リアルな異世界は現実(リアル)よりも厳しいです~灰色兄妹の冒険譚~ 作:熊澤しょーへい
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人歴1017年
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ルベド開拓国
きんねん せいりつした くに
ダンジョンが ひじょうに おおく
いっかくせんきんを ゆめみる ぼうけんしゃが つどう
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どーも、どーも。ハイナちゃんです。
あ~、頭の中で文字が躍る~。
まーだ頭の中が整いきっておりません。
あの後、ジン兄のスパルタ指導が三日三晩続きまして、何とかこの世界についてのアレコレを覚えきりました。
もーやりたくない。
高校受験でも苦労したのに、大学受験の前になーんでこんな苦労をせにゃいかんのか。
ここ異世界ぞ?神様とやらに文句の一つでも言いたいね。
でもこれで終わり!
さっき筆記試験は終わったところ!
ラッキーなことに選択問題ばかり!テキトーにバーッと埋めてとっとと寝ちゃった。
え?記述?知らんな。
まー、何個かあったよ。穴埋めはやった。がんばった。当たってるかは知らん、マジで。
この話はもー終わり。全ては過去!終わったことだ。(過去ォ!?)
あと記述はホントに分からん。
確か魔法陣をうんたらかんたら~みたいな問題だったはず。
あ、魔法陣ってのは想像通りのやつね。魔法の発動に必要らしいやつ。
一回見せてもらったけど、文字?絵?がうにょうにょしてて1ミリも分かんなかったね。
まー、これは最初から捨ててたし。『魔法』って言葉が見えたのと、記述式って時点でペンを投げ捨てたね。
というか今更だけど、この世界普通にシャーペンとかあるんだね。
トイレも水洗式だったし。前に転移してきた異世界人のお陰かな?調味料とかも整ってたし。あ、流石に自動車はないよ。
いやー、感謝感激雨あられ。特にトイレが素晴らしい。木製とか想像もしたくないね。
おっと、話が逸れちゃった。
私たちは今、試験会場の広場にいる。何故かというと、試験はまだ終わってないからね。
午前中は筆記試験、午後は実技試験。その二つの試験の合計で合否が決まるらしい。
だから実技試験のために集まってる、ってワケ。
実技試験。嫌な響きだけど筆記試験より遥かにマシだね。
身体動かすの結構好きだし。ジン兄はものっすごい嫌な顔してたけど。
因みに今もブツブツ文句を言ってる。
うーん、暗い。みんなドン引きして近寄ってこないレベル。
さて、実技試験は何をするのか?当然、ここは異世界。受験者同士で剣術とか魔法とか競うらしい。
内容を聞いてこう思うかもしれない。異世界に来て一週間弱、剣とか魔法とか使えるのか?
大丈夫だ、問題ない。
私は一応剣道経験があったわけで、保護してもらった冒険者さんにレクチャーしてもらったけど「筋が良い」って褒められたし。
まあマジ剣は重くて使えたもんじゃなかったけど。初心者用の軽量化されたショートソードを貸してもらった。本当に感謝しかない。どこかでお礼しないと。
ジン兄の方は魔法の適性があったらしい。木製の杖を持ってる。
私の方は魔法適性が無いらしい。ジン兄いいなー。うらやま。私もルー〇スとかエクス〇クト・パト〇ーナムとか使ってみたかったや。
「受験番号193番、前へ!」
あ、呼ばれた。じゃ、行ってきまーす。
まー、気負わずにやっていこー。別に負けてもいいらしいし。当然、勝った方が点は高いけど。
「正々堂々戦えば大丈夫」ってアドバイスしてくれた。
ていうか初戦闘なんですケド。手加減してくれる人だといいな。
さて、対戦相手は・・・あ、来た。
頭から黒い角が生えてる。えっと・・・確か
髪色は金色。この世界は髪色とか目の色で魔法の属性が分かるらしい。
金色は・・・ちょっと待って、思い出すから。・・・・・・あ、思い出した。身体強化が得意らしい。確か。合ってたらだけど。
・・・落ち着け、まだ慌てる時じゃない。見た目で判断するのは
「ハッハー!貴様がこの俺様の対戦相手だな?!初心者の様だが同じ剣士、手加減はせんぞ!」
oh・・・マジか。
バリバリの武闘派ですやん。
私終わったかも。タコスの具材(優しい表現)にはなりたくないなぁ・・・
◇◇◇
(フゥン、動揺はしないか・・・)
見た目と口調に似合わず、慎重な性格なのだ。
勿論事前に全受験者の情報は所得済み。安くない金を使ったが、この入学試験にはそれほどの価値がある。
何せ世界を股にかける超巨大組織、世界冒険者組合の全面バックアップを受けている学校。教員はエリートと呼ばれるC
これほどの好待遇の学校、入学するために全力を尽くすのは当然のことだ。
(初心者ではないのか?だが情報が正しければ彼女は異世界人。・・・偽物を握らされたか?ならば慎重を期さねばならん)
世界渡りの影響か、異世界人は強大な魔力を宿している。
だが異世界人の殆どは武芸を習得していない。そのため強大な魔力は宝の持ち腐れになる、それが常識であった。
だが、その情報が偽物である可能性が浮上。
言葉と共に殺気をぶつけたが、全く動揺しない。
情報戦で後れを取ったか、それとも異世界人の子孫か。
コウセイは刀を下段で構える。この国で購入したものだが、感触は悪くない。
名刀とまではいかないが、粗悪品では決してない。
一方のハイナは構えすら取らない。
ショートソードの切っ先を地面につけている。
(フゥン、やはり初心者か?)
隙だらけのハイナを見て、考え過ぎたかと反省する。
しかし頭のどこかでは彼女を未だに警戒している。
(不気味だな・・・早く決着をつけるべきか)
刀を上段に構え直す。
守りの下段とは真逆の超攻撃的な構え。
こういう相手には時間を取らせてはいけない。師からの教えを実践する形だ。
コウセイが刀を上段に構えたのを見ても、ハイナに動きはない。
力は何処にも入っていない、ごくごく自然体。表情にも気負うものは全くない。
「武器を手放す、或いは降参の意思が告げられた時点で決着とします!ただし過度な暴力は厳禁であり、発見次第失格とします!それでは両者―――初め!」
審判の腕が勢いよく振り下ろされた。
◇◇◇
勝負は、一瞬だった。
号令と同時にコウセイは間合いを詰めた。
身体強化が得意な金色の魔力の補正もあるのだろう。ベテランの冒険者であった審判役も、辛うじて目で追えた程度。対応できるかは五分五分だ。
そして勢いそのままに上段からの一撃。それは別世界に存在する流派、「示現流」を想起させる。
しかし魔力による補正があるためか、威力・速度共に示現流の一撃を上回っている。
しかしハイナは動かない。
動けないのではない、動かない。
コウセイの一刀はハイナの目の前を通り過ぎ、地面を砕いた。
彼女はまるで結果を予知していたようだ、とコウセイは後に語った。
ハイナは隙だらけのコウセイの首に、ショートソードの刃を構えた。
彼の口から降参が告げられたのは、その直ぐだった。
◇◇◇
ハロー、ジンです。
まあ、時間はイブニングな訳だが。
ってバカな考えは置いといて。
っしゃあー!さっすが我が妹!マイエンジェル!世界一かっこ可愛いぞー!
今日のご飯は豪勢にするか。作るのはハイナの方だけど。
いや出来ないわけじゃないんだよ?ただ俺は「栄養があるならそれで十分だろ」派で、ハイナが「こういうのは凝ってナンボでしょ」派なだけで。毎食サンドイッチにしたらハイナが料理係になっちまった。なんでだろうね?(すっとぼけ)
贅沢はいいけどそれ公金だろって?知らん知らん。金ってのは使ってナンボよ。節制は確かに必要だが、こういう祝い事のときはパーッと使うが吉。
さて先ほどの対戦、ちょいと解説させてもらおう。
何故かって?殺人は失格対象だからよ。例え事故だとしても、だ。
ハイナはそれを読んでたワケで、隙だらけのところをチェックメイト。チマチマ追い詰められてたら地力で普通に負けてたな。
ま、同情するよ、ホント。
ハイナの超直感はこういう時でも全然働く。俺は絶対相手にしたくないね。
2対1でルールが決まってたら、熟練度関係なくこうなるもん。ボードゲームとかマジで地獄よ?初見のはずのゲームで挑んでも最短で確殺されるもん。怖いねぇ~。当の本人は「あれ、またなんかやっちゃいました?」って顔をしてるから5割増しで怖い。
「受験番号192番、前へ!」
おっと呼ばれた。
まあ見たいもんは見れたし、とっとと終わらせて帰るとしますか。
あんま日光浴びたくないし。途中までの本が控えてるし。
対戦相手は同じ魔法使い。戦士と当たらないような調整は運営に残された僅かな良心だろう。
相手の名前はエリザベート・カルベルニアか。黒髪の女、あっちの世界でいう中世ヨーロッパ風のドレスを着ている。いいところのお嬢様か?
そして見事なツインドリルだこと。これが終わったら是非ご教授願いたい。妹にしたいから。もったいねーよなー、せっかく綺麗な髪なのにテキトーに結ぶだけなんだぜ?色んな髪形を見たいよねって話。
手に持ってるバカでかい杖はなんじゃい。ざっと150㎝はあるんだが?
そいつで殴りかかってくるとか・・・そんなわけないよな?こちとら貧弱人間ぞ?そんなんされたら1発KOだわさ。
因みに俺が持ってるのは20cmいかないくらいの
「―――初め!」
あ、始まった。
さっきも言ったようにこっちはとっとと帰りたいわけで。
先ずは杖に自分の魔力を集中。それを空中に放出して魔法陣を―――
「
―――ファッ!?
あっぶな!ちょっとビリッてなったぞ!
ていうか奥さん、魔法の構築早すぎゃしませんか?もしかして事前に組んでた?反則だぞ!
「・・・」
はい、違うんですね。
うっそ。え~。こっちまだ進捗30%よ?
しかも最速で組んでる1つ目の魔法。相手さん、もう杖に十分魔力溜めてはりますやん。
これってもしかしなくても2発目でっか?
「
はい2発目~。知ってた知ってた。
てか分かった。これ相手が普通で、俺が遅いだけだわ。試験官の反応的に。
やーだよ。ハイナが勝って俺だけ負けるなんて。
兄としての沽券がかかってんだ。とっとと逆転しねーと。
◇◇◇
エリザベートは混乱していた。
事前に仕入れていた情報と現実。両者の大きな齟齬故に。
(情報では異世界人だったハズ。なのに魔法の発動手段が
ムキー!と心の中で叫ぶ。
それもこれも旅費で有り金の殆どを使ってしまった自分の未熟さ故。
義父が聞けば「甘ったれるな!」と一括されてしまうだろう。
そも、魔法の発動手段は2種類ある。
一つは今エリザベートが行っている手法、
利点は手軽さ。戦闘において速度は命。また複雑怪奇な魔法陣を暗記する手間も省くことができ、知識の少ない異世界人でも扱うことができる。
欠点は小回りが利かない点。巨大な杖はそれだけでかさばる。加えて簡単な攻撃式しか刻むことができず、例としては座標の入力が必須の空間魔法などが挙げられる。
もう一つの手法が
利点と欠点は
「
3発目の雷魔法を放つ。が、難なく避けられた。
まるで魔法の発動タイミングを熟知したかのような回避。
初心者と呼ぶには不自然。やはり情報に金を出し渋ってはいけないと硬く心に誓うエリザベートであった。
とはいえ試験はまだ終わっていない。後悔を心に秘め、4発目の準備にかかる。
が、このタイミングで相手の魔法が完成してしまう。
正面に展開された魔法陣。
戦闘の最中に書かれたとは思えないほど美しく、細緻で、幻想的。
1人の魔法使いとして思わず見惚れてしまった。
「
「
両者の言葉が重なる。
杖先から放たれた
(空間魔法!?)
エリザベートは驚愕する。だがそんな彼女を置いてジンは新たな魔法陣を描いてゆく。
もはや異世界人だの情報だの言っている場合ではない。
目の前にいるのは自分よりも格上の魔法使い。どんな初見殺しが飛んでくるか分からない、死のドッキリ箱だ。
後ろ向きでは勝てる勝負にも勝てない。自身を奮い立たすべく声を張り上げる。
「高名な魔法使いとお見受けしましたわ!ですが、空間魔法は消費魔力が高くなくて?―――
杖に刻まれた2つ目の魔法を起動。
この杖に刻める魔法は3種が限度。最後の一つは防御魔法で、実質全ての手札を晒したようなもの。
とは言え他の受験生も似たり寄ったりの構成。火と風は殺傷能力が高すぎる。光と闇は1対1には不向き。必然的に攻撃魔法は水や威力を控えめにした雷になりがちだ。
感電効果も期待して放った二つの魔法。無理をしたためか、魔力がごっそり減ったのを感じる。
2色の閃光は、しかしながら青年を目前にして霧散して消えた。
「・・・おっけー。大体決まったわ」
呟き、魔法陣に最後の一筆を加える。
発動させまいと妨害に動くが、少し遅かった。既に彼の魔法は世界に認められている。
「
土壌が隆起し、忽ちの内に鎖へと姿を変える。
一瞬の後にエリザベートの両手足を拘束。地面と直接繋がってるためか、幾らもがいても引きちぎることはできない。
抗っているうちに、ジンの杖先が彼女の額に当てられた。
「・・・降参、ですわ」
か細い降参宣言がなされたのは、その直後であった。
◇◇◇
ういー、つっかれた。
まさか別の魔法発動技術が開発されてたとは。本に書いてなかったぞ。
偶には外に出て、誰かに教えでも乞うかな。
ま、数日後にはそんな決意なんて忘れてるんですけどね。おうちサイコー。
「凄かったよ、ジン兄!こうガーンってなって、バーンってなって・・・めっちゃ異世界って感じがした!」
へへへ。ありがとうございやす、旦那。
ま、当然ですけど?こちとら兄貴やらせて貰ってるんでね。
兄の沽券は無事守られたようで、ひとまず安堵。
一瞬で終わらせた我が妹の方が凄いことは黙っておく。こっちにもプライドってのがあるのでね。
あと分かったことが1つある。
俺、タイマンに向いてねーわ。
今回はほら、ルール内での模擬戦だったから勝てたけど、ルール無用のマジ戦闘で勝てる気せんわ。
ま、四の五の言ってらんねーんですけどね。この世界、過激主義のテロリスト集団めっちゃいるし。どーにかして勝てるようになんねーと。
あと武器ね、武器。
魔力の通りが悪いわ、これ。貰いものなんで悪口はあんま言いたかないんですけどね。
でももーちょい良いものが欲しいというのがホンネ。でも武器って
はい、反省会終わり。
とっとと帰ろうや。本読みたいし。
あー、その前に買い物か。今日はパーッと行こうぜ。
種族:
性別:男性
魔力特性:金
スキル:剣術3 闘気4 茶道2 不屈3 筋力増強2
称号:修行者
加護:
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スキル解説
闘気:魔力で自身を強化した際、その倍率に上方補正。
茶道:茶道の熟練度。茶室における行動の成功率上昇。
不屈3:精神力に上方補正。困難を目にしても折れることはない。
筋力増強:肉体の成長率上昇。
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称号解説
修行者:故郷を離れ、旅の中で武を高めようとする者の証。故郷に戻ることで消失する。
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加護解説