ヤマトよ永遠にREBEL2000〜白銀の迷宮〜   作:ノイ・デウスーラ

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第3話 混沌

「...シーリン...シーリン!」

 

シーリン「ママ!」

 

「待ってよ、シーリン~」

 

シーリン「あはは~!」

 

「...」

 

シーリン「...?」

 

「...痛い...」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ベラ「痛い!」

 

シーリン「...我慢して、ベラ...」

 

「はあ...。コイツも、もうだめだな。使い物にならんだろう...」

 

シーリン「やめて!連れて行かないで!ベラ!ベラ!!!」

 

ベラ「シー...リン...」

 

シーリン「やめて...」

 

シーリン(...力が...。私に力があれば...!)

 

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2000年2月12日 14時30分

バビロン実験室付近

 

シーリン(あの時の願い通り、私は力を手に入れた。ママが教えてくれたおとぎ話の通りだった。祈れば、神様が助けてくれるって...!)

 

シーリンは、バビロン実験室の近くまで戻って来ていた。例の戦艦は、シーリンでも追いつけないほどの急加速で大気圏外まで逃げてしまった。何かしらの武装はあったはずだが、反撃さえ一切しないどころかひたすら逃げるような臆病な相手に怯えている時間がもったいない...。シーリンは、そう思っていた

 

シーリン「アヴローラ、アガタ...。みんな、ただいま」

 

シーリンは、かつての友だちの遺灰が埋まっている場所に来た。そこには、3本の木の枝が雪に刺さっていた。

シーリンよりも崩壊エネルギー耐性がやや低かった彼女たちは、実験で次々に弱り、そして死んでいった...

彼女たちの体は研究員たちによって焼却処理され、残った遺灰や骨などを、研究員たちは「ごみ」と呼び、シーリンに捨てさせた。なぜこんなことをしなければならないのか...。シーリンは、涙を溢しながら彼女たちの遺灰や骨が入った袋を丁寧に雪の中に埋め、その上に、墓標代わりの小さな木の枝を刺したことを憶えている。

しかし、そんな苦痛に満ちた日々も、もう終わりだ。

いや、むしろ...

 

シーリン「昔は、あの虫ケラ共に散々苦しめられたけど、今度は私たちが苦痛を与えてやる番よ」

 

そしてシーリンは、律者コアの欠片のようなものを取り出した

 

シーリン「私と一緒に、復讐を楽しみましょ」

 

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数時間後 月の裏側

宇宙戦艦ヤマト 中央作戦室

 

真田「まずこれが、正体不明の少女2人がそれぞれ攻撃を行った時の画像だ。青いレーザーのようなものやカマイタチのようなもの、更には火焔のようなものまで...。非常に多彩だ。その上、彼女たちの体内には、これも原理不明の高エネルギー源が存在していた。これらのことから考えて、ヤマトに攻撃を行った彼女たちは、普通の人間ではない」

 

土門「人間じゃないなら、一体...」

 

真田「ひとまず彼女たちについては、現時点で得られている観測データを元に、調査を進めていく必要がある」

 

ヤマトは、地球と思われる星に出現後、正体不明の少女から全力で逃げ、月の裏側まで来ていた。船体への損傷については予想通り、非常に軽微で済んでおり、念のため甲板部が台船を使って点検してみたものの、大がかりな修理は必要無さそうだった。

ただ、万一ということもあるため、補修だけは行っていた。

問題は別にあった。ヤマトが遭遇した、あの謎の少女たちだ。生命反応こそ観測されたが、同時に、人間であれば到底保持出来ないレベルの高エネルギー源が体内に存在し、それを利用したと思われる攻撃を仕掛けていた。

そもそも、あの星がデザリアム本星でないことは明らかだが、かといって地球だとすると、一連の現象は地球の常識では考えられないことだ

 

真田「周辺の星の配置や、この星の地形などを勘案すると、地球である可能性は極めて高いが...」

 

山南「このような超常現象は、地球の記録には全く存在しない...」

 

真田「その通りです」

 

揚羽「要するに、時空結節点を抜けてみたら、「異世界へようこそ」ってわけか...」

 

真田「サーシャの件で分かっているように、時空結節点は、必ずしも安定していない。波動エンジンを用いて突入したことにより発生した一種のゆがみに、ヤマトが巻き込まれてしまった可能性はある。もっとも、時空結節点の性質上、過去でも未来でもない全く別の世界に迷い込んでしまう可能性は、天文学的な確率だと考えられるが...」

 

まるで漫画のような状況に、ほとんどのクルーは、床のパネルに映された少女の姿を見ながら、黙り込んでしまう

 

真田「...ただ、懸案事項はそれだけではない。桐生くん」

 

桐生「はい!」

 

真田に呼ばれた桐生は手元の端末を操作し、パネルに新たな映像を出す

 

[お伝えしていますように、先日、月から飛来した隕石群による死傷者はこれまでに2000万人近くに達していますが、国連からの意思表明は未だにありません。西太平洋沿岸の都市では、隕石の落下により過去例を見ない巨大津波が発生し...]

 

[こちらは、モスクワ付近の映像です。ご覧いただいている様に、モスクワ付近に落下した隕石により都市の31%が...]

 

島「これは...」

 

桐生「地球のような星...。便宜的に、「この世界の地球」と呼称しますが、大気圏内で飛び交っていた通信を船務科と技術科で解析して、受送信を可能にしました。ただ、受信してみたところ、大規模な隕石落下の被害が大きく報じられていました。実際に、極東や北米をはじめとする各地域において、都市の激しい損壊や津波による浸水などが発生していることを観測しました」

 

桐生の言葉通り、パネルには、メチャクチャに破壊された都市や津波で広範囲が浸水している都市の様子が映し出されていた

 

土門「隕石って、まさか遊星爆弾!?」

 

真田「いや...。一見すると遊星爆弾とも考えられるが、「月から飛来した」という点が、どのニュースメディアでも強調されている。もし本当に月から飛来したものなら、そこから遠く離れた冥王星付近に存在する岩石にビームを撃ち込んで射出する仕組みの遊星爆弾とは、全くの別物と考えるのが妥当だ」

 

山南「しかし、真田副長。少なくとも我々の地球の常識で考えると、月から隕石が降ってくることなど、そうそうあることではないが...」

 

山南が言うと、真田は頷く

 

真田「はい。ですので、この「月から飛来した隕石」というものは、この世界特有の超自然現象か、あるいは、何らかの形で第三者が関与した結果引き起こされたのではないかと...」

 

サーシャ「それなら、この月の人工物と、何か関係があるんじゃないですか?」

 

サーシャの言う「人工物」とは、この世界の月に点在している遺跡のようなものだ。大部分が損傷していることから、造られてからかなりの年月が経過していると考えられたが、特に月の裏側の部分には、これまた正体不明のエネルギーが広範囲に渡って存在していることが確認された。

このため、エネルギーの影響が及んでいないと思われる部分について、3時間後に調査隊を編成し調査を行う予定となっている

 

古代「俺も同感です。それに、あの機動兵器のようなものも気になる」

 

サーシャに続けて古代が話す。実は、ヤマトが月に来る途中、地球に向けて宇宙空間を航行する機体がレーダーに捉えられていたのだ

 

真田「2人の意見は最もだ。私も、この月に存在している遺跡のようなものと、裏側の大部分に広がっている謎のエネルギーが気になっている。そして、古代二佐の言った正体不明の機体。こちらも、何らかの因果関係が存在する可能性が考えられる」

 

山南「遺跡については、3時間後に調査を行う。この調査だが、構成員は...」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

山南が調査隊の編成について話している時、ヤマトの船外では、船外服を着用し台船に乗った甲板部が、最終点検を行っていた

 

榎本「...よしっ。ここも問題無いな。あとは...」

 

宮澤「...ん?甲板長!」

 

榎本「どうした?」

 

榎本の近くで点検をしていた宮澤が、榎本を呼ぶ

 

宮澤「これ...何でしょうか?」

 

宮澤が指を差した船体部分には、紫色の[何か]が僅かに付着していた

 

榎本「...何だこりゃ?」

 

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同時刻

アメリカ イエローストーン ネゲントロピー基地

 

テスラ「なんでこんなに不鮮明なワケ?」

 

アインシュタイン「パトリックから送られてきたメールによると、撮影時に原因不明の動作不良が発生して、何度やってもうまく撮ることが出来なかったらしい」

 

テスラとアインシュタインは、ジークフリートとヴェルトの帰還を待っている間、数時間前にパトリックが送ってきた画像を見ていた(ヴェルトの肉体が消滅しているという事実は、彼女たちはまだ知らない)。どうやら、バビロン実験室上空に突然、謎の巨大戦艦が出現し、律者レベルの攻撃を平気で耐えたのち、加速してどこかに行ってしまったという。画像に映っているのはその戦艦だが、画像内にはノイズが非常に多く、とても見れたものではなかった

 

テスラ「まあ、たまたま撮影機能が壊れていただけかもしれないわね。でも、攻撃を耐えたって、どういうこと?」

 

テスラが疑問に思うのは当然だ。第二律者が従えていたものは、律者と崩壊獣の中間的な存在の様だが、それでも、その攻撃にはかなりの威力があるはずだ。にも関わらず、謎の戦艦は、その攻撃を受けても至って平気で、反撃もせず逃げたという。仮に天命が作った戦艦だとしても、あまりに常軌を逸した防御力であり行動だった。

 

アインシュタイン「僕たちの技術でも、ある場所に突然出現させて、そのうえ律者に匹敵するような攻撃に余裕で耐えられるような戦艦は作れない。天命も同じだろうね」

 

テスラ「っていうことは...。まさか前文明!?」

 

詳細は不明なものの、非常に高い技術力を有していたとされる前文明ならば、このような戦艦を建造できても不思議ではなかった

 

アインシュタイン「その可能性も考えられる」

 

テスラ「はあ...。まったく、次から次へと...。こんな巨大な代物が、どうやってシベリアの空に...」

 

テスラは、あまりにも事態がカオスを極めているため、思わず溜息をついていた

 

テスラ「それで、確かレーダーにも映ってたんでしょ?その、巨大な戦艦とやらが」

 

アインシュタイン「こちらのレーダーにね。おそらくこの戦艦と思われる物体が、大気圏外を脱して月の方角へ行っていた」

 

テスラ「つ...月の方に!?」

 

アインシュタイン「ああ」

 

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3時間後

宇宙戦艦ヤマト 高圧対応格納庫

 

遺跡の調査隊の構成員に選ばれたのは、土門、市川、桐生、山本。調査を行うための機体は、キ8型を使用することとなった。

コクピットには山本、その横に土門、後ろに市川と桐生が、それぞれ宇宙服を着用し乗っていた。そして中央には、調査の補助としてアナライザーが積み込まれていた

 

桐生(これに乗るのは久しぶりだなあ...)

 

ここにいる四人の中で、過去にキ8型に乗ったことがあるのは、桐生だけだった

 

桐生(あの時は、あれがまさかアケーリアスの宇宙船だったなんて思いもしなかったけど)

 

桐生が少し物思いにふけていると、機体のキャノピーが閉まり、格納庫の扉が開く

 

「コウノトリ、クリアフォー、テイクオフ」

 

機内に管制官の声が響く

 

山本「こちら山本。コウノトリ、クリアフォー、テイクオフ!」

 

クレーンが機体を掴み、真っ直ぐ下へと下ろしていく。そして接続が解除された直後、山本がバーニアを操作し機体を完全に船外へと出すと、メインエンジンに点火し、月面へ向かって行く

 

山本「着陸体制に入ります」

 

山本は、指定の座標に向けてキ8型を降下させつつ、機体下部の陸上走行用タイヤを展開する。

やがて、軽い振動とともに、キ8型は月面に着陸した。この周辺は例のエネルギーの影響下にはないため、比較的安全と思われた。実際に、キ8型の観測装置でも、今のところ特に異常は出ていない

 

市川「こちら市川。これより調査を開始します」

 

西条「了解です。気をつけてください」

 

通信員の市川が無線機を使ってヤマトに調査開始の通信を送り、西条が応える

 

一方、山本はレバーを操作して後翼を格納しつつ、機体を走行させる。

キ8型が装備しているタイヤは六輪の可変式であり、悪路も難なく走行することが可能な設計になっている。この調査でキ8型が抜擢されたのも、この特殊設計の走行性能が買われてのことだ。

(元々はイズモ計画のための惑星探査目的で極秘裏に開発された機体であるため、他の航宙機とは一線を画す性能を持つのは、ある意味で当然と言えば当然なのだが)

 

しばらく走行していると、遺跡の残骸が見えてきた

 

土門「あれが遺跡...」

 

大小さまざまな残骸が点在する中を、キ8型は走り抜けていく。やがて、少し大きな遺跡が目前に迫ってきた

 

山本「ここで停めます」

 

山本はキ8型を停め、キャノピーを開けた

 

桐生「アナライザー。あなたは、私達の連絡があるまで待機。離陸準備を整えておいて」

 

アナライザー「リョーカイ」

 

桐生「私は、これとこれを持ってと...」

 

桐生は専用の調査機材を持ち、機体から降りた。市川は通信機、山本と土門はコスモガン以外に機関短銃も携帯し降機した。

四人は遺跡の内部へと入っていった

 

山本「これは...文字?」

 

さっそく、山本が何かを発見した様だった。桐生は山本のところへ行った。壁には、奇妙な文字のようなものが幾つも刻まれている

 

桐生「うーん...。見たことのない文字です」

 

桐生はヤマトクルーの中でもかなり言語学に長けているほうだったが、それでも、この文字は桐生が今まで見たことの無いものだった

 

山本「桐生さんでも?」

 

桐生「はい。まあ、異世界だからっていうのもあるんでしょうけど...」

 

土門「桐生さん!こっちに!」

 

桐生「えっ?土門くん、何かあった!?」

 

3人は、土門の声がする方へ行った。すると..

 

市川「紫色の...発光体?」

 

山本「どうして、こんなおかしなものが遺跡に...」

 

桐生「あっ、触らないで!」

 

桐生は慌てて調査機材の中から、何重にも密閉可能な特殊容器を取り出し、遺跡内部の壁のごく一部に付着している「それ」を、容器に付属の採取器で少しだけ採取し容器に入れ、厳重に密閉した

 

桐生「ちょっと綺麗だけど、なんか禍々しいような...」

 

壁には、紫色で僅かに輝く謎の物体がこびりついていた...

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