほしいけど、実装されるってことはラスボス確定じゃね?
──サミエラと競うのかー。
──つまりサミエラと仲良くなって口説くこともできると。
──ガタッ!
──……
「選ばれる条件が分からないからその話は取らぬ狸の皮算用だよ。でも選ばれたいよね。
さて、話がちょっと逸れたから戻すけど、60の港町のうち、本国から植民地の全権委託された副王が治める大きな町が全部で4つあって、副王から各方面を任された総督の町が8つあって、残りの48の町は8つの総督の町のどれかに所属しているってことになってる。……で、ここがさっき言ってた、女性アバターへの初期サポートの1つなんだけど、女性アバターを選んだプレイヤーは早い者勝ちだけど4つの副王の町と8つの総督の町のどれかをスタート地点に選べるんだ。そこそこ発展していて治安がいいから女性アバターの安全がある程度確保されてるっていうのがその理由だね。俺はイギリスに所属するプエルトリコ島のサンファンという総督の町からスタートすることになったよ」
──あ、察し。
──このタイプのゲームは殺し有り、レイプ有りとなんでも有りだもんな。
──男尊女卑かつ人種差別と奴隷制も合法だった時代。
──小さい町だと海賊に襲撃されて拐われる可能性も。
──初期サポートあってもやっぱり女性アバターには辛いなー。
──マサムネ茨の道を選んだな……
──……
「そうだね。まあなんとか生き残れるよう頑張るよ。リアリティ重視だから死んだら復活できずにゲームオーバーになるのは当然なんだけど、病気や怪我や部位欠損の後遺症もそのまま残るらしいから、後に引く怪我とかにも気を付けなきゃいけないね。撃たれたり斬られたりしたら普通に痛いし、手足を失ったらその後がかなり大変になるしね」
──マジでリアル。
──味覚も嗅覚も痛覚もあるしセックスもできるし子供もできるからゲーム内にいる限り現実と変わらん。
──食事はするし排泄もする。排泄物や腐乱死体を放置したら病気も発生する。
──リアルではフルダイブ中は生命維持装置に入ってるから食事も排泄も自分の意思ではせんことを考えたら仮想現実の方がリアリティ高いまである。
──ンコの為に情報処理領域使うとか誰得だよ。
──ぶっちゃけタイムスリップと変わらんよな。
──……
「まあこれだけフルダイブ環境のリアリティが上がると現実との境目が曖昧になるよね。こればかりはそれぞれの個人で折り合いをつけるものだと思うね。俺個人としては、さっきタイムスリップってコメントもあったけど、それに近い感覚かな。ゲームの中は一つの現実の世界として受け止めてるよ。古典ジャンルの異世界転移、いやゲーム内転生みたいな感じかな」
──それだっ!
──ゲーム内転生か。なんかしっくりくるな。
──心底納得だわ
──なるほど。マサムネスタイルの根底はこれか
──なるなるっ! マサムネは役になりきってるというより現実として受け止めてるからこのプレイスタイルなんだね
──……