今回は、実験的に一人称で。
アンケートを設置したので、回答してってください!
泣きたかった時も。
一人で悩んでいた時も。
もう立ち上がれないと膝を折った時も。
いつも何も聞かずに。
いつも傍にいてくれて。
いつもお腹いっぱい食べさせてくれたね。
気づいてたかい?
僕達には、それだけで十分だったんだよ。
なので、責任を取ってもらうとしよう!
夢の三世帯住宅は、もう見えてきているんだから!
あ、あと性癖を歪めた責任も一緒に、だ。
朝の挨拶と一緒にするケツ撫では絶対にやめるつもりはない。絶対に。絶対に、だ。
「悪りぃな、店長。オレの趣味に付き合わせちまって」
「構わないよ、ビリー。僕もスターライトナイトは嫌いじゃない。と言うか、いわゆるヒーロー物は全般的に好き、かな?」
「へぇ、意外だな。店長は、女の店長よりも落ち着いてるからよ。もっとこう、映画の趣味も、芸術とかドキュメンタリーとか小難しい方面に寄ってるかと思ってたが……」
「ははは。映画はどれも好きだよ。それぞれジャンルによって楽しみ方が違うし、一度見ていても演出の意図を探るような、視点を変える楽しみ方でもできるからね。ホラー以外は」
「あぁ、オレもホラーは苦手だわ。論理コアが震えんのが分かる感覚、すげー苦手なんだよなー」
何てことはない、普段通りの昼下がり。
僕は、邪兎屋のビリーとルミナスクエアの一角を並んで歩いていた。
ビリーの両手には、今し方あとにしたイベント会場で買い込んだスターライトナイトグッズが入った買い物袋がぶら下がっている。
普段、彼とは休みが合えば、共に遊ぶ仲。
ゲームセンターで協力プレイや対戦プレイも楽しむし、特に当てどなく街をぶらつくこともある。
何でも屋と称しながら、ホロウレイダー染みた真似をしている邪兎屋とは、プロキシとしてそれだけ長い付き合いで、必然友人関係も構築されるわけで。
僕達の店でツケを許してしまうくらいの仲にはなっていた。
「いやぁ、しっかし、イベント会場でバッタリ会うとはな」
「うん。今日は店も休みだったし、一人で静かにしているよりも、騒がしい場所にいたい気分だったんだ」
「…………そうか」
「それに、ビリーに会えるかも、とも思ったかな?」
「そっかー…………アレ? オレ、いま遠回しに騒がしいって罵られた……?」
「まさか。罵ってなんかいないさ、事実を言っただけだよ」
「やっぱり罵られてんじゃんかーーーーー!?」
ガクン、と肩を落とすビリー。
しまった。僕は“ビリーに会えるかも”の方が事実のつもりだったのだけど、勘違いされてしまったらしい。
言葉と会話は難しい。
極力誤解されないように気を付けてはいるけれど。
人間関係は、常に誤解と錯誤に満ちている。
朱鳶さんとだって…………いや、アレは誤解と錯誤ではなく、僕達の責任か。
ビリーの誤解を解きつつも、今日は一人で居たくなかった理由を思い出し、僅かに気持ちが沈みこんだ。
「しかし、今日は何か暗くないか? 女の店長が死にかけたし、落ち込むのは分かるけどよ。そこは生きてるだけで丸儲けと思わねえと……」
「いや、それはそう思ってるよ。リンも邪兎屋の皆も、雅さん達だって無事でよかった。誰かがいなくなるなんて、考えたくもない」
「じゃあ、どうしたんだ? 悩みなら、解決できなくても吐き出せば、だいぶ気は楽になるもんさ。聞いてやろうか?」
「…………ビリーには、敵わないな」
眦を下げるビリーに、思わず苦笑が漏れた。
知能構造体は、失われた旧時代の技術によって、何らかの目的で
そのため、「禁断の果実」テストをクリアしていても、自身の人生を歩む過程で相応の苦労をしているものが多い。
それ故か、下手な人やシリオンよりも「人間ができている」場合が多い。
勿論、ビリーもその一人。
人間よりも人間の気持ちを深く理解し、理解できなくとも寄り添おうとする陽気なムードメーカー。
だからだろう。
弱くなった心が彼に促されるままに言葉を紡ぐ。
「ブリンガーの事件の最中、僕達の身元と職業がバレてしまってね……」
「そりゃあ…………大将に、か?」
「いや、治安官の朱鳶さんさ」
「げぇっ!? オレが思ってたよりもかなりヤベー事態になってねえ!?」
「ああ、其処まで大事にはなっていないよ。朱鳶さんも事情は察してくれてね。御目溢しを頂けたよ」
ほう、とビリーは大げさに安堵の吐息を漏らす。
同じ知能構造体である青衣とは異なり、機械的な見た目のビリーだけど、表情は驚くほど豊かだ。
何でも素材が特殊らしく本当にゴムのように柔らかで、コミカルに動けもすれば、喜怒哀楽もハッキリと顔に出る。
もしかしたら僕以上に豊かな心を持つビリーに癒されながら、朱鳶さんとの一件を思い出していく。
「けど、彼女の信頼を裏切った。信頼には、信頼で返すべきだったのに……」
「うーん。そうは言ってもよう。治安官とプロキシじゃ、取り締まる側と取り締まわれる側だろ。関係が終わったとしても、捕まらなかっただけでも御の字じゃね?」
「それはそうだね。それに彼女は優しくてね。関係は、まだ終わっていないんだ。挽回のチャンスはまだあるさ」
「店長の言い分に思うところがないわけじゃないが、その気概があんなら大丈夫そうだな…………となると、大将の方か」
「……本当に、ビリーには敵わないな……」
ビリーに不安の核心を撃ち抜かれ、苦笑しか漏らせなかった。
朱鳶さんが見せた、あの失望の目。
失望以上に悲しみの方が遥かに色濃かったのに、僕にはそちらの方が心を搔き乱した。
あの目。
あの期待を裏切られた者が浮かべる強い失望の目が、僕は怖い。
全てを失った絶望の中で必死に伸ばした手を、何でもないように当たり前に掴んでくれた彼。
同じ失望の目を向けられて、僕とリンは耐えられるだろうか。
「気持ちは分かるぜ。オレもニコの親分の信頼を裏切ったらと思うと、怖くて堪らねえ…………いや、怖いな。本当に怖いなぁ!!」
「ニコの場合は、こう、失望すると言うか、怒って殴りに来るタイプだからね……いや、尻を叩いて立ち上がらせるタイプ、かな?」
「そういう意味じゃ、親分も大将も、同じカテゴリだろ」
「ビリー、それはナラカの前で言うのだけはやめて欲しい。ナラカが怒りで爆発四散してしまう」
「ああ、うん。そうだな。そういう意味で言ったつもりはないけど、それはそう……」
見える見える。
ニコと同じカテゴリと言われ、キレるナラカの姿が。
ナラカはニコを認めている。
認めてはいるが、一緒にされるのはゴメンだろう。何しろニコだから。
「まあ、兎に角だ。大将は、そんな程度で怒りもしねえし、失望もしねえってことだけは、オレが保証してやるよ」
「……ビリー」
「でなきゃ、53万もツケがあるのに、親分に腹いっぱい食わせてやるわけもねえって」
「53万…………53万!? ちょっと待ってくれ、僕達の店の3倍近くツケがあるじゃないか! ニコは何をしてるんだい!?」
「あ、知らなかったのか。と言うか、店長の店でもそんなにツケあんの!? だいぶ前に全員で使いまわしてた会員カード、それぞれで分けたからオレも知らなかったんだけどぁ!?」
本当に何をやってるんだ、ニコは!
ナラカの店は、新エリー都一と言ってもいいくらい安いのに、そんな額をツケておくなんて信じられない……!
最早、恐怖を覚えるほどだ。
僕達の方はプロキシ業の分も含まれるから、まだ少ない方なんだけど。
でも、ニコだからなぁ……。
「ま、まあまあ親分のことは置いといて、今は大将の方だよな……!」
「露骨に話題を変えたね、ビリー」
「いや、親分を庇ってやりたいけどオレも庇えねえよ、こればっかりは。仕事の方に力入れて返すから、勘弁してくれ」
「此処はビリーの顔を立てて不問にしようか。忘れないけどね」
「それだけでもありがてえよ。で、大将の話だけど……」
両手に袋を持ったまま両腕を組んだまま、暫らく唸っていたビリーがやがて顔を上げる。
「やっぱどう考えても、オレができることないわ!」
「えぇ……その結論なのかい?」
「おう! 悪りぃが、店長と大将の間にオレが割って入るのは違うだろって話だ」
カラっとした、簡素で冷たい結論。
けれど、口調は酷く陽気で、欠片も心配をしていない。
その疑いのなさは、僕達とナラカの絆を肯定してくれているようで。
ふつふつと湧き上がる喜びと勇気。
そして、気の置けない友人への感謝が浮かんでくる。
「……ビリー、君にとってのヒーローとは何かな?」
「そりゃあ決まってる。これだよ、これ!」
ふと気になって、ビリーにとってのヒーローを問うてみる。
すると返ってきたのは実に簡潔な回答。
両手に掲げたスターライトナイトのグッズ。
スターライトナイトは僕もビデオ屋の店主として、店頭に並べる作品ということで鑑賞させて貰っている。
昔ながらの戦隊ものだけど、怪人のデザインも凝っているし、台詞回しは軽妙で洒落が利いていた。
子供向けに制作されてはいるけれど、一部の大きいお友達にも人気を博しているのも頷ける。
ただ、スターライトナイトの何が、ビリーに其処まで突き刺さったかは分からない。
「ガキっぽいって思うか?」
「いや、僕もヒーローには一家言持ちさ。それに、僕は他人の好きを否定するつもりはないんだ」
「好きなもんは好きで良いって? さっすが店長、分かってるじゃねえか! それに、オレはガキでいいのさ。その方が、
「………………」
「まあ、今のオレはどっちかってーと、悪党寄りな気がするけど!」
「そんなことはない。そんなことはないさ、ビリー」
「いやー、親分に付き合って詐欺紛いのことやってるしなぁ」
「それはニコが悪いよ、ニコが」
ビリーの過去は、詳しくは知らない。
郊外で開かれたツール・ド・インフェルノに関わった時、ほんの少しだけ垣間見た程度。
彼にとって、今の自分に地続きの過去よりも、今の自分から先へと進んだ未来の方が重要らしい。
その象徴が、スターライトナイト。
弱きを助け、悪へと立ち向かう正義の味方。
うん、ビリーには合っている。
綺麗事だからこそ、現実にしたい。誰の涙も見たくない。
胸を張ってそう言える彼だからこそ、スターライトナイトが象徴に相応しい。
「で、店長もヒーローに一家言持ちってのは?」
「昔、映画を見てね。所謂、ヒーロー物の三部作だよ」
「へぇ、ちょっと気になるな」
「ふふ、ビリーには合わないかもしれないよ。主人公がダークヒーローだから」
「ダークヒーローかぁ。小難しい話は、正直そこまで好きじゃねえ、かなぁ……?」
「一部は良くも悪くも無難だったけど、二部は面白かった、傑作だったよ。でも、お陰で三部目が評価が良くなかったかな」
「わりとよくあるパターンだな」
「うん。でも、僕の印象に残っているのは三部目なんだ。特に、セリフがよかった」
過去に犯罪者によって両親を失った主人公は、トラウマに突き動かされるように街で起きる犯罪と悪党達と戦い続けた。
その報酬は街の平和で、主人公が報われることはない。或いは、報われていたとしても、その恩恵は受けられない。
傷付き続ける主人公は何だか自分と重なって、酷く悲しくなったのを覚えている。
けれど、三部作の終盤で、主人公が本心と共に語った台詞は、今も僕の心で変わらずに輝きを放っていた。
『誰でもヒーローになれる。特別なことをしなくても』
『傷付いた少年の肩に上着をかけて、世界の終わりじゃないと励ませばいい』
それは映画の主人公にとってだけでなく、僕にとっても────
「────なら店長も、自分のヒーローを信じてやらねえとな」
「ああ、そうだね。その通りだ」
優しく僕の背中を叩き、ビリーは励ましの言葉と共に去っていく。
ありがとう。
やっぱり、僕にとって君もまた、立派なヒーローだよ。
心は決まった。
リンも同じ結論を出してくれる。そうでなくとも、僕の意見を受け入れてくれるはずだ。
不安は遥か彼方に吹き飛んだ。
目の前にあるのは、恐れではなく勇気と決意だけ。
これまでの怠慢を吹き飛ばすように大きく身体を伸ばして、憎たらしいほど青い空を見上げる。
「────参ったな」
漏れた呟きは誰の耳に届くことなく、ルミナスクエアの喧騒へと消えていく。
しかし、参った。本当に参った。
去り際に見たビリーの美尻が脳裏に焼き付いて離れないじゃないか……!
何せ、彼のお尻は特撮界隈のスーツアクターもびっくりさ。特撮オタクもざわつくレベルだよ。
大体、僕の周りには男性も女性もエッチが過ぎる人達が多過ぎる!
お尻だけじゃない! おっぱいも雄っぱいもさ! それらを強調するような服装までして!
顔もビジュいいじゃん! なんてレベルじゃない!
僕の目を潰すつもりなのかい? と言いたくなるほど顔がいい!
クール、ロボ、素直、純粋、ツンデレ、年下、年上、お姉さん、お兄さん、紳士、メイド、ドジっ子、ダウナー、お姉さん、生真面目、ミステリアス、ケモまで!
あとお尻……!
皆、揃いも揃ってどうしてそんなに形がいいんだ……!
リンからお尻ソムリエの称号を戴いた僕の前で、ふりふりふりふりと……!
誘っているのかい……!?
ただでさえ壊れている性癖が更に音を立てて壊れていく音が聞こえてくる気さえする……!
────よし決めた。帰り次第、ナラカのお尻を撫でよう。
僕は紳士だ。そして、リンは淑女。
他人をよくない目で見たとしても、それを悟らせず。あくまで曝け出すのは同志の前でのみ……!
そして、全てを晒すのは家族であるナラカだけだから、容赦なくお尻を撫でる……!
アキラ。
脳焼き被害者その2&性癖破壊被害者その2。
ナラカを同性として愛しているわけではなく、同性愛者でもない。もうそういったレベルを超越した親愛を抱いており、カテゴライズが家族。
なお、リンからはお尻ソムリエと呼ばれており、本人も誇らしげ。叩くよりも撫でる方が好きな模様。付き合ったりしたら、毎日相手の尻を撫でる予定。
プレイヤーの分身でもあるからね。尻好きのプレイヤーの嗜好が乗り移っているのだろう。
あと特撮オタクは尻でスーツアクター見分けるから、これくらいふつーふつー。
ナラカ。
Mr.平成仮面ライダーレベルの尻の持ち主。
小説の視点はどちらが読みやすい?
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一人称
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三人称