TSギャルゲー転生主人公逆攻略実況配信 作:一般TS好き
神仏チャット▼ ◇マリアベル 集合! ◇あふろん 何何何!? ◇ドンゴラ 朝からどうした ◇ミクロコスモス なんかあったか!? ◇マリアベル エルミナについて知ってることを洗いざらい吐きなさい! ◇ロキロキロッキン それは……ほら ◇審判員 俺たちはあくまでも観客であり、過剰な肩入れは禁止されてるんだよ ◇マリアベル 喧しい! こちとら命狙われたんだぞ! ◇ロキロキロッキン それでも、だよ ◇審判員 結果としてお前が死ぬならそれもまた輪廻の一つとして処理されるにすぎない ◇つっきー☆ 知りたいなら本人に聞くのが一番早いってこと | |
【とっとと】『天墜のソラリス』主人公逆攻略実況配信【吐け】 | |
ちっ……使えない連中だな……。知識の提供もできないならいよいよ賑やかし以上の価値がないじゃないか。
……まぁ、仕方ない。詰めても吐かない情報源に無駄な時間を使っている暇はないのだ。
チャット欄から目を離し、寮の部屋を出る。幸い今日は休日なので、朝イチの今から向かえばエルミナもまだ部屋にいるだろう。いなければその時に考えればいい。
巧遅は拙速に如かず。善は急げ。月刊誌より週刊誌なのだ。クーガーの兄貴もそう言っていた。
つまりなによりも──。
「速さが足りない!」
「うわぁ!? なんですか朝から!?」
ここが
というわけで、私は早速寮にあるエルミナの部屋へとやってきていた。人数の関係で一人部屋なのか、散歩にでも行っているのか、都合のいいことに部屋にいたのはエルミナ一人だけである。
「話があるわ」
「えぇ……普通に進めるんだ……。な、なんですか?」
「端的に言いましょう。先日、あなた絡みで命を狙われたわ」
「えぇ!?」
驚いているエルミナに、王都で尾行されたこと、エルミナに近寄るなと言われたこと、それを断ったら殺されそうになったことを話す。
話を続けていると、エルミナの表情がみるみるうちに青くなっていった。人ってこんな目に見えて顔色が変わるんだな。
「と、いうわけだけど──何か申し開きはある?」
「え、ええっとぉ……。あ! ほら、同姓同名の知り合いがいたり──」
「すると思うかしら」
「するわけないですよねごめんなさい私が悪かったです」
自分でも無理があるとわかっていたのか、すぐに頭を下げて謝ってくるエルミナ。
「謝罪はいらないわ。言い訳も結構。事実を事実として述べなさい」
「笑いませんか?」
「事と次第によるわね」
恐る恐る、といった様子で聞いてくるエルミナ。事ここに至ってまだそんなことを気にしているのだろうか。話すまで私が帰らないと理解しているだろうに。
「驚いたりは?」
「想像を超えてればするんじゃないかしら」
例えば、実は闇の組織に誘拐されて人体改造された変身ヒーローなんです! とか言われたら流石に驚くと思う。俺とお前でWライダーになろう。
「……恐れたりは?」
……ここが本質か。
「しない」
きっぱりと、迷うことなく即答する。恐れる? 私が? いまさら何を恐れるというのだろう。既にこの身は──違う、そうじゃない。
ズレかけた思考を元に戻す。今大事なのはそこじゃない。
頭を軽く左右に振り、前を見る。即答したことが意外だったのか、エルミナが目を丸くしてこちらを見ていた。
「で、話してくれるのかしら?」
「……はい。でも、ここだと同室の子が帰ってきちゃうかもなので、場所を変えましょう」
「わかったわ」
「ありがとうございます」
エルミナは薄く笑ってそう言うと、小さなペンダントだけを手に取って部屋を出る。離されないようについていけば、あれよあれよという間に見たこともない学院の奥深く。そこにぽつんと設置されたベンチへとたどり着いていた。
周囲は高い生垣に囲まれており、上を見ればまだ低い朝日に照らされた朝焼けが見える。春も終わりに近いというのに朝の空気はまだ冷たく、肌寒い。
「こんな場所があったのね」
「お気に入りなんです。ここは、人が来ないから」
「随分と寂しい理由ね」
「そうかもしれませんね」
うーん……苦手な空気だ。こういう真面目な空気ってどうにも好きじゃないんだよな。全身がむず痒くなる。しかも相手が悲痛な顔をしているとなおさらだ。自分で気づいてないんだろうか。ないんだろうな。
そんなことを考えていると、エルミナが口を開いた。
◇
「私の家……ヴァラ家の女には、時々変な力を持って生まれる人がいるんです」
一度口を開いてしまえば、あとは簡単だった。流れる水のようなもの、と言えばわかりやすいのだろうか。
「見えないものが見える。読めないものが読める。知らないことを知っている」
祝福だ、と誰かが言った。呪いの間違いだ、と私は思った。
「誰かが明日死ぬ。何かが明日消える。何処かが明日滅びる。そういったことがわかる女」
せめて、自分で選べたらマシだったのだろう。力を巡って争いが起きたとしても、今よりはよっぽど。
「でも、それは自分では制御できないんです。お婆ちゃんは、神託とか、予知夢とか言ってました。自分でもわからないんですけど、気づいたら知ってるんです」
ぎゅう、と手に持ったペンダントを握り締めた。死んでしまった祖母の形見。今はもう、声も覚えていない。
「知ってるのは、家族の他には王族の方と、学長くらいです」
だから、マリアベルさんが狙われた、というのはつまりそういうことなのだろう。私の手配書が出ている、というのも。
「私は──歴代でも特にその力が強いみたいで。昔からよくわけのわからないことを言っては怒られてました」
お婆ちゃんだけが、私と同じだった。……ううん、お婆ちゃんも、同じではなかった。
時折、目の前がブレて見える。世界を遠くに感じる。今いる場所が現実なのか。それとも、見てはいけない場所なのか。私には、もう分からない。
「だから」
私とは付き合わない方がいい。そう告げようとして──。
「話が長い!!!」
業火のように煮えたぎる怒りの声が、全てを叩き切るのだった。
◇
話が! 長い!
こっちは事実確認を求めてるんだよ事実確認を! お涙頂戴のメロドラマはいらないんだっての!
◇あふろん 今の話を聞いて出てくる感想がそれってマジ?
◇眠たい 人の心ないにも程があるだろ
◇数式の妖精 感動シーンとか飛ばすタイプ?
「つまり、あなたは未来──のような何かを知っている。殺し屋の一派はそれを狙ってる。で、その情報を知ってるのはごく限られた人間だけ。たったこれだけでしょう」
「え……いや……まぁ、そうですけど……」
「けど、じゃない! はいかいいえで答えなさい!」
「は、はい! その通りです!」
私の声を受け、びしりと背筋を伸ばして答えるエルミナ。最初からそう言っておけばいいのだ。それをうじうじと長話にしてしまって……。
未来が見える。他人と違う。狙われている。だから──身を引いた方がいい。
なるほど正しいのだろう。身を危険にさらしてまで付き合う意味はない。私の目的はカイト先輩なわけだし、余計に。
──
どいつもこいつも好き勝手にああしろこうしろと指図をしてくれる。こちとら既に
そして──。
「で、結局あなたはどうしたいの」
「……えっ?」
「知ってしまう。狙われている。危険だ。あなたの言ってるの、全部受け身じゃない。あなたの意思はどこにあるの?」
エルミナは答えない。あわあわ、おろおろと忙しなく視線を動かしては口を開き、無言のままに閉じていく。
……なんだ、この程度なんだ。
「ま、いいわ。離れてほしいって言うなら別にあなたに拘る必要もないし。話してたのも暇だったからだしね」
「ええっと……」
「じゃ、さようなら。思ったよりもつまらないのね、あなた」
それだけ告げて踵を返す。結局、答えが返ってくることはなかった。
◆
神仏チャット▼ ◇あふろん まさか本当に立ち去るとは ◇ドンゴラ あれから数日経つけど会いに行かないあたりマジなんだろうな ◇ミクロコスモス 珍しくマジ失望の声だったからな ◇ロキロキロッキン まぁ企画には影響ないし、本人がいいならいいんじゃない ◇つっきー☆ それはそう ◇審判員 ところでさ ◇ロキロキロッキン なに? ◇審判員 エルミナが言ってた内容 | |
配信待機画面【マリアベル・レーヴェンを待っています】 | |
イライラする。
ここ数日の私の気持ちはと言えば、その一言に尽きた。配信をつける気にもならない。
原因は明白だ。
エルミナの他人任せな姿にイラついている。それをよしとしている環境にイラついている。
そして、それにイラついている自分自身に一番ムカついている。ムカつきMAX三倍界王拳である。
配信をつけないのもそれが理由だ。つけたら多分ブチギレる自信がある。
「なんて、あまりにも情けない思考ね」
勝手に他人に期待して、勝手に失望して、勝手にキレる。あまりにも情けない。情けなさすぎて涙が出てくるな。
「こういう時は、基本に立ち返るのが一番ね」
そう、基本である。この世界で生きる絶対目標にして終着点。充実したサードライフのためのトロフィー。
即ち、カイト先輩である。
「というわけで先輩、模擬戦をしましょう」
「どういうわけなのかな」
「細かいことを気にする男性はモテませんよ」
いつもの訓練場。授業も終わり、閑散とした決闘場に二人で立つ。そして、カウントが開始され──。
ゼロになると同時に、目も眩むほどの極光が周囲を覆った。
「ッ!?」
「これは……」
抜剣間際だった動きを止める。しかし急に停止をかけたせいで勢いは止まらず、思わずたたらを踏んだ。
「今のは……」
「王都の方角でしたね」
まるで流星でも降ってきたかのような明るさだった。太陽すら一瞬かすませ、辺りの全てを白く照らす光。どう見てもただ事ではない。
──四の五の言ってられないか。
即座に配信を開始する。なにやらまたしてもチャット欄で考察をしていたらしいが、無視だ無視。今はそれよりも大事なことがあるのだから。
神仏チャット▼ ◇マリアベル 王都から極光が走ったけど、これは原作イベントなの? ◇ドンゴラ え、マジ? ◇ミクロコスモス もうそこまで進んでるの ◇ロキロキロッキン 黒幕は黒幕でRTAでもしてんのか?ってくらい手際がいいな ◇マリアベル そういうのいいから、はいかいいえで答えなさい ◇審判員 「はい」 ◇つっきー☆ ゲームだと極光は黒幕の計画が本格始動……っていうより、表に出ても問題ない段階に差し掛かったことを示すんだよ ◇ミクロコスモス つまり、エルミナの力を手に入れたってこと | |
【とっとと】『天墜のソラリス』主人公逆攻略実況配信【吐け】 | |
へー、エルミナの力をねぇ。
…………早くない?
◇審判員 ついでに言えば普通にまずい
◇TS好き好きマン 原作だとこの辺助けるの役目はカイトくんだけど、この世界だと関わってないしな
◇審判員 で、どうすんの?
どうする、と言われてもな。今の私とエルミナは他人だ。彼女がどうなろうと関係はない。多少思うところはあるが、これも彼女が
◇ミクロコスモス このまま計画が成立したらバッドエンド入ってゲームオーバーで企画終了だけど
◇あふろん 来来来世もパーってわけ
「は!?」
「うわぁ!? 急に大声出すじゃん!」
「あ、いえ……すみません、少しびっくりしてしまって」
いやいやいやいや、それは話が違うだろ。エルミナがどうなろうが関係なくない? カイト先輩を落とせばいいんでしょ、落とせば。
確かにここはゲームの世界だけど、同時に現実だ。ルートが確定したからと言ってゲームオーバーになったりするわけ──。
◇眠たい 世界が終わる条件はそれぞれ決まっているんだ それを満たした時、
◇審判員 つまり、ゲームオーバーってわけ
する、わけ……あるんかい! というか、その場合って私の扱いはどうなるんだ?
◇つっきー☆ つまり、企画終了で通常通り漂白されて輪廻に戻るってワケ
◇ドンゴラ 当然報酬もない
だいぶ話が変わってきた。というかこれってもはや詐欺じゃないか? カイト先輩を攻略すればいいと思わせておいて、ゲームオーバーのフラグ管理までやらされるの?
◇数式の妖精 ちなみにルートフラグ建ってない状態だとそもそもゲームオーバーフラグも建たないから完全に自業自得
どうやらそういうことらしい。そういうことらしいじゃないが?
──はぁ。仕方ない。……いや、本当に仕方ないのか? これ。仕方ないらしい。
「先輩」
「あ、やっとこっち向いた。また百面相してたけど、何か考え事でも?」
「世界を救いに行きますよ」
「本当になに!?」