半人半魔(兄)、鬼殺隊に入る   作:日向陰陽

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第4話 「栗花落カナヲと時透兄弟」

―――闇柱に就任した翌日、注文していた羽織が届いた。襟から裾まで蒼色に染まった懐かしのコートを手に入れた。実際に着た感触は現代で俺が着ていたのと変わらなかった。現代の技術を約100年前にそのまま模倣できる隠の技術と仕事の速さに驚かされた。

 

バージル「どうだ?」

 

カナエ「とってもお似合いですよ!」

 

しのぶ「こっちの方が何となくバージルさんらしいですね!」

 

バージル「元々はこっちの方を長く愛用していたからな。」

 

胡蝶姉妹からの評価も上々で気分が良くなった。そのままグリフォンに任務を伝えられ奴の飛ぶ先へ付いていくまま三頭山という木々が生い茂る森に着いた。日は沈んでいた。ひとりの鬼が姿を現す。目を凝らすと下弐と瞳に刻まれている。ため息をついた。

 

バージル「何度言わせれば理解するんだ? 伍と壱はどうした、伍と壱は?」

 

「他の者どもと群れるなど御免だ。」

 

バージル「陸、肆、参も同じような事を言って俺に始末されたぞ。」

 

「奴らと一緒にするな。」

 

バージル「一緒だ、お前も雑魚だ。」

 

「ほざくな⁉」

 

髪と髭が伸びて刺のように鋭利な刃物と化す。身を反らして避けるが背後から追いかけるように襲ってくる。居合斬りで切断する。すぐに再生する。また髪と髭を伸ばして攻撃してくる。一気にエアトリックで間合いを詰める。殺気。服の内側から全身の体毛が針のように伸びて俺に向かってくる。トリックダウンで後退して避ける。シャドウを思い出した。動きの止まった奴に次元斬を放つ。ジャストタイミングの時と同じ効果で奴の頸を撥ねた。

 

「馬鹿…な…⁉ 貴様…⁉ 本当に…人間…か…⁉」

 

バージル「半分はな。」

 

「それ…は…どう…いう…⁉」

 

何かを言いかけて塵になって消えた。グリフォンが降りてくる。

 

バージル「任務は終わりでいいんだな?」

 

グリフォン「おう! これで下弦は伍と壱だけだぜ! お疲れさん! あばよ!」

 

空間を斬り裂き蝶屋敷へ戻る。この日以降、十二鬼月との遭遇はぱたりと無くなった。1911年、明治44年になり春に冨岡義勇という男が水柱に就任した。俺以上に寡黙な男だった。何を考えているかわからない奴だが俺も人の事を言えないので黙っておいた。ふとカナエにも何かプレゼントしたいと思い東京府内を散策した。とある橋を渡っている最中、ガラの悪い男に紐で体を縛り付けられ引っ張られて歩いている身なりの汚れた小娘を見つけた。何故か放っておけなかった。

 

バージル「おい、お前とそこの小娘はどういう関係なんだ?」

 

「ああ⁉ こいつは売りモンだ⁉ 文句あんなら金払え⁉」

 

バージル「ではそうさせてもらおう。」

 

懐から札束を取り出し男に握らせる。

 

バージル「これで満足か?」

 

「あ、ああ…⁉」

 

日輪刀の束で男の鳩尾を打って失神させる。倒れる男は無視して小娘を縛っている紐を居合斬りで両断する。拘束を解いて手を引っ張って歩く。目指すは蝶屋敷。

 

バージル「アオイ! アオイはいるか!」

 

「どうされましたか⁉ バージル様⁉ その子は一体…⁉」

 

彼女の名前は神崎アオイ。最終選別に合格したらしいが鬼への恐怖から戦えなくなってしまったらしく自ら後方支援を願い出て蝶屋敷に住み込みで働いている。アオイのような人材が隠になっているのかもしれないと思った。

 

バージル「人買いの売り物らしい。何故か放っておけなかったので金を払って連れてきた。とりあえず全身を洗ってやってほしい。」

 

アオイ「かしこまりました⁉ さあ、こっちへ来て…。」

 

アオイに連れられて屋敷の中へ入っていく小娘だがずっと俺を見ていた。悪くない気分だった。グリフォンに呼ばれる。任務先は景信山というところらしい。点在する洞窟に潜む鬼どもを片っ端から始末していった。奥に進むと覚えのある人の気配を感知した。あれは確か…あまね様だったか。お館様の奥方でいらっしゃる御方だ。こんな山奥に何の用かと興味が湧いた。山の上の平地にぽつんと民家が立っている。忍び寄って聞き耳を立てた。

 

「凄いね! 僕たち剣士の子孫なんだって! しかも一番最初の呼吸っていうのを使う凄い人の子孫で…!」

 

「知ったことじゃない。さっさと米を研げよ。」

 

「ねえ! 剣士になろうよ! 鬼なんてものがこの世にいるなんて信じられないけど僕たちが役に立つんだったら、ねえ! 鬼に苦しめられている人を助けてあげようよ! 僕たちならきっと!」

 

ドン!ドン!と包丁をまな板に強く叩きつける音が聞こえる。どうやら険悪な雰囲気らしい。

 

「お前に何が出来るっていうんだよ‼ 米もひとりで炊けないようなやつが剣士になる⁉ 人を助ける⁉ 馬鹿も休み休み言えよ! 本当にお前は父さんと母さんそっくりだな! 楽観的すぎるんだよ。どういう頭してるんだ! 具合が悪いのを言わないで働いて体を壊して倒れた母さんも! 嵐の中薬草なんか採りに行った父さんも! あんなに! あんなに止めたのに…母さんにも何度も休んでって言ったのに! 人を助けるなんてことはな、選ばれた人間にしかできないんだ。先祖が剣士だったからって子供の俺たちに何ができる⁉ 教えてやろうか? できること。俺たちにできること! 犬死にと無駄死にだよ。父さんと母さんの子供だからな。結局はあの女に利用されるだけだ! 何かたくらんでるに決まってる。この話はこれで終わりだ! いいな! さっさと晩飯の支度をしろ!」

 

残るは沈黙のみ。黙っていられなかった。放っておけなかった。扉をノックする。反応がない。扉を開ける。俺とダンテのようにはなってほしくなかった。

 

バージル「邪魔するぞ。」

 

「……何だよあんた。」

 

瓜二つの顔、どうやら双子らしい。

 

バージル「俺は鬼殺隊隊士闇柱のバージルという名だ。姓はない。余計な世話かもしれんが世話を焼きに来た。お前たちを犬死ににも無駄死ににもさせんために来た。あまね様の言う通りとてつもない剣士の子孫ならば才能があるだろう。鬼殺隊に入るつもりはないか? 今よりマシな生活が出来るぞ。過酷な鍛錬が必要だろうがな。」

 

「大きなお世話だ⁉ 帰れ⁉」

 

バージル「この付近にまだ鬼がいるぞ。お前たちが殺されては適わんからとりあえず始末してくる。」

 

そして周辺の洞窟や日影に潜む鬼を始末した後、双子の家の前でひたすら待った。木こりで生計を立てているらしく、手頃な木を日輪刀で両断しまくっては兄弟が持ち運びやすいサイズに斬って俺も所定の位置に運んだ。うろついている猪や鹿や熊などを見つけては殺して運んで皮を剝いで食える部分は解体して提供した。食えない部分は遠くに捨てるかグリフォンの餌にした。剥いだ皮は洗って質屋に売り金を兄弟に渡した。蝶屋敷には「しばらく帰らない」とグリフォンに言伝を頼んだ。

 

「バージルさん、どうぞ。」

 

弟に焼いた肉を差し出された。

 

バージル「俺の分はいい。俺に気を遣わず遠慮せず食え。」

 

「でももう1か月は何も食べてないんじゃないですか?」

 

バージル「俺は少々特別でな。1か月か…それ以上か、何も飲み食いせんでも生きていける。だからお前たちで分けて食え。育ち盛りだろう。」

 

「……わかりました。」

 

弟曰く名を時透無一郎、兄は有一郎というらしい。兄とはひと言も会話をしていない。作業中も一切口を開かなかった。どこか俺に似ていると思った。俺のようにはなってほしくはないとも思った。

 

夏に入った。いつものように夜は家の前で座って木に寄りかかり瞑想していると…鬼の気配が1体忍び足で音を立てずに俺の前を通り過ぎようとする。

 

バージル「おい…。バレずに済むと思っていたのか。舐められたものだ。」

 

鬼の動きが止まる。家の扉を突き破るよりも先に日輪刀で鬼の頸を貫く。悲鳴が山に響く。まだ死には至らない。髪を掴んで抜いて両腕両脚を斬り落とす。丁度いいタイミングで双子が出てきた。

 

バージル「これが鬼だ。腕や脚を斬り落としてもいずれ再生する。」

 

そして実際に再生した。

 

バージル「だから鬼を殺すには日輪刀という特殊な材質で出来た武器で頸を斬り落とさねばならない。このように―――。」

 

頸を斬り落とす。頭と体が塵になって消える。

 

バージル「もしくは陽光に当てるかのどちらかだな。どうだ、鬼殺隊に入る気にはならないか?」

 

有一郎「わかった、わかったよ。あんたには美味い物食わせてもらったし仕事も手伝ってくれたしついさっき鬼から俺たちを守ってくれた恩もある。恩返ししたい。鬼殺隊とやらに入って人の役に立てるなら喜んで入ろうじゃないか。無一郎、お前もいいよな?」

 

無一郎「うん!」

 

バージル「ならばいい。ついてこい。」

 

グリフォンを呼んで時透兄弟を保護したとお館様に伝えてくれと頼んだ。日輪刀で空間を斬り裂く。向こう側に蝶屋敷が見える。躊躇なく空間をくぐる。兄弟も俺の後をついてくる。玄関の扉をノックする。

 

バージル「戻ったぞ。」

 

「「「おかえりなさい‼」」」

 

カナエ、しのぶ、アオイ…といつかの小娘が出迎えてくれた。時透兄弟の経緯について説明した。

 

カナエ「まあ⁉ そんなに凄い子たちなの⁉ 鍛え甲斐があるわね⁉」

 

しのぶ「そうね⁉ 私、張り切って仕込んじゃうからね⁉」

 

アオイ「そういえば…バージル様が保護していただいた子の名前が決まりましたよ⁉ 『栗花落カナヲ』に決まりました⁉」

 

カナヲ「バージルさん…私を…助けて…いただいて…ありがとう…ございました…。私…バージルさんの…剣技が…見たいです…。」

 

バージル「そうか、ならば明日の朝に見せてやる。今日はもう遅い。早く寝ろ。」

 

カナヲ「はい…。」

 

カナヲはどこかの部屋へ戻った。

 

バージル「中々の美人だな。見違えたぞ。」

 

アオイ「そうですよね⁉ 私もビックリしました⁉」

 

バージル「お前も美人だぞ。」

 

アオイ「あ、ありがとうございます…⁉」

 

顔を赤くして黙り込んでしまった。褒められ慣れてないのだろうか。視線を感じる。目を向ける。しのぶがしかめっ面をしている。

 

しのぶ「バージルさん⁉ 何か言うことがあるんじゃないですか⁉」

 

バージル「しのぶ、お前も美人だ。大人になればもっと美人になるだろう。10年後くらいが楽しみだ。」

 

しのぶ「あ、ありがとうございます…⁉」

 

しのぶも褒められ慣れていないのだろうか。周囲の男たちは何をやっているのだろうと思った。

 

翌朝、庭に出た。後ろにはカナヲと時透兄弟が見ている。全集中・常中のおかげで動きの速度もキレも格段に増した。日輪刀で閻魔刀のスキルを再現した。ひと通りやり終えて最後に次元斬・絶で締めた。 

 

「「おー⁉」」

 

時透兄弟から驚嘆の声と拍手をもらう。何だか照れ臭い。一方のカナヲは…無表情で涙を流していた。

 

カナヲ「凄かった…です…⁉ 私…初めて…⁉ 感動…しました…⁉ 涙が…止まりません…⁉」

 

アオイ「バージル様⁉ 刀鍛冶師の方々がいらっしゃいました⁉ 残りの武器が完成したそうです⁉」

 

バージル「わかった。今行く。少し待っていろ。他の武器の扱い方も見せてやる。」

 

玄関へ移動する。相変わらずひょっとこ面を付けている者たちが息を荒げて待っていた。

 

「はあ…⁉ はあ…⁉ ようやく完成したぞ…⁉ 妙な物作らせやがって…⁉ 一族総出で完成させたぞ…⁉ こんなものどうやって使うんだ…⁉」

 

ベオウルフの日輪刀バージョンを装着する。サイズはピッタリだった。ミラージュエッジの完成版を背中に貼り付けて背負う。

 

バージル「丁度いい。使い方を見せてやる。ついてこい。」

 

庭へ案内した。

 

バージル「こうやって使う。」

 

ベオウルフコンボAとB、流星脚、月輪脚、空中月輪脚、キック13、フラッシュ、ビーストアッパー、ライジングドラゴン、ドラゴンブレイカー、少し距離を取って魔力を抑えてヘルオンアースを放った。

 

「「「「「おー⁉」」」」」

 

時透兄弟に刀鍛冶師たちにアオイから歓声をもらう。ミラージュエッジに切り替える。ベオウルフは消えて背中に背負っていたミラージュエッジが一瞬で手に納まる。そしてミラージュエッジコンボAとB、ミリオンスタッブ、ハイタイム、ラウンドトリップ、空中ラウンドトリップ、スティンガー、空中スティンガー、兜割り、ドライブ&オーバードライブ、ディープスティンガーを披露した。

 

「「「「「おー⁉」」」」」

 

また歓声をもらった。閻魔刀を模倣した日輪刀、ベオウルフもそうだったが真魔人形態でしか使えなかったスキルも通常の人間形態でも使えることが出来た。速度、威力は格段に増していた。日輪刀に切り替える。ミラージュエッジも一瞬で消える。ベオウルフを装着する。一瞬で腕と足に嵌まる。使っていない武器はどこにあるのか、実際に装備を切り替えている俺にもわからなかった。異次元、異空間あるいはこの世界のどこかにあるのか、深く考えるのは止めた。

 

バージル「こういうことも出来るぞ。」

 

桜の木に向かってエアトリック、回り込むようにトリックダウン、ジャンプして桜の木を踏み台にしてまたジャンプからのトリックアップ、からのトリックダウン、連続でトリックダウンを使い素早く後退する。

 

「「「「「おー⁉」」」」」

 

「感動しました⁉ 貴方のような物凄い剣士に武器を作れたことは一族の誇りです⁉ 鋼鐵塚の言った通りでした⁉ 我々は一生貴方の事を忘れません⁉ 一族に語り継いでいきます⁉」

 

バージル「鋼鐵塚に会ったら伝えてくれ。お前の作った日輪刀のお陰で俺は立派に鬼狩りを続けていられると。」

 

「はい⁉ 伝えます⁉ 良いものを見せていただいてありがとうございました⁉ それでは失礼いたします⁉ バージル殿⁉」

 

刀鍛冶師たちは涙を流しながら帰っていった。

 

バージル「……と、こんな感じだ。どうだ、感想は?」

 

有一郎「凄かったです⁉ 俺、バージルさんのような剣士になりたいです⁉」

 

無一郎「俺も同じです⁉ バージルさんの剣技に見惚れました⁉ 憧れです⁉」

 

バージル「焦ることはない。始めは俺もまともに剣を振る事すら出来なかった。お前たちも努力次第で立派な剣士になれるだろう。兄弟仲良くな。」

 

「「はい‼」」

 

バージル「いい返事だ。」

 

俺は満足して頷いた。

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