灰色兄妹の異世界冒険譚~リアルな異世界は現実(リアル)より厳しいようです~ 作:熊澤しょーへい
やっほー、ハイナちゃんです!
今、私は寮の部屋の前に来てます!
入学式?入学式はまあ・・・うん・・普通だったよ。学長の話が長かったくらい?
学長、凄い有名な人らしいよ。知らんけど。話も何か小難しかったし。
ジン兄はふつーに寝てた。やってますわ、あの人。
さてさて寮ですが。
男女で別々の建物。だからジン兄と離れ離れになっちゃった。
私もう17だから。自分の部屋とか全然持ってたし。だから号泣するのやめな?そんな今生の別れみたいな雰囲気出されても、こっちとしてもどう反応すればいいか分からないワケで。
見た目は日本のマンションみたいな感じ。でもコンクリートじゃないらしい。素材的にはそっくりなんだケド。
そもそも石油自体ないっぽい?この世界、ちょくちょくこういうとこあるのよね。鉄とかもそう。聞いてみたら何とかマイトとかいうよく分からん金属だったし。
1階はフロント、風呂場、食堂など。ホテルみたいでちょっと興奮。テンション上がるなー。
風呂はなんと大浴場。やっぱ日本出身の異世界人って多かったのかな?
建物は全部で5階。2人で1部屋振り分けられてる。んで2階と4階に男子棟と女子棟を繋ぐ渡り廊下。学生証を見せたら結構自由に行き来できるっぽい。あと普通に渡り廊下とかあるんだね。建築技術は日本と同レベルじゃない?学校もかなりデカかったし。
問題なのがこの世界、エレベーターが無い。だから上層の人はイチイチ階段で上り下りしないといけないの。まあ、その人たちはご愁傷様、ってことで。
こんな豪勢な寮、お高いんでしょ?お金持ってないのに大丈夫?
はい、そんなあなたに奨学金。異世界転移して早2週間。借金持ちになってしまいましたとさ。
まあ厳密にはちょっと違う。「卒業したら冒険者になるよね?
そんな私の部屋は~?ドゥルルルル・・・ジャン!(自力ドラムロール)
5階にあります!う~ん、キレそう!
いやー、膝から崩れ落ちたね。異世界なら魔法でひとっとび!とかできないワケ?
ま、悲観してても仕方ないや。うだうだしてないで部屋に入りましょう。
別に荷物は多くないんだケド。ざっと鞄1つ分。教科書その他もろもろは部屋に届いてるはず。
あと気になるのは同室になるのは誰か、ってこと。
めんどくさい人じゃないといいなぁ。そんな人はジン兄で十分だし。
ジン兄はなぁ・・・いい人だよ?優しいし、頭良いし、イケメンだし、勉強教えてくれるし。
偶にある発狂と、人心無発言が玉にキズだね。間近にいる私のことも考えろ、って話。
まあそういうところも良いんだけど。
さて、ちょっと緊張するけど入りますか。
「女は度胸、男も度胸」ってね。
コンコンコン、っと。
「よろしいですわよ?」
おっとどこか聞き覚えのある声。ハイナちゃん一安心。
鍵をかざせばカチャリと開く。魔法でこういうのできるなら、エレベーターも出来そうなもんだと思うケドね。
はーい、オープンセサミ!。
「あら、同室の相手はハイナ、貴女でしたの?」
想像通り、聞こえた声はツインテドリルお嬢様ことエリザベートのもの。やっぱり顔見知りって安心するよね。
呼び捨てで大丈夫なのかって?大丈夫でしょ(テキトー)。同年代っぽいし。てか同学年だし。
そんなエリザベートはというと、デカいスーツケース(っぽいもの)を床に広げて荷物を整理してる。その横には実技試験の時に使ってたデカ杖も。もしかしてこの2つを抱えて階段上ってきたの?
お嬢様的ビジュアルの裏の顔は筋肉モリモリマッチョマンだったってこと?
「何言ってますの?このバッグはこの部屋に届けてもらいましたの。ほら、貴女の荷物もそこにありますわ」
あ、そっか。でもあの杖を難なく持ててる辺り鍛えてはいそう。
スーツケースからお嬢様服がどんどん出てくる。エリザベート氏、結構荷物持ってきたんだね。
「当然でしょう?というかハイナ、貴女の荷物が少なすぎますのよ」
仕方ないでしょ。異世界に来てまだ1か月も経ってないんだよ?
来て早々勉強付けだったし。色々買う余裕は無かったね。あ、下着とかは買ったよ?
ちなみに参考書は丁寧に返却した。あれ借り物だったし。そうじゃなかったらズタズタに引き裂いてたね。それほどまでにアイツへの憎しみは深い。
「本当に異世界人・・・それでよく試験に通りましたわね」
SO☆RE☆NA
まーちょっと山張ってましたし。それがまさかのドンピシャ。我が目を疑ったね。
流石は兄上ですわ。
「あの方がまた何かしましたの?」
「全部は無理だから絞る」って言って過去問と睨めっこしてたよ。
そっからバーッて問題を選別して。その類題が出たってカンジ。
凄いよねー。そんだけで問題絞り込めるなんてさ。本人は「こんだけありゃ十分だろ(激うまモノマネ)」って言ってたけど。
「凄いの一言で片付けていいんですの?」
珍しいもんでもないでしょ。あっちの世界での受験の時もやってたし。
実はちょっとズルをしたような後ろめたさがあったりなかったり。
「そんなもの、感じる必要はありませんわ。全力を尽くすのは当然でしょうに」
やっさしー!やっぱいい人だね、エリザベートさん。
大変そうだから、荷物運ぶのを手伝ってあげよう。
「では、この本たちを棚へお願いできますこと?」
任せなさんな。
・・・って結構重たいね。そこそこ量あるし、一冊一冊が分厚いし。
ま、私にかかれば余裕ですけどね。えーっと、上下ってこの向きであってるかな。
「会ってますわよ」
おっけー。
よいしょ、よいしょ。・・・まあ、こんなもんでしょう。
どんな本なんだろ。ちょっと気になる。この世界で見た本といえば、参考書か教科書だけだし。どれ、表紙を拝見。
・・・なんて書いてるか分からん!
めっちゃうにょうにょしてる。アラビア語って確かこんなんだったハズ。そんなレベルで分からん。
もしかして魔法の本?流石エリザベート、略してさすエザ。勉強熱心だねぇ~。
休日でも勉強するなんて、私には到底理解できないケド。
「違いますわよ。これは歴史小説ですわ」
へえ~、エリザベートって歴史小説好きなんだ。
ていうか私、この世界の歴史ちゃんと知らないや。
あっちでいうアーサー王とかいるのかな?
「よくぞ聞いてくださいましたわ!」
うわっ!・・・急に大声出されて驚いちゃった。
「この世界の歴史を語るうえで勇者様関連は外せませんわね。やはり目に見える功績を上げた初代様や6代目様が人気どころですが・・・個人的には7代目様の巡礼記がオススメですわね。もちろん、他の勇者様方もオススメですわよ?特に6代目様!顕現した神に腐れ縁の鍛冶師と共に立ち向かうあのワンシーン!文字が擦り切れるほど読んでしまいましたわ!当然舞台も見に行きましたし。ハンカチを10枚はダメにしてしまいましたわ。わたくしとしては2代目様にも注目しているのですが、如何せん初代様と活動期が被ってしまっているのが惜しいところですわね。ですがレイブン王国のダンジョンで新たな発見があったらしく、今後に注目したいですわね。そうそう新発見といえば、第2帝政を崩壊させたヴァスデルム26世に関しても新たな発見があったようですわ。当時の側近の手記が見つかったようでして、実は愚王では無かったのでは?という新説が出てきてますの。あとはやはり、皇国の氷龍伝説は王道ですわね。異種族間の恋愛ものとしてあれほど完成されたものは―――」
ストーップ!ストップストップ!
急に早口になられてもこっちも困るワケ。
あんま頭良くないからさ、一気に詰め込もうとしても混乱するの。だから1つ1つ教えて欲しいなーって。
「・・・申し訳ありませんわ。わたくしとしたことが、はしたないところをお見せしましたわ」
はしたない?どこが?
「こちらが一方的に話してしまったではありませんの。初心者を置き去りにするなんて・・・オタクとして失格ですわ・・・」
この世界にもオタクって概念あるんだ。ってそうじゃなくて。
別にエリザベートは悪くないでしょ。そんなこと言ったら事前知識ないこっちの方が悪いし。
自分の好きなものを語って良いも悪いもなくない?
それにさ。好きなものがあるって正直羨ましいんだよね。
私、何しても長続きしないからさ。そんな「1番好き!」って言えるもの無いのよ。
だからそんなに自分を卑下することないでしょ。エリザベートは凄い!これ以上は私が許しません。
「・・・」
どうしたの?そんな不思議そうな顔して。
なんか変なこと言ったっけ、私。
「・・・いえ。少しだけジン様の気持ちが分かりましたわ」
何でここでジン兄の名前が出てくるの?
てか何で様付け?
もしかしてジン兄のこと、イケナイ目で見てる?
「魔法使いとしての純粋な尊敬ですわ。それ以上でも以下でもありませんことよ?」
ホント~?
「ホントですわよ!」
フン、強情な奴め。まあ今日のところはこれくらいにしといてやろう(悪辣な顔)。
まあ別にジン兄が誰とくっつこうが構わんよ。このハイナちゃんチェックを突破することができたらな!
説明しよう、ハイナちゃんチェックとは!ハイナちゃんによるお嫁さんアンドお姉さん適性チェックの総称である!
何故ならそう、ジン兄のお嫁さんになるということは即ち、私の姉になることを意味する!生半可な覚悟の持ち主はお断りなのだ!
せめてこの私を正面から倒してもらわねばな!フハハハハ!(魔王的高笑い)
「はいはい。バカ言ってないで次はこれを運んでくださいな」
あ、そうだった。片付けの最中だったね。
失敬失敬。
「あとエリザでよろしいですわよ?エリザベートは長いですし」
え、いいの?
これは・・・もしかしてもしかすると・・・俗に言う友達チャンスではなかろうか!?
やば、緊張するかも・・・てか緊張してるわ。
で、ではお言葉に甘えて・・・よろしく、エリザ。
「こちらこそですわ、ハイナ」
パンパカパーン!
エリザが なかまに くわわった!
◇◇◇
「フゥン、まさか貴様と同室とはな!」
ほんとだよ。アンタは前向きだけどな、こっちはひたすら後ろ向きよ。
何が嬉しゅうてこれから卒業まで毎日陽オーラを浴び続けにゃならんのだ。これだから運命って嫌いだわ。
おーい
ま、ええわ。見知らぬ他人よりは全然いい。
とりまこの本棚は俺が貰うから。ユーはそっち使いな。
「いいだろう。それにしても貴様、どれだけ本を持ち込む気だ?」
とりま30冊かな。
あ、あんま気軽に触れんなよ。魔導書だから。書かれてる魔法が起動するかもしれんし。
「・・・貴様、朝も聞いたが本当に異世界人か?ここに書かれているのは異世界語ではない。よく読めるな」
そうこの世界、当然ながら日本語は使われていない。じゃあ書いたり話してんのは何語なんかって疑問も出るワケ。
順番に見ていこう。
まず書き言葉。これは国によってバラバラ。最多数なのが王国語な。俺が持ち込んだ魔導書も王国語で書かれてる。どーやって読んでるのかっつーと、異世界人用に日本語訳された本も(ほんの僅かに)出されてるわけ。それと原本を丸暗記して1つずつ脳内変換してんの。これで8割は読める。うーん、ゴリ押し。美しさの欠片もないね。
んで話し言葉。よく口元を見ると日本語を話してない。つまり勝手に脳内で理解してることになる。
じゃあなんで理解できんのかって話。
これはこの世界にある不思議要素、魔素が深く関わってんじゃない?ってのが定説。あれよ、魔法と同じ原理だと思えばいい。
例えを挙げるとするならこう。俺がAを伝えようと話しかけたとき、大気の魔素を使って「Aを伝える」っていう魔法を使ってんじゃないかって説。んで相手側も聞こうとしてるわけだから「ちゃんと聞き取る」っていう魔法を無意識に使ってて、この2つの相乗効果で会話が出来てる―――理解できた?
まあ、あくまで定説なだけで。間違ってるかも、ってのには注意ね。
はい、これで解答とさせていただきまーす。
異論は認めませんのでそこんとこヨロ☆
あと素人質問も受け付けませんので。
「構わん。誰しも言いたくないことの1つや2つあるものだしな」
ふい~助かりんちょ。
まあ俺だけのことなら別に話していいけど、マイシスターが絡むとなれば話は別。
どう転ぶか分からんし、
「ではこちら側は俺様が貰うとしよう。研ぎ石を置くが、問題はないな?」
ええよ、ええよ。
集中したら物音とか何も聞こえなくなるし。
あ、遮光カーテンとかない?徹夜するときに便利なんだよね、アレ。時間間隔が無くなるから罪悪感がかなり薄まるんよ。
それはそうと、どっかからすげー音聞こえん?ドタドタドターって音。
廊下は走んなって小学校で習いませんでしたかコノヤロー。
一言文句言ったろ。ガチャッとな―――
「ジン様、聞いてくださいまし!」
キャー!女子のエッチ―!
ちょっと、勝手に入ってこないでよ!こっちは着替え中なんだからね!
先生に言いつけてやるんだから!
「いや別に着替えては無いでしょう・・・ってそんな話はどうでもよく!」
「ごめん、ジン兄にコウセイ。止めたんだけど振り切られちゃって・・・」
おーっとマイシスター。
しゃーね、コイツの顔と俺の広く雄大な心に免じて許しちゃる。
で、用件はなんぞ?
「ハイナのことですわ!貴方たちチャスガは本ッ当に初めてですわよね!?」
あ~(察し)。
チャスガってのはこっちの世界でのチェスみたいなもん。
つまり初心者のはずのハイナにボードゲームでボコられたって認識でおけ?
「その通りですわ!なんですのあの駒の動かし方、本当に初心者ですの!?ハンデ付きでボッコボコにされましたわよ!」
だから嫌なんだよな~ハイナとボドゲすんの。
こっちの都合お構いなしで「何となく」で駒を動かしまくり。気づいた時にはゲームオーバー。そこには戦略もクソもない。やってられるかって話。
「でもジン兄の方が強いじゃん」
「!ではどうかコツを教えてくださいまし」
まあ兄としての威厳がありますし?そりゃ死ぬ気で勝ち越しに行きますとも。
んでコツ?コイツの超直感込みで駒の移動位置を予想しまくる。上手くいけば勝ち、ミスって超直感にこっちの思惑察知されれば負け。簡単っしょ。
あとリカバリーできるように最低135通りの別ルートは想定しといたほうがいいぞ。
「そんなこと出来ませんわよ・・・」
「ハッハー!俺は興味が湧いたぞ!故郷から
「いいよー。あ、ルールは教えてね」
「もちろんだ!」
「わたくしの敵を取ってくださいまし!」
あーあ、うるせぇ。
片付け終わったら読書に励もうと思ってたんだが。
これじゃ集中出来やしねぇ。
・・・ま、いっか。ハイナも楽しそうだし。
やっぱ笑顔の方が似合ってるよ、お前。
リアル(現実)の都合により、次の更新は遅れます。
ご容赦ください。