―――竈門少年と禰豆子の柱合会議の一件から約1か月、とある列車で相次いで失踪事件が起き、調査及び鬼が関係するなら即始末せよとの命令だった。列車が格納されている整備工場へ向かう。もう夜になっている。鬼の気配、少年の悲鳴が聞こえた。声の音源へと向かう。鬼が少年を人質にとっている。すかさずトリックダウンで背後を取る。
バージル「Here I am.」(俺はここだ。)
鬼が動く前に頸を撥ねた。呆気なさすぎる。鬼はまだいると見ていいだろう。失踪事件が起きた列車が運行再開するのを待った。この任務には煉獄と竈門少年にふたりの隊士が加わると聞いた。嫌な予感がした。カナエの時と同じ感覚。もしかしたら上弦でも上位の者が現れる気がした。駅で待って列車の到着を待つ。定刻通りに来たので乗り込んだ。向こうの方で猪の頭の皮を被った少年?がはしゃいでいたが竈門少年の仲間らしいので放っておいた。鬼の気配が列車全体からする。どうやら列車と一体化しているらしい。この手の化物は元の世界でも見たことがある。さっきから
「うまい! うまい! うまい!」
とうるさい。さっさと歩みを進めた。煉獄を見る。死相が出ていた。俺の予感は当たった。
バージル「煉獄、食事中済まんがこの列車は鬼に乗っ取られているらしい。俺は鬼の弱点を狙って屋根に上って向かう。お前は乗客の避難と車内での鬼の行動に気を配れ。」
煉獄「なに! 気が付かなくて済まない! 車内のことは任せてくれ!」
窓から屋根に飛び乗る。ひとりの鬼が立っていた。
「運がいいなぁ。早速来たんだ俺のところに。夢みたいだ。これでもっと無惨様の血を分けていただける。そしてもっと強くなれたら上弦の鬼に入れ替わりの血戦を申し込めるぞ。」
血鬼術 『強制昏倒催眠の囁き』
掌を俺に向けて何かをする前に次元斬で斬り落とす。そのまま頸も斬り落とす。鬼の気配は…未だ列車全体に及んでいる。
「あの方が…柱に加えて西洋の鬼狩りも殺せって言った気持ち…凄くよくわかったよ。存在自体が何かこう…癪に触ってくる感じ。」
醜い肉塊に姿を変え先端に頭部が生える。何となくアーカムを思い出した。忌まわしい記憶。
「頸を斬ったのにどうして死なないのか教えてほしいよね。いいよ、俺は今気分が高揚してるから。赤ん坊でも分かる単純な事さ。それがもう本体ではなくなっていたからだよ。今喋っているこれもそうさ。頭の形をしているだけで頭じゃない。俺はこの汽車と融合した。この列車の全てが俺の血であり肉であり骨となった。つまりこの汽車の乗客200人余りが俺の体を更に強化するための餌、そして人質、ねえ守り切れる?君は一人でこの汽車の端から端までうじゃうじゃとしている人間たち全てを…俺におあずけさせられるかな?」
鬼が汽車に溶け込んで消える。言われなくても分かっている。最も鬼の気配が強い場所、先頭車両との連結場所。覆っているバーツを両断する。連結部分が骨と一体化している。周囲が肉塊に囲まれ無数の目が生える。ベオウルフを装着し魔力を溜め目を閉じる。周囲の肉塊が触手と化し襲っている前にヘルオンアースを叩きこんだ。連結器は破壊され鬼の悲鳴が聞こえる。血を採取する。列車が傾く。素早く列車の横にジャンプし流星脚を軽くぶち込む。肉塊が四散して列車が元の位置に戻る。列車から鬼の気配は消えた。列車からは。前方に強力な鬼の気配を感知した。すかさず前に出る。
「お前があの御方が言っていた西洋の鬼狩りか?」
バージル「お前は…上弦の参か。良いところに来た。」
突然、俺の横を通り過ぎ―――ようとしたところにラリアットをかます。倒れて地面に叩きつけられた奴の頸を片手で思いっきり掴んで締める。もがき苦しむが手を離さない。懐から注射器を取り出し血を採取する。いきなり猫が現れる。空の注射器と換えて下弦の壱と上弦の参の血液の入った注射器を猫が背負っている保管場所に仕舞った。「頼んだぞ。」と声を掛けると「ニャア。」と鳴いて消えていった。
バージル「さて…俺を無視してどこへ行くつもりだったんだ?」
「俺は…弱者が嫌いだ…⁉ だから…先に殺すことに…した…⁉」
バージル「俺を放っておいてそれが出来るならやってみろ。」
真魔人化する。
バージル「出来るものならな。」
ゼロ距離ヘルオンアースを叩きこんだ。胸から上だけになって鬼が転がる。すぐに再生する。
「お前は一体…何者だ…⁉」
バージル「世界は広い。化物は鬼だけではないということだ。覚えておけ。」
真魔人化を解き人間形態に戻る。
「なるほど…いい教訓になった。お前との戦闘に集中しよう。俺の名は猗窩座、お前の名は?」
バージル「バージル、姓は無い。覚えても仕方あるまい。ここで死ぬのだから。」
「死ぬのはお前だ。」
ベオウルフを付けたまま構える。俺から仕掛ける。左ストレート、右アッパー、二連回し蹴り。どれも避けられる。鬼が反撃に出る。三連突き、身を反らして避ける。足払い、摺り足で後退して避ける。鬼が高くジャンプする。
破壊殺・空式
鬼が宙で何度も突きを繰り出す。衝撃波が飛んでくるのを感知する。日輪刀に持ち替え正面で旋回させる。いくつもの衝撃が僅かに伝わる。攻撃が止むまで延々と防御に徹した。諦めたようで鬼が着地する。ベオウルフに切り替えエアトリックで接近する。キック13…連続回し蹴りを鬼の体に叩きこむ。あばら骨が砕ける感触。何度も蹴った。胴体の一部が千切れ骨が飛び出る。とどめの蹴り上げで鬼が宙に浮く。トリックアップで先回りして月輪脚を叩きこむ。鬼が顔面から叩きつけられる。頸目掛けて籠手を振り下ろす。硬い。右腕を可能な限り引いてから再び振り下ろす。素早く鬼が起き上がる。右籠手は地面に当たり陥没する。鬼はバク転を繰り返して距離を取る。
「はぁ…⁉ 好き放題やってくれたな。次は俺の番だ。」
バージル「かかってこい。」
右腕を正面に突き出して中指を立てクイクイと指招きする。鬼の顔に血管が走る。
破壊殺・脚式 『流閃群光』
鬼が素早く踏み込んで連続で蹴りを放つ。俺もベオウルフコンボBを省略して連続蹴りを放つ。互いに足がぶつかり合う。鬼の足が裂け骨が飛び出る。すぐに再生する。尚も接近する。
破壊殺・脚式 『飛遊星千輪』
鬼が俺の顔目掛けて蹴り上げる。摺り足で後退しかわしつつカウンターで月輪脚を叩きこむ。最後の前転宙返り踵落としが鬼の頭部にめり込む。頭蓋骨と脳が四散する。それでもすぐに再生する。
破壊殺・脚式 『鬼芯八重芯』
合計8発の乱打がほぼ同時に俺を襲う。素早く日輪刀を握り次元斬・絶を放つ。両腕両脚を切断するがまた再生する。トリックダウンで背後を取る。頸を撥ねようとしたところを屈んで避けられる。
破壊殺・脚式 『冠先割』
蹴り上げを食らう―――寸前で鞘で受け止めた。俺の体が宙に浮く。ベオウルフに切り替える。奴の頸目掛けて流星脚を放つ。
破壊殺・『滅式』
鬼が地面に片膝をつき、両腕を大きく後ろに引いた姿勢から怒涛の連撃を放つ。流星脚と相打ちになる。奴の腕が裂け骨が飛び出るがすぐに再生する。
破壊殺・『乱式』
無数の拳打が襲う。ダンテの真似をするのも癪だが俺も両籠手でのラッシュで応酬した。拳と籠手がぶつかり合う。拳が砕け骨が飛び出ようとも拳打は終わらない。俺も負けじとラッシュを延々と繰り出した。拳打が止まる。腹に何発か食らったが致命傷には程遠い。
「これでも駄目か…⁉ お前…本当に何者だ…⁉」
バージル「お前が知る必要はない。鬼舞辻無惨もな。あいつのように逃げないのか? もうすぐ日の出の時間だ。奴によろしく言っておいてくれ。お前も奴も…ただのしぶとい害虫だ。」
「お前は殺す…⁉」
バージル「鬼舞辻無惨も同じこと言っていたぞ。逃げたが。」
破壊殺・終式 『青銀乱残光』
全方位にほぼ同時の無数の拳打が発生する。素早くミラージュエッジに持ち替える。正面からディープスティンガーで突っ込む。鬼の腹を抉りあらゆる臓物をぶちまける。時計の針のように回転する日輪刀が頸に迫る。どんどん頭頂部から膝のあたりまで輪切りにしていく。頸に食い込んでは回転速度が鈍くなる。相当硬い。握力を強める。刀身が赤く染まる。回転速度が戻る。頸も輪切りにする。地面に残るは数枚に下ろされた鬼の死体。日が昇るにはもう少し時間がかかる。ゆっくりと塵になっていく―――と思いきや急激に体がくっついて元に戻ろうとしている。五月雨幻影剣で拘束する。
バージル「お前はよく頑張った。俺も少しは楽しめた。だがサヨナラだ。」
もがきにもがいて腕や脚を千切ってでも拘束から逃れようとする鬼の頸に渾身のヘルオンアースを振り下ろした。大爆発が起こる。今度こそ塵になって消えた。ここに上弦の参の討伐は完了した。初めての上弦の始末に成功したことに心は晴れやかだった。血液の採取も出来たし問題ないだろう。
「おい⁉ そこの銀髪蒼羽織野郎⁉ 俺と勝負だ⁉」
猪の頭の皮を被った少年?が怒鳴りながら駆け寄ってくる。
バージル「ほう…俺に勝つ気でいるのか? 面白い。」
真魔人化する。それだけで猪頭の少年?の動きが止まる。
バージル「Where's your motivation?」(やる気があるのか?)
「う…う…うおおおおぉぉぉぉ⁉ 猪突猛進⁉」
二刀流で突っ込んできた。俺も日輪刀とミラージュエッジで合わせる。両手で交差するように振り刀を弾き落とし、頭突きを躱し脇に抱えて腕をくぐりズボンの裾を掴み縦に持ち上げジャンプして垂直落下式ブレーンバスターをお見舞いする。モロに脳天から叩きつけられ少年?は動かなくなる。真魔人化を解く。
炭治郎「あーあ…。だから言ったのに…。」
バージル「竈門少年の仲間か?」
炭治郎「はい、そうなんですけど…誰彼構わず力比べしたがる癖があって…すみません。」
バージル「謝ることはない。強者との戦いの経験も必要だ。お前たちはまだ若い。よくやってる方だと思うぞ。」
炭治郎「でも…鬼は俺たちの成長を待ってはくれません。バージルさんがいなかったらたぶん乗客の皆さんも含めて皆殺しですよ。煉獄さんですら見ているだけしか出来なかったのに…。」
バージル「その通りだな。だが地道に鍛錬する他あるまい。人の道に外れてまで強くなろうとすればいつか必ず代償を払うことになる。必ずな。」
炭治郎「……バージルさんもそうだったんですか?」
バージル「ああ。今生きているのは偶然に過ぎない。本来ならとっくに死んでいた。」
炭治郎「……でも! バージルさんはこの世界では立派な英雄ですよ! 上弦も倒して乗客の皆さんも救って…! 俺は尊敬しています!」
バージル「そう言われると…気分は悪くない。そういえば『はじまりの呼吸』とやらに聞き覚えはないか?」
炭治郎「うーん…あっ⁉ そういえば…⁉ 俺も鬼との戦いで水の呼吸とは違う、使う技があります…⁉ それと俺の家に代々伝わる『ヒノカミ神楽』っていう舞があるんですけどそれが関係しているかもしれません⁉」
バージル「今舞えるか?」
炭治郎「やってみます⁉」
竈門少年が舞う姿を見た。要所要所に攻撃に使える型がある。
炭治郎「はぁ…⁉ はぁ…⁉ 以上です⁉」
バージル「面白いな…。ひとつひとつが攻撃に応用できる型になっている…。確か…こう…だったか…。」
竈門少年の舞を日輪刀を持って再現する。全集中の呼吸をしながら黙々と体を動かし刀を振る。その内炎の如し吐息が漏れる。刀身も炎を纏っているように見える。最後に螺旋を描くように飛びながら刀を振る。
バージル「……どうだ?」
炭治郎「凄い…⁉ 凄いですよ⁉ とっても鮮やかで…⁉ 見惚れてしまいました⁉ もしかしたら『はじまりの呼吸』という奴かもしれません⁉」
黙々と最初から最後まで再現した。始めから炎の如し吐息が漏れる。延々と繰り返した。体は不思議と疲れない。矢継ぎ早に動きのひとつひとつを繋げる。ひとつの剣舞が完成した。
バージル「全部で…12の型か…。竈門少年、今の動きを休まず最初から最後まで再現して見せろ。お前の方が馴染み深いだろう。もっと強くなれるぞ。」
炭治郎「えっ⁉ 全部ですか⁉ ひとつやるのに物凄く体力を消耗するんですけど…⁉」
バージル「反復練習あるのみだ。その内体が慣れる。」
「カアァァ――――⁉ カアァァ――――⁉ 伝令!!伝令!! 闇柱バージル‼ 下弦ノ壱及ビ上弦ノ参討伐‼ 闇柱バージル日ノ呼吸復活‼ 日ノ呼吸復活‼」
鎹鴉どもがやかましい。『日の呼吸』とはさっき俺がやった呼吸の事だろうか。炎の呼吸とどう違うのか興味が湧いた。