TSギャルゲー転生主人公逆攻略実況配信   作:一般TS好き

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正解のない未来

「君は……神の指先に触れたことがあるね」

 

◇審判員 は? もしかしてこいつ、アクセスだけじゃなくて認識もしてるのか?

◇つっきー☆ 認識次元上がってるじゃん

◇あふろん 力だけじゃないって普通にマズくね?

 

「……それは、どういう?」

「言葉のままだ。神──上位存在と言い換えてもいい。君はそういった存在に会ったことがある。いや、今も、そ(・)こ(・)に(・)い(・)る(・)。違うか?」

「そんな大層な存在じゃないと思うけど」

 

 いやホントに。ただの穀潰しの役立たずだぞこいつら。

 

「大事なのは、この世界を俯瞰するナニカが確かに存在するという事実だ」

 

 リオンが右手を払う。

 未だ彼へ向かって伸びていた炎がそこでようやく途切れ、焼け焦げた痕だけが宙に残った。

 

「三流の悪役みたいなセリフね」

「反論の余地がないな」

 

 薄く笑いながら眼鏡を押し上げ、こちらを見つめるリオン。その態度とは裏腹に、目の奥に感じる光は今までで一番の鋭さを放っている。こえーよ。

 

「人生の今までも、そしてこれからもが全て予め決められているのだとしたら、君はどうする」

「運命論者なのかしら? 意外とロマンシストね」

「そうではないことは理解しているだろう」

「はっきりと言ってくれる?」

「こ(・)の(・)世(・)界(・)を(・)切(・)り(・)離(・)す(・)」

 

 ……は?

 

「世界を構成する情報(プログラム)を書き換え、上位存在との接続を断ち、独立した世界としての立場を確保する。それが私の目的だ」

 

 なんかラスボスっぽいこと言いだしたな。

 できるの?

 

◇数式の妖精 多分できる さっきの攻撃もそれの応用だろ

◇ロキロキロッキン 問題はなんでここまで上限値が上がってるかの方

◇審判員 担当者、説明

◇TS好き好きマン ええっとォ……マジで知らなくてェ……

 

 ホントつかえねーなボケ! 二度と喋んな!

 

「人は、人の意思によってのみ生き、人の意思によってのみ死ぬべきだ。これらを外部から規定する存在を、私は嫌悪する」

 

 吐き捨てるように告げられた言葉。今までとは違い、明(・)確(・)な(・)悪(・)意(・)が込められた強い口調。どうやらこれがこの人の核らしい。

 

「まぁ、同感ね」

「ならば──」

「で、あなたのそ(・)れ(・)。エルミナから奪った力じゃないの? 借り物の力で理想を語るって、相当ダサイわよ」

「全く以て耳が痛い。だが──」

 

 リオンが言葉を切る。一瞬、私の背後にある部屋を見た気がした。そして──。

 

「借り物かどうかなど、本質ではないよ」

 

 眼鏡の奥の瞳が揺れた。

 いや、違う。

 揺れたのは──私の視界だ。

 

「がッ──!?」

 

 気づいた時には拳が腹へめり込んでいた。

 

「力があり、それによって救えるものがある。ならば使うべきだ。それが誰の手にあったかなど些末な問題だろう」

「本人にとっては、大問題でしょうが!」

 

 腹へと突き出された腕を掴み取り、支点にして体を回す。勢いを乗せて放った蹴りは、しかし鼻先を掠めるだけに終わった。

 

「私はそうは思わない」

「でしょうね!」

 

 回転のままに腕を離し、勢いを利用して距離を取る──が、リオンが全く同じタイミングで距離を詰めてくる。

 

「着地狩りは嫌われるわよ!」

「私には義務がある」

 

 無視かよ!

 着地と同時に放たれた右ストレートを両腕をクロスさせてガードする。衝撃に押され、体が飛んだ。

 

「力は他者のために振るわれなければならない。そうでなくては、存(・)在(・)す(・)る(・)価(・)値(・)が(・)な(・)い(・)」

「貴き者の義務(ノブレス・オブリージュ)もそこまで行くと大概ね!」

「だが、事実だ」

 

 オメーにとってはな! 絶え間なく繰り出される打撃を何とか凌ぎながら、脳内で毒づいた。真顔でそんなセリフを吐くなんて、流石は王族サマである。

 ……だが、今のセリフでようやく分かった。

 

「あなた、義務感で動いてる──いや、義(・)務(・)感(・)で(・)し(・)か(・)動けないのね。そんなに自分のことが嫌い?」

「なにを──ッ!?」

「隙だらけ(燃えろ)」

 

 言葉と動きを詰まらせたリオンを炎上させる。チャンスは逃すな、ここで決めろ──!

 

「天より降り注ぐ裁きの火・絶えず燃え盛る地獄の業火」

「チィ──!」

 

 流石に動揺したのは一瞬だけのようで、最初に出した炎は既に払われている。だが──十分だ。

 この術式(こいつ)は効(キ)くだろうよ、お前には。

 

「其は全ての悪を滅ぼすもの・汝、己の悪を認めるならば──」

「やらせ、ない──!」

「その悪を以て汝を焼き尽くさん」

 

 詠唱が完成するとともに、黄金色の爆炎が部屋を包み込む。やべ、思った以上に威力がでかい。

 

 ──え。リオン(こいつ)、こんなに自分のこと嫌ってんの?

 

 パラパラと細かい砂礫が落ちる音が響く。炎によって巻き起こされた破壊と土煙が部屋を覆っている。

 先ほどまでの戦闘が嘘のような静寂だった。

 

◇ドンゴラ やったか!?

 

 テメーマジでふざけんなよ!?

 あまりにもあからさまなフラグを建てたチャット欄にキレていると、土煙の奥で何かが動いた。

 

「……まったく、とんでもない術だな」

 

 ──ほら見ろ! 言ったそばから!

 

 炎の中から現れたリオンは、無傷──とは流石にいかなかった。服のあちこちは焼け焦げ、頬には火傷の跡が残っている。だが、それでも倒れるには程遠い。

 しぶといにも程があるだろ。

 

「感情を燃料に燃える炎──話には聞いていたが、ここまでとは」

「そのまま燃え尽きてくれてもよかったんだけど?」

「そういうわけにも行くまいよ」

 

 軽い口調とともに、リオンの姿がブレる。

 

 ──来る。

 

 そう判断して防御を固めた瞬間、腹部に衝撃が炸裂した。

 

「が──ッ!?」

 

 身体が後方へ吹き飛ぶ。

 床を一度、二度と跳ね、そのまま背後の扉を突き破った。

 木片と埃を撒き散らしながら床を転がる。ようやく止まったところで、私は咳き込みながら顔を上げた。

 

「……いったいわね……」

 

 そこで、目が合った。

 

 部屋の奥。

 寝台に横たわった一人の少女がこちらを見ていた。

 

 茶色の髪。琥珀色の瞳。

 顔色は悪い。けれど、意識はある。

 

「……マリアベルさん?」

「……ああ、エルミナ。生きてたのね」

「なんで……ここに……」

「悪い魔王を倒しに来たってとこかしら」

 

 そういえば隣の部屋にいたんだったか。すっかり忘れていたが、ちょうど吹き飛ばされた先がその部屋だったらしい。

 

「そういうあなたは結局捕まったわけね」

「それは──」

「それは違う。彼女は自ら正しい選択をしたんだよ」

 

 こつん、と音を響かせてリオンが姿を現した。

 

「彼女(エルミナ)が誤解されたままなのは、私としても忍びない。故に語るが、彼女が私に降ったのは君のためなのだよ」

「はい?」

 

 何言ってんだこいつ。

 

◇ロキロキロッキン やっぱそうなってるんだ

◇つっきー☆ まぁそうなるよね

 

「彼女は視た。私と君とが戦えば、君が死ぬということを」

「そう、です。だから私はここに来たのに、なんで!」

「許せとは言わない。事情が変わった。彼女は死ななければならない」

「そんなの──!」

 

 なにやら二人で盛り上がっている。話の感じからして、エルミナは私を守(・)る(・)た(・)め(・)に(・)わざと捕まったらしい。

 へー、ほー、ふ~ん…………。

 

 ──ムカつくな、それも最高に。

 

 轟、と周囲に炎が顕現する。部屋を覆い尽くさんとする勢いで現れたそれは、しかし一切を焼くことはなくただ私へと巻き付いていく。

 

「私が死ぬ。私を守る。私を殺す。結構なことだわ」

 

 ボロボロになっていた制服が炎で上書きされていく。破れていた場所が燃え上がり、ダークブルーの制服は炎で編まれた燃えるようなドレスへと変貌する。頭から垂れていた血がじゅうじゅうと音を立てて蒸発した。

 

「でも──」

 

 ガン、と足を踏み鳴らした。周囲へ燃え広がっていた炎は一瞬で消え去り、荒れ狂っていた空気も落ち着きを見せる。

 気持ちは全く落ち着かないが。

 

「──それって全部、私(・)が(・)負(・)け(・)る(・)前(・)提(・)の話よね?」

 

 ふっざけんなよマジで。何勝手に勝った気になってんだ、勝つのは私だっつーの。誰にも負けない、何故なら最強は私だからだ。

 

「ぶちのめすわ、覚悟しなさい。エルミナも後で説教だから」

「え……えぇっ!?」

 

 背後で驚きの声を上げるエルミナをよそに踏み込み、一息でリオンとの距離を詰める。勢いのままに拳を頬へ叩き込んだ。

 

「な──!?」

「まだまだァ!」

 

 衝撃で吹き飛んだリオンを追うように炎が伸び、手首、足首、胴へ食らいつく。炎はそのまま巻き取られ、勢いを殺されたリオンの身体が無理やり私の間合いへ引き戻された。

 

「避けるなら避けてみなさいよ、避けられるならねえ!?」

 

◇木人 チ ェ ー ン デ ス マ ッ チ

◇あふろん 新フォーム解禁してやることがノーガードのインファイトとかお前魔術師やめろ

◇ドンゴラ 今日一いい笑顔してるの草

 

「舐……めるな!」

「舐めてるわけないでしょ!」

 

 リオンが負けじと拳を振るう。攻撃の隙を縫って振るわれたそれは確かに私の体を捉え──。

 

「効かないわ!」

 

 拳(・)の(・)当(・)た(・)っ(・)た(・)場(・)所(・)が(・)爆(・)発(・)し(・)た(・)。

 

◇審判員 えっこれ爆発反応装甲(リアクティブアーマー)なの!?

◇つっきー☆ インファイト仕掛けて自分は打撃無効化してるのはクソゲーすぎるだろ

 

「未来、視えてるんじゃなかったかしら?」

「な……何故だ! そこにいるはずだろう!?」

「何言ってんのかわかんないのよ!」

 

 あからさまに狼狽えているリオンを息をつく暇もなくボコっていく。右、左、フック、膝、そして左!

 

「これは私をバカにした分! これは私が負けるとか寝言を言った分! ついでにこれは攫われたエルミナの分! そしてこれが──」

「そうか、視えているのは未来ではなく……」

「──今まで散々ボコられた私の痛みだァーーッ!!!」

「世界の……情報……。リーシャ、俺は……」

 

 顎を正確に打ち抜いた私のアッパーカットを受け、リオンはがくりと頭を落とす。全身の力も抜けており、手足はだらりと垂れ下がっていた。

 

「たかだか未来が視える程度で私に勝とうなんて百億光年早いのよ!」

 

◇ロキロキロッキン 光年は距離だぞドアホ

◇眠たい 今日び小学生でも間違えねえぞ

 

 ……勝てばいいんだよ!

 

◇

 

 完全に意識を失ったリオンをベッドに横たえ、炎熱拘束術式(新フォーム)を解除する。王座の間は完全に崩れ落ち、天井からはぱらぱらと土埃が舞い散っている。

 控え目に言って大惨事だった。

 

「いや~、派手にぶっ壊したわね」

「いやいやいやいや! そんな呑気な事言ってる場合じゃないですよ! テロですよ、テロ!?」

「正義は我にあり、よ」

「ないですよっ!!!」

 

 ぐい、と体を伸ばしながら呟いた言葉にエルミナが叫ぶ。元はと言えばお前が勝手に捕まったのが悪いんだろう。私は悪くない。

 

◇ロキロキロッキン 悪いに決まってんだろ

◇木人 自己正当化の達人?

 

 悪くないだろ! 世界救ってんだぞ!

 

◇ドンゴラ こんなのに救われるとか世も末だな

◇あふろん ていうかリオンの目的めっちゃ変わってたけどこれってやっぱりバグ?

◇審判員 明確にこっち側認識して接続断とうとしてたしなあ

◇数式の妖精 流石に調査案件か

 

「──さん、マリアベルさん?」

「ん……ああ、いえ。なんでもないわ」

 

 少し黙りすぎたのか、エルミナが不安そうな目でこちらを覗き込んでいる。どうやら意識はしっかりしているらしい。まあ、立って歩けるほど元気ではなさそうだが。

 

「それで、どうするんですか?」

「どうしようかしらね」

「……?」

 

 私が答えると、エルミナはきょとんとした顔をしてこちらを見る。

 

「……えっ、まさか何も考えてなかったんですか!?」

「ほら、時間がなかったから」

「それは……そうですけど……!」

 

 とはいえ、実際どうしたものか。リオンの野望を阻止したはいいが、現状が普通にテロリストなのはその通りだ。……もうあれか? リオンを叩き起こして洗いざらい吐かせるか?

 

 そんな風に横たわったリオンを睨みながら考えていた、その時──。

 

「おぉ~、こりゃ随分と暴れたなぁ」

 

 酷く場違いで、気の抜けた声が広間に響いたのだった。




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