ヤマトよ永遠にREBEL2000〜白銀の迷宮〜   作:ノイ・デウスーラ

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第1話 律者顕現

バラバラバラバラバラバラバラバラバラ!

 

天命のマークが描かれた1機のヘリが、シベリアの上空を飛行していた。そこに、テレサがいた。

 

テレサ(それにしても...。データによると、バビロン実験室には300人以上の研究員がいたはずなのに、一晩で忽然と姿を消してしまうなんて...まさか幽霊?いやいや、そんなはず...)

 

バビロン実験室は、天命の中でも第二位の規模を持つ崩壊エネルギー研究施設だ。バビロンの塔とも呼ばれるこの塔は、世界第三位の出力を持つ崩壊エネルギー反応炉を有している。また、塔内部は最下層から20層目までが崩壊エネルギー反応炉に占められており、その上の階層で3つの部門が研究を行っていた。

特筆すべきは、最先端システム部門だ。ここは崩壊エネルギーと人体の合一について研究を行う部門で、「聖痕」はこの部門で開発された画期的な技術だ。

 

「テレサ様、まもなくバビロン実験室に到着します」

 

テレサ「分かったわ!」

 

窓を見ると、雪山の中に佇む白い塔が見えてきた

 

テレサ(キアナとセシリアのためにも、あたくしが頑張らなくちゃ!)

 

ヘリは、バビロン実験室の手前の開けた場所に着陸した

 

?「ようこそ、テレサ。オットー主教の命で手伝いに来たよ」

 

テレサ「あっ、パトリック!久しぶりね~」

 

パトリック「よっ!」

 

パトリック。本名はパトリック・ハイスミスという。天命情報部所属のA級戦乙女で、雪狼小隊隊員である。崩壊エネルギーが引き起こす超常現象の研究を行っており、その手腕から、「天才」という異名を持つ。腰の部分には金色に輝く天命のトレードマークを着けており、いかにも「天才」と呼ばれるに相応しい雰囲気を醸し出している。

 

テレサ「パトリックが居て安心したわ...。この事件、なんだか怖いというか奇妙というか...。でも、あなたみたいな専門家がいればすぐに解決できそうね」

 

パトリック「いや...。残念ながら、まだ何も。研究区域の監視カメラは稼働しているけど、犯人と思しきものの姿は何も...」

 

パトリックは、状況を話しながらテレサとともにオペレータールームへ向かった。パトリックが機械を操作し、監視カメラの映像を出す。

 

パトリック「カメラの映像には、研究員が消失する様子が残っているけど、周りには誰も居ないんだ...。ただ、このホワイトノイズが気になる」

 

テレサが確認してみると、確かに映像には、ノイズのようなものが見える

 

テレサ「これ...人の形に見えない?まさか本当に幽霊...?」

 

パトリック「いいや、そんなものはこの世界に存在しないよ」

 

パトリックはキーボードを操作しつつ続ける

 

パトリック「この世界にある、神秘だとか怪奇現象なんてものは、大体が崩壊エネルギーによるもの...。たぶん、これも例外ではないだろうね」

 

するとパトリックは、グラフのようなものを表示し、指差した

 

パトリック「これは崩壊エネルギー反応炉のデータログだけど...。ここ。昨晩10時頃、5分間だけ出力がゼロになってるんだ」

 

テレサ「あ、確かに...」

 

パトリック「ここに手がかりがあると思うんだけど...。あいにく、詳細なモニタリングログは暗号化されていて、私の権限でも見れないんだ...」

 

パトリックの言う通り、画面上には、ロックがかかっていることを示す表示が出ている

 

パトリック「そして、反応炉の近くは戦乙女じゃなきゃ近づけない...。ってことで、テレサ。調査に行こう」

 

テレサ「...えっ?今から!?」

 

パトリック「そっ。今から!」

 

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バビロンの塔 反応炉区域

 

パトリック「これは...崩壊エネルギーの残滓?」

 

反応炉にテレサと共に入ったパトリックは、付近の床に、微量の崩壊エネルギー残滓を発見した

 

パトリック「なんでこんなところに...」

 

テレサ「ねえ、パトリック。それって、崩壊エネルギー?」

 

パトリック「そうみたいだね」

 

テレサ「でも、なんでこんなところに、しかも少しだけ...」

 

パトリック「んー...。まあとりあえず、この近辺をスペクトルアナライザーで走査しとくよ」

 

その時...

 

「た、助けて!誰がいるんでしょ!私達を助けて!!!」

 

テレサ「えっ!?ま、まさか...幽霊?!」

 

パトリック「いや、これは...人間の女の子の声だ!」

 

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テレサ「あの声...こっちの方から聞こえてきたけど...」

 

パトリックとテレサは、声のする区画の方へ探しに来ていた

 

テレサ「これ...監獄?どうして研究所の中にこんな...」

 

辺りには、格子で仕切られた監獄のような部屋が多数存在していた。それらの監獄のうちの1つから、手のようなものが見えた

 

テレサ「ゆっ、幽霊!?」

 

パトリック「落ち着いて、テレサ!よく見て!幽霊なんかじゃないよ!」

 

そう言ってパトリックは、その手を掴んだ

 

パトリック「ただの女の子だよ...人間の」

 

「た...たすけて...」

 

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テレサ「ほら、出ておいで」

 

テレサは、監獄の鍵を壊し、中にいた少女たちを外に出した

 

テレサ「もう大丈夫よ」

 

すると、1人の少女が、テレサに頭を下げた

 

「あ、ありがとうございました...」

 

その少女は、頭を下げながら涙を流していた

 

テレサ「お...お礼なんかいいのよ。鍵が無かったからやっただけで、感謝されるために力を使ったわけじゃないし...」

 

パトリック「テレサ。ちょっと...」

 

テレサはパトリックに呼ばれ、少し離れた場所に移動した

 

パトリック「そこの端末のデータを見たんだけど...。どうやら彼女たちは、最先端システム部門の【実験体】らしい」

 

テレサ「実験体!?どうりで...」

 

テレサは、彼女たちの体について疑問に思っていた。顔にうっすら見えた痣のようなもの、所々が赤く染まっている包帯、まだ治りきっていない注射痕のようなもの...

 

パトリック「天命は毎年のように数千人の実験体を「召集」している。ほとんどは孤児で、死んだって誰も気にしない...」

 

テレサ「少なくとも、あたくしが気にするわ」

 

テレサはそう言って、先ほどの女の子の元に戻って行った

 

テレサ「あなたたちはここに隠れて待っていてちょうだい。あたくしが必ず安全なところに送り届けるわ!」

 

パトリックは、テレサの言葉に驚いた

 

パトリック「ちょっと、テレサ!実験体は本部に帰属してるんだ。そんな事をした規約違反になるし、それに...。この子たちは崩壊エネルギーを注入されていて危険な存在なんだ!普通の場所には...」

 

テレサ「聖フレイヤ学園のこと、あなたも知ってるでしょ?」

 

聖フレイヤ学園は、テレサが、戦乙女を育成するために極東の人工島に建設予定の私立学校だ。学園で崩壊エネルギーをコントロールする術を身に付ければ、やがて普通の生活を送れるようになる...。あるいは、パトリックのような優秀な戦乙女になれる可能性もある。

テレサは、そう考えていた。

 

テレサ「だから...。あたくしを信じて、ついて来て!」

 

?「偽善者...」

 

テレサ「...えっ?今、何か聞こえたような...」

 

パトリック「まったく...。テレサには参ったよ...」

 

パトリックは、やれやれという表情を見せていた

 

テレサ「...まっ、これはテレサの任務だし、指揮官もテレサだから...。私はテレサの命令に従うよ」

 

テレサ「パトリック、ありがとう!」

 

テレサは、左手でグッドポーズを作って見せた

 

パトリック「それにしても...」

 

パトリックは、テレサに話していなかったとある事実について、考え込んでいた

 

パトリック「彼女たちが閉じ込められていた牢の扉...。なんでこんなところに、崩壊エネルギーの残滓が...?」

 

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深夜0時 崩壊エネルギー反応炉近傍

 

?「ふう...」

 

つい先ほど、テレサによって監獄から助け出された少女たちの中に、紫色の髪の少女がいた。その少女が、崩壊エネルギー反応炉の近くにいる...。いくら崩壊エネルギーを注入されたとはいえ、戦乙女でもない人間がこんな崩壊エネルギー汚染度の高いところに来れば、たちまち倒れてしまうがオチだが、彼女はそうなっていない。つまり...

 

?「虫ケラを数百匹殺してほとんど力を使い果たしちゃったけど、ここからエネルギーを吸収すれば...」

 

彼女は、反応炉に向けて手を伸ばす

 

?「ああ...。力がみなぎってくる...。いいえ、それどころか...」

 

橙色の彼女の瞳が、さらに色合いを深くしていく

 

?「私は...もっと強くなれる!」

 

パトリック「そこまでだよ、お嬢さん」

 

?「あら...あなたは...。いつ気づいたの?」

 

パトリック「簡単な推理さ。牢と、研究員が消失した場所に残っていた崩壊エネルギーの残滓、そして昨晩の反応炉の異常...。これには因果関係があると考えれば、自ずと答えは見えてくるんだ」

 

パトリックは、腕に武器を嵌め、戦闘態勢を整えていた

 

?「来たのは、あなたは1人だけ?」

 

パトリック「フッ...。1人で十分さ。人が多いと、かえって邪魔になるからね」

 

?「そう...。アハハ!やっと戦乙女に復讐できるのね!」

 

パトリック「復讐...?」

 

?「あの嫌な大人たちが、笑って私にこう言ったの。「私たちがした実験は、戦乙女の聖痕も作るため」だって。「君たちみたいな孤児が、天命と戦乙女のために犠牲になれることを光栄に思うべき」だって!」

 

パトリック「...」

 

?「お前たち...お前たちのせいだ!私は、お前たちのための道具なんかじゃない!証明する...。この私が、お前たちよりもずっと強いことを!!!」

 

パトリック「もう苦しい思いはさせないって言っても、取り合っちゃくれなさそうだね。それなら....。っ!これは...。空間が歪んで?!」

 

調査開始から2日目。A級戦乙女のパトリック・ハイスミスが消息を絶ち、崩壊エネルギー反応炉の近くでは、無残なほどバラバラになった彼女の武器と、彼女自身の血がベッタリと床に残されていた...

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