―――巨大な管と化した両腕を振りながら服の背中部分が破れ新たに9本の細い管が現れる。時間差で俺に襲い掛かってくる。瞬時に空いた手にミラージュエッジを手にしてミラージュエッジコンボBに移行する。円陣幻影剣を展開しながら日輪刀と交互に振り回しながら奴に向かって突進する。切断した管はすぐに再生するが構わなかった。握力を強める。両方の武器の刀身が赤く染まる。間合いを詰める。鬼を滅多斬りにする。両脚の太ももから4本ずつ管が生える。次元斬数十発連発モード…絶刀を放つ。全身隈なく当たるように集中させる。管の再生が少し遅くなる。構わず次元斬・絶を繰り出す。鬼の全身に剣閃が走る。鬼がふらつく。管を全て切断する。益々管の再生が遅くなる。五月雨幻影剣で拘束する。ベオウルフに切り替えて今度こそヘルオンアースを叩きこんだ。両脚を残して塵と消えた。念のために両脚も細切れにした。ただの肉片が地面に転がる。目を凝らす。塵と化した体や気化した血液が1箇所に集まる。どんどん集まって体が生えてそこから腕や両脚に頭も生えてくる。しぶとい。しぶとすぎる。ゴキブリよりもしぶといなんてものじゃない。こいつを殺す手段は陽光以外に無いのではと本気で思った。
「はあ…⁉ はあ…⁉ 化け物め⁉」
バージル「お前にだけは言われたくない。どうする、逃げるか?」
さっきと姿が違う。両脚と両腕…手の平に至るまでいくつもの口と牙が生えている。一斉に口が開く。どうやら空気を吸い込んでいるようだ。俺の体も鬼に引き寄せられる。トリックダウンで距離を離す。それでも吸い込むのを止めない。やがて目に見えない強力な力が凝縮されているのを感知した。それが俺に向かって放たれる。瞬時にドライブで相殺した。左右の建物の壁と地面が陥没する。鬼の体が肩から腹にかけて斜めに大きな口が開く。また何らかの力が凝縮される。ベオウルフに切り替え魔力を溜める。稲妻に似た衝撃波を放つ。地面にヘルオンアースを放ち相殺する。次の攻撃に備えて魔力を溜める。
「しつこい。」
鬼は棒立ちで愚痴を垂れる。隙だらけだが黙って聞く。
「お前たちは本当にしつこい。飽き飽きする。心底うんざりした。口を開けば親の仇子の仇兄弟の仇と馬鹿の一つ覚え。お前たちは生き残ったのだからそれで充分だろう。身内が殺されたからそれが何だと言うのだ。自分は幸運だったと思い元の生活を続ければ済むこと。私に殺されることは大災に遭ったのと同じだと思え。何も難しく考える必要はない。雨が風が山の噴火が大地の揺れがどれだけ人を殺そうとも天変地異に復讐しようという者はいない。死んだ人間が生き返ることはないのだ。いつまでもそんなことに拘ってないで日銭を稼いで静かに暮らせば良いだろう。殆どの人間がそうしている。何故お前たちはそうしない?理由はひとつ、鬼狩りは異常者の集まりだからだ。異常者の相手は疲れた。いい加減終わりにしたいのは私の方だ。」
僅かな沈黙。もう駄目だ。笑いがこみ上げてくる。
「何が可笑しい…⁉」
バージル「いや…スマン…⁉ ククククク…⁉ ハハハハハハハハハハハハハハハ⁉」
「何 が 可 笑 し い ⁉」
バージル「こんなに笑ったのは初めてでな。つい我慢できなかった。自分を天変地異に例える化物がいるとは思わなかった…⁉ どのような天変地異であれ、その時だけではない。事後処理に人々は追われる。生活も商売もままならん。だがお前はどうだ? 陽光に晒せばそれで綺麗に片付く。そんな天変地異があるか? お前はどのような生物をも超越した存在だと思っているようだが、俺にとってはただの害虫だ。」
「黙れ…⁉」
バージル「お前の長ったらしい愚痴を好き勝手喋ったのを俺は我慢して聞いたのだから俺にも喋らせろ。我慢して聞け。思い上がるのも程々にせんと恥をかくぞ、もう遅いが。お前はとんでもなくしぶといのだけが取り柄の害虫だ。俺にとってはそんなくだらない存在、それがお前だ。」
「黙 れ ⁉」
管が一斉に襲い掛かる。円陣幻影剣を展開しつつ高速連斬で細切れにする。一斉に口が開く。力を凝縮する前にノーモーション次元斬・絶を放ち攻撃を阻止する。五月雨幻影剣で拘束してヘルオンアースをブチ込む。塵が集まる。体が生える。細切れにする。その都度、繰り返した。夜明けまでそうするつもりだった。数時間も経ち夜明けが近づくと上から強力な鬼の気配、トリックダウンでかわす。目の前には6つの目を持つ鬼、刻まれている上弦、壱、の文字。そして鮮やかな月の模様。日輪刀を抜いて触れる。弾かれる。
バージル「ほう…この月の模様にも殺傷能力があるのか。面白い。それよりも見ろ。お前らの御主人の無様な姿を。」
死にかけからの度重なる再生で疲労が蓄積しているようだった。
「はあ…⁉ はあ…⁉ 退くぞ黒死牟…⁉」
「はい…。」
弦の音と共に消える。背後から覚えのある気配、竈門少年だった。額に妙な紙を貼りつけている。
炭治郎「バージルさん⁉ 付いて来てください⁉」
黙ってついて行った。目の前は壁だが奥に妙な気配を感じる。鬼に似た人間のような何者かの気配。壁をすり抜けて奥にある屋敷に入った。妙齢の美女に出会った。隣にはひとりの青年。だが鬼だ。
バージル「お前は…鬼舞辻無惨の手下ではないのか?」
「ある時まではそうでした。しかし…鬼舞辻がひとりの剣士に敗れた後、奴の支配が解けました。それに私は…体を色々いじったので…。私たちは人を食らうことなく生活していけるようにしました。人の血を少量飲むだけで事足りる。金銭に余裕のない人たちから輸血と称して血を買っています。もちろん彼らの体に支障が出ない量です。彼…愈史郎はもっと少量の血で足ります。この子は私が鬼にしました。今は鬼を人間に戻す薬を研究中です。」
屋敷の奥に通された。
バージル「申し遅れたが…俺の名はバージル。姓は無い。お前の名は?」
「珠世と申します。以後お見知りおきを…。先程の話の続きですが… どんな傷にも病にも必ず薬や治療法があるのです。今の時点で鬼を人に戻すことはできませんが…それもきっと…ですが私たちは必ずその治療法を確立したいと思っています。そのために貴方にお願いしたいことがあります。治療薬を作るためにはたくさんの鬼の血を調べる必要があります。貴方にお願いしたいことは1つ。出来る限り鬼舞辻の血が濃い鬼からも血液を採取してきてほしい。禰 豆子さんは今、極めてまれで特殊な状態です。2年間眠り続けたとのお話でしたが恐らくはその際に体が変化している。通常、それ程長い間人の血肉や獣の肉を口に出来なければまず間違いなく凶暴化します。しかし驚くべきことに禰 豆子さんにはその症状がない。この奇跡は今後の鍵となるでしょう。もう1つの願いは過酷なものになる。鬼舞辻の血が濃い鬼とはすなわち…鬼舞辻により近い強さを持つ鬼ということです。そのような鬼から血を採るのは容易ではありません。」
思いっきりデカいため息をついた。
バージル「もっと早くお前に会っておけば良かったな。上弦の弐と壱には会ったぞ、逃げられたが。鬼舞辻無惨ともさっきまで殺り合ってた。奴の血でもいいか?」
珠世「えっ⁉ ええ⁉ ぜひ…⁉」
日輪刀に付着した血と鞘の中に溜まった血を採取してもらった。
珠世「それにしても…鬼舞辻とひとりで戦って生き残る剣士は久しぶりに見ました…。何者なのですか貴方は…? 鬼とは異なる禍々しい雰囲気を感じます。」
日輪刀に魔力を込めて空間を斬り裂く。生じた異空間を見て竈門少年も珠世と愈史郎とやらも驚く。
バージル「俺はこの世界の者ではない。元の世界からこの空間をくぐってどういうわけかこの世界に迷い込んだ。元の世界には悪魔という化物がいる。その悪魔と人間の女が結ばれて双子の男児が生まれた。その片割れが俺だ。」
珠世「悪魔…⁉ ですがその話であれば貴方の強さにも納得できます。」
バージル「話が早くて助かる。それで…鬼舞辻により近い強さを持つ鬼というのは十二鬼月とやらでいいのか? 下弦の陸、肆、参、弐は既に俺が始末したが。」
珠世「ええ構いません。よろしくお願いします。血を採取次第使いの者を向かわせますので。」
注射器を渡されどこからともなく現れた猫を紹介された。
バージル「鬼殺隊にも医学薬学の知識に明るい奴らがいる。お館様やそいつらにお前たちのことを報告した方がいいか?」
珠世「残念ながら…鬼舞辻の部下ではないとはいえ私たちは鬼なので歓迎はされないでしょう。お気持ちだけ受け取っておきます。」
バージル「そうか。そろそろ俺は帰る。竈門少年、これからも頑張れ。妹のことが発覚したら俺は全力で守る。」
炭治郎「ありがとうございます! バージルさん! それではさようなら!」
蝶屋敷へ帰りグリフォンへ鬼舞辻無惨と本格的に戦闘したとお館様に言伝を頼んだ。しばらくして柱合会議が開かれた。産屋敷家へ着いて柱が全員集合したところで実際に鬼舞辻無惨の戦闘手段を俺のスキルも交えて説明した。
耀哉「塵になっても再生したというのは本当かい?」
バージル「はい。気化した血液も1箇所に集まり再生しました。その都度細切れにして夜明けまで待とうとしましたがその前に上弦の壱が邪魔に入り弦の音と共に消えました。」
耀哉「両腕、背中の9本の管、太ももの8本の管と口の吸息に衝撃波…厄介だね。」
バージル「先端が刃物のように鋭利でした。鬼のことですから僅かな傷でも血液でも注入されたら猛毒になりかねません。柱の皆の力を侮るわけではありませんが鬼舞辻無惨が姿を現したら俺に任せていただけませんか? あの猛攻に耐えられる人間はいないでしょう。 俺も今後に備えて本気では戦いませんでした。」
不死川「バージル⁉ テメェ⁉」
耀哉「落ち着いて実弥。上弦の壱に関しては?」
バージル「刀を一振りしただけしか目撃しておりませんが、刀の振りと共に月の模様が散りばめられた剣閃が空間に残っていました。日輪刀で触れると弾かれました。よって敵の刀を刀で防ぐのは自殺行為と申し上げます。回避に徹するしかないでしょう。」
耀哉「そうか…ご苦労だったねバージル。お疲れ様。今日の柱合会議はこれまでにしよう。」
お館様が奥に下がる。
不死川「さっきのは聞き捨てならねェなバージル。しかも本気で戦わなかっただとォ? なら本気を見せてもらおうじゃねェか。」
バージル「俺が半分悪魔の血を引いてるのを忘れたのか? 俺の悪魔の姿を見た者は死ぬという意味だ。俺に仲間殺しをさせるな。」
俺の体に魔力を凝縮させる。風圧が巻き起こる。俺の周囲に結界が生じる。後は真魔人に魔人化するだけだ。
悲鳴嶼「そこまで!」
俺と不死川を元とする柱全員の間に割って入る。
悲鳴嶼「バージル、済まなかった。鬼舞辻無惨と実際に2回も戦った君だからこそわかることもあるだろう。不死川も皆もここはバージルの忠告を聞くんだ。いいか?」
「「「「「……。」」」」」
悲鳴嶼「……返事は?」
「「「「「はい‼」」」」」
悲鳴嶼のおかげでここは丸く収まった。俺はああいう場での事の治め方を知らなかった。あのままでは柱全員を負傷させてでも納得させる以外に思いつかなかった。悲鳴嶼に感謝した。
バージル「悲鳴嶼、礼を言う。」
悲鳴嶼「礼には及ばない。先程の君の迫力は凄まじいものだった。放っておけばただでは済まなかっただろう。よく我慢してくれた。こちらこそ礼を言う。」
その場では事なきを得た。それから約1か月後、那谷蜘蛛山という鬼が潜んでいるらしき場所で鬼殺隊隊士が相次いで失踪しているという連絡を受け隊士の捜索、救助を任された。早速現地に向かった。山の奥へ進むと負傷したひとりの隊士と出会った。
「あっ⁉ 貴方は…⁉ もしかして闇柱様…でございますか…⁉」
バージル「どこかで会ったか?」
「いえ…⁉ 上弦の弐や鬼舞辻無惨を追い込んだという『銀髪オールバックの蒼い魔剣士』が柱にいると評判ですよ⁉ 良かった…⁉ 助かった…⁉」
蝶屋敷へ通じる異空間を作る。
バージル「ここを通って傷の手当をしてもらえ。それからカナエやしのぶに負傷した隊士を続々とと送り込むから準備をしておけと伝えろ。わかったか?」
「はい! わかりました! お気をつけて!」
奥へ進む。倒れている隊士たちが起き上がる。背中や腕や脚の裏側に糸が貼りついて操られている。この山の名前の通り蜘蛛の糸に操られているというわけか。幻影剣を射出しまくって糸を断ち切る。地面をうろついている小蜘蛛を潰す。稀に遠くから糸が飛んでくるがそれも断ち切る。異空間を開き片っ端から隊士たちを放り込む。円陣幻影剣を展開しながら走り絡まる糸を寄せ付けない。ひとりの女性の隊士が立ちはだかる。
「駄目…こっちに…こないで…貴方は…⁉ 闇柱様…ですか…⁉」
バージル「そうだ。お前たちを救助するために来た。」
操られて襲い掛かってくる女性隊士の糸をトリックダウンで背後に回り日輪刀で斬る。倒れていた隊士たちも歪に曲がった腕を振り上げながら斬りかかってくる。同じように背後に回って断ち切る。小蜘蛛の気配は…ない。片っ端から異空間に放り込む。空間を閉じる。上から鬼の気配、頸無し鬼に出会った。トリックダウンでかわす。疾走居合で間合いを詰めて両腕両脚を斬り落とす。斬り上げ&斬り下ろしのラッシュで細切れにする。塵と化して消える。どこが急所だったのか不明だったが倒せて安心した。更に奥へ進む女の鬼がいる。どうやらこいつが操っていたらしい。抵抗の様子はないが容赦せず斬ることにした。鬼の頸が落ちる。
「十二鬼月がいるわ…気をつけて…。」
バージル「Rest in peace.」
女の表情が微笑んだ…気がした。大量の微細な鬼の気配を感知して更に奥へ進んだ。人面蜘蛛に出会った。舌を伸ばして突き刺してくる。俺も同類にするつもりだろうがそうはいかない。大量に1箇所に集まって襲ってきたのを確認して円陣幻影剣を展開しながら疾走居合で縦横無尽に駆け回った。可能な限り体だけを傷つけて1匹残らず行動不能にした。森の中を見上げる。糸にぶら下がっている家から巨大な人面蜘蛛が出てきた。
「お、お前は一体…⁉ 何者だ…⁉」
バージル「貴様如きに名乗る名は無い。」
ノーモーション次元斬・絶で細切れにした。塵になったのを確認してから糸に吊り下げられている人々を丁寧に下ろし、小蜘蛛を1匹残らず始末してから異空間を開く。大声でカナエとしのぶを呼び解毒剤の準備をさせる。それから毒だか血だかわからない液体を垂れ流す人面蜘蛛を1匹残らず異空間へ送った。それから大き目の鬼の気配を感知し現場へ向かった。巨体の蜘蛛人間に会った。
「俺の家族を殺したのは…お前かあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」
バージル「知らん。」
殴りかかってくる腕を両断しミラージュエッジを手にする。試し斬りに丁度いい。ディープスティンガーを叩きこむ。あっさりと貫通し頸を撥ね下半身だけになった蜘蛛人間を眺める。やがて塵と化して消えた。残るは…十二鬼月の片割れだろう鬼にひとりの人間が近づいていくのを感知した。その前に鬼の前に出る。
「誰? お前? 僕の家族を殺したのはお前?」
バージル「こんな山に籠って家族ごっことはいい御身分だな。その間に上弦の弐や鬼舞辻無惨は殺されかけたというのに。お前…その内、鬼舞辻無惨に役立たずとして始末されるのではないか?」
「そんなはずは…⁉ 嘘だ⁉ あの御方がお前なんかに殺されかけるなんて⁉」
バージル「俺がそこらの隊士と同じに見えるのか?」
魔力を溜めながら小僧の姿をした鬼を睨みつける。鬼が怯えた表情になる。
「おっ、ちょうどいいくらいの鬼がいるじゃねえか。こんなガキの鬼なら俺でも殺れるぜ。」
ため息をついた。
バージル「お前は引っ込んでいろ。」
「お前こそ引っ込んでろ。俺は安全に出世したいんだよ。出世すりゃあ上から支給される金も多くなるからなあ。俺の隊はほとんど全滅状態だがとりあえず俺はそこそこの鬼1匹倒して下山するぜ。」
鬼殺隊もピンキリだなと思った。これでは先が思いやられる。
「おらあ!」
身の程知らずの隊士に殺傷能力のある糸が放たれる――――前に鞘で後ろに吹っ飛ばした。ついでに糸も日輪刀で細切れにした。ジャスト次元斬3連発で鬼の小僧の全身を塵にする。後ろに控えていた小娘の鬼も追いかけて後ろから頸を撥ねた。鬼の気配も人の気配もない。木の上に登る。死体も…これ以上ないだろう。全て片付いたのを確認して倒れている隊士の髪を掴んで引きずりながら異空間を開いて蝶屋敷へ帰還した。