灰色兄妹の異世界生活   作:熊澤しょーへい

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吸血鬼少女と灰色兄妹

どーも、反省室からこんにちは。

あの後やってきた先生によって、反省室にぶち込まれてしまったハイナちゃんです。

いやー、取り巻きABをKOしたところまでは良かったんだけどねー、時間制限あるの忘れてたわ。

てか狭くない?ここ。私だけならいいけどさ、コウセイ君も合わせたらもうギュウギュウよ。

いい筋肉してんね、キミぃ。どうしたらそんなにムキムキになれんの?

 

「セクハラではないか?」

 

この世界にもセクハラあるんだ。

じゃあパワハラとかモラハラとかもあるんかな?

過去の異世界人、仕事し過ぎでしょ。

 

あとコウセイ君、顔にアザあるけど大丈夫そ?

 

「随分余裕だな、貴様。貴様こそ何度も殴られていたではないか」

 

あ~それはそう。ぶっちゃけ痛い。ビビーンとは来てたんだけどね。やっぱ身体が追い付かないや。

でもこれは秘密でね?ケガしてるって知ったらエリザが気を重くしそうだし。

あとジン兄がガチで報復に走りそう。

ぶっ殺しモードに入ったら、次こそ止められなさそうだし。

いやー、良かった良かった。これなら何とか服で隠せるね。

 

「フゥン。兄とは違い、随分と友達思いではないか」

 

う~ん。ジン兄ってそんなに薄情じゃないと思うけどなぁ。

ちょっと口の悪さが表に出てくるだけで。私のこともなんやかんやで助けてくれるし。

まあ行動がちょっと過剰なところはあるケド。

 

「少しか?」

 

まーあれでもマシになった方よ。

たぶん。そんな気がするだけ。

まあ、コウセイ君も宿題が分からなかったらジン兄に聞けばいいよ。やーな顔しながら助けてくれると思ふ。

ジン兄の解説、分かりやすいんだよねー。アレを知ったら後戻りできやせんぜ、ダンナ。

 

・・・え、何よ。顔をまじまじと見ちゃってさ。

照れるじゃない。

あとコウセイ君、顔めっちゃいいな。どれだけの女を泣かせてきたのやら。

 

「ハッハー!気にするな!それよりも2人はまだか?もう授業は終わったハズだが」

「呼んだかよ、プラチナ野郎。人の妹とイチャついてんじゃねーだろーな、テメー。あのクソ野郎どもよりも先にテメーからミンチにしてやってもいいんだぜ?」

 

あ、噂をすれば何とやら。

今回はどっちもどっちってことで、昼休憩までの反省室送りと反省文10枚でチャラになった。ラッキー。

ちなみにあのボンボンたちは医務室送りってことでお咎めナシ。

どうかと思ったけど、ボコボコにしたのは私らなんだよね。うーん、フクザツ。

 

「まあ、ハイナに協力したっつー点に免じて、今日だけは許してやる。おら、ノートとっといてやったから。つっても授業の概要がほとんどだけどな」

 

せんきゅーべりーまっちょ。持つべきは優しい優しい兄上だね。

あ、監視員の人と話してる。ドアを開けてくれるっぽい。

いやー、お勤めご苦労様ですわ。

 

「次からは問題を起こさないように!」

 

こっちからは起こしませんて。あっちが・・・まあ言い訳はやめとこっと。

なんやかんや暴力に頼ったのはこっちだし。この人は職務をこなしてるだけだし。

ごめんなさい。あの馬鹿どもには謝らんけど、この人には頭下げとく。

 

「俺様からもだ。お手数をお掛けして申し訳ない」

「・・・まあ、分かっているならいい」

 

あ、コウセイ君も頭下げた。

ま、そりゃそうよ。この監視員の人優しかったし。

こっそり消毒液とかガーゼとか差し入れてくれたりね。

 

うーん、シャバの空気は美味い!狭かったからね。全身が痛いや。

取りあえず校庭走ってきてよろし?

 

「その前にコイツのメンタルケアしてけ。俺には手が付けられん」

 

うん、どうしたの?

ってありゃ、ジン兄の後ろにいたんだ、エリザ。

ジン兄とあんま身長変わらんのに、よく隠れれたね。

 

「申し訳ありませんわ。わたくしのせいでお二人が反省室送りに・・・なんとお詫びすれば・・・」

 

あー、なるほどね。確かにこれはジン兄じゃ無理だわ。

さて、どう言ったものか・・・

取りあえず寮に戻ろっか。2人だけで話しましょうや。

ジン兄は絶対入ってこないでね?どーせ余計なことしか言わないだろうし。コウセイはジン兄のこと見張ってて。絶対目を離しちゃ駄目だからね?

 

 

◇◇◇

 

 

わたくしは、知っていました。世間での吸血人族(ヴァンプ)の扱いを。

吸血人族(ヴァンプ)への人権が正式に認められたのは人暦800年代。

7代目勇者様の活躍が認められてなお、300年余りを必要としましたわ。

 

ですが、根付いた差別はそう簡単には根絶しません。ルベド開拓国へ向かう旅で、それは痛感しましたわ。

嫌な顔をされるだけならマシな方。中には宿泊を断られることもありましたわ。

 

そう、それが当たり前。生き血を啜る怪物は迫害されるのが当然。

わたくしはそれを・・・って痛たたた!なんでわたくしの頬っぺたをつねりますの!?

 

「だって自分のことを悪く言うもん!そんな口はこうしてやるっ!」

 

止めて下さいまし!

 

・・・ふぅ、気を取り直して。

吸血人族(ヴァンプ)は冷遇されて当たり前』。これがこの世界の常識ですの。

これでもマシになった方ですのよ?一昔前には生まれた吸血人族(ヴァンプ)の子供は死産と称して殺されていましたもの。

ですからわたくしへの暴言は聞き逃して結構ですわ。そのたびに反省室送りになっていれば、卒業にも差支えが・・・

 

「やだね!そいつは絶対に許さないから!」

 

はぁ!?わたくしの話を聞いてましたの!?

 

「うん、バッチリ聞いてた!その上で言わせてもらうけど、エリザって私のことナメてるよね?!」

 

な、舐めてなどいませんわ!

むしろ感謝していますわ。わたくしが吸血人族(ヴァンプ)と知っても態度を変えることもありませんでしたし。

だからこそ、そんなあなたに迷惑はかけられませんわ。

 

「いーや、ナメてる!私のことを『友達を簡単に見捨てる女』だと思ってない?だとしたら大間違い!友達への罵詈雑言を受け流せるほど、私は甘い女じゃないのよ!卒業がどうとか知ったことかい!」

 

いや、それは気にしなさいな。

 

「そもそも私、どっちの世界でも()()()()吸血鬼なんて見たことないし。私にとってこの世界って初めてなことばっかりなんだよ?だから吸血人族(ヴァンプ)の人権がどうのこうの言われても『ふーん』ってリアクションしか出来ません!そーゆー難しいのはジン兄に言って!」

 

は、はい。すみませんでしたわ?

 

「でも初手で暴力に頼るのはやめとく。次からは口論でねじ伏せる!その時はジン兄とコウセイも読んで、3人で論破するから、安心して!」

 

何を安心すればいいんですの?

相手は他国の貴族ですわよ?どんな報復があるか分からないんですわよ?

 

「知ったことか!例え神様が相手だとしても、友達をバカにされて黙ってるなんて女が廃る!そん時はそん時。ジン兄に打開手段考えてもらうから!」

 

あ、そこはジン様頼りですのね。

 

「あと最後にこれだけは言わせて貰います!今度『自分が吸血人族(ヴァンプ)だから~』とかどうとか言ったら、そのほっぺたを思う存分こねくり回すから!それが嫌なら自分を卑下しない!そんで何かあったら私たちに相談する!はい、リピートアフターミー!『自分を卑下しない。何かあったら私たちに相談する』!」

 

は、はいですわ。

『自分を卑下しない。何かあったら私たちに相談する』

こ、これでいいんですの?

 

「よろしい!じゃあもうこの話は終わり!一緒にご飯食べに行こ!」

 

・・・なんか勢いだけで押し流されたような気がしますわ。

うーんでも、貴女をみれば私の悩みなんて馬鹿らしく見えてきますわね。

ジン様が溺愛する理由、少しだけ分かった気がしますわ。

 

あの気質は汚させたくない。付き合いの浅いわたくしでも、そう思ってしまいますもの。

この世界で唯一の肉親となると、その感情はわたくし以上でしょう。

 

「フゥン。その顔色から察するに、上手く立ち直れたようだな」

「だから言っただろーが。こういうのはハイナに任せときゃ大体上手くいく、ってな」

 

あら2人とも、部屋の前で待ってましたの?先に昼食を取っても問題ありませんでしたのに。

立ち直れた、というよりも・・・問題を押し流されたと言った方が正しいでしょうが。

そう言えば2人は、何故吸血人族(わたくし)を恐れませんの?

 

「フゥン。俺様はそんなことを考える余裕がない場所で生まれたからな。偏見など持つ暇が無かった、という方が正しい」

 

あ、そうでしたの。

・・・これ以上深く聞くのは止めておきますわ。

 

「あ、俺か?だってお前、ハイナの友達じゃん。危害加えるつもりはなさそうだし、敵対する理由が無いね」

 

貴方は・・・ブレませんわね。

そのうち「世界は彼女(ハイナ)を中心に回っている」なんて言い出しそうですわ。

 

「え、違うのか?」

 

違いますわよ。・・・違いますわよね!?

さらりと言いましたから、こちらがおかしいと勘違いしてしまいましたわ!

 

「ほら3人とも、早く食堂行こうよ!」

「ハッハー!俺様が一番乗りだ!」

「な!?こっちだって負けないんだから!」

「怪我すんなよー」

 

呑気な事言ってないで、わたくしたちも行きましょう。

 

あと言い忘れていましたけれど、貴方の喧嘩っ早さも騒動の原因ですわよ。

あの子が罵倒されて許せない気持ちは分かりますが、次からはどうか抑えてくださいな。

というか2人とも喧嘩っ早いですわね。流石兄妹ですわ。

 

「ま、遺伝ってやつだ。お袋の血が強く出たんだろ」

 

あら初めて聞きますわね、貴方たちの両親の話。

もう少しお話を伺っても?

 

「・・・別に隠してるワケじゃないし、いっか。親父は医療従事者・・・つって分かるか?」

 

分かりますわよ。

医者とか看護師とか、そういうお仕事でしょう?

 

「そーそ。んで、お袋は・・・まあ傭兵とか自警団とか、そういう仕事してたんだよ。多分短気なところはお袋譲りだな。昔ブイブイ言わせてたって話だし」

 

ほう、そうでしたの。

なーんか誤魔化されている気がしますわ。ホントにこれ以上隠してませんの?

 

「だーかーら、最初に言ったろ。別に隠してるつもりはねーよ。はい、これでこの質問はおしまいな。これ以上の情報は好感度上げてからにしてくださーい」

 

好感度?何ですのそれ?

まあいいですわ。今日のところはこれくらいにしておきましょう。

それよりも早く2人に追いつきませんと。私たちの分の昼食が無くなってしまいますわ。

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