放課後……。
華満、和実さん、芙羽さんの三人に連れ出され、俺はおいしーなタウンの街並みを歩いていた。
「まずはここ!!ここの肉まん、皮がモチモチで最高なんだよ~!!」
華満におすすめされた肉まんを食べてみる。
もぐもぐ……確かにもちもちしてて、これはなかなか。
「川崎くん、こっちのおにぎり屋さんもすごく美味しいんだよ!!食べてみて!!」
和実さんにおすすめされたおにぎりを食べてみる。
もぐもぐ……ボリュームもあって、これも悪くないな。
「静かな場所が好きなら、あそこのベーカリーカフェのパンもおすすめよ」
芙羽さんにおすすめされたパンを食べてみる。
もぐもぐ……昼に食べたコンビニのパンと食感が全然違って、すごく食べやすいぞ。
「…ってなんで俺は流されるままに食べてるんだ!?」
気が付くと、俺は三人に紹介された店の食べ物を食べていた。
「カエデくん、あっちのお弁当屋さんもおすすめだよ!!」
「川崎くん、今度はこっちのお店のおにぎりを食べてみてよ!!」
「他にもおいしいパン屋さんがあって……」
放課後の街を歩きながら、三人は次々とおすすめの店や食べ物を教えてくれる。
「ちょ、ちょっと待て!!いくらなんでもそんなに食べられないぞ!!」
育ち盛りの中学生男子とはいえ食べられる量には限度がある。
とりあえず今回は店の場所と名前だけ教えてもらうことにした。
その後も三人に連れられ街を歩いていると、様々な店が目に入る。
「どう、カエデくん?おいしーなタウンって街全体が美味しいもので溢れてて、ワクワクするでしょ!!」
「確かにすごいな、こんなに色んな店があったのか」
世界中のいろんな料理が集まる街だとは聞いていたが、正直ここまでとは思わなかった。
それに料理を食べている人たちの楽しそうな声が聞こえる。
この賑やかで温かい雰囲気……嫌いじゃない。
「ここはいい街だな」
素直な感想を口にすると
「でしょでしょ~!!」
華満は誇らしげに胸を張る。
和実さんと芙羽さんもなんだか嬉しそうだ。
最初は乗り気じゃなかったけど、料理もまあ…美味しかったし、連れてきてもらって良かったかもしれない。
少しだけ…本当に少しだけだが、俺の心に光が差し込んだ、そんな気がした。
「今日は……その、ありがとな」
俺が感謝の言葉を伝えると3人は笑顔を見せるのだった。
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(らん視点)
その日の夜。
お風呂上がり、お部屋のベッドにゴロンと横になった私は天井を見つめながら溜め息をついた。
脳裏に浮かぶのは、今日転校してきた川崎カエデくんの顔だ。
今日、放課後にゆいぴょんやここぴーと一緒においしーなタウンを案内した時、カエデくんは「すごいな」って言ってくれた。
ほんの少しだけ、固かった表情が和らいだ気がした。
だけど……やっぱりカエデくんの瞳の奥には、小さくて暗い影がずっと潜んでいる気がしてならなかった。
昨日、橋の下で強引なおじさんから助けてくれた時の冷たい背中。
ぱんだ軒のラーメンを食べて、ボロボロと涙をこぼした時の悲しそうな顔。
そして、昼休みに『自分にはこれで十分だ』って言った時の自嘲気味な瞳。
「カエデくん……なんであんな顔するんだろう」
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるみたいに痛い。
カエデくんのこと、もっと知りたいな。
カエデくんがどうしてあんなに悲しい目をしているのか。
理由はわからない……昨日会ったばかりなのに、どうしてこんなにもカエデくんのことが頭から離れないのか、自分でも上手く説明できなかった。
ただ、ひとつだけはっきり分かっていることがある。
カエデくんに笑ってほしい。
心の底から「美味しい!!」って、幸せそうに笑ってほしい。
あの泣きそうな顔じゃなくて、カエデくんの本当の笑顔が見たい。
「らんちゃん、どうしたメン?難しい顔をしてるメン」
机の上で横になっていたメンメンが、心配そうに浮かんできて声をかけてくれた。
「メンメン……らんらんね、カエデくんに何かしてあげたいんだ」
「カエデくんに……メン?」
「カエデくん、一人暮らしで毎日コンビニのご飯やパンばかり食べてるんだって。
食事なんてお腹に入ればなんでもいいって……そんなの悲しすぎるよ。
カエデくんに、美味しいものをいっぱい食べて笑顔になってほしい!!」
メンメンは私の言葉を優しく頷きながら聞いてくれた。
「らんちゃんは優しいメン」
「ありがと……でも、もっとカエデくんの心がポカポカ温かくなるようなこと……らんらんにできることって、なんだろう?」
自分でお弁当を作って渡してあげようか?
それとも、毎日ぱんだ軒に食べに来てもらう?
うーん……カエデくんは真面目で優しいから、あんまり押し付けちゃうと申し訳なさそうに遠慮しちゃうかもしれない。
どうしたら、カエデくんに伝わるかな?
「ごはんは笑顔」ってゆいちゃんのおばあちゃんも言っていたらしいし、美味しいごはんには、人の心を元気にする魔法があるはずだ。
私が大好きな「美味しい」の気持ちを届けて、カエデくんの心を包んであげたい。
ベッドの上で膝を抱え、私はうーんと頭をひねらせた。
「カエデくん……待っててね。らんらん、絶対にカエデくんを笑顔にしてみせるから!!」
そう意気込むのだった