リアルな異世界は現実(リアル)よりも厳しいです~灰色兄妹の冒険譚~ 作:熊澤しょーへい
世界を構成する国々
おはよう。こんにちは、それともこんばんは?
ああ、すまない。ここでは時間の流れが不明瞭でね。
本に囲まれたこの生活は悪くない。ただ、こういう時は少し不便だね。
―――ああ、申し訳ない。自己紹介が遅れたね。
ワタシの名前は[不明瞭なノイズ]だ。
どうだい、良い名前だろう?
・・・どうした?そんな怪訝な顔をして
ふむふむ、なるほど。・・・ワタシとしては、しっかりと発言したはずなのだがね。どうもこの体は便利なようで、不便が多すぎる。
言い方を変えようか。ワタシは閲覧者、読書家、管理者、司書、執筆者・・・或いは
よしよし、今度は全部聞き取れた様だね。
ワタシはそのどれでもあって、どれとも違う。
まあ、キミが好きなように呼んでくれていいさ。
さて、今日君がここに来た理由を当ててみよう。この世界について知りたいのだろう?
用語が多すぎるからね。整理したい気持ちは大いに理解できるとも。
ああ、しかし、しかしだ。どうかこの複雑さを煩雑だとは思わないでくれ。
キミが今過ごしている世界。それと全く違う世界を創造しているんだ。どうしても専門用語は多くなってしまう。
その点は了承してくれるとありがたい。
これ以上キミを焦らすのは止めにして、早速解説に移るとしよう。
今回解説するのはこの世界を成立させる国々についてだ。
この作品の舞台は人暦1017年。神々から人へ世界の運営権が移ってから実に1000年。多くの国が興り、拡大し、縮小し、そして滅んだ。
現在は国家間戦争は発生していないが・・・この先もその平和が続くとは限らない。
では、各国家について見ていこうか。
◇◇◇
ルベド共和国
この国家が誕生したのは比較的最近、人暦980年ごろのことだ。
カベルニア自由自治国との間に巨大な山脈があってね、踏破に成功したのが人暦900年も半ばに差し掛かったころだ。
「共和国」の名前の通り、国王はいない。
選挙によって選ばれた代表者会議で国政が行われている様だ。
山脈が多く、食糧自給率は心もとない。
自由自治国からの食糧輸入で何とか賄っている様だ。
食料とは逆に、鉱石などの採掘量は非常に多い。
この国は世界有数のダンジョン発生件数を誇っている。食料以外の産物はほぼ無尽蔵に湧き出ていると言っていい。
ただ、その分
先程言ったように、この国にはダンジョンが大量に発生しては攻略されている。そのため駐屯している冒険者の人数がかなり多い。
後進の育成にも力を入れているようで、世界冒険者組合主導で育成学校が運営されているほどだ。
だが、何も冒険者だけに頼り切り、というわけではないようだ。
ルベド共和国に居を構えた冒険者やその子孫によって構成された「ルベド自警団」は、その潤沢な資源とダンジョンから新しい国とは思えない武力を有しているね。
◇◇◇
カベルニア自由自治国
ここは世界冒険者組合が拠点としている国家だ。
成立自体は人暦300年ごろ。しかしこの時期には北東大陸には強大な魔物が数多のさばっていたようだ。それを駆逐し、漸く今の規模に落ち着いたのが人暦800年の少し前だったようだ。
南部の港は昔から整備が進められていてね。今では一番の貿易国家だ。
選挙制で選ばれた人間と世界冒険者組合の代表者からなる自由議会で国の舵取りが行われている。
ただ移民が多い歴史からか、選挙権の付与のハードルは厳しい。
特記事項としては、人暦1000年にSランク魔物の被害に遭った。
その魔物は当時の勇者によって討伐されたようだが・・・世界冒険者組合の本拠がある以上、いつ他の組織の襲撃が行われるか。
火種が消えることはないだろう。
◇◇◇
ハルトゥーラ魔王国連邦
魔王国連邦、この国の成立は古い。
神暦には既にこの地には国家が存在していたようだ。
とはいえ、現在のように統一国家の形を成したのは人暦に入ってからの様だが。
現在も小国時代の名残を多く残しており、
現在の国家元首は
国土の大半が砂漠地帯であり、人々はオアシスに集って街や集落を形成している。
そして何といっても特徴的なのが、国民の9割以上が
ヴァスデルム帝国とは犬猿の仲。何度も小競り合いが起こり、ついには人暦500年ごろに大戦争が勃発したほどだ。結果、死傷者が数十万を超えたという統計が産出された。最低値でだぞ?とんでもない。今は沈静を保っているが・・・
◇◇◇
ヴァスデルム帝国
遥か古代、神暦の時代には無数の小国が点在していた。種族も主義主張も異なる国々は
しかし戦国時代は唐突に終わりを告げた。人暦10年、大英雄ヴァスデルム1世率いるヴァスデルム王国によって大陸は統一。これがヴァスデルム帝国の始まりだ。
しかし帝政は長く持たなかった。
第2帝政、共和制と政体は変化し、現在は第3帝政を採用している。
とはいえ、絶対君主制ではない。皇帝の権限は議会によって押さえつけられており、実質的な立憲君主制の形を採っている。
現在の君主はヴァスデルム30世。
選挙権は未成年以外の全ての国民に付与されている。帝国は名ばかりとも言っていいね。だがこの国にとって『皇帝』というのはそれはそれは特別な存在なんだ。だから民意によって『帝国』を名乗っているとも言えるね。
軍事力は騎士団が担っている。
北方騎士団、西方騎士団、東方騎士団、南方騎士団が帝国の東西南北それぞれを守護していて、中央騎士団が皇帝の身辺警護を行っている。
中央騎士団のみ皇帝が直接の指揮権を有しており、それ以外の4騎士団は議会の統制下にある。
また中央騎士団は100人という上限が憲法によって設定されており、皇帝権限の暴走を徹底的に防いでいるんだ。この点は抜かりないね。
◇◇◇
始竜皇国
この国は列島だ。どの国とも国境を接していない。
そのお陰か、1000年以上政体は変化していない。といっても停滞している訳ではない。帝国や王国と昔から交易が続いており、技術を吸収している様だ。
政体は古代日本のそれと酷似している。
だが不可解なことに、
◇◇◇
レイブン王国
この国は世界で最も成立年代が古い。
発掘された神暦中期の石板に、レイブン王国の名前が記されていた。これがレイブン王国についての最初の記録だ。
神暦後期には現ヴァスデルム帝国領まで拡大していた。しかし世界大戦の混乱により王国領は縮小、現在の版図に落ち着いたようだ。
現在の政体は緩やかな王政。
国王は存在しているが地方貴族の力が強く、緩やかな共同体の様相を呈している。
現在の国王はレイブン42世。とはいえ直轄領は少なく、権力は微弱だ。
現在改革派の勢いが強く、強力な権力基盤の構成に向けて活動を行っている。
だが改革派は貴族と対立。今現在は政治的内紛に留まっているが・・・いつ全面戦争に移行しても可笑しくない。
そして王国内にはかつての栄光を捨てきれていない、極右派の支持も根強い。
噂では普人族主義者の過激組織の本拠地が国内にあるらしいが・・・噂で終わることを願おう。
◇◇◇
エクステラ神聖国
最後に神聖国についてだ。
この国は、一言で言えば宗教国家だ。世界一信者を抱えている宗教、エルメス教を唯一の国教と定めている。
教皇を中心として枢機卿、大司教、司教、司祭とエルメス教内部での地位がそのまま国の地位である。
現在のトップはレオフォルド3世。まだ10代の少女だが、どうやら体調が優れないようだ。直に代替わりが起こるかもしれないね。
そしてこの国も種族の偏りが起きていて、人口の9割以上が
とはいえ
現にレオフォルド3世は普人族。これは現在のエルメス教があまり攻撃的ではない点も大きな理由だろう。
構成種族からも分かるように、ハルトゥーラ魔王国連邦とは犬猿の仲だ。険悪といっても差し支えない。
これは神聖国内に魔王国連邦の大使館が存在せず、魔王国連邦内にエルメス教会が一つもないことを見れば一目同然だろう。
といっても現在は冷戦状態。お互いにお互いを無視している状態だ。
◇◇◇
と、国の説明はここまでだ。お疲れ様。
この7国が現在の世界を構成している。この国々を主人公たちが巡っていく、というのがこの作品のおおまかな流れだ。
一度で分からなくても問題ないとも。
何度でも読み返すといい。その度にワタシが懇切丁寧に教えてあげよう。
では、ひとまずお別れとしようか。良ければ他の本も読んでいってくれたまえ。