うほw
あなたにとって、英雄とは。
「え、それ俺に聞くの?」
あなただからですよ。
「そうだね〜強いことは前提条件だよなぁ」
他には?
「神に対して遠慮とかないのね…まあいいけど。で、そうだな。あとは正義の味方であることじゃないか?下界の民は好きだろ、そういうの」
おや、含みのある言い方ですね。あなたは嫌いなのですか?
「いや?俺だって大好きだぜ、正義の味方。でも同じくらい、悪い子も好きなんだよな。ほら、手のかかる子ほど可愛いってやつ?」
では、目の前に絶対の正義を掲げる者がいたのなら、あなたはどうしますか?
「そりゃあ問尋ねるさ。俺たちすら持ち得ない絶対正義を、どうやって見つけたんだ、って」
では彼の英雄にも、尋ねるのですか?
「いやあ、どうだろうな?確かにあの子は強いかもしれんが、正義の味方とは言えないんじゃないか?」
ほう。正義の使徒でありながら、彼は正義の味方ではないと。あなたはそうおっしゃるのですか。
「白鳥の群れに混ざろうが烏は烏さ。確かに彼の行いは正義と言われるそれだが、世の中何も行いの結果だけで評価されるわけじゃない。よく言うだろ?大切なのは気持ちだって」
つまり、あなたは彼の義侠心を疑っているというわけですか。
「実際彼って異常だぜ?民衆に向ける笑顔のまま闇派閥を殺してる姿なんて、夢に出てくるかと思ったよ」
ふむ。私は直接相対したことがないのですが、彼はそれほどの人物なのですか?
「ああ、お前じゃ勝てないな。オリヴァスなんて相手にならない。ヴァレッタですら、正直危うい」
ほう!それはそれは!まさしく英雄と呼ぶにふさわしい力ではありませんか!
「恐ろしいだろ?そんな存在が、理由も分からないまま手を貸してる状況が今のオラリオだぜ?民衆は彼を持て囃してるが、今の状況は彼という怪物が見せる気まぐれで成り立っているのかもしれない。連中はそんなことすら考えつかない。隙だらけにも程がある」
成る程成程。確かにそれは、絶好の状況なのでしょうね。逆境は逆転の布石。昔の学者も、えらい言葉を生んだものです。
「悪巧みか?楽しそうにするじゃないか」
ええ、楽しみです。誰もが認める英雄。オラリオの抵抗、その象徴。そんな彼が、こちら側に堕ちたのならば。一体どうなってしまうのでしょうね?
闇が偏在する都市、オラリオ。
誰も知らないどこかの淵で、悪意と神意がぬらりと嗤った。
■■■■■
「やあ!みんな!元気にしていたか!」
「あーっ!!レオナードさま!」
「えっ!まじで!レオナードにいちゃんだ!」
「きゃっ!ちょっと、おさないでよー!」
孤児院に挨拶へ行くと、子どもたちが雪崩のように飛び込んできた。オラリオの都市は平和と言えない状況ではあるが、年が年だけに元気が有り余って仕方ないのだろう。腹に響く鈍痛を笑顔でこらえつつ、そのように考える。
「こらこら、みんな、喧嘩はしないようにな?」
「はーい!!」
「うん!元気でよろしい!」
「レオナードったら、相変わらず子供に人気なのね!」
背後からかけられる、明朗快活な声。
「おお!アリーゼじゃないか!みんな!アリーゼお姉さんも来てくれたぞ!喜ぶといい!」
「「「アリーゼねえちゃんは…べつにいいや。」」」
「なんでだ!?」
急速に白けた子供たちの反応に、俺は思わず狼狽える。
「ふふふ、私ったらなんて罪な女なの!年端もいかない子供たちが畏まるほどに魅了しちゃうなんて!」
しかし当の本人は全くこらえていないどころか、何やら都合がいいように解釈している。
そういうんじゃない、と子供たちの目が物語る。
ああ、成程。その視線で納得した。
アリーゼという少女には、やや自信過剰と言えるなようところがあった。
そしてその多大な自信を、臆面もなくさらけ出す豪胆さを持ち合わせていた。
俺はそれを紛れもない美徳の一つだと考えているが、それでも時たま団員や周囲の青筋を立たせていることは否定できない。
辛抱弱い子供が相手ならば尚更だろう。
つまりはそういうことだ。
アリーゼ・ローヴェルは、子供たちからの受けがやや悪かった。
「すまない!アリーゼ!この子たちはあまり素直じゃないんだ!」
「いいのよ、レオナード!これから仲良くなるんだから!」
「そうだな!そうするといい!」
一応してみたフォローだが、そもそも全く堪えていない彼女には不要なようだ。
強い。流石は正義の使徒、その団長だ。
その明るさは俺も見習うべきだろう。
しかし、俺とアリーゼが話す様子を、子どもたちは何やら面白くなさそうに見ている。
額にうっすらと汗の粒を浮かべながらである。
朝の涼やかな空気でありながら、汗をかいている。
汗の理由は明白だ。
アリーゼ・ローヴェル。
情熱的な人格の持ち主。
ちなみに魔法も火属性。
それがどう作用しているのかは分からないが、そんな彼女と俺が同じ空間に集うと、若干ながら気温が上昇することが度々あるのだ。オラリオ七不思議の候補として、冒険者の間で議論されることも多い謎である。
なお、俺の魔法も火属性である。魔法の属性が影響しているのかもしれない。
「で、アリーゼ姉ちゃんは何しに来たんだよ。」
年長の子が憮然とした顔で尋ねると、アリーゼは手のひらをぽんと拳で叩く、オーバーリアクションで返した。
「あらいけない、忘れるところだったわ」
そうだ。俺自身聞きそびれていたが、アリーゼは何の用があってこんなところに来たのだろう。
見回りの時間ではないし、孤児院で炊き出しの予定があるわけでもない。孤児院の子供たちの世話は、あくまで俺が個人的に協力していることなのだ。
故に、俺に何らかの用があってやって来たと解釈するのが、自然なことだろう。
そんな事を考えながらアリーゼの返答を待っていると
「修行よ!レオナード!」
ズビシッ!と音が鳴りそうな調子で、アリーゼはこちらを指さした。あまりに唐突な発現に子供たちがポカン、とした顔をする。しかし俺は理解した。
「修行だな!了解だ!」
子どもたちの視線が、俺に向けられるものまで怪訝なものになる。だが、俺は悪くない。悪いのはアリーゼだ。
俺は子供たちからの視線に耐えながら、弁明の言葉を探した。
「というわけだ。すまないが、今日はこの辺にしてくれないか!」
「まだ来たばっかりなのに!!」
「うわきものー!」
「はくじょうものー!」
「すけこましー!」
「すごいな…どこで覚えてきたんだ、一体…」
幼年幼女達からの非難轟々を甘んじて受け入れる。
しかし、わいわいと騒ぐ子供たち。
その中でも一際聡明そうな印象を受けるエルフの少女。
その言葉を前に、俺は膝から崩れ落ちた。
「もう共用語教えてあげませんよ」
「ぐわあああああああああああああああ!!」
「「「レオナードにいちゃん!?」」」
「レオナードったら、相変わらず共用語が苦手なのね!もはや筋金入りね!もう治らないわ!」
「ぐぅ…言わないでくれ、アリーゼ。読み取りは完璧なんだ…書けないだけなんだ…」
真っ赤になった顔を両手で隠して悶える。
その姿がお気に召したようで、子どもたちは無邪気に笑いながら俺を取り囲んでいた。
「俺は生まれも育ちもオラリオなのに…恥ずかしい…」
「大丈夫ですよ、レオナードさん。私がずっと教えますから」
そういって、エルフの少女に頭を撫でられる。情けないったらありはしない。俺のほうが10近くは年上なのに。
「頼む…」
「自分で叩き落としてから掬い上げる…恐ろしい子ね!」
視界の端でアリーゼが何やら呟いているが、何のことだかはよくわからなかった。
とはいえ、いつまでも駄弁ってはいられない。
今日はもう長居できない。
申し訳ないことだが、これは確定事項なのだ。
「本当にすまない、みんな。またすぐに来る。その時は、甘い砂糖菓子を買ってこよう!院長さんにはナイショだ!」
「ぜったいだぜ!」
「わたしはケーキがいい!」
「おれはこんぺいとう!」
「ああ!全部買ってくるとも!君も、それでいいかな?」
「仕方ありませんね。いいですよ」
聡明なエルフの少女は、快くというには不満げに、不承不承というには優しげに頷いた。
年齢を鑑みると驚いてしまうほどに成熟している。
彼女には助けられている。他の子どもたちの世話でも、共用語の教師としても。
いずれ、こんな形ではなく、しっかりとした形でお礼をしなければ。
そう考えながらも、孤児院を抜けてオラリオの通りを走る。
カラッと晴れた空が、オラリオを照らしている。
行き交う人々が俺たちを見て笑っている。
並走するアリーゼと、どちらからでもなく微笑した。
この都市は生きている。民衆の営みが失われていないから。
迷宮都市オラリオは、まだ負けていない。
うほw
誤字報告ありがとうほw
おじさん構文書こうとして気づいた。絵文字表示されないやん…流石にort…じゃあ、南アメリカ大陸で休眠するね…