教室には、登校してきた生徒たちの話し声が響いていた
ザクくんは自分の席に座り、机に頬杖をつきながらぼんやりと校庭を見ていた
入学してからまだ数日
授業にも少しずつ慣れてきた
漫画研究部にも入った
親友のズゴックくんもいる
高校生活は、今のところ順調だ!
……一つを除けば
「……」
ザクくんは、教室にいる女子たちを眺める
女子同士で楽しそうに話して
笑い声が聞こえる
その光景を見ながら、ザクは思う
ザク「……俺、」
隣で鞄を整理していたズゴックくんが顔を上げる
ズゴ「ん?」
ザク「俺さ……高校入ってからいや小学生以降女子とまともに喋ってなくね?」
ズゴックくんは少し考える
ズゴ「う〜んそうだね!確かに」
ザク「だろ?」
ズゴ「まぁ、まだ入学して4日だし」
ザク「でもさ俺、高校入ったら彼女作るって言ったじゃん」
ズゴ「うん」
入学式の日
帰り道で肩を組みながら宣言した言葉
ザク『高校では彼女作るぞ!』
二人『おー!』
あの時の勢いはどこへ行ったのか
ザクくんは頭を抱える
ザク「このままじゃダメだ……」
ズゴ「え、何がー?」
ザク「俺、女子と喋る!」
ズゴ「おー頑張れ」
ザク「今日中に絶対女子と喋る」
ザクは拳を握る
その直後、朝礼の開始を告げるチャイムが鳴った
担任のシローアマダが教室へ入ってくる
シロー「おーい、席つけよー」
生徒たちが席に戻る
しかし――
(女子と話す……)
そう意識した途端、緊張してくる
(いや、大丈夫だ、普通に話せばいい)
朝礼が終わる
アマダ先生が教室を出ていった
ザクくんは隣のズゴックくんを見る
ズゴックくんが小さく頷く
ズゴ「頑張れ〜」
ザク「……うん」
ザクは席を立つ
心の中では初代ガンダムが立ち上がったシーンを思い浮かべ
ターゲットは、少し離れた席にいるジム子
ザクくんはゆっくり近づく
(大丈夫……普通に……)
そして、
ザク「…や、やぁ」
女子が振り向く
ジム子「ん?」
ザク「…………」
ザクくんの頭が真っ白になった
(何を話すんだっけ)
ジム子は不思議そうにザクくんを見る
ジム子「なん?ですか?」
ザク「…………」
ジム子と話すこと自体初めて認知されているのかすら分からない
ジム子「?」
ザク「…な、何でもないごめん!」
ザクくんはその場から逃げた
ズゴックくんのところへ戻ってくる
ズゴ「何しに行ったんだよ笑笑」
ザク「無理だよ」
ズゴ「何が?」
ザク「女子が怖い」
ズゴ「怖くないだろ」
ザク「目が合った」
ズゴ「当たり前だろ笑」
ザクくんは机に突っ伏した
ザク「俺には一生無理だ……」
ズゴ「まだ一人目だろ」
ザク「そうだけど……」
そして二時間目、三時間目と授業が過ぎていく
休み時間
ザクくんは再び決意する
今度は漫画研究部の女子に話しかけることにした
ザク「趣味の話ならいける」
ズゴックくんも頷く
ズゴ「それならお前、普通に喋れるしな」
ズゴ「あとは憧れのキャラをイメージしたら話しやすいんじゃない」
ザク「それいいね、よし……」
ザクくんは女子のところへ向かった
ザク「Hi、」
腐ドム「ん?」
ザク「東方って作品、知ってる?」
腐ドム「いや、知ってるも何も当たり前で草大草原不可避なんですけどドゥヒュ、もしかして性的搾取のシコザル作品好きなん(フィクションです)ドワーww!そんな作品より刀剣乱舞とか~~~~~~~~(以下略)」
ザク「東方のことボロクソ言われた上興味ない作品語られた、、、」
ズゴ「ど、ドンマイ次があるよ!漫研で探すのはやめといた方がいいと思う」
次にザク達は次に図書室に向かう事にした
ズゴ「あそこで本読んでる子とかどう?」
ザク「えーあのガンダムタイプ(美形)に話しかけろって!?」
ズゴ「行けるってあの本映画で見に行っただろそれをきっかけに話しかけろって〜」
ザク「わかったよやってみるよ」
ザク「なぁ」
サンドロック「なんですか?」
ザク「俺もその作品好きなんだけどキミも好きなの?」
サンドロック「あーうんうん、そうだよ僕は特にシルフィエットってキャラが自分に似てて好きかな」
ザク「マジで!?」
そこからザクくんの口が止まらなくなった
サンドロック「10巻の展開すごくない? 俺あそこ初めて読んだ時――」
サンドロック「分かる!」
ザク「だよな!」
サンドロック「ザクくんって結構漫画読むんだね」
ザク「まあな! 俺結構――」
そこまで言って、目が合った
ザク「……」
サンドロック「んどうしたの?」
ザク「…………」
ザクくんの口が閉じる
顔が固まる
サンドロック「ザクくん?」
ザク「……あ、いや」
サンドロック「どうしたの?」
ザク「……ごめん用事あるの思い出した」
そして、そそくさと戻っていった
ズゴックが何やってんだお前と言わんとするような顔をしている
ズゴ「お前、趣味の話ならめちゃくちゃ喋れるじゃねーの」
ザク「……」
ズゴ「何で途中から黙ったんだよ」
ザク「女子だって意識したら話せなくなる」
ズゴ「面倒くさいなー、お前」
ザク「うるさいなぁ」
昼休み
二人で昼飯を食べながら、ザクくんは悩んでいた
ザク「どうすれば女子と普通に喋れるんだ……」
ズゴ「普通に喋ればいいじゃん」
ザク「それができないんだよ!」
ズゴ「慣れればいいだけさ〜♪」
ザク「雑だなぁ……」
ズゴックくんは笑った
ズゴ「まあ、そのうち慣れるって」
放課後になり
二人はいつものように漫画研究部へ向かって廊下を歩いていた
その時だった。
向こうから、一人の女子生徒が歩いてくる
白と青を基調とした姿
整った顔立ちに長い髪
歩いているだけなのに、周囲の視線が自然と集まる
ズゴ「お」
ズゴックくんが気づく
ズゴ「ウイングちゃんじゃん」
ザク「……誰?」
ザクくんが聞く
ズゴ「おいおいうちのクラスのマドンナだぞ〜」
ザク「知らん」
ズゴ「この学校でも結構有名だぞ」
ザク「へぇ……」
ザクくんは何気なく前を見る
そして――
ウイングガンダムちゃんと目が合った
ほんのその一瞬ただそれだけだった
「…………」
足が止まった
ズゴックくんが数歩進んでから振り返った
ズゴ「どしたーザク?」
返事がない
ザク「おーい」
ザクはウイングちゃんの後ろ姿を見つめている
ザク「……」
ズゴ「ザク?」
ズゴ「……天使だ?」
ズゴ「?」
ズゴ「……やめとけ!」
ズゴックくんは苦笑した
ズゴ「モブがヒロインと付き合うってことだぞ?」
ザク「それでも!」
ザクくんの顔は完全に赤くなっていた
ザク「……俺、一目惚れしたかも」
ズゴ「お前、今日女子と喋るだけであんなに苦戦してたのに?」
ザク「……」
ズゴ「しかも、まだ一言も喋ってないのに」
ザク「分かってるよ」
ザクくんは小さく呟く
ザク「でも……」
そのままウイングちゃんが去っていった方向を見る
ザク「……一目惚れって、こういうことなんだ?」
二人はそのまま漫画研究部へ向かった
ザクくんは椅子に座ったまま、漫画を開いている
しかし、ページは一向に進んでいない
ズゴックが向かいから覗き込む
ズゴ「まだウイングちゃんのこと考えてんのか〜?」
ザク「……うん」
ズゴ「重症だな」
ザク「俺、あの子と話したい」
ズゴ「今日の朝、女子と話すだけで逃げてたじゃん」
ザク「……」
ザクくんは黙る
そして真剣な顔で言った
ザク「でも、頑張る」
ズゴックくんは少し驚いた後、笑った
ズゴ「まあ、頑張れよ、俺は本気で応援するし邪魔もするから」
ザク「おう!」
ザクくんは再び漫画を開く
しかしそのページには、まったく集中できなかった
頭の中にいるのは、さっき見たウイングガンダムちゃんの姿だけだった