TSギャルゲー転生主人公逆攻略実況配信 作:一般TS好き
「おお、人間よ! しんでしまうとはなさけない!」
寝て起きたと思ったら全く見知らぬ部屋──真っ白で随分だだっ広い──にいた。目の前には随分とラフな部屋着でこたつに入り、こちらを眺めている老人の姿がある。
何を言ってるのかさっぱりだと思うが、俺だって意味が分からない。
「え、ナニコレ。夢? もしくはドッキリ?」
思わず呟く。だが、夢にしては随分と意識がはっきりしている。明晰夢ってやつだろうか。
「どちらでもないぞい。言ったであろう? しんでしまうとはなさけない、と」
「……いや、てかどちら様?」
「わし? 神様」
目の前の老人がそんなことを宣う。可哀想に、どうやらボケているらしい。いやまあ夢の世界の人間なんて全員ボケてるようなもんか。
「だから違うっつってんじゃろ。ほれ、見てみい」
そう言いながら老人がぱん、と手を打ち鳴らす。すると、目の前にいきなりモニターのようなものが出現した。そこに映っていたのは──。
「俺?」
「うむ、現実でのお前じゃな。死因は心筋梗塞、ありがちじゃの~。まあ寝てる時だったから苦しまずに逝けたのはラッキーじゃったの」
「死んでる時点でアンラッキーだろ。……いや俺死んでるの!?」
いやいや、死ぬ夢ってことだろ。フロイト的に死ぬ夢は縁起いいし。死んだ後の夢がどうなのかは知らないけど。
「だから夢じゃねえって言ってんだろ往生際が悪いぞい。いやもう往生してるんじゃけど。……今のうまくない?」
「うまくねえよジジイ」
「お主だいぶ不敬じゃからな? わしじゃなかったら神罰ものだぞ」
どうやらまだ神だと言い張るらしい。俺の明晰夢のくせに生意気だな。
「お主ホントに往生際が悪いのぉ。ほれ、これでどうだ? ほんとにかみなんじゃぞい」
「ぐああああ!? 頭が割れるように痛いッ!?」
老人がなにやらまるで聞き取れない言語を発した瞬間、脳を直接万力で締められているような激痛が頭に走った。痛みに耐えきれず床を転がってのたうち回る。
「ほれ、信じたか?」
「信じさせる手法が暴力的すぎるだろ……!」
「だってお主、言葉じゃ信じないじゃん」
いきなり見知らぬジジイに「私は神だ」とか言われて信じる方がどうかしてると思う。
あと神なんだったらもうちょっとそれっぽい恰好してほしい。ぱっと見どう見ても休日の爺さんにしか見えないから。
「あーやだやだこれだから人間は。お主らの勝手なイメージを押し付けんでくれんか? 神って別にお主らの考えるほど大層な存在じゃないから。ほら、アニメの原作者みたいなもん」
「例えのレベルが最悪すぎる」
「一つの世界を作るという意味では同じじゃろ」
そうかな……そうかも……。
「さて、死んだということも受け入れたようだしそろそろ本題に入ろうかの」
「本題って?」
「ああ! ……いや違うから。マジで本題に入るから」
「勝手にボケたのはそっちだろ」
「しらないのぉ」
「それやめろって!?」
またしても脳に直接痛みを送られ、頭を押さえながら転がり回る。こいつ都合が悪くなったからって好き放題しやがって……! 許せねぇ、やっぱり宗教ってクソだわ*1。
「それで本題じゃがお主にはTSゲーム転生実況配信をやってもらう」
「なんて?」
「お主にはTSゲーム転生実況配信をやってもらう」
「そこは聞き間違いであってくれよ」
一つでも意味不明な要素を複数組み合わせるなよ。というかそのジャンルってもう既に使い古され過ぎでは? 旬はとっくの昔に過ぎてるだろ。
「まあほら、ちょっと昔に流行ったじゃん? 神様転生ってやつ。最近は減ってるけど。あれ、神の間だと結構いい感じの暇つぶしになるんじゃよね」
「倫理観とかないんか?」
「わしが倫理じゃ」
「世の宗教者にこの光景を見せてやりてぇよ……!」
おい、神は清廉どころか世俗に塗れてるぞ。
「で、お主を選んだ理由じゃが」
「あるの?」
「たまたま目についたからじゃの」
「まだ手違いで死んでる方がマシだったな」
「そもそも神が手違いで人殺しちゃったくらいで謝罪とかするわけないじゃろ」
それは……! そうだけど……! もうちょっとこう、なんかあるだろ!
「別に断ってもよいぞ。その場合も別に罰とかないし。ただ──」
「ただ?」
「お主の魂はそのままじゃが記憶なりはまるっと漂白されて次の生に行くだけじゃ。まぁ普通の生まれ変わりじゃの。今のお主は消え去るが」
さらりと何の気負いもなく告げられる言葉。俺が既に死んでいるということを考えれば当然のこと──むしろ輪廻転生ってホントにあるんだとすら思う──であるのだが。
「実質一択じゃねえか」
「そうとも言うの。まあ褒美は用意しとるから人参をぶら下げられた馬のように頑張ってほしい。具体的には来来来世の充実のために」
「ネタが十年前なんだよ」
「あれも広義の意味ではTSモノと言えると思うんじゃが。どう?」
どう? じゃねえんだわ。
入れ替わりは疑似TSと言えるけど実際のTSとは全く性質が異なってんだろ。
というか、まさか。
「TSがレギュに入ってるのってもしかして」
「わしの趣味じゃな」
「カス」
「シンプルな罵倒やめられる? わし神なんじゃけど」
神は神でも邪神の類だろどう考えても。
「そもそも邪神かどうかってそれ他の宗教を吸収合併する際の言い訳に過ぎんしの~」
「しれっと心読むのやめてもらえるか?」
プライバシーの侵害で訴えてやろうか。神に条例が通用するとは思えないけど。
「で、そろそろちゃんと話すがお主には先ほども言ったようにTSゲーム転生実況配信をやってもらう」
「何度聞いてもイカれた単語だと思う」
「RTAが入ってないだけマシじゃろ。で、お主が転生するゲームがこれじゃ」
そう言うと、またしても目の前にモニターが出現する。そこに映し出されていたのは、なにやらイケメンの少年が中央に配置され、その周囲へ美少女たちが描かれているパッケージ。背表紙の部分にはでかでかと「天墜のソラリス」と恐らくゲームタイトルであろうものが刻印されていた。
「天墜のソラリス……ってどんなゲームなんだ?」
「いわゆるギャルゲーじゃの。ちゃんと全年齢対象だから安心せい」
「そこの心配はしてねえんだよな。というか、ギャルゲーにTS転生させられるの? 俺」
「うむ。そして、ただだらだらと実況されても面白くないので一つ大目標を決めさせてもらうぞ。それは──」
神を名乗るジジイはそこで溜めるように言葉を区切ると、随分と楽しげな笑みを浮かべて口を開いた。
「お主には主人公のことを逆攻略してもらう!」
「は?」
俺が間の抜けた声を上げるとともに、ぐっと親指を立てたジジイが笑顔でその手を逆さに返す。次の瞬間には浮遊感に襲われて──。
「最後までテンプレかよ!?」
そんな捨て台詞とともに、俺の意識は暗転した。
◇
「この程度、ですか?」
決闘場に少年が倒れている。手にした剣は砕け散り、本来ならば艶やかだったであろう黒髪も今は土にまみれて煤けてしまっている。その表情は悔しさと情けなさに歪んでいた。
「本当に、この程度なのですか?」
対するは炎のように燃え盛る赤い髪を腰ほどまでなびかせた少女。こちらは息すら切れておらず、足元がところどころ汚れているだけ。
この場において、どちらが勝者でどちらが敗者なのか。それは誰の目にも明らかだった。
「……残念です。あなたなら、あるいはと思っていたのですが」
少女は手にした剣を音もなく鞘へ納め、髪をたなびかせながら体を翻す。
地に伏した少年は動くことも出来ず、唯一可能なことと言えば目を動かして少女の姿を追うことだけだった。
神仏チャット▼ ◇マリアベル・レーヴェン …………あれぇ!? 勝っちゃったんだけど!? 主人公なのに弱くない!? ◇あふろん なんで物理的に攻略してんだよ ◇ドンゴラ 逆攻略ってRPG的な意味じゃなくてギャルゲー的な意味なんだよな ◇ミクロコスモス 主人公逆攻略(戦闘で) ◇つっきー☆ 勝っちゃったんだけど!? じゃないんだよ ◇マリアベル・レーヴェン ……いや、ここでいい感じに接戦を演じて接点を持とうかなって…… ◇ドンゴラ むしろなんで勝ててんだよ、序盤とはいえ普通に主人公くん強かったはずだけど ◇つっきー☆ なんかチートでも渡したんじゃね? その辺どうなの担当者 ◇TS好き好きマン なにそれ知らん……こわぁ…… ◇あふろん テメーが知らなかったら誰も知らねえだろうが ◇ミクロコスモス このチャンネル開く回数も今まで少なかったしどんな修行してたのか不明なんだよな ◇審判員 てかお前魔法使ってね? ◇数式の妖精 いや、まだ魔術の域 ◇ロキロキロッキン 「まだ」って時点でヤバい定期 ◇マリアベル・レーヴェン え、これってそんな感じなの? なんかボッてやったら出てきたんだけど ◇ロキロキロッキン マッチじゃねえんだぞ ◇審判員 ボッで世界法則を改変するな | |
【初心者】『天墜のソラリス』原作主人公逆攻略実況配信【実況】 | |