流石に百合セフレを増やし過ぎたクズ女の辿る末路 作:すっごい性癖
浮気。
「それじゃ、行ってくる。今夜は遅くなるから、先に夕飯食べて寝ていていいぞ」
「……また、ですか?」
それは、愛を誓い合った、一生の伴侶をないがしろにし、裏切る行為。
「仕方ないだろ。接待だって立派な仕事の一つなんだ。それともなんだ、お前は夫が仕事をサボって、出世できなくてもいいってのか?」
「……いえ、それは」
それは主に夫、もしくは妻を持つ身でありながら、別の人間と懇ろな関係を築き、不貞を行ってしまうことを指す。
「はぁ。……頼むから朝から嫌な気分にさせないでくれよ」
「……ごめん、なさい。あなた」
妻が居ながら別の女と逢瀬する。夫が居ながら別の男と遊びの関係を結ぶ。これらは当然、浮気であり。
「まぁ、オレも言いすぎな所は無かったとは言えん。アレだ。今度の休みは久しぶりに外に何か食べに行こう」
「……いい、ですね。えぇ、それは」
そして、妻を持ちながら別の男と親密になったり、夫を持ちながらも別の女と寝る様な行為も浮気である。相手が同性か異性かはあまり関係ない。
重要なのは、浮気という名の通り、気が浮いた行為を行っているかどうかだ。
「だろう? それじゃあ、行ってくる。愛してるよ、心」
「……えぇ、私も。――いってらっしゃい」
だから、彼女の。二重心《ふたのえこころ》のしている行為は、まず間違いなく……。
「……はぁ」
――浮気、そのものなのであった。
「おはよ~、心。朝から辛気臭い顔して、どしたの」
「……来てくれたんだ、桃花ちゃん」
伊蝶ちゃんとホテルで分かれた私は、近くの住宅街へと移動していた。現在時刻、朝七時。普段なら寝ている時間なのだけれども……。
「連絡ありがとね~」
彼女からのお誘いのメッセージは結構レアなので、気合で来たのだ。セフレの中でも、一番合う頻度が低いのよね、彼女。だから今朝、連絡に気が付いたときには「おっ」なんて、柄にもなく少しはしゃいだし。
とはいえさすがに昨晩、ガッツリめにハッスルしたのでメチャクチャ眠いのだが。
「時間帯的に、旦那さんがお仕事に行ったところ、ってかんじかな。家の外に居たし、お見送りでもしてたの? 健気だねぇ」
確か彼女の旦那さんは商社でバリバリ働いている、やり手のビジネスマンだったか。朝早いってのに、ご苦労なことだ。毎日が夏休みの自堕落大学生にはとてもじゃないがマネできないね。マネする気もないけど。
……で、だけど。
「今日、こんな朝早い時間に呼び出したってのも、旦那さん関連なの?」
ん? どうなの? と、彼女に詰め寄る。たじろぐ心。どうやら図星らしい。
「へぇ……。なんか、確証になるものとか、見つけちゃった感じ?」
私はそんな彼女の様子にピンと来て、さらに問いを深めると、彼女はすぐにコクリ、と頷いて答えた。ビンゴだ、どうやら当たりの様子。
そっか、そっか。見つけちゃったんだ。まぁ、十中八九そうだろうとは思ったけれどもね。
というか、だからこそ私と心とはセフレになったのだから。
ありがとうと言うべきだろうか。そんな、やり手のビジネスマンである旦那さんの……
「浮気に、ね」
私はいつまでも外に居るのもアレだし、と彼女の腰を横に抱いて、二重家の邸宅に入っていくのであった。
私が心に初めて会ったのは、とあるボランティアが最初であった。
もちろん、ボランティアと言っても私が自分から奉仕の心で参加したものではない。大学で所属しているゼミ、その教授に半ば強制的に参加させられたものである。
彼女はとある市営のプールでインストラクターをしており、主に子供たち向けのスイミングスクールの先生をしていた。プールの水の中で目を開く練習から、クロールや平泳ぎ、背泳ぎにバタフライとを教えるに至るまで、さまざまなレベルの子に泳ぎを教える、そんな仕事。
私が参加したボランティアは、夏休み期間に子供が増えるから、とその間だけのサポートをするものであり、その結果として彼女とは交遊を深めるようになったのである。
とはいっても、だ。そりゃあ当たり前の話だけれども、いくら仕事で話すようになったからと言って、すぐにセフレになる、なんてことにはならない。たしかに普段接していて「この人、エロいなぁ」なんて思うことは度々あったが、だからといって口説くなんてことはしない。一か月近くあるボランティア期間で、勤務先の人とセックスしても人間関係が面倒になるだけだしね。
ではなぜ。なぜ、私と彼女とがセフレとなったのか。
それは、ボランティア最終日に開かれたお疲れ様会を兼ねた飲み会での話である。
『今夜は無礼講だ、飲むぞ~!』
なんてことを最初、感じの人は言っていたが。そういうのって大体は社交辞令だというのにねぇ。
その日は本当に、無礼講な飲み会が開かれてしまった。誰もが後先考えずに酒を飲み、隣にいる人間とは下品に笑い合い、そしてさらに酒を飲む。飲み会を覚えたての大学生でももうちょっとマシな飲み方をするぞ、という有様だったのを今でもよく覚えている。
おそらく、夏休み期間で仕事が毎日毎日忙しく、溜まってしまっていたストレスが、一気に爆発してしまったのだろう。誰も、歯止めが利かずにいた。
幸いと言うべきか、普段から遊び慣れていて、それでいて仕事はそれなりでやっていた私はストレスなんかもあまり抱えていなかったから、飲みすぎ、なんてことにはならないで冷静に居られたのだけれども……。
『うぉ~!! 今夜は、飲むぞ~!!』
逆に心は、その生まれつきの真面目さから誰よりもストレスを溜めていたのだろう。それはそれは、荒れていた。
どれくらい荒れているかというと、ビールのつまみに日本酒を飲み、チェイサーにハイボールを挟んで、たまにワインをグビグビ飲む、といった風に。ちゃんぽんもちゃんぽんな飲み方で、正直、見ていて急性アルコール中毒とかにならないかヒヤヒヤとしたものだ。
当然、そんな無理のある飲み方を普段からしない人間がすればすぐに酔いつぶれる。
彼女がアルコールに押しつぶされたのを確認した私は、『ボランティアも終わったし、最後に一発ワンナイトしとこっかな』などと思い彼女に近づいたのだが……。
『……っ』
『心、さん……?』
そこで気づいたのだが、彼女は何故だか泣いていたのだ。
私は焦った。先ほどまで気分良さそうに酒を飲みまくっていた心が――当時はセフレになる前だから心さん、呼びだったけれども――今度は急に泣き始めたのだから、そりゃあ焦る。
ただ、その場で彼女が泣いていることを周囲の人に気取られたら面倒だった私は、すぐに彼女を連れて盛り上がっている飲み会の席の隅へと移動し、二人でちょこんと並んで隠れるように座った。
それからしばらくして落ち着いた彼女に、どうして泣いているのかを尋ねたのだが、彼女が泣いていた理由は……。
『夫が、浮気している……かもしれないの』
なんと、彼女の夫の浮気疑惑によるもの、だという。
なんでも詳しい話を聞くと、かれこれ一年ほど前から家に帰ってくるのが遅くなった旦那さん。理由を聞いても仕事だ、と毎回言われるし、そう言われたらそれ以上の追及ができないから彼女も諦めるしかない。
次第に夜の回数も減っていき、気が付けば半年くらいご無沙汰にもなっていたという。
あまり夫を疑いたくはなかった彼女。こんなの私の思い込みだ、って自分に言い聞かせてきて。
しかし、ついこの間彼女は見つけてしまったという。
『……夫が、他の女性と親しそうにメッセージをやり取りしているのを』
きっと旦那さんは油断していたのだろう。休日のある日、彼女はリビングで掃除機をかけていた時、ソファに座る旦那さんが浮気のやり取りであろうものをしているのを、偶然見かけてしまったらしい。
『……実は、今日もね』
今夜の飲み会も、実は彼女は参加するつもりがなかったらしい。それは、今日が彼女と旦那さんの結婚記念日であり、かねてから二人での食事を約束していたからだという。
けれども……。
『また、仕事が急に入ったって、言われて』
旦那さんはその予定を今日の朝、急にキャンセルしてしまったらしい。理由はいつも通り、仕事の都合で。
実際がどうなのか、わからないけれども。
『さっきはみっともなくて、ごめんね? ちょっとヤケになっちゃってたからかな、変なお酒の飲み方もしちゃって』
先ほどまでの異常なアルコール摂取も、そのストレスの発散を兼ねていたらしい。私には特定の相手も居なければ、浮気されたからストレスが溜まる、なんて気持ちもわからないけれども。彼女にとってその日の朝のやり取りは、それだけ荒れるに足る理由であったらしい。
『あの人も外で遊んでるんだったら、私も今日くらい、羽目を外そうかな、なんて思ったんだけどね。桃花ちゃんに迷惑かけちゃって、ごめんね』
そして彼女曰く、酔いつぶれたのさえも予定通りであったらしく、彼女は今夜、誰かにお持ち帰りされることを期待していたという。
それは、恐らく自暴自棄によるものだろう。夫が余所で女を作ったのだから、自分も外に男を作れば、それだけしてやったつもりになれる。旦那にしてやられた、って気分でいなくていい。
私は、そんな彼女の告白を聞いて……。
『心さん……』
『え、桃花ちゃ……、んっ!?』
ためらうことなく、彼女の唇に自身の唇を押し当てて、すぐさま舌と舌とを絡め合わせた。
そのキスは、これまで私がしたものの中で最もアルコールの香りが強かったからよく覚えている。唾液を飲み下しただけで、酒精の強い酒を飲んだような喉の焼けを感じた。
『忘れさせてあげますよ……。私が、全部。旦那さんのことや、嫌なことも、全部、全部――』
これが、私と彼女との最初の夜の始まりの話。
『だから、こちらに身を委ねて。――心』
浮気のセフレが誕生した瞬間であった。