TSギャルゲー転生主人公逆攻略実況配信 作:一般TS好き
散歩でもするかのように崩壊した王座の間へ入ってきたのは、豊かな髭を蓄えた壮年の男性だった。白銀を基調とした鎧に金の意匠を走らせてその上から深紅のマントを羽織っており、崩れ落ちた部屋を見て楽しそうに笑っている。
隣に立っていたエルミナが悲鳴のような声を上げた。
「こっ! 国王陛下!?」
「ああ、どこかで見たことあると思ったら」
「お、そっちのお嬢さんはいい子だねぇ。ちゃんと知っとるのはポイント高いぞ。赤い髪の嬢ちゃんはダメダメだねぇ」
「ダメダメじゃないですが?!」
「いや自国の王様知らないのは普通にダメでしょ」
は~!? むしろそっちこそ自国の国民に顔を覚えられてないことを恥じるべきでは!?
「それでリオンは……寝てんのか、よかったよかった。殺したりしてたら流石にこっちもやることやんなきゃいけないからさ」
「確かにリオン第二王子のことは殴りましたが、必要があってのことです。むしろ、子の野望を止めたことに感謝されるべきでは?」
「う~ん、耳が痛い。……ところでさ。俺、国王なんだけど。その辺理解してる?」
「……? ええ、もちろん」
「
「な──!?」
それまでと全く変わらぬ口調で放たれたそれは、しかし物理的な圧力を伴って私のことを圧し潰した。気が付けば膝は折れており、頭は勢いよく床へと打ち付けられている。どうにか頭を動かして視線を上げれば、国王が愉快げに笑っていた。
「マリアベルさん!?」
エルミナが悲痛な叫びをあげる。私もどうにか体を動かそうとするが、頭や体が少し持ち上がるだけで到底立てそうにない。
「いや……ええ? 不意打ちでブチ込んだのになんで動けるの?」
「私が……首を……垂れるのは……私だけだからよ!」
「ちょ、ちょいちょいちょい! それ以上やると死んじゃうから! ……いやぁホントやんちゃな嬢ちゃんだな」
呆れたような言葉とともに、全身にかかっていた圧が霧散した。急に消えたせいで圧に逆らっていた力のままに私はひっくり返り、思わずしりもちをついてしまう。
「だ、大丈夫ですか?」
「思いっきり顔面叩きつけられた以外はね」
◇あふろん 王政国家の国王に対する言動じゃなさすぎる
「で、今更やってきた国王陛下は何をしに来たんですか?」
「言葉尻だけ整えればいいってもんじゃないからね? ……まぁ、真面目な話に戻るとリオンが何かを企んでるのは知ってたんだよね。でも俺やアベル──第一王子がいると動かないだろうこともわかってた。で、ちょうどいい具合にドラゴンの目撃情報が出たんでわざと城を空けたわけよ」
「結果としてリオン王子は動き、私がそれを叩き潰した」
「しれっと言ってるけどテロだからね」
しょうがないだろ、世界崩壊の危機だったんだから。
「本来は俺が叩き潰す予定だったけど、まぁ嬢ちゃんが代わりにやったってわけ。だからこっちとしてはそこまで罰するつもりはないのよね」
「隠蔽工作ね。政治のにおいがするわ」
「その通りなんだけどそうキラキラした目で言われると変な感じだな」
隠蔽工作。心躍るワードである。いかにも上位者って感じだ。
「とりあえず、あれだ。嬢ちゃんは俺の秘匿騎士ってことで」
「秘匿騎士! いかにもって感じね!」
「見てはいけないものを見ている感じですぅ……」
隣でエルミナが呻いている。感じ、ではなくその通りだと思う。
「さて、そっちの嬢ちゃんはこれでいいとして……。ヴァラの娘だ」
国王は一度目を閉じると、先ほどまでのふざけた調子を捨てひどく真面目な声色でエルミナの名を呼んだ。びくりとエルミナの肩が跳ねる。
「俺から君に言うべきことはただ一つしかない」
「な、なんですか……?」
「──すまなかった」
その言葉とともに、僅かに──しかし確かに頭を下げる。おいおいおい、王がそんなことしていいのかよ。
「リオンの暴走は全て俺の責任だ。公的な場で謝罪することはできないが──今、この場においてだけは王ではなく父として、一人のアダマス・リーヴ・エルスヴァルトとして謝罪しよう」
「……いえ。これは、私も望んだ結果です。持った力を忌み嫌い、委ねようとした戒めでもあります」
「それでもだ。君は民であり、俺たちは王である。民のために国はあるのであり、国のために民があるのではない」
「私とは随分と態度が違うみたいですが」
「被害者と加害者だからな」
被害者と被害者だよ。
◇ロキロキロッキン 百歩譲って両成敗だよ
「さて、話はここまでだ。後のことはこちらで調整する。何かあれば学長を通して伝えるのでそのつもりで」
さっさと出ていけ、と言わんばかりにこちらに手を振り追い払おうとするアダマス。こちらとしてもこれ以上用はないので、エルミナを抱えて部屋を後にする。
「ありがとう」
部屋を出る直前、背後から小さい声が届く。
「そういうのはもっとハッキリ言った方がいいわよ」
返事はなかった。
◇
「あ、あの……マリアベルさん。この格好はちょっと……」
「しょうがないでしょ、あなた今歩けないんだから」
エルミナを横抱きに抱えたまま城内を歩く。既になんらかの伝達がなされているのか、兵士たちはこちらに目もくれずに慌ただしく駆け回っている。王様って凄いんだな。
「でも、その……恥ずかしいというか」
「我慢しなさい」
◇木人 うわでた
◇審判員 お前今そんなこと言ってる場合じゃねえだろ
「それにしても……自分で選んで行動しろとは言ったけれど、愚かな選択をしたわね」
「お、愚か!? 言うに事欠いて愚かですか!?」
「愚かよ。愚かで、短絡的で、軽率だわ」
「そこまで言わなくたって……」
私の言葉を聞いたエルミナが腕の中で半泣きになっている。泣けばいいってもんじゃない、事実は事実だ。
「私が死ぬから自分が犠牲になる。ご立派だけどね、もっと私のことを信じなさいよ」
「……」
「でも……まあ、何も選べないよりは数段マシね」
「……それ、褒めてます?」
「さぁね」
あくまでマシ、というだけである。スタートラインに立っただけだ。これを褒められてると思うならそう受け取ればいいし、どちらでもいい。
結局のところ、自分のことは自分で決めるしかないのだから。
それきり黙り込んでしまったエルミナを抱えたまま歩いていると、ふと廊下の先から冷たい空気が漂ってくる。
見れば、辺り一面が凍り付いた廊下の中カイト先輩が壁に背を預けて凭れ掛かっていた。
「随分とボロボロですね」
「ああ、マリアベ……ッ?!」
「? 急にどうしました?」
声をかけると、疲れた様子で先輩がこちらに振り向──いたかと思えば、物凄い勢いで顔を逸らした。凄いな、なんか変な音がしたぞ。
「あ、あの……マリアベルさん。その、制服が……」
「制服?」
別に普通の制服のはずだが……と、思いを巡らせて、そこで。
「あぁ! そういえばこっちもボロボロでしたね」
体は無傷だからすっかり忘れていた。というか、結構うぶな反応をするんだな。主人公なのに。
いや、主人公だからか?
「ああ! じゃなくて……。ほら! これでも羽織って!」
「わぷ!?」
カイト先輩の叫びとともに、視界が暗闇に覆われる。次いで、腕の中にあったエルミナの重みが消えた。どうやら上着か何かを投げつけられたらしい。
「わわ、先輩!?」
「ごめん、けど我慢して」
「いえ、降ろしてもらっていいんですが……」
何やらぼそぼそと聞こえる二人の声を背景に体を覆っている布をどかしていくと、やはりそれはカイト先輩の上着だった。
羽織ってみると袖はぶかぶかで、手を動かすたびに余った布が揺れる。裾も膝の少し上まで届いており、破れた制服を隠すには十分だった。
──これは……いわゆる彼シャツというやつなのでは?
◇眠たい でも絵面だけはいいな
ふふふ……ラスボスの野望は阻止できたし、先輩ともそれっぽいイベントがこなせたし、成果は上々なんじゃないだろうか。
未だに私に背を向けている先輩を見ながらそんなことを考える。ゲームオーバーになるとか言われた時はどうなることかと思ったが、まあ終わりよければ全てよしである。
「先輩、もう着たので顔を逸らさなくても大丈夫ですよ」
「本当に?」
「ええ、帰りましょう」
言って、そのまま足を進める。背後からは先輩の足音と、エルミナの声が響いていた。
◇
そして、数日後。
いつものように訓練場で先輩と向かい合い、試合を行おうとしていた──のだけど。
「なんでいるの?」
「私も、いつまでも弱いままでいられませんから!」
なんかエルミナがやたらと気合の入った表情で訓練場に立っていた。カイト先輩は知っていたらしく「やあ」なんて手を上げて挨拶をしている。
いつの間に仲良くなったんだろう。流石主人公、手が速い。
「それは結構なことだけど……なんで一緒に? 自分で言うのもなんだけど、天と地ほどに差があると思うけど」
暗に「私と訓練しても辛いだけで身にならないんじゃね?」と伝えるも、エルミナは頑として引く様子を見せない。それどころか──。
「い、一緒じゃないと意味がないんです!」
「実力が離れすぎていても意味がないと思うけど……まあ、あなたがいいならそれでいいわ」
なんにせよ、積極的なのはいいことではある。戦えた方がいいのは確かだし。
「ま、負けません!」
何にだろう。……自分にか?
──いや、待て。エルミナはヒロインで、カイト先輩は主人公だ。そして一緒でなければ意味がないというのはつまり……。
「ライバル、というわけね……!」
◇ドンゴラ なっとるやろがい!
◇つっきー☆ アホのアホたる所以出てきたな
原作ヒロインだろうが関係ない、最終的に
なぜなら私は恋愛においても最強なのだから。
「ええ、私も負けないわ」
「……? 何にですか?」
「全てによ」
神にも世界にも、運命にも。私の道を遮るのなら何人たりとも許しはしない。
そう、全ては輝かしい来世のために──!
◇
神仏チャット▼ ◇ミクロコスモス 結局原因はわかったの? ◇審判員 根本原因は不明 だけどリオンがなんであんなことになってたかはわかった ◇数式の妖精 結論から言うと、世界の上限が上がってる ◇ロキロキロッキン まずくない? ◇数式の妖精 まずいよ ◇審判員 具体的に言うと上澄み──この世界における神なら、俺たちの領域に指が届くくらいにはなってる ◇ロキロキロッキン いやガチでまずいじゃん ◇審判員 だからマズいっていってるだろ ◇数式の妖精 根本原因はまた調査するしかないけど、また何か起こったらマリアベル頼りだな ◇ミクロコスモス 歯痒いけどまぁ仕方ないか ◇ロキロキロッキン 条件さえクリアできれば介入も出来るが…… ◇審判員 その条件満たすのがムリゲーな時点で諦めろ ◇ミクロコスモス 結局はいつも通りか ◇数式の妖精 そういうこと | |
配信待機画面【マリアベル・レーヴェンを待っています】 | |