終末世界のラーメン屋台の店長さん   作:一反木綿豆腐

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邪兎屋と限定「特濃煮干しラーメン」

 

 

 あいつらはまあ、何と言えばよいのやら。

 人と人外が付き合っていく上での理想のように思える。

 

 時に小心や欲望、先見の明の無さから悪事や失敗を成したとしても。

 人の心と光を忘れず、堂々と己を謳い上げる。

 

 それは“作られた者”にとっては目映い光であり、救いに違いない。

 

 しかしまあ、何と呑気で騒がしいことか。

 これくらいの方が、この壊れかけの世界に生きていくには丁度いいか。

 

 だけどな、いい加減にしておけよ。

 三途の川の渡し賃がなくなったとしても、ツケは必ず、何としても回収させて貰う。

 

 

 


 

 

 

 六分街の外れ、ルミナスクエアとの間に流れる川の近くで店を出す「一期一会」。

 陽が沈んでからの営業が基本だが、本日は昼間から店を開いていた。

 

 

「よお、ナラカの大将! 久し振りだな!」

 

 

 暖簾を潜り、快活な機械音声を響かせたのは、赤いジャケットが目を引く知能構造体、ビリー・キッド。

 新エリー都中に名を轟かせる何でも屋(社長自認)、邪兎屋の従業員であった。

 

 

「出やがったな、ポンコツ。味覚モジュールでも取り付けたか? なら、一杯くらいは奢ってやってもいいが?」

「生憎と、いつも通り付き添いだよ。味覚モジュールは高けぇし、有機物分解やらエネルギー変換モジュールもセットなんだ。大将のラーメンにゃ興味はあるが、おいそれと手は出せねえさ」

「万年金欠のお前らじゃ、夢のまた夢だわな」

「ん、ナラカ大将。食べに来たよ」

 

 

 自身の後に姿を見せたのは表情乏しく、ミディアムショートの銀髪に、ワンポイントの編み込んだもみ上げを揺らした少女。

 何処も彼処も細く、華奢で儚い印象を受けるが、瞳に宿るオレンジの光は強い輝きを放っていた。

 

 少女の名はアンビー・デマラ。

 それが今(・)の名であり、今後はもう二度と変わらないであろう。

 

 

「何だ、今日はハンバーガーじゃないのか。そっち食っとけよ。どっちも同じデブのもとだ。オレは手間がハブけて楽なんだが」

「錦鯉と一期一会のラーメンは特別。それにハンバーガーはタンパク質、炭水化物、野菜を取れる完全食だから、デブのもとじゃない」

「本気で言ってるよコイツゥ。近い将来、内臓(なかみ)全部ダメになるわ。ビリー、あとは任せた」

「仲間としては、寿命をなるべく伸ばしてやりたいが、オレにはどうすることもできねえ……!」

「まあ好きなように生きて、好きなように死ねよ。で、見たことない顔がいるな」

「………………」

「彼女は、猫宮又奈。邪兎屋の新しい従業員」 

「おい、どうした猫又、顔色悪いぞ」

 

 

 ナラカの視線がアンビーから、背後に立つ青い顔をした猫耳を生やした少女へと視線が移る。

 赤を基調とした服装はビリーと被るが、何よりも目を引くのは腰から伸びる尻尾。

 猫のシリオンなら尾くらい珍しくもないが、二股に別れている者は殆どいないだろう。

 

 しかし、様子がおかしい。

 青い顔は勿論のこと、全身の毛を逆立て、耳と尻尾は天に向かってピンと伸ばして固まっていた。

 

 

「猫又、挨拶くらいして。こちらは私達がお世話になってるナラカ大将。食べるものがなくなったら、此処にきて」

「オレの店は配給やってるわけじゃないがぁ!? ツケを前提にするなアホどもがぁッ!!」

「ナラカの大将が、邪兎屋(オレ達)の生命線であることは否定できねえんだよなぁ……」

「……ハッ!? な、何だろ、今の感覚。ゾワゾワ来た! うーん……? まあ、いっか。あたしは猫宮 又奈。猫又って呼んでいいぞ」

「ナラカだ。ツケ前提で来るんじゃねえぞ」

「ちょっと待って! 邪兎屋はどんだけ信用されてないの?!」

 

 

 金縛りから解き放たれた猫又は、ナラカの発言に視線を向けてきた。

 同僚へと目を向けたが、当の二人はすっと居心地悪げに目を反らすばかり。

 

 二人とも金欠に陥った時の最後の砦として、よく泣き付いてきた。

 最近はなくなったが、ビリーは充電を、アンビーはツケで食事を。

 ナラカにそんな義理などないが、二人に頼られれば仕方ねぇな、と助けてやる程度には気に入っている。

 

 

「まったく何やってるのよ。さあ、ナラカ、来てあげた──」

「それ以上店に近寄るんじゃねえ! オレ、ちゃんと帰って欲しいって顔できてるかぁ!?」

「仮にも客に向かって、そんな顔……!」

「ガウタマァッ!」

「ンナンナァッ!(了解! ボンプ流解析術! ガウタマァアァイッ!)」

「説明しよう! ガウタマアイとは! 搭載された超高性能スキャンモジュールを用い、対象の持つ武装だけではなく、ディニーをいくら持っているのかまで判別可能なのだぁ! だぁ! だぁ! だぁ!(セルフエコー」

 

 

 ビー、とカウンターの上に飛び乗ったガウタマの目から光が放たれ、現れたピンク髪の少女を上から下まで解析していく。

 

 彼女こそ邪兎屋の頂点にして、「一期一会」にとっては最悪の厄介者。

 ナラカが何ら心苦しさを覚えず、全力でクソ客呼ばわりするニコ・デマラである。

 

 

「ンナッ……!(ディニーは硬貨、紙幣ともになし。ナラカ、ニコは無一文だ!)」

「え? ニコ、お金持ってないの?! それで自分からラーメン食べに行こうとか誘ったわけ!? バカじゃんっ!!!」

「ああ、そうだぞ猫又。お前は賢いな。金払ったらおまけしてやろう。そういうわけだ、お前だけ帰れ!!!」

「………………客に向かって、その態度は何なわけ?! お金お金お金って、金の亡者じゃないのよ!」

「まず、第一に支払い能力のない方はお客様ではございません。第二に、ニコのツケは五十三万を超えております。第三に、お金を持つ以前に店と客の関係性をしっかりと身に着けた方がよろしいのでは?」

「ナラカの大将がキレすぎて、すげー丁寧な口調になってる……!」

「と言うか、ニコ。ツケが五十三万って、私ですらちゃんと後から払ってるのに」

「……………………」

「無言で椅子に座るんじゃねえ!! 帰れつってんだろ!!」

 

 

 ガウタマのスキャン結果に、猫又は驚きの声を上げた。

 ナラカどころか、社員にすら責められ、ニコは何も言い返せなくなりながらも引き攣った顔でカウンター席へと腰を下ろす。

 これにはナラカには辛辣に、他者には比較的穏当な対応をするガウタマですら、間近でメンチをきり始めた。

 

 すると、ニコは泣きそうな顔になりながら、カウンターに突っ伏した。

 それを見るナラカとガウタマの視線は何処までも冷ややかだ。

 

 

「うぅ、うぅぅぅ! 仕方ないじゃないのよぉ! 猫又が入ってきて、ただでさえカツカツだった我が社の経営は破綻したわ……!」

「そ、そんな、あたしのせいで……!」

「ふーん」

「ンナ?(それ、そんな状態で新しい社員を雇ったニコが悪いだけだよね?)」

「そして、私は自分の給料を後回しにして、皆の給料へを優先した! 社員の生活は私が守るんだから!」

「お、親分、そこまでして……!」

「はー、ごりっぱごりっぱ。りっぱっすね、さすがしゃちょー」

「ンナナッ(いや、もう社員を邪兎屋から解放してあげたら? 他に就職した方が皆、安定した生活送れると思うけど)」

「た、大将も、ガウタマ先生も辛辣……! どうかニコを助けてあげて欲しい……!」

「茶番は終わったか? よし、じゃあ帰れ」

「「「だめかー」」」

「何でよーーーーーー!!!」

 

 

 何でも何も、金を持っていないからである。

 ナラカも茶番を演じてまで庇おうとする三人を目にすれば、ニコが虚言を弄しているわけではないのは分かる。

 

 だが、そこはそれ。

 飲食店においてツケ払いする客など害悪でしかなく、ツケの額を見れば最早支払うつもりをないと判断しても仕方がない。

 

 しかし、ニコは涙目になりながらも頑として譲らず、帰ろうとしない。

 どうやら本気で切羽詰まっている様子。ここで食い繋げなければ、リアルに餓死が見えてくるのかもしれない。

 

 

「仕方ねえ。大将、親分の分はオレが持つからよ、食わせてやっちゃくれねえか……?」

「び、ビリー……! い、いやダメよ! 社長として、社員に奢ってもらうなんて……! でも、食べなきゃ! でもでもぉ……!」

「じゃあ、ニコの分は私達で折半する」

「えー、あたしもー? 仕方ないにゃあ……」

「お前らから受け取れるかよ、甘やかすからコイツがツケあがんだ。ツケだけに…………それはオレも同じか。まあいい、座れよ」

「ンナァッ!(ナラカァ! このお馬鹿ぁ! またツケが増えるぅ!!)」

「ぶへぇっ……!!」

 

 

 ニコの涙目よりも、三人の庇う姿に感じ入ったのか、ナラカはようやく折れた。

 

 瞬間、ガウタマがカウンターから飛び上がり、ナラカの顔面目掛けて強力なドロップキックを放つ。

 家族を食わせてやれればいいナラカに対し、経営者として厳しい視点を有するガウマタにしてみれば、当然の制裁であった。

 

 

「ふっふっふっ。しばらく乗り切れれば、何とかなるわ。大口の案件もあることだしね……!」

「ああ、ニュースで見たな。ヴィジョンコーポレーションへの集団訴訟だったか、それの原告なんだって?」

「そうよ。コレに勝てば慰謝料でガッポガッポ、左団扇で生活できるわ。ここのツケも一括で払ってやるわよ……!」

 

 

 自信満々におほほほと笑ってみせるニコに、ナラカはこれはダメだな、と逆に確信した。

 

 ヴィジョンコーポレーションが行おうとした崩落した地下鉄の爆破解体計画。

 その費用を削減しようと、爆破地点近くの住民に立ち退き勧告すらせず、計画を実行しようとした。

 しかし、邪兎屋の活躍により計画は実行前に阻止され、現在は住人の意見をまとめて慰謝料請求を目的とした裁判が進行中。

 

 裁判には恐らく勝てる。

 民事だけでなく刑事としてもヴィジョンは裁かれる側。

 治安局の捜査によって明らかになった証拠と事実があれば勝てはするだろうが、ヴィジョン側も本気で弁護団を準備してくるであろう以上、慰謝料の額は想定よりも少なくなるのは目に見えている。

 

 裁判とはあくまでも異なる主張を掲げる二者間の紛争を収めるものであり、正義が執行される場ではない。

 互いの妥協点を探り、裁判官が落としどころを決める。住人は命の危険に晒されたが、死傷者が出たわけではない。

 住人達の当面の生活費となる程度の額が精々といったところ。それでも人数が人数だけに莫大な額となるが、苦しい生活から脱出するには足りないであろう。

 

 それを知った時、ニコがどう動くのか。

 彼女の人間性を知り、嫌々ながらも認めているナラカには手に取るように分かる。

 

 

「おぉ、安い……! 大将、おすすめは?」

「特には。ま、何を食っても不味くはないぜ。好きなのを選べよ」

「猫又、限定ラーメンがある時はそれ一択。本当に限定で、二度と食べれないから。それにチャーハンは間違いない」

「限定は他のより倍近いけど、それでも他のラーメン屋より安い。……ほー、『特濃煮干しラーメン』、猫のシリオンとしてもスルーは無理。じゃあ、限定ラーメンと半チャーハンセットで」

「アンビー、お前が余計なことを言うからっ!」

「私は店の売り上げに貢献しただけ。ガウタマ先生もそう思うでしょ……?」

「ンナッ!(アンビーは賢いねっ! えらいよ、また色々と教えてあげようね!)」

「えへん」

 

 

 ナラカの嘆きなど何処吹く風。

 猫又、アンビー、ガウタマはキュピーン! と目を光らせ、互いにサムズアップしてみせた。

 

 ツケをキチンと返した上で、店の売り上げを考えてくれるアンビーは、ガウタマにしてみれば最良の客と言える。

 

 

「ナラカの大将、相変わらずチャーハン作りたくねえんだな……」

「作りたくねえもんは作りたくねえんだよ! だるいッ! 面倒ッ! 熱いッ! の三重苦だぞこっちは!」

「ちょっとぉ! 単品のチャーハンがなくなってるじゃないのよぉ!」

「テメェはツケで食おうとしてる自覚あんのかなぁ!? このバカがッッ!!!」

 

 

 自分の立場を棚上げして食いだめを画策するニコに、ナラカは罵声を浴びせながらも仕事に取り掛かる。

 邪兎屋が来れば、毎度この調子。罵倒で喉が枯れそうなほどだ。

 

 図々しく、恥知らずで、最後の一線だけは超えようとせず、自らの人間性を捨てようとはしない。

 ナラカも、その一点だけはニコを評価していた。まるで甘く魅力的な匂いを放つ果実のようだ、ところどころ腐ってるけど、と。

 

 

「そういえばガウタマ先生よぉ。この前教えて貰った株、結構勝てたぜ。あんがとな。これで弾代も当面心配なさそうだ」

「ンナナ(それはよかったよ。躯体のアプデまで頑張ってね)」

「へぇ~。ビリー、株なんかやってるの? 邪兎屋での生活を考えるとあたしも始めた方がいいかなぁ~」

「私も始めてる。特に、給料未払いの時に助けられてるよ」

「ンナンナッ!(猫又もツケ払いをしなければ、キッチリ教えてあげるよ! 市民IDがなくても作れる口座の作り方からね!)」

「成程、アンビーとビリーが先生と呼ぶ理由がよく分かったぞ。ガウタマ先生……! 株がしたいです……!」

 

 

 ナラカが仕事の傍ら、聞こえてきたのはガウタマとビリー達の会話。

 きっかけは、ニコの無茶苦茶な経営で生活苦に喘ぐアンビーとビリーを見かねてだったか。

 

 教える条件は必ず自分の手にした金銭で、余裕のある範囲で行うことだったはず。

 二人とも真面目に株に関して勉強しているようで、ナラカを介さずに個人的なやり取りをしているようだ。

 株どころか金そのものに興味がないナラカにはあまりに遠い世界の話であったが、邪魔する理由もない。

 

 地獄の底まで共にする仲の相棒が先生と慕われる姿を見るのも、悪い気はしなかった。

 

 

「ちょ……っと待って。私、株やってるなんて聞いてないわよ!?」

「いやぁ、ニコの親分には、なあ……?」

「株で稼げたら、アンタ達に給料未払いなんて情けない真似しなくて済むじゃないのよッ!」

「ンナッ!(ダメッ! そこで真っ先にその感想が出てくるのは流石だけど、ニコには教えないよッ!)」

「何でよォッ! お願い、教えてちょうだいガウタマ先生ッ!! 私、お金持ちになりたいです……!」

「ンナナ、ンナァ(だってニコ、馬鹿みたいなお金の使い方するから。ただでさえ借金あるのに、更に借金作って一発逆転を狙うでしょ。そんな人間、株でも投資でも碌な結果にならないよ)」

「ガウタマの言う通りだな。デカく勝っても、必ずデカく負けて生き地獄確定するタイプだ。お前は常にギリギリの崖っぷちであくせくしてた方がまだマシだゾ」

「あー、凄く納得した……」

「アンタ達の中で私はどうなってんのよッ! こうなったら……!」

「ニコ、言っておくけど、私もビリーも教えないから。そういう約束」

「悪いな、親分。こればっかりは大将と先生の言い分が正しいぜ」

「何でよぉぉぉぉ────!!!」

 

 

 カウンターに上半身を預け、頭を掻き毟るニコ。

 社員の裏切り──などではなく、純粋に彼女の身を案じての措置だったのだろう。

 ナラカはそっとニコの背を撫でるアンビーとビリーを手を見逃さなかった。

 

 しかし、その間も彼の手は一切止まることはなく、一日限りの限定ラーメンが手早く完成した。

 

 

「ほらよ、特濃煮干しラーメンと半チャーハン、お待ち」

「おー、すっごい煮干しの匂い……!」

「でも、スープの色が……」

「こればっかりはな。かえしに煮干しのペーストを使ってるんだ。ベースは塩だが、煮干しの旨味が全部入ってる。味は保証するよ」

「うーん、匂いでオレの論理コアが踊ってる気がするぜ。大将が老いぼれるよりも先に、いつかは食べてみたいもんだ」

「ぬかせ。お前が廃品回収される方が早いんじゃないか?」

「ハッ、言ってくれるぜ」

 

 

 猫又は目を輝かせ、アンビーは僅かに顔を顰める。

 

 無理もない。特濃煮干しラーメンのスープは、煮干しの色合いがそのまま出た灰色がもっとも近く、決して食欲を誘う見た目ではない。

 通常、煮干しは頭と内臓は落とすが、今回は煮干しを丸ごと使用しており、かえしにもペースト状にした煮干しを使用したからだ。

 

 その分、具には気を遣っている。

 煮干しの余計な臭みを消すため玉ねぎのみじん切り、色合いを誤魔化すために万能ねぎと春菊、後は自家製メンマとチャーシュー。

 麺はスープをくどく感じぬよう、歯切れの良いパツパツとしたストレートの中細麺を選択した。

 

 

「ま・ず・は・スープからぁ~………ずずっ」

「うん、美味しい。少し苦味があるけど、いいアクセントになってる」

「はぁ~~~~~、これは確かに特濃だぁ♥ 煮干しの旨味がガツンと来るぅ~♥」

 

 

 猫又は思い切り、アンビーは控えめに顔を綻ばせる。

 ラーメンはさほど好きではないナラカであるが、自身の仕事が実を結ぶ瞬間は嫌いではない。

 

 特に、今回は煮干しの旨味を最大限引き出しつつ、臭みだけを消すのに苦労した。

 出汁を取るの際には多くの清酒を使用し、かえしには少量のレモンを入れたことで問題は解決したが、少々割高に。

 

 この辺りはガウタマも割り切っている。

 限定ラーメンは客寄せかつ、ナラカの腕前を周知するためのものに過ぎない。あくまでも稼ぎの中心は通常品の方。

 お陰様で、邪兎屋の経営とは違い、もう何年も黒字経営である。 

 

 

「私の、私のは……!?」

「お待たせ。おあがりよ……!」

「────は?」

 

 

 猫又とアンビーから僅かに遅れて、ニコの目の前に一杯のラーメンとチャーハンが並ぶ。

 

 しかし──

 

 

「具がないじゃないのよぉ! しかも限定ラーメンじゃないッ!」

「喜べ。ツケのあるお前にしか提供されない素ラーメンだ」

 

 

 出したラーメンは通常品の醤油ラーメンであり、チャーシューやメンマどころかネギすらいれていない。

 

 

「ふざっ、ふざけっ……んッ?! ちょっと、待って!? こっちのチャーハン……」

 

 

 素ラーメンに驚き、目を剝いたニコは続いてチャーハンを見る。

 レンゲで盛られた山を割ってみるが、驚いたことに具が入っていない。卵も、チャーシューも、ネギさえも、一欠けらもなかった。

 

 

「そっちもお前限定の具無しチャーハンだ。頑張ったろ?」

「えっ!? 猫又とアンビーのと一緒に作ってたのに!? 何でそんな器用な真似するのよ!?」

「普段のより手間かかったわ。喜べよ、値段も半額にしてやろう。やったねニコちゃん! ツケの増額が抑えられるよ!」

「わァ……あ……」

「「「泣いちゃった!!!」」」

 

 

 





 ニコ・デマラ
 ナラカにとっては燦然と輝く最高で最悪のクソ客。脳焼き被害者ではない。
 但し、彼女のツケが膨れ上がったのはナラカが何のかんので甘いから。

 TOPSの利益しか頭にない連中よりかはまあ。
 市政も支援してたらしいヘーリオス研究所の倫理観ない実験する連中よりかはまあ。
 そんなとこ支援する市政よりかはまあ。
 ヘーリオス研究所以上に倫理観ない実験繰り返してるアホな新エリー都防衛軍よりはまあ。

 で、慈悲はくれてやった結果。でも、罵倒はする。人間性だけは認めている。

 アキラとリンからプロキシ業に関して、ナラカに伝えないように口留めされている。

 アキラとリンから唯一よくない目で見られていない。
 二人はニコを良くない目で見たら負けだと思っている。


 アンビー・デマラ
 ナラカにとっては良客。ニコの脳焼き被害者。ナラカをただ者ではないと思っているが、同時に信用している。
 ガウタマの先生と仰ぎ、株と投資でコツコツと生活費を稼いで、「Random play」でもツケを使わずに通っている。

 アキラとリンとニコをよくない目で見ている。


 ビリー・キッド
 ナラカにとって客ではないが 友人ではある。ニコの脳焼き被害者。ナラカをただ者ではないと思っているが、普通に接する。
 暇な時は、ナラカの仕事場でアキラと一緒に男子会をやったりしているくらいに友人。 
 
 アキラとリンからよくない目で見られている。
 二人曰く「邪兎屋のセックスシンボル」。ダンスがぬるぬるしてエッチ過ぎる! とのこと。


 猫宮 又奈。
 通称、猫又。ナラカにはニコが雇ってなら悪い奴じゃないだろ、と思われている。
 
 アキラとリンとアンビーとニコをよくない目で見ている。

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