ヤマトよ永遠にREBEL2000〜白銀の迷宮〜   作:ノイ・デウスーラ

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バビロン実験室でパトリックが対峙した、実験体の少女...第二律者シーリンは、パトリックに重傷を負わせたあと、テレサと対峙した。だが、テレサは亜空の槍を知らず、油断したことで腹部を貫通された。幸い、主教の命で駆け付けていたジークフリートや、天命と一時的に協力関係となったネゲントロピーのヴェルトの助けで一命は取り留めたものの、直ちに復帰することは難しい状態となってしまった。そしてシーリンはヴェルトとも対峙したが、敗れそうになった直前で謎の仮面の男がヴェルトに怪我を負わせたことで命拾いをした。その後彼女は、ドラゴンのような崩壊獣「ベナレス」によって月へと退避することができた。

その月で、彼女は思わぬ収穫をした。月の裏側には、前文明が残した遺跡が存在し、その遺跡によって彼女は、崩壊の神と接触することに成功。雷、風、炎、死の四つの律者コアを手に入れ、これまでよりも強大な力を有すこととなった。そして、彼女は遺跡の残骸から、自らの力をより有効に使う方法を学ぶとともに、瀕死の状態だったベナレスに疑似律者コアを形成し人間のような姿へ変え、シーリン自身のかつての友人だった子の名前「ベラ」と呼ぶことにした。
さらにシーリンは宣戦布告の証として、遺跡の残骸を利用し地球へ隕石を落とし、3000万人以上の死者を出す未曾有の大災害を起こした。その後シーリンはネゲントロピーに対し、第一律者であるヴェルトが月に来るように要求。来なければさらに隕石を落とすと脅しをかけた。

ヴェルトは、シーリンの要求に応じた。というより、応じるほかなかった。むしろ向こうが呼んでくれているのだから、行ったほうが好都合...。ヴェルト自身、そんな考えもあったのだのだろう。無論、無策で行くわけではない。彼は、ある作戦を立てていた。
プランAとプランB。実行されたのは、後者だった。それは、ジークフリートが魂鋼(ナノマシンで構成された特殊な金属)を回収後、ヴェルトが時間を稼ぎ、そのままジークフリートだけがアラハトで脱出するというものだった。隕石を月から地球へ落とすほどの能力を持つ律者を相手に、いくら第一律者とはいえ、ヴェルトの勝ち目が低いということはヴェルト自身、十二分に理解していた。
ヴェルトは疑似的なブラックホールを利用し、相対性理論によって彼とシーリンの時間を1分から1時間に引き延ばすことに成功。その後、ヴェルトは自身の能力を限界まで使用しシーリンと戦ったが、彼女を倒すには至らなかった。そこでとった最後の手段が、コア内部の崩壊エネルギーの極限圧縮。テスラがヴェルトからの願いで渋々行った研究の成果としてもたらされたものだ。上手くいくかに思えたが、シーリンはすんでのところで、ヴェルトの体内から律者コアを抜き出すことに成功してしまった。これにより、シーリンは第一律者の能力さえも得ることとなった。

そしてシーリンは、得た知識を用いて戦艦を創り上げ、ベラや多数の崩壊獣とともに、再び地球へと戻って行った。彼女の復讐は、まだ始まったばかりだった...


第2話 西暦2000年2月12日 ヤマト、シベリアに現る

西暦2207年 時空結節点 近傍宙域

宇宙戦艦ヤマト 中央作戦室

 

中間補給基地ディガブラスを攻略したヤマトは、当初の目的地であるデザリアム本星が存在する1000年後の未来へ行くために、時空結節点を通過しなければならない。そのために最も確実なのは、シャルバート・イスカンダルより新たに開示された、純正波動コアの新機能「スーパーチャージャー」を用いた連続ワープである。

その連続ワープを行うためのブリーフィングが、ここ、中央作戦室で行われていた。

 

真田「ブラックホール外縁を、準光速で公転する時空結節点。これに突入するには、絶えず移動するその位置座標にめがけ、寸分の狂いもなくワープアウトするしかない」

 

山南「光の速さで動き回る籠に、球を投げ入れるようなものだ...」

 

山南の例えは大袈裟ではない。実際、準光速となると、地球と月の間をほぼ1秒程度で移動できることになる。ただでさえ小さな時空結節点が、そんな途方もない速度で動いているとなると、そこへ入るのは困難を極める。亜光速を簡単に出せるヤマトでも、一筋縄ではいかないのは当然だ。

 

山南「ウラリアの現象による出力低下の問題もあれば、そもそも、波動エンジンで突入するのは不可能とも思えるが...。今のヤマトには、スーパーチャージャーがある」

 

真田「量子的に仮想されるエネルギー体を取り込み、ワープなどで消耗した波動エンジンをリセットする。まだ推測の域を出ないが、それがスーパーチャージャーの原理だ」

 

古代「...」

 

真田「一度に形成される仮想体の数は6。これで逐次、誤差を修正しつつワープを繰り返せば...。タイミングが全てだ。全天球レーダー室にサーシャ、ワープレバーは古代二佐に託す...。あのメッセージを聞いて確信が持てた。波動エネルギーは人間の精神活動、エレメントと呼ばれる何かと、密接に響き合っている。」

 

土門「心は波動...」

 

土門が呟く

 

真田「イスカンダルから地球へ送られた純正波動コアと、二つの星の間に生まれたサーシャ。我々の科学では説明できないが、両者には特別な結びつきがある。そのサーシャと深い絆で結ばれているのが...。古代、君だ」

 

真田の説明が終わると、山南が話した

 

山南「2人に、水先案内を託したい。1000年後の未来へ...」

 

その後、ブリーフィングが終わると、艦内はワープ体制に入った。島は、古代の緊張を解すため、航海長席に座る古代の肩をポンと叩いて励ました。そしてサーシャは全天球レーダー室に設けられたオペレーション座席に座り、ヘッドセットを装着した。

ヤマトは加速し、その船体には青い輝きが宿る。

 

サーシャ「...ワープ!」

 

サーシャがタイミングを見計らい、告げる。古代はすぐさまレバーを操作し、ヤマトをワープさせる。ヤマトは異空間へ入り、周囲には6つの量子仮想体が浮かんでいた。

 

サーシャ「...来る」

 

古代「ワープアウト!」

 

古代がレバーを引くと、ヤマトは氷の結晶を纏いつつ通常空間へと姿を現した。しかし...

 

島「早い...」

 

古代「くっ...」

 

ワープアウトのタイミングが僅かに早く、時空結節点はヤマトの遥か上を素通りしてしまった

 

サーシャ「誤差修正!」

 

ヤマトは量子仮想体を1つ取り込み、再びワープを行った

 

サーシャ「...ワープアウト!」

 

今度はワープアウト座標が左にずれ、時空結節点はヤマトの右側を通り過ぎて行った

 

土門「これで二つ...!」

 

2つ目の量子仮想体を使用しワープ。次は右にずれ、時空結節点はヤマトの左側を通過した

 

土門「三つ!」

 

今度は斜めになってしまい、時空結節点は左から右へと去って行った

 

土門「四つ!」

 

次もタイミングが合わず、時空結節点は右の方へ行ってしまった

 

土門「五つ!」

 

やはりタイミングが合わず、時空結節点はヤマトの遥か上方を駆けて行った

 

土門「ラスト!」

 

最後の量子仮想体を使用した。今回は失敗できない

 

サーシャ「次で決める!」

 

古代「くっ...」

 

古代は、レバーをいつでも操作できるように手を置き、サーシャからの指示を待った。前方が、徐々に赤くなり始めた

 

サーシャ「...今!」

 

古代「ワープアウト!」

 

奇跡的にタイミングが合い、ワープ直後にヤマトは時空結節点へと吸い込まれて行った

 

古代「時空結節点に突入!」

 

そこは、青黒い靄が奇妙に蠢く空間だった。そして、前方に薄い光のようなものが見えた

 

古代「光...?出口か!?総員、衝撃に備え!」

 

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古代「何だ...これは...」

 

時空結節点から出た直後。ヤマトは、一面に雪山のようなものが広がる場所に浮かんでいた。近くには、塔のような謎の建造物や、空中に浮かぶ戦艦のようなものも見える

 

土門「ここがデザリアム?未来の地球!?」

 

島「だとしても、こんな雪山みたいなところにいきなり放り出されるなんてこと...。センサーは?」

 

桐生「時空結節点に突入して以降、全てがブラックアウト!」

 

船務長席に座る桐生美影が伝える

 

真田「大気組成と紫外放射は、地球に酷似している。地形もだが...。あの塔のような建造物や空中に浮かんでいる戦艦のようなものは、明らかに人の手で作られた人工物だ。そのうえ、この地球には、遊星爆弾による地形変化の形跡が無い。辺りに広がる雪山も、昔の地球の極東地域に存在していたものとあまり変わりがない」

 

土門「そんな!コスモリバースでも戻せなかったのに!」

 

仁科「大体、デザリアムの地球は骨みたいになってるはずだし、そもそもあそこに見える戦艦、連中が使ってるやつとは全然...」

 

その時、サーシャが叫んだ

 

サーシャ「レーダー復旧しました!映像をパネルに出します!」

 

艦橋のパネルにサーシャが送った映像が映し出され、先ほどの戦艦の細部が見えた

 

古代「っ!?」

 

島「あれって...」

 

桐生「人間の...女の子!?」

 

土門「それに...周りにいる白い怪物みたいものは...」

 

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2000年2月12日 12時5分

バビロン実験室 近傍

少しだけ時間を戻る。ネゲントロピーの部隊はバビロン実験室から撤退していたが、アインシュタインはパトリックを監視に残していた。

 

パトリック「静かなもんだね...」

 

パトリックは第二律者シーリンとの戦闘により右腕を負傷し、切断されていた。そんなパトリックが、空を見上げていた時...

 

パトリック「...ん?」

 

空が赤く染まり、巨大な戦艦のようなものが降下してきていた

 

【緊急警報!緊急警報!】

バビロン実験室の中で、警報が鳴り響く

 

ニグラス「サロメ!何があった!?」

 

ニグラス。本名はシュブ・ニグラスという。経歴不詳で名前も偽名だが、危険な任務を遂行中に死亡認定されても実は生きていて必ず任務を完了するという逸話がある。そのため戦乙女の間では、彼女が分身可能だというおかしな噂が流れ、挙句、【混沌をもたらす者】という称号まで持っている。南米支部の戦乙女で、現在は雪狼小隊に加入している。

 

サロメ「バビロン実験室上空に巨大な戦艦が突如出現したのよ...。十中八九、第二律者の仕業でしょうね」

 

サロメ。本名をサロメ・ヨカナーンという。彼女は幼少期から天才的なダンサーとして知られ、戦乙女になる前は、年中ステージに立ち優雅な踊りを披露していたらしい。12枚の電磁誘導飛刃を用いて舞うように敵を攻撃することから、【梳る者】という称号を持つ。ヨーロッパ支部の戦乙女で、ニグラスと行動をともにするコンビである。二人は雪狼小隊の一員として主教の命のもと、一連の事件の解決のため、大勢の調査員とともにバビロン実験室に派遣されていた。

 

ニグラス「へえ。第二律者が来てんのか?ちょうど退屈してたんだ。アタシらで打って出ようぜ」

 

サロメ「ダメよ」

 

好戦的なニグラスに対し、サロメは冷静に判断を下す

 

サロメ「速やかに撤退準備を!あの戦艦には一万を超える崩壊獣の反応があるわ。それに...」

 

ニグラス「...?」

 

サロメ「レーダーを見るに、その中で特に強力な崩壊エネルギー源のうち片方は、以前の第二律者よりも遥かに強力よ」

 

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シーリンとベラは、多数の崩壊獣とともに戦艦に乗り、バビロン実験室付近まで来ていた

 

シーリン「ベラ。下にいる虫ケラたちを掃除してきなさい」

 

ベラ「畏まりました。女王様」

 

ベラはシーリンの命令で、バビロン実験室の周辺と内部にいる【虫ケラ】を一掃すため、戦艦から降り、降下していった

 

15分後。バビロン実験室G2格納庫

 

サロメ「いい?ほとんどの車両が非武装よ。ここから出たら、私たちは付近の崩壊獣を車両の上から殲滅。あくまでも、私たちの目標は撤退。忘れないでよ」

 

ニグラス「分かってるって」

 

サロメはニグラスに言った。確かにここにある車両はごく一部を除いて非武装だ。装甲があるとはいえ、崩壊獣相手では、破られるのは時間の問題だろう。

 

サロメ「車両の護衛が最優先。殲滅に気を取られすぎないように...」

 

「サロメ様!た、大変です!格納庫出口に崩壊獣が押し寄せています!」

 

サロメ「なっ?!」

 

「我々は...我々は閉じ込められています!」

 

同時刻。G2格納庫3番出口

出口の前には大量の崩壊獣が待ち構え、攻撃の機会をうかがっていた。

 

サロメ「隔壁を開けて!各車、最高速度で撤退開始!落伍車は無視なさい!一台でも多く離脱して!」

 

パトリック「サロメ、二グラス...。あんたら2人と来たら、薄情だねえ...」

 

サロメと二グラスは...いや、そもそも天命は、パトリックがネゲントロピーのスパイだということは夢にも思っていなかった。無論、パトリック自身は雪狼小隊のメンバーのことを今までも大事に思ってはいるのだが、罪悪感からか、シーリンとの戦闘で負傷した後も、雪狼小隊の前には姿を現さないでいた

 

パトリック「でも...。私が裏切ってたって知ったら、きっと...。え?」

 

突然、空が少し歪んだような気がした。そして...

 

パトリック「あれは...」

 

パトリックは、上空に現れた【それ】を凝視した。

 

ズシャ...

 

パトリック「っ!」

 

微かな物音に気付いたパトリックは我に返り、慌てて避けた。間一髪、崩壊獣の槍が、パトリックが先ほどまでいた場所に突き刺さった

 

パトリック「ひとまず、どこか安全な場所に...」

 

痛む傷口をおさえつつ、パトリックは、隠れることができそうな場所を探して走り始めた。上空の【それ】は、出現場所からほとんど動かず静止していた。

 

パトリック(彼女がまた作ったの?...いや、形状が違いすぎる...。何なんだ、アレは...)

 

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ベラ「こ...これは...」

 

ベラは驚愕した。突然、近くの空間が微かに歪んだかと思うと、次の瞬間、戦艦のような巨大な物体が出現したのだ。

 

ベラ「女王様がお作りになられたものとは見た目が違いすぎる...。しかもこんな急に...」

 

よく観察してみると、その戦艦には三連装砲塔のようなものが見えるほか、艦首には巨大な穴、中央部にはブリッジと思わしきものがあり、艦首や側面には錨のようなマークが施されている

 

ベラ(ですが...。こんなものをすぐに出現させることができるのは女王様だけ...。人類には到底出来ないはず。念のため、女王様に確認を...)

 

ベラは、事の真偽を確かめるため、シーリンがいる戦艦に戻って行った

 

ベラ「女王様!あの戦艦は...。あの、女王様?」

 

シーリン「...えっ?あ、ベラ?もう終わったの?」

 

シーリンは、傍から見ても明らかに呆けた表情をしていた

 

ベラ「いえ、まだですが...。あの戦艦は、女王様がお作りになられたと理解してよろしいのでしょうか?」

 

シーリン「私にも分からないわ...」

 

ベラ「えっ!?」

 

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二グラス「何なんだありゃ?!」

 

サロメ「少なくとも、第二律者が作ったものではないはず。形が違いすぎるのよ」

 

二グラスとサロメも、上空に突如現れた正体不明の【それ】に困惑していた。崩壊獣たちも驚いているのか、先ほどから動きが少し鈍っているように見え、この調子でいけば少ない損害で撤退出来そうだった

 

二グラス「ってことは、天命本部かネゲントロピーの?」

 

しかし、サロメは首を振った

 

サロメ「そもそも今の人類の技術だと、何も無かった場所にいきなり巨大な戦艦を一瞬で出現させるなんて芸当は...」

 

二グラス「じゃあ、何だってんだ?前文明の戦艦とかか?」

 

サロメ「それは...ん?」

 

サロメは周囲を警戒しつつ小型の双眼鏡で【それ】を見てみた。すると、船体の側面に錨のようなマークがあるのが見てとれた

 

サロメ(少なくとも、人類が作った戦艦に間違いなさそうね。錨のマークが付いてる...)

 

二グラス「つーか、さっきからあの戦艦、ほとんど動いてねーじゃんか。ほんとに戦艦なのか?ハリボテだったりしてな!...あっ、おっと危ね!」

 

ガギイイン!

グアアア!

 

二グラスは、車両に取りつこうとした崩壊獣を槍で突いて蹴落とした

 

サロメ「とりあえず、私たちは撤退に集中しましょう。各車、最高速度を維持!全速前進!」

 

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ベラ「ということは、あれは人類の?」

 

シーリン「私が作ったものでない以上、そういうことになるわね」

 

シーリンは、あまりの突然な出来事に先ほどまではやや混乱していたが、しばらく考え込んでいるうちに冷静さを取り戻し、突然出現した【それ】が、おそらく人類が建造した戦艦だろうという結論に達した。無論、どうやってこんなところにいきなり出現させることが出来たのかは分からないが...

 

シーリン「錨みたいな印が付いているから、あれは人類が作った戦艦のはず...」

 

ベラ「しかし、なぜ攻撃して来ないのでしょうか?」

 

シーリン「それも考えてみたけど、攻撃出来ない理由が何かあるんじゃないかしら?」

 

ベラ「攻撃出来ない...。ということは、反撃も...」

 

シーリンは小さく頷き、ベラに命令した

 

シーリン「こっちから攻撃するなら、今がチャンス。ベラ、あれを破壊なさい」

 

ベラ「畏まりました、女王様」

 

ベラはシーリンの命を受け、自らの権能を用いて巨大なエネルギー体を形成した

 

ベラ「...」

 

ベラの脳裏には、あの戦艦が真っ二つに折れて地面に墜落していく光景が浮かんでいた。そして...

 

ベラ「...沈みなさい」

 

ベラがそう言うと同時に、エネルギー体からレーザーのようなものが発射され、あの戦艦に向かっていった。確実に仕留められるよう、威力を最大まで上げた状態での発射だ。あの程度の戦艦なら、一撃で粉砕出来る...。ベラは、そう考えていた。

 

ドゴーン!!!

 

レーザーが命中した瞬間、辺りが爆煙に包まれた

 

ベラ「フンッ...。造作もない...」

 

しかし、爆煙が晴れると、そこには信じられない光景が広がっていた

 

ベラ「...っ!?どういうことです?!!」

 

レーザーは確かに命中した。それも、船体側面の中央部にしっかりと命中した。だが、あの戦艦は未だに空中に浮かんだままだった。しかも...

 

ベラ「なぜ...。あの程度の損傷で済むのです!?」

 

命中したはずの部分をよく見ると、装甲は貫通しておらず、大したダメージは入っていない様だった

 

ベラ「くっ...」

 

ベラが次の手を考えていた、その時。

 

ヒュルヒュルヒュルルル...

 

ベラ「...?」

 

突然、それまで微動だにしないしていなかったあの戦艦の後方下部のノズルのような部分にフレアが灯り、船体が加速し移動し始めた。

 

ベラ「待ちなさい!」

 

ベラは再びエネルギー体を形成しつつ、戦艦を追った

 

ベラ(やはり、あの戦艦は攻撃も反撃もしてこない...。しかし、なぜあれ程の耐久力を...)

 

その時、シーリンもベラの後を追い、叫んだ

 

シーリン「ベラ!ここは私に任せなさい!!!」

 

ベラ「女王様!?」

 

シーリン「あなたは下の虫ケラを掃除なさい!」

 

ベラ「しかし...」

 

シーリン「私の言う通りにしなさい!」

 

ベラ「はっ!」

 

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ニグラス「嘘だろ!?あの戦艦、律者みたいな奴が撃ったレーザーを装甲だけで防いだぞ!?」

 

サロメ「...」

 

ニグラスとサロメが驚くのも無理はない。あれだけの威力のレーザーが直撃しても平気でいる戦艦など、見たことも聞いたことも無かった。その戦艦は今、彼女たちの図上を高速で飛び去り、エンジンノズルと思われる箇所からの噴射で雪が舞っていた

 

サロメ(やはり、あれは前文明によって造られた戦艦...?)

 

サロメが考えていると、先ほどあの戦艦にレーザーをお見舞いした律者のような存在が、こちらへ接近して来る。上部に形成されたエネルギー体は、今にもレーザーが発射されそうに見えた

 

サロメ「あんなものがこっちに直撃されたら...!」

 

サロメは車両から飛び上がり、渾身の力でシールドを展開した

 

ベラ「...」

 

ギュオオンッ!

 

発射されたレーザーは、サロメが展開したシールドに阻まれ、貫通直前で消滅した

 

ベラ「くっ...。先ほどの攻撃のせいで....」

 

どうやら、あの戦艦に対して最大威力の攻撃を仕掛けたことで、今回発射したレーザーの威力が若干低下している様だった...

 

サロメ「うまく...いったわね...」

 

サロメは、丁度真下を走っていた車両の上に、どうにか降りることが出来た

 

サロメ「ぐっ...ゲホッ!」

 

サロメが咳込んだ瞬間、彼女の口から鮮血が飛び散った。どうやら、内臓を損傷してしまったらしい

 

「サロメ様!!!」

 

サロメ「私のことは...ゲホッ!いいから...撤退を優先して...」

 

「は...はい!!!」

 

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ニグラス「サロメのやつ...。無茶しやがる...」

 

ニグラスは、例の律者のような存在の接近には気付いていたが、動こうとした時には、サロメに先を越されてしまっていた

 

ニグラス(威力が少し低かったのは、あの戦艦のおかげかもな...。まあとにかく、帰還できたらすぐにサロメを医療センターに...ん?)

 

前方に見える木々の中の一本。そこで、何かが動いたような気がした

 

ニグラス(崩壊獣...?いや、まさか...)

 

ニグラスは前方を走る車両に1両ずつ飛び移り、最前列の車両までやって来ると、目的の木の横を通過するタイミングで飛び降りた

 

ニグラス「おい!誰かいr...って、パトリック!?それに、その腕は...」

 

パトリック「ニグラス...」

 

木の陰に隠れていたのは、なんとパトリックだった

 

ニグラス「何やってるんだ、早く行くぞ!」

 

パトリック「えっ?ちょ、ちょっと!」

 

ニグラスはパトリックの左腕を強引に引っ張り、なんとか最後尾の車両に無理やり乗せることが出来た

 

 

天命から派遣された雪狼小隊のサロメ・ヨカナーンおよびシュブ・ニグラスは、バビロン実験室に派遣されていた人員を伴って撤退を試みた。結果、サロメ・ヨカナーンが骨折や内臓損傷の重傷を負ったものの、命に別条は無く、落伍車も極小数に留まった。

なお、撤退中にシュブ・ニグラスがパトリック・ハイスミスを発見。共に撤退することに成功した。

 

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宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋

 

サーシャ「Unknownが接近!先ほどのものとは別個体です!」

 

島「何がどうなってるんだ一体!」

 

ヤマトの艦内は緊張に包まれていた。空中に浮かぶ戦艦のようなものと、その戦艦に乗っている少女...。そこまでなら、まだ良かった。しかし、生命反応のあったその少女たちの体内に高エネルギー源が存在し、あまつさえ、空中を自在に移動してレーザーまで撃ち込んでくるなど、誰が予想できようか。幸い、装甲は貫通されず大事には至らなかったものの、地球の物理法則では絶対に有り得ないことが起きていた。

そして今、ヤマトは彼女たちに追跡されている。先ほどヤマトを攻撃した少女は、なぜかヤマトの追跡をやめた様だった。

 

土門「警告も無かったのに、いきなり...」

 

土門は、パネルに映る紫色の髪の少女を見つめて呟いた

 

古代「島!距離を取って一気に上昇しろ!」

 

島「こう張り付かれちゃあ...」

 

山南の命令で、ヤマトは一切の反撃をしていない。それもそのはず。こんなわけの分からない場所に来て、わけの分からない相手に下手に反撃すれば、どんな事態を招くか分かったものではない。

更なる加速を島が渋るのも、あの少女が補助エンジンの噴射をまともに受けて刺激されるのを防ぐためだった。そのため、距離を離すには少し時間がかかりそうだった。

 

サーシャ「Unknownから超高密度の気体が発生!」

 

桐生「高密度の気体!?」

 

その瞬間、パネルに映る少女から緑色の楕円状の物体が打ち出され、直後、ヤマトの船体が揺さぶられて衝撃が走った

 

山南「副長!損傷報告!」

 

真田「損傷は軽微です!今の攻撃は、気体を何らかの方法で凝縮し、破壊力を持たせたのではないかと」

 

林「そ..それって、一種のカマイタチ!?」

 

真田の説明に、林が驚く

 

サーシャ「Unknownから超高温のエネルギーが発生!本艦に向かって来ます!!!」

 

島「くっ...」

 

島は操縦桿を倒しつつスラスターを焚き、間一髪のところで回避した

 

仁科「ったく、どんだけ攻撃手段があるんだよ!」

 

仁科がボヤいていた、その時

 

島「これぐらい離れていれば...」

 

島がパネルを見ると、少女とヤマトの間には既に一定の距離が出来ており、この程度であれば、補助エンジンを最大にしても影響は少なそうだった

 

サーシャ「Unknownとの相対距離、230!」

 

古代「島!」

 

古代は、サーシャの報告を聞くやいなや、島に声をかけた

 

島「補助エンジン、最大戦速!」

 

島が補助エンジンの出力を最大にしたことで、ヤマトと少女との間には、相当な距離がうまれた。島はさらに、ヤマトの艦首下部のスラスターを噴かして船体を上方へ傾け、そして...

 

島「波動エンジン、点火!」

 

キュルキュルキュルキュルキュル...ドゴオオオォォーーー!!!

 

島「ヨーソロー!!!」

 

ヤマトは波動エンジンに点火し、後部ノズルから巨大なフレアを発生させた。フレアの噴射によって周囲には大量の雪が舞い、まるで白いカーテンがはためいている様な光景だった。そしてヤマトは、謎の少女を置き去りにし、大気圏外へと急速離脱して行った...

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