流石に百合セフレを増やし過ぎたクズ女の辿る末路 作:すっごい性癖
「それで、掴んだ証拠って……?」
二重家のリビングへと移動した私たちは、向かい合う様にして椅子に座った。中央には二人暮らしにしてはやや大きい食卓が置かれている。
彼女は私の問いに対し、スッと一枚の写真を手渡すことで答えとした。私はそれを黙って受け取り、視線を移して……
って、こりゃあ、あらら。
「がっつりだねぇ、これは」
私は思わず苦笑いをする。なんというか、お粗末な、というほかに言葉が見つからない。
「ホテルから出てくるときとか、一番気を着けなきゃなのにねぇ」
ぴっ、と彼女に写真を片手で返す。
その写真にはわかりやすく、はっきりと。二人の男女がラブホテルからそれはそれは仲良さそうに出てくるところを写していた。
当然そのうちの男の方は、彼女の旦那である。
「やー、しっかし。なんというかねぇ、言っちゃなんだけどさ。心の方が断然美人じゃんか。なんでこんなよくわからん女に手を出してんだか、わからんね」
別にバカにしている訳じゃないんだけれどもね。明らかに写真に写っていた女の方は、低レベルの女とは言わないが、少なくとも心と比べて勝っているとは決して言えない容姿をしていた。
そりゃあ女の価値が容姿だけではない、というのはわかっているけれども、とはいえ火遊びの相手を選ぶんだったら顔が第一だと思うのは私がおかしいのかねぇ。そんなことないと思うけれども。
「こりゃあ、浮気相手ってよりも、浮気している自分に気持ちよくなっちゃってるパターンだ。モテるオレ、ツレぇ、みたいな。……だっさぁ」
じゃなきゃわざわざ都落ちなんて酔狂にハマるはずがない。黙って家に帰ればこんな上等な奥さんが待っててくれてるってのにさ。
「で、どうするの? これ以外にも証拠を集めてるんだったら離婚も余裕でしょ? するの、離婚?」
「離婚、は……」
言いよどむ心。
これだけ証拠集めに執心していたというのに、いざ最後の一手を打つのかと聞いたら言いよどむって、なんてアンバランスなのだろう。普通、証拠集めなんてそういう行動を心に決めたときに行う手段であるだろうに。
だって、離婚する勇気がわかないなら、浮気の証拠何て探さなきゃ、全部自分の思い過ごしで片づけられるんだからさ。
でも、そうしないってことは単純に……。
「当ててあげようか……。心も、すっかり浮気エッチにハマっちゃったから離婚できない。でしょ?」
そういうだけの話である。
そりゃあ普通ならお金とか世間体とかも関係してくる判断だから、彼女が離婚を決意できないからってイコール、エッチにハマったとは言えないだろう。
けれども、彼女の場合、あの飲み会の日の時点で自暴自棄になるほど思い詰めていたのだ。アルコールに一時的にも逃避して、場合によっては自分も浮気してしまおうかなどと考えて。しかもその時はあくまで、旦那の浮気は疑惑でしかなかったってのに。
そんな彼女がここに来てまだ、離婚は悩む、なんていうのはハナからおかしいのだ。証拠まで集めて、ねぇ。積極的なのか、消極的なのか何を考えているのか不明になるだろう。
ならば理屈は置いておいて、理論は飛躍させて。そしてこれまでの付き合いで得てきた彼女という人間の精神性を踏まえれば、現在の躊躇に至った理由など一つしかない。
「そう言う意味ではお似合い夫婦だった、ってわけだね。夫も夫なら、嫁も嫁。二人して、結婚式で愛を誓った相手以外とのセックスに夢中になっちゃってる」
すり、すり、と机の上で彼女の左手を両手で握って軽く擦る。ぴく、ぴくっ、と動いて可愛らしい反応だ。思わず意地悪したくなる。
「離婚したら、それはもう浮気エッチじゃなくなるもんねぇ。夫が働いている傍ら、夫が稼いだお金で生活をして、気が向いたら間女を呼んでエッチ三昧。 そりゃ、止められないでしょ」
くりくりっ。
人差指で軽く押し込むように、彼女の左手の薬指の根元に嵌められた銀の輪を弄くってみる。これを買った頃はきっと二人とも愛に燃えていたのだろうに、今じゃこの金属質な輪っかと同じくらいに冷え切っているってのは、なんともまぁ、残酷な話じゃないか。
「心ってば、最低だねぇ。あれだけ軽蔑していた旦那さんと、おんなじになっちゃったんだから」
「誰が……、私をこうしたとっ!!」
そう、軽く煽ってあげればわかりやすいように彼女は反応をする。彼女の中の良心が、今の軽口を看過できなかったのだろう。
無視が出来なかったのだ。浮気セックスにハマっている自分という存在と、私という間女の存在に。
私は、ぎゅうと彼女の両の手を包み込むようにして握りこむ。
「うん、そーだよ。心をそんな最低にした、わるーいセフレが……、わ・た・し」
ちゅ。握る彼女の手、その指の大に間接付近に軽い口づけをする。
「でも私には恋人も居なければ、当然、結婚している人も居ないからね。愛している人を裏切る、なんてことをしているのは、心だけなんだよ」
「――ッ!!」
瞬間、堪えきれなくなった心が席を立ち、間にある食卓さえ無視してこちらに突っ込んできた。机の上を跨るようにして、こちらへと一直線に。
ガタン、と椅子が音を立てて倒れる。私はそのまま、彼女に床へと押し倒されてしまった。
衝撃がそれなりにあったから、背中が痛い。けれどもそれ以上に、両腕を押さえつける彼女の腕の力が痛い。
さすが、水泳のインストラクターなんかをやっているだけある。同じ女であっても、筋力にここまでの差があるだなんて。
ゆるふわとした見た目に反して、とても攻撃的な人だ。
「押し倒されちゃったなぁ。もう、身動き取れないなぁ……。これから、私、どうされちゃうんだろう。こわいなぁ……」
なんて棒読み、なんて猿芝居。傍から見たら失笑物の、おふざけ演技。
もちろん、心だってそれは十分に理解しているだろう。私のこの言葉が、ただのおふざけだって。
「……、ね、どうしちゃうの、心?」
けれども、それを指摘しない。決して笑ったりしない。
何故ならば、彼女自身も私の始めたこの三文芝居の役者の一員だから。
この、『女子大生とサレ妻の浮気百合セックス』なんていう、AVでしかありえないような場面に、彼女自身がイチバン、のめり込んでしまっている。
ほんと、よく似たご夫婦だ事。立派なお仕事をしている旦那さんがいるってのに、私みたいなただの女子大生にハマってしまうだなんて。
「――私を、どうしたいの?」
教えて、せんせい……?
そう言うや否や、私は彼女に唇を奪われ、そのまま何度目かもわからない最低な浮気行為を重ね始めるのであった。