※この小説は『デリシャスパーティ♡プリキュア』の華満らんとオリジナル主人公(男)が恋愛する二次創作です。
※変身して戦う、バトルシーンなどはありません。
※本文にAIを利用、修正、加筆してます。
夕暮れ時、おいしーなタウンを流れる川に架かる大きな橋。
オレンジ色に染まる水面を見下ろしながら、俺は……『川崎カエデ』は、手すりに手をかけた。
冷たい金属の感触が、なんだか心地いい。
ここから飛び降りれば、全部終わる。
半年前……。
若手俳優として輝いていた俺の兄『川崎ムツキ』
芸名『一条ムツキ』は交通事故で亡くなった。
そして一緒に車に乗っていた、何のとりえもない俺が生き残ってしまった。
『あんたが死ねば良かったのに……』
事故のあと、幼馴染のカスミが泣き叫びながら吐き捨てた言葉が今も耳から離れない。
彼女は俺ではなく、なんでもできる優秀な兄貴のことが好きだったのだ。
その後……。
兄貴が死んだことで心を病み入院した母さん。
俺の顔を見るたびに兄貴を思い出して顔を歪める父さん。
父さんからおまえがいるとムツキを思い出して辛いと言われ、俺は叔父さんの所有するこの街のアパートで一人で暮らすことになった。
両親にとって俺よりも兄貴のほうがずっと大事で大きな存在だったんだ。
所詮俺は兄貴の劣化コピー……。
こんな思いをするくらいなら、俺なんて最初から生まれてこなければよかった。
せめて誰もいない場所でひっそり消えよう。
そう思って手すりに足をかけた……その時。
「はにゃ!!離してぇ!!嫌だって言ってるじゃない!!」
少女の声が、夕暮れの川岸に響き渡った。
視線を向けると近くの歩道で小柄な女の子が、スーツを着た見知らぬ中年男性に腕を掴まれていた。
「いいじゃないか、美味しいお店教えてあげるからさぁ……おじさんと一緒に楽しいことしようよ♪」
「嫌ぁ!!らんらん、これからお店のお手伝いがあるの!!」
女の子は嫌がって必死に手を振り払おうとしているが、大人の男の力には勝てず、困り果てていた。
その姿を見た俺は最後に人助けするのも悪くないと思い、その場を駆け出す。
「おい、おっさん!!そこまでにしとけ、警察を呼ぶぞ!!」
男の腕を掴み、力任せに引き剥がす。
「ちっ、ガキが……」
警察という言葉が効いたのか、俺が睨みつけると男は舌打ちをして吐き捨てるように去っていった。
「大丈夫?怪我はない?」
「はにゃ~助かったぁ、ありがとう、お兄さん!!」
女の子は胸を撫で下ろし、天真爛漫な笑顔を向けた。
「らんらんは『華満らん』、お兄さんはお名前なんていうの?」
「え、俺?俺は『川崎カエデ』」
名前を聞かれてつい答えてしまう。
「お兄さんは高校生なの?」
「いや、中学二年だけど……」
「それじゃあ、らんらんと同い年だね♪」
てっきり年下だと思っていたが、どうやら同い年だったようだ。
「カエデくん助けてくれて本当にありがと~!! 感謝感激だよ!!」
感謝を伝える少女、華満らんの横で早くこの場を去りたいと思っていると……。
「あっ、そうだ!!お礼にらんらんのおうちのラーメン食べていってよ! !絶対おいしいから!!」
「えっ……いや、お礼とか別にいいよ」
これから死のうとしてる奴がラーメンなんて食べてられない。
「ダメダメ!! 助けてもらったのにそのまま返すなんて華満らんの名が廃るよ!!ほらほら、こっち!!」
断る間もなく、強引に服の袖を引っ張られる。
無理矢理引きはがすこともできたが、それはかわいそうな気がして躊躇してしまう。
結局熱量に押し切られる形で、俺は華満らんの実家のラーメン屋『ぱんだ軒』へと連れて行かれるのだった。
店に着いた俺はさっそくラーメンをご馳走になるのだが……。
「はいっ!! ぱんだ軒特製ラーメンお待ちっ!!」
威勢のいい声とともに目の前に置かれたどんぶり。
湯気とともに、香ばしい醤油とスープの芳醇な香りが鼻腔をくすぐった。
「いただきます」
とりあえずさっさと食べてこの場を去ろう。
そう思い、俺は麺をすする。
「っ!?」
口の中に広がったのはどこか懐かしく、驚くほど優しい味だった。
丁寧に取られた出汁、もちもちの麺、スープが染み込んだチャーシュー。
それらが絶妙な調和を生み出し、冷え切っていた俺の身体の芯へ、じんわりと染み渡っていく。
「これは……」
久しぶりに誰かが自分のために作ってくれた温かい料理を食べた気がする。
スープの温もりがあまりにも優しくて、温かくて……。
俺の目から温かいものが溢れ落ちた。
「はにゃ!?どうしたの!? もしかして口に合わなかった!?」
目の前で華満が焦り出し、心配そうな顔で俺を見る。
「違う…このラーメンが美味すぎて、涙が出ただけだ」
「えっ……」
俺はそれ以上何も言えず、手で涙を拭うとラーメンを勢いよく一気に平らげた。
「あのカエデくん……」
華満は何か言いたそうにしていたが、俺はカウンターにお金を置き、立ち上がる。
「ごちそうさま、すごく美味しかったよ……じゃあな」
「あっ、待ってカエデくん!!お金はいらないって……」
呼び止める声を背に、俺は『ぱんだ軒』を飛び出した。
夜風が濡れた頬を冷やしていく。
死のうと思っていたはずなのに……。
あのラーメンを食べたせいなのか、まだ生きたいと思ってしまうのだった。
翌日……結局俺は死ぬことができなかった。
昨日の『ぱんだ軒』でラーメンを食べてから……死にたいという気持ちが薄れてしまった気がする。
死ぬ度胸すらない自分を情けないと思いつつも、俺はおいしーなタウンにある私立しんせん中学校へと向かった。
手続きを済ませ、担任の先生に連れられて教室に入る。
「今日からみんなの仲間になる、川崎カエデくんだ」
黒板に『川崎カエデ』と名前を書き、軽く一礼する。
「かっこいい」だの「クールっぽい感じ」だの女子達のひそひそ声が聞こえてくる。
自分で言うのもなんだが、俳優『九条ムツキ』の弟である俺は中学生にしては背が高く、見た目だけはそこそこ良く見える。
だけど、それだけだ……。
深く関われば俺が何の才能もない、つまらない人間だとわかって失望するだろう。
『九条ムツキ』の弟であると分かれば、俺に期待する人間も出てくるかもしれない。
以前の学校でもあったが、勝手に期待して、勝手に失望される……そんな経験はもうしたくない。
この学校では兄貴の事は隠して、なるべく目立たず、静かにしていよう。
そう思っていると……。
「はにゃーーーっ!? カエデくん!?」
教室の後ろから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
見ると、昨日出会った華満らんが目を見開いて立ち上がっていた。
「らんちゃん、知り合いなの?」
隣の席の元気そうな女の子が不思議そうに尋ねる。
「うん!!昨日色々あって助けてもらったんだよ~!!まさか同じクラスになるなんて、まさに運命!!まさに奇跡!!」
「華満さん静かにしなさい……川崎くん、窓際の空いてる席に座ってください」
先生に促され、俺は逃げるように席に着いた。
まさか昨日助けた相手と同じクラスの同級生になるとは思わなかった。
休み時間、華満らんは俺の席にやってきて屈託のない笑顔で話しかけてきた。
「カエデくん、昨日は急にいなくなっちゃっうから心配したんだよ……体調はもう大丈夫?」
「問題ないよ……昨日はごちそうさま、ラーメン美味しかったよ」
何事もなかったかのようにそう答える。
「でしょでしょ〜!!また食べに来てね!!」
「ああ、ありがとう」
俺は礼を言いつつも、そっけない態度で距離を置く。
その空気を察したのか華満は少しだけ話して自分の席へと戻っていった。
その後、他のクラスメイトが話かけに来ても、俺は当たり障りのない態度で無難な返答を繰り返した。
どうせ深く関わっても俺がどんな人間か知れば失望されるに決まってるのだから……。
そして、昼休み――。
「カエデくん!! 一緒に昼ごはん食べよ!!」
華満が再び俺の席へとやってくる。
「えっ!?いや、俺は一人で……」
「だーめ!!転校初日なんだから、みんなで食べようよ!!ゆいぴょんとここぴーも待ってるよ!」
華満の強引な押しに負け、俺は結局、机を突き合わせて彼女たちと一緒に昼食をとる羽目になってしまった。
「カエデくん、あたしは和実ゆい!!」
そう名乗ったのは今朝、華満と話していた元気そうな少女。
「私は芙羽ここね……よろしく、川崎くん」
もう一人のほうは二人よりも背が高くクールっぽい感じの少女だった。
「俺は川崎カエデだ、よろしく」
和実さんは美味しそうに大きなおむすびを頬張り、芙羽さんは綺麗に盛り付けられたお弁当を開いていた。
華満らんもお手製のお弁当を広げ、実に楽しそうに食べ始める。
一方の俺が鞄から取り出したのは、今朝コンビニで適当に買ったパンと小さいおにぎりだった。
それを見た華満が、首を傾げて尋ねてくる。
「はにゃ? カエデくん、お昼それだけ?」
「ん?そうだけど」
別に賞味期限も切れてないし、何か変なところがあっただろうか?
「もしかして……毎日コンビニ弁当とかパンだったりするの?」
「ああ」
俺が短く答えると和実さんと芙羽さんも心配そうにこちらを見た。
「毎日コンビニだと、身体に良くないんじゃないかしら……」
「そうだよ〜!!ちゃんと温かくて栄養のあるもの食べないと、力が出ないよ」
二人の言うことはその通りだと思う。
だけど……。
「別にいいだろ……俺は一人暮らしだし、食事なんて腹に入ればなんでもいいんだよ」
俺の口から出たのは冷めた言葉だった。
「『腹に入ればなんでもいい』だなんて……そんなの絶対違うよ!!」
俺の吐き捨てた言葉に、真っ先に声を上げたのは華満だった。
華満は机をバンッと叩いて立ち上がる。
「ご飯はね、ただお腹を満たすためだけのものじゃないんだよ!!
誰かと一緒に『美味しいね』って笑顔になったり、作ってくれた人の温もりを感じたり……
心を元気にハッピーにするためのものなんだから!!」
熱弁を振るう華満に続いて、和実さんも真剣な眼差しで身を乗り出してきた。
「あたしのおばあちゃんが言ってた!!『ごはんは笑顔』って! !
川崎くん、そんな悲しいこと言わないで……
美味しいものを食べると、自然と元気が湧いてくるんだよ!!」
芙羽さんも真剣な顔で話しかけてくる。
「そうよ、川崎くん……味しいものを味わう時間は自分を大切にすることと同じだと思うの」
三人の真っ直ぐな言葉が、俺の冷え切った胸に強く突き刺さる。
自分を大切にする……そんな資格、俺にあるわけがない。
「別に悲しくなんてない、俺にはこれで十分だ、だから――」
言い訳を遮るように、華満が俺の手をガシッと掴んだ。
急に手を握られビクッとしていると……。
「それはカエデくんが『美味しさの幸せ』を知らないからだよ!!」
そう言って、華満はまっすぐ俺の顔を見つめる。
突然のことに驚き、俺が何も言えずにいると……。
「よーし、決めた!!らんらんたちが放課後、おいしーなタウンの美味しいものをいっぱい教えてあげる!!
おいしーなタウン案内ツアー開催だよ!!」
華満がそんなとんでもないことを言い出す。
「はぁ!?いや、待てよ、俺は別にそんな――」
「あたしも賛成!!川崎くんに美味しいものいっぱい食べてもらおう!!」
「ふふ、いいわね……街の素敵なカフェも紹介するわ」
俺に断る隙など微塵も与えず、話はトントン拍子に進んでいく。
ノリノリな彼女たちの誘いを断るのも、なんだか面倒になり俺は溜め息をつきながら
「はぁ……勝手にしろ」
と呟くのだった。