魔法少女あま☆マギカ〜親戚のお兄さんがヴィランじゃなくて魔女を追っかけていた〜 作:紡縁永遠
Side星夜
「どうかしたの?星夜くん」
昼休み、沈んだ顔で機械的に弁当を口に入れる俺を心配したマミさん。まぁ警戒は解いていないが、なぜなら今このときも暁美がこちらを監視している。正確にはキュゥべえをだが。
「親父から逃げる方法はないですか?」
「嫌いなの?」
「嫌いではないです、ただ、苦手ってだけで、」
「そ、そう」
「酒、一斗渡せば満足するかな、」
普段甘酒しか出さないが、俺の個性は酒も作れる、そこが親父の個性とは違うところだ、まぁ親父は親父で色々とぶっ飛んだ運用をしているからあまり基準にはならないんだけどな。
「取り敢えず、今日すぐに帰ってくることはないので大丈夫です、」
「そう………」
「そんなにヤバかったけ?」
「さやかと、まどかは一回会っていたっけな、やばいよ、去年は帰ってくるたびに13回投げられてたから、今年は14回かな、」
魔法少女のゴタゴタが親父のせいで全部吹っ飛んだ。気持ち切り替えないとな。
そうして、放課後、マミさん主催の魔法少女体験コーナーが開始する。
「と言っても、やることは地道に歩いて探すだけなんだけどね」
「うん、この辺に結界はないね、」
「そういうのもわかるのね、」
「まぁ、はい。ただ、最近身体が固定される感覚があるんですよね、まるで時を止められているみたいに………まぁあまり関係ない話ですけどね、魔女の結界とは感覚が別なので」
「便利ね」
「戦えないけどね」
「流石に攻撃が通らないんじゃ無理だ、魔法少女相手は分からん、戦いたくはないが、いずれそういうこともあるんだろうな」
考えすぎというわけじゃないが、暁美とは一戦交える覚悟でいかないと駄目だよな、マミさんとは明らかに別のベクトルで動いているわけだし。
「あ、」
「ん?」
歩いていると俺とマミさんが同時に声を発した。
「近くにあるわ」
「やっぱりか、」
「こらー!二人だけで話を進めるな!」
「さやかちゃん、流石にそれは理不尽だよ」
「ごめんなさい、コレを見て」
マミさんは話についていけていないさやかとまどかにソウルジェムを見せる、淡く発光しているのが確認できた。なるほど、それが結界が近くにあるということを知らせているのか。
「人?」
「え?…あっ!ま、マミさん!」
「任せて!」
即座に変身すると、今にも自殺しそうな人をリボンで助けるマミさん、やっぱり便利だな、物質構築系は…まぁ何も持たない二人の手前、そんなことを言ってられないか………
「魔女の口付けね」
「魔女の口付け?」
「それってなんなんですか?マミさん」
オウム返しに口にしたまどかと、そのまま質問するさやか、こういう純粋なところはまだ利点か、
「魔女が人を誘惑してマイナス感情を増幅してこんな風に絶望させることよ」
「精神干渉系統の力を持っていると」
「基本的にはね、」
目が覚めた会社員を、軽く催眠にかけながら都合のいい情報を渡してその場を離れさせる。
「さてと、手順はこんな感じ。今から魔女の結界に入るから気を引き締めてね」
そう言って入った魔女の結界は、やはりと言うべきか、薔薇が咲いていた。無駄だと思うが竹箒を取り出す。
…さやか、金属バットはあとで、野球部に返してこいよ。
「………まどか、しゃがめ」
竹箒をフルスイングして、使い魔とやらを吹き飛ばす。とは言え体重が軽いから無せる技だ。これが体重の重い使い魔なら竹箒のほうが折れていた。
「さてと、マミさん!」
「かっこ悪いわね!」
「意味がないことがわかっただけ御の字です、斬撃ならまだしも打撃では出血ダメージとかも入りません!」
「魔女に出血はないわよ」
「じゃぁ、無理か………」
結論、個性では魔女とその使い魔にも勝てない。使い魔程度には個性で何とかなると思ったんだけどなぁ仕方ないか…
「本当に戦えないんだ………」
「前にも行っただろ、俺の個性に攻撃能力はない!」
「誇れることじゃないわよ、」
使い魔を倒して一区切りついたので話していた。
「でも、この戦いが終われば温泉に入れますよ」
「それはいいわね、星夜くん、貴方魔法少女専属のサポートしない?絶対儲かるわよ!」
「いや、金を取るのはちょっと………信用問題につながるし………」
「嫌に現実的ね…ここが魔女のプライベート空間、魔女を倒せば結界も消えるわ」
「ふむ、じゃあ魔女ごと、星装神殿・天津甕星」
手を合わせて、星装神殿を展開する。
あれが魔女か、やっぱり女とは形容しがたい出で立ちだな。貞子と言われればそうだとも言いそうなくらいに、俯いて髪のような蔦を垂らしているが、それくらいだ。
「まどか、さやか、神社の中に退避、マミさんを応援するぞ、」
「星夜くんは?」
「いざとなったときに、魔女を結界の外に飛ばす役割、だから外」
「わかった」
本当は、魔女だけ捨てて、逃げたいけど、それをしたら親父にどやされるし、それに、戦えないから、できるだけのことはしたい。
マスケット銃を連射するマミさんの背中を見ながら、タイミングを計る。別にタイミングなんて計る必要はない、入るときと違って、強制退場にラグは存在しないから、それでも、気を張り詰めていないと、何もしていない自分が惨めに感じる。
最後の砦とは言ったけど、見ているだけだし、何より攻撃という最大の援護ができない。結局、魔法少女じゃないと魔女は倒せないのだ。
「ふぅ…終わったわよ」
その声が、どこか遠く感じる。輝いて見えるのに、遠い。やっぱり、魔法少女と俺とじゃぁ全く違うし、何よりこの体験コーナーで俺ができたことは戦いやすくしただけだったのだから。
「はぁ…」
「どうかしの?」
「いえ、全部頼ってしまったなと」
「そうかしら?いつもより戦いやすかったわよ、すぐに魔女の結界から退避できるという、安心感はいつもはないから」
「………ありがとうございます」
いくつかの課題を残しながら、魔法少女体験コーナーは幕を閉じたのだった。