ベーグル計画、難しい。難しくない?
高難易度だとすぐ消し飛ぶ。シールド全部強化したんだけどなぁ。
いかに雑なプレイングをしているか分からせしてくるのやめて。
それはそれとして、評価、感想、お待ちしております!
昔、美しい鳥を見た。
故郷の山の中、日が昇る直前の薄墨の空を、たった一羽で飛んでいく鳥だ。
渡り鳥だったのだろうか。
翼に傷でもあったのだろうか。
気が付けば目で追い、水平線から顔を出した日の光に飲まれて、やがて見失った。
何度も何度も姿勢を崩す姿は余りにも不様で、前だけを見て飛翔する姿は余りにも懸命で。
言葉にならないほど綺麗で、言葉にならないほど胸が詰まった。
そして故郷を離れた今、その似姿が目の前に現れて。
優雅に舞う
けれど、鳥は飛ぶものだ。それを止めれば、地を這う獣に喰い荒らされるだけ。どれだけ翼折れようと、また空へと上がるだろう。
なに、弱ってはいるが、弱い訳ではない。
強さを見失っているが、強くないわけではない。
必ず訪れるであろう光景を夢想する。
何の憂いも、何の懊悩もなく。自由に青空を舞う
その光景は、さぞ美しいに違いない。
かつて希望と共に送り出した勇姿を、此度は最後まで見届け、見定めるとしよう。
新エリー都のルミナスクエア。
ヤヌス区の中心部に位置する商業地帯であり、新エリー都の中でも特に繁栄を謳歌している地域。
栄えているということは、行き交う人々も増えるということ。
人が増えるということは、抱く欲望の数も増えるということ。
法を司る治安局の分署が構えている以上、欲望は制限こそされているものの、それが健全なものであれ非健全なものであれ、決してなくなりはしない。
これまでの歴史から分かるように、繁華街の近くには歓楽街も形成されていく場合が大半であり、ルミナスクエアもまた例外ではなかった。
「大将、今度お店に来てよ。安くしといてあげるから」
「冗談だろ? 何処でも買える安い酒なんぞに、面の良い女を肴にしたって相場以上の金払うなんてゴメンだね」
「あっそ、つれないんだぁ。そんなんじゃモテないわよぉ。じゃ、ごちそうさま、相変わらず美味しかったわよ♪」
「あいよぉ、お粗末さん」
本日の「一期一会」は歓楽街の外れに店を出し、出勤前のキャストやら、店帰りで上機嫌の男性客を中心に繁盛していた。
お陰様で、あっという間に本日の売り上げ目標を達成。流石に歓楽街近くだけあって、誰も彼も財布の紐が緩くなっているらしい
あとは持ってきた食材をすべて捌き切るまで粘るか、場所を変えるか。
ちょうど客も途切れ、入念に屋台のカウンターを掃除するガウタマと場所替えを検討していると、見知った顔の客が暖簾を潜って現れる。
「こんばんわ、ナラカさん♪」
「…………うわぁ。どうだ? オレ、ちゃんと嫌そうな顔できてるか?」
「うーん。できてるけど、人の顔を見てそれは、流石に酷いんじゃないかなぁ?」
「お前がオレと店に何したか言ってみろ」
「………………ま、前の屋台をガス爆発させました」
「分かってんじゃねえか。まあいい、座れよ」
遠くからでも一目で分かる鮮やかな桃色の髪。
黒いマスクで鼻から下を隠しているものの、見えている部分だけでも可愛らしさと妖艶さの同居していることの分かる美貌。
纏うドレスの胸元は大胆に開き、ただでさえ大きな二つの山が強調されているかのようで、更に大胆に開かれた背中には腰近くから一対の黒い翼が生えていた。
男なら鼻を伸ばして胸元を覗き込み、女であっても溢れる自信とスタイルに羨望すら抱くであろう。
彼女の名はラミル。
一年ほど前に「一期一会」の常連になり、今日まで付き合いのある少女であった。
「はぁ、ナラカさんのお店に来ると、もう二度と来るなっていつ言われるか、ドキドキしちゃう♪」
「自覚があんのはいいことだ。邪兎屋のピンク髪に見習わせたいね。まあ、アンタなら追い返すつもりはないが」
「へぇ。追い返すつもり、ないんだ? 出会った時から酷い目に合わされた厄介な女なのに? もしかして、悪ぅ~い狼さんになっちゃうつもりなのかなぁ……?」
ラミルはカウンターの椅子に座るとマスクを外し、露骨に面白がりながら揶揄いとも、その手の誘いとも取れる言葉を投げかけてくる。
大きな目を細め、口元を緩めた姿は何とも言えない色香を帯びていた。彼女のいうところの悪い狼と呼ばれる男なら、間違いなく飛びついたことだろう。
「狼、ねぇ。下種で気の多い男をなんでそう呼ぶのか理解できん。基本、狼は一生を通して一度しか番を作らねえぞ。オスもメスも、どちらかが先に死んだらもう次の相手を選ばん。例外はあるけどな」
「え? そうなんだ。それは初耳。動物はイメージで語られることが多いし、狼は人を襲うよくないイメージがあるから、なのかな……?」
「オレは好きだけどな、狼。アレほど美しく無駄のない野生をオレは知らん。悪い狼とやらになってみるのも一興かもな。そうなったら狼に倣って一生離さんが。アンタはどうだ? オレは構わんぞ」
(……っ。ぐぅ、ナラカさんのカウンター、毎度のことながらほんと強烈。キュンとさせられたぁ……!)
先ほどの露骨に嫌そうな顔から一転し、ナラカは無表情かつ丼ぶりを用意しながら視線も合わせずに、とんでもないことを宣う。
本気なのか冗談なのか。態度は判然としないものの、言葉の響きはいやに重く、少女の心臓が思わず高鳴り、ゴクリと生唾を飲み込ませるだけの凄味はあった。
もし、本当に
彼にいったい何をされてしまうのか。想像ばかりが掻き立てられる。
丁寧に、丁寧に。似合いもしない甘い言葉を、脳髄が蕩けるまで囁かれるのか。
逃げる気も抵抗する気も失うまで力強く求められ、互いの体温を溶け合うまで抱きしめられるのか。
脳裏をよぎった
しかし、頬に帯びた熱は簡単に引いてくれず、ぱたぱたと片手を仰いで冷ます羽目になってしまった。
「ンナナッ、ンナァ(ラミル、久し振り! 元気そうでよかったよ! 今日は何にする?)」
「ガウタマくん、ありがとう♪ 今日は、そうだなぁ……限定ラーメンで!」
「ねえよ。今日は出してねえよ、限定ラーメン。何処見て言ってんだ。その節穴の目なんとかしろ」
「相変わらず辛辣~……でも、前に食べた担々麺美味しかったなぁ。また食べたいなぁ……(チラッチラッ」
ガウタマにお冷とおしぼり、メニューを手渡され、ラミルは流し目を向けてきたが、ナラカは冷ややかな態度で呆れていた。
「一期一会」の限定ラーメンは、他の店と同様にナラカが既存の定型に独自のアイデア、工夫を加えた創作品。
開店当初から気紛れに出しているが、同じものなど一つもなく、食べ逃せば二度とは出てこない正真正銘、一日限りの限定品。
その評判はよく、常連客の中でも限定ラーメンだけに狙いを定めて通う者もいるほどだ。
「自分の面が良いの自覚して武器にしてくる女って腹立つよな」
「えーん、ナラカさんがイジめる~、レミレミ泣いちゃいそぉ~」
「────へっ」
「……うっわぁ、その顔すっごいカチンとくるなぁ、もう」
やる気のない半目に、口の端を釣り上げた笑み。
あからさまに人を小馬鹿にした、或いは相手を煽り倒す目的の表情に、ラミルも流石に鋭く睨んだが、すぐさま柔らかな表情へと戻っていく。
ラミルにとっても、定番になったやり取り。
思いがけずでこそあったが、新たに得た出会いと思い出が嬉しくないわけがない。
────それが自身にとって、相応しくないものだったとしても。
「で、結局何にすんだ?」
「今日は塩の気分かな、半チャーハンセットで。餃子も頼んじゃお♪」
「チィッ、面倒くせえ。どいつもこいつも、どうして自分からデブになりに行くんだ? 生活習慣病になりたいのか?」
「毎回思うけど、どう考えてもラーメン提供してお金取ってる人がしていい発言じゃないから。それに私は太りにくい体質なんですよぉ~」
「………………お前さぁ、今の食生活続けてたら20代の後半辺りで激烈に太るから気を付けろよ」
「おぐぅ……!? 予想外の方向からカウンターが飛んできたんだけど──!?」
完全に心からの忠告は、煽りや皮肉よりもラミルの心を大きく揺さぶる。
確かに、ここ最近の食生活を思い返すと酷いの一言。
本来取るべき必須栄養素をバランスよく取るよりも、自らの嗜好や食べたことのない料理ばかりを優先していた。
その結果、吸収した脂質、糖質、カロリーは如何ほどか。乙女心が肥満への恐怖で震え上がり、思わず身震いしてしまう。
まだ大丈夫。まだいける。でも今日は餃子まで頼まなくてよかったかも、などと考えながら、二度三度と深呼吸を繰り返して震える乙女心を落ち着かせた。
ナラカは既に調理を開始しており、もうキャンセルは効かない。
体重増加は考えただけで恐ろしい未来だが、いっそのこと目一杯楽しもう、と腹を括るのであった。
(ほんと、変な人。何時の間にか、こんなに仲良くなっちゃった。そんなつもり、なかったのになぁ……)
文句を口にしつつも、真剣な眼差しで調理に勤しむナラカの横顔を眺めながら、ラミルは思わず苦笑を漏らす。
普段は待ち時間も会話を楽しむのだが、今日はそのような気分にならなかった。包丁がまな板を叩く心地よい音を耳に、思いを馳せる。
会話好きな彼女にとって、沈黙は苦痛に近い。
沈黙が苦痛にならなかったのは、かつての仲間と過ごした一時くらい。但し、かつての仲間達は随分騒がしく、無音の時間が続いたことなど一瞬だった。
もう二度とは戻らない、輝かしい思い出。
それに並ぶほどの価値をこの場に見出しつつある己の心理を探るために、自らの内へと埋没していく。
浮かんでくるのは、やはり出会いの記憶。
およそ1年前から続くナラカとの関係。
困惑と後悔、そして例えようのない歓びに満ちた始まりを────
嵐が過ぎ去ったロスカリファでの一幕
「そういえば、レミエールってナラカとやってないよね、“アレ”」
「“アレ”……!? そんなリンちゃん、いくらナラカさんの家族だからって、私と彼がしたあんなことやこんなことを明け透けに話せないよ……!」
「いや、リンが言っている“アレ”は『夜のターン制バトル』のことさ。意図した勘違いは止めて欲しい」
「もう、アキラさんったらつれないなぁ……うん、まあ、はい。確かにやってないよ」
「へー、アンタなら揶揄って遊びそうなのに」
「いや、ナラカさんは自分の琴線に触れない事柄だとまったく興味なしというか、塩対応というか、スルーが基本というか……」
「確かに、ナラカの言葉は一刀で斬って捨てる鋭さがある。あまり表情が変わらないから、反応も薄く見える。君にしてみれば面白味にかけるのか」
「目の前で関係ない人が死んでも、“なんか死んだ。帰るか”するぐらいスルー力があるからなぁ」
「それは人としてどうなの……? ……それに、何だろうなぁ。ナラカさんと話してる時は、昔の仲間との空気を思い出すんだよ。私がツッコみに回らなきゃならないあのゆる~い感じ。ぜんっぜん似てないんだけどなぁ」
「「
「いや、否定はしないよ? しないけどね? それに、ナラカさんと夜のターン制バトルしてもバトルにならないって言うか……」
『………………(黙殺してスルー』
『え? 別に興味ない』
『オレの、ター、ン……? ………………パスで』
『……あ、あー? ………………どうだ、最近調子は』
「思春期の娘と距離感測りそこねてるお父さんかっっっ!!!」
「うわぁ、急にキレだしたよ、この指名手配犯。頭おかしいんじゃない?(ナチュラル畜生並感」
「やめるんだ、我が妹よ。レミエールは疲れてる。そっとして……いや、待つんだリン!」
「────ハッ!?」
『別に聞こうとも思わんね。言いたくなったら言えよ。お前の話ならいくらでも聞いてやる。真面目に話す気があるなら、な』
『何だ、随分落ち込んでるな。聞いてやろうか? ……時間? 仕事? そんなことより、アンタの方が大事だよ』
『説法の真似事なんざ、するもんじゃないな。柄じゃない。それでも、アンタの気が楽になるならいい。いつでも来いよ、待ってるから』
『他人に利用されるのは大嫌いでな。問答無用で殺したくなるね。だが、まあ、アンタなら頼ってきたってことで処理してやる』
『色んな勢力を敵に回す、ねえ……生憎だったな、オレには関係がない。世界を敵に回そうが、アンタの肩入れくらいしてやるよ』
「────ふんン゛ッ!!!」
「お兄ちゃん、これは一体……?!」
「普段のやる気無し、興味無し、無表情の3M男に、優しげな微笑みで恥ずかしげもなく破壊力のある言葉を投げつけられて、初代虚狩りがただの女の子にされちゃってる顔さ……!」
「ひゅー♪ ナラカ恐るべし! レミエール、わざとカウンター貰いにいってる節あるしねー♪」
「ち、ちが……!」
「いいや、違わないさ。でも残念だったね、レミエール! ナラカは僕達の家族だ! 僕達の傍に一生いてもらう! 仮に交際・結婚するにしても二世帯、いや僕とリンとナラカの三世帯住宅での生活を覚悟してもらおうか……!」
「うわぁ、いくら相手が好きでも二の足踏むやつぅ……」
「あと、時々お兄ちゃんと私とナラカだけで寝るから、覚悟しといて!」
「家族仲良すぎるでしょ、君達……! と言うか、それで済ませていいレベルかなぁ?! かなぁ!!?」
アハハウフフ、ワイワイガヤガヤ、キャッキャウフフ!
「ンナァ……(また何か三人で騒いでるぅ……)」
「なあガウタマ。レミエールの、ぺぇと太ももなんだけどよ。服とかストッキングに肉はみ出して乗ってるよな?」
「ン、ナァ……?(えぇ? 今その話するの? まあ、乗ってるね。サイズ合ってないんじゃないかな……?)」
「あれを今日からレミエール段差と呼ぼうと思うんだが、どうだ?(真顔」
「ンナナっ!?(どうだじゃないんだけど!?)」