翌朝、初星学園アイドル科の寮の前には独特の緊張感が漂っていた。
原因は寮門のそばで案山子のように立ち尽くすスーツ姿の男である。
男は無彩色の塀に溶け込みながら、堂々と目前の出入り口の利用者たちを監視している。
その立ち振る舞いだけを切り取れば絵になるものの、生憎と場所は女子寮前なのだ。
「ここでなにをしているんです?」
「は────────?」
であれば、不審者の烙印を押されるのは必然。
早朝から2時間ほどこの場に居座っているというのに、未だ警備を呼ばれていないのは幸運と言えるかもしれない。
もっとも見事に背後を取られた彼にとって、
唯一疑問を呈するとすれば、その声がやけ若く中性的であったことくらい。
「…………っ、ぐ────あぁっ!?」
ぐい、と視界が落下する。
男は体術に自信があるわけではないが、仮にも男子学生である。
それが力任せではなく、単にぐるりと腕を捻られただけで呆気なく制圧されてしまったのだから、護身術というのは侮れない。
「抵抗は無駄ですよ。格闘技を嗜んでいるので」
「な、一体、なにが……!?」
「女子寮の敷地に不審者が出たって、後輩の子が教えてくれたんです。
観念してください。とりあえず、警備に通報を…………」
「ま、待ってください! 俺は不審者じゃない!」
「不審者はみんなそう言うんです。おとなしく────」
抵抗の意思を見せる侵入者に容赦なく、警備はさらに腕を捻りあげる。
早朝の静けさの中では、プロデューサーの苦悶の声はさぞ響き渡ったことだろう。
それを聞きつけてか否か────────
「あれ、寮長?」
少し遅れるようにして現れる寮生がひとり。
依然としてプロデューサーは身体の自由を制限された状態だが、聴覚ばかりはその限りではない。
まして聞き取った声が自身の担当アイドルのものなのであれば、プロデューサーが聞き間違える余地もなかった。
「ことね、こっちに来ちゃダメだ! いま不審者を取り押さえていてね。代わりに警備に通報を」
「ふ、不審者!? …………って、ん?」
ようやく違和感を抱いたことねが不審者の顔が確認できる位置にまで移動する。
それはつまり、プロデューサーの視界にもやっと彼女が映り込んだということ。
ふたりはお互いの顔を確認してしばらく沈黙した後────────
「あのぉ、プロデューサー。どういう状況なんです? これ」
「俺が訊きたいです」
そんな一言を交わした後、その場を後にすることとなった。
「…………すみませんでした。まさかことねのプロデューサーだったなんて」
「いえ、誤解が解けたようでよかったです。有村麻央さん」
舞台は共有スペースへ。
先ほどの詫びなども済ませながら、3人はテーブルの一画を囲み込む。
プロデューサーを取り押さえた彼女────有村麻央は初星学園アイドル科の3年生であり、この寮の寮長である。
「でも、プロデューサーがどうしてわざわざ女子寮の敷地に? 不審者が付近を徘徊してるって、軽く噂になってましたけど」
「実は昨日、藤田さんにはこの休暇中に身体を休めるようにお願いしたんですが、素直に休まないのでは? と心配になりまして」
「それで寮の出入りを監視していた、と」
「はい。そして、結果はご存知の通り────────」
語るまでもないでしょう? と言わんばかりに担当アイドルを睥睨するプロデューサー。
それに「なるほど」と納得した様子で頷く麻央。
ふたりの冷ややかな視線は当然、件の藤田容疑者に向けられている。
「藤田さん。さっきアルバイトに向かおうとしてましたね」
「う…………は、はい。でもぉ、今日のはあんまり忙しくないバイトですしぃ」
申し訳なさげに人差し指を突き合わせながら、ことねは必死の弁明を口にする。
が、彼女のプロデューサーはそんな泣き落としが通用するような相手ではない。
「関係ありません。その時間を休養に充てれば、かなりの回復が見込めるはずです」
「ぐぬぬ〜〜! わかりましたよぉ。ちゃんと部屋で休みますぅ〜」
「そう言いつつ、邪魔者が帰った後でアルバイト先に向かうつもりですね」
「えぇ…………プロデューサーって、心読めるの?」
「藤田さんがわかりやすいだけです。いまここで、アルバイト先に『休む』と連絡を」
プロデューサーはいつも通りの静かな口調だが、その文脈は限りなく強い命令だ。
ことねがむう、と納得いかなげに頬を膨らませて抗議してみたのも束の間、彼女はすぐにそれが意味のないことだと悟って。
「はぁ、しょーがない。今日は、諦めるかぁ」
両肩を落として落胆を表明する。
こうしてプロデューサーと麻央に目をつけられてしまった以上、とっくに勝ち目がないのは認めざるを得ない。
しかし、それは今日に限っての結論。
彼らの目をかいくぐってさえしまえば────と、ことねが企んでいるのは、プロデューサーにはお見通しのようで。
「なるほど、わかっていませんね…………もし明日以降も同じことが続くようなら────────」
「よ、ようなら?」
「女子寮に入る許可を貰ってきます」
釘を刺すように、とんでもない計略を口にする。
ここ数日、ことねは彼の常軌を逸した言動に驚かされてばかり。
もはやこの男は、トップアイドルのプロデューサーではなくびっくり箱になりたいのではないかと錯覚してしまう。
とにかく、そんなびっくり箱の青年は厄介なことに至って本気。
宣言自体はこうも信じがたいというのに、これまでのプロデューサーのぶっ飛び具合は、根拠なしにそんな未来を嫌でも予感させてしまう。
「寮長としてそれを許可するのは難しいですけど。もしもそうなった場合は、代わりにボクが責任を持ってことねを休ませますよ」
さすがに、と割って入るものの、きちんと代案を提示する麻央。
彼女としても、ことねの暴走をこれ以上見過ごすわけにはいかなかった。
「あ、有村先輩まで!」
「ことね。キミが頑張っているのはよくわかるし、何か事情があるのかもしれないけど…………プロデューサーの指示を無視してまでアルバイトに傾倒するのは、寮長として看過できないよ」
「わ、わかってはいるんですけどぉ…………部屋でゆっくりしてると、どうにも落ち着かないっていうか」
そう。それが藤田ことねの性分。
彼女の持つ特殊な事情と自信のなさから生じる、果てしない貪欲性。
そういう意味では、彼女は花海咲季や月村手毬に並んでストイックな少女なのだろう。
「ご心配なさらずとも、咲季さんとの勝負に勝ってさらに身体を休めた暁には、いまと同額以上を稼げて、かつあなたの糧となる仕事を用意します。 ですから、いまは休養に専念してください。藤田さんも咲季さんに負けたいわけではないでしょう?」
「うぐ、そう言われると何も反論できないぃ…………はぁ、わかりました。ちゃんと休みの連絡入れますんで」
最後の一言まで不満げに。それでも納得した様子で携帯を取り出すことね。
早速アルバイト先に電話をかけるのかと思われたが、ひとまず代理でシフトに入れる人を探すらしい。
彼女の仕事仲間には少なからず迷惑をかけることになるが、これも藤田ことねが稼げるアイドルになるために必要な過程だ。割り切ってもらう他ない。
「これで一件落着、ですね」
「助かりました。ありがとうございます、
「寮長として当然のことをしたまでですよ。こちらこそ、コーヒーを買っていただいてありがとうございます」
見せつけるように紙コップを持ち上げながら、麻央は感謝を述べる。
砂糖もミルクも入っていないブラックコーヒーは、食堂に移動してきた直後、プロデューサーがことねのドリンクと一緒に奢ったものだ。
「自販機のドリンクを買うくらいどうということはありませんよ。俺としては怪しい行動で手間を取らせてしまったお詫びもありますし。
それにしても、本当にブラックコーヒーでよかったんですか?」
「はい。僕、甘いものは苦手なので、これくらいがちょうどいいんです」
「…………なるほど」
そのわりには一口飲んだ際に渋い顔をしていたような、と訝しみながらも、追求を堪えるプロデューサー。
あえてブラックコーヒーを指定してきたのは麻央である。
わざわざ嘘をつく理由が見当もつかないし。第一何か裏があるのでは? と指摘できるほど、彼は彼女と関係値を築けていないだろう。
「ところで、そのクーラーボックスは一体?」
ほんの一瞬、プロデューサーが考え込んでしまった時間を気まずく感じたのか。あるいは早々に話題を変えてしまいたかったのか。
つい、と麻央は彼の足元を指差す。
そこに置かれているのは、プロデューサーが寮の前で不審者をしていたときから手に持っていた箱である。
「……あぁ、これにはカットフルーツや消化にいい食事を入れてあります。藤田さんの疲労回復に有効かと思いまして」
「もしかしてプロデューサーが自ら?」
「意外、ですか…………?」
「あ、えっと、すみません。プロデューサーって、そんなことまでしてくれるんだなぁ、と思って」
麻央は信じられないものを見たような表情で答えつつ、依然として何が意外なのかがわからないと言いたげなプロデューサーを見て、そういうものなのかと考えを改める。
対してプロデューサーはその一部始終を捉えて、ようやく彼女の中で“プロデューサー”というものの印象がよろしくないことに気が付いた。
「その、有村さんにはプロデューサーが……?」
「……ついていませんよ。プロデュースの話は何度もいただいてるんですけど、どの方針にも納得がいかなくて、全部お断りしています」
「そうでしたか…………失礼しました。少し立ち入ったことを訊いてしまいましたね」
「別に構いませんよ」
後輩たちにもよく訊かれることですし、と素っ気なく答える麻央。
それになるほど、と納得しつつも、プロデューサーは驚きを隠しきれない。
3年生ということもあるだろうが、彼女の所作は独特の方向性でありながら非常に高い水準にある。
それをステージ以外の場所で、こうして日常的に維持し続けるというのは並大抵の努力でどうにかなるものではない。
おそらくは麻央自身の才能あってこその技能。
彼女にプロデューサーがついていないのは、他人事ながら惜しいとさえ思えた。
「さて、そろそろ僕は失礼しますね。ことねのことをよろしくお願いします、プロデューサー」
ではまた、と会釈をして、麻央は席を離れる。
去り際、流し目を送りながら離れていく様は最後まで麗しく。
まったく酷い初対面ではあったが、一目惚れというのはきっとこんな感覚なのかもしれない、とプロデューサーは思わずうつつを抜かした。
「プロデューサー、ちゃんと休みの連絡を入れてきましたよ〜」
ちょうどその虚を衝くように、ことねが戻ってくる。
自信満々に報告する彼女の様子からして、今度こそ約束を誤魔化すつもりはないらしい。
各所への連絡中、こちらのやり取りに気を配る余裕はなかったのか。ことねはつい先ほど立ち去った麻央の面影を少しだけ探して。
「有村先輩、行っちゃったんですね。心配かけたんで、部屋に戻る前に挨拶だけでもって思ってたんですけど」
「後輩想いのカッコいい女性でしたね」
「ですよね。先輩ってば、すっごいロリ可愛い外見なのに、イケメンで、カッコよくてぇ、とっても頼りになるんですよぉ。さすがは初星の小さな王子様って感じです」
「リトル、プリンス…………?」
「有村先輩の呼び名ですよ。つい勢いに任せて言っちゃいましたけど、本人はあまり気に入ってないみたいなので、内緒でお願いしますね……?」
「なるほど」
「でも少し意外でした。有村先輩、寮長やってるのもあってアイドル科では有名人らしいんで。プロデューサーも知ってると思ってましたよ」
「お名前は存じ上げていましたよ。ただ上級生のスカウトはあまり視野に入れていませんでしたから。事前調査を徹底したのは1年生だけなんです」
もっとも、現一番星をはじめとして、強敵となりそうなアイドルについては例外。
学内外を問わず、実績のある生徒は対策を講じるために調査を行っている。
「……………………」
だからこそ、有村麻央というアイドルをよく知らなかった事実を、このときプロデューサーは意外に思った。
あれだけ高いステータスを有しておきながら、彼女が目に見える実績を何も残していないというのは不可解だ。
「…………プロデューサー、あたしたちをH.I.Fで優勝争いさせるつもりだって言いましたよね。
実際に有村先輩と話してみて、どう思いましたか?」
今なお同じ言葉が言えるのか、とことねは問う。
どうやら彼女の指摘通り、プロデューサーは上級生のことを少なからず甘く見ていたようだ。
有村麻央は間違いなく警戒すべきアイドルのひとりである。
ことねたちをH.I.Fで活躍させるために乗り越えなければならない障壁は、彼の想像していた以上に多かった。
「確かに彼女はH.I.Fにおいて手強い壁となるでしょう。それだけのポテンシャルを感じました。
ですが決して諦めはしません。勝たせてみせます。俺は藤田さんのプロデューサーですから」
それでも諦める理由にはならない、と。
真っ直ぐな眼差しでことねを見据えながら、プロデューサーは静かに宣誓する。
「────────────」
それは信頼ともまた違う。
強いてそれを表現するならきっと意地だ。
我こそはトップアイドルを育ててみせるのだという、彼の底知れぬ野心。
相変わらず根拠と呼べるものは存在しないというのに、そのひたむきさを見せつけられるとどうにも信じずにはいられない。
「そのためには何よりも藤田さんの協力が必要です。
繰り返しにはなりますが、同額以上を稼げる仕事を紹介します、必ず。なので今は休養に専念してください」
「そこまで念を押さなくてもわかりましたって!ったくぅ……」
信用されているのかされていないのかまるでわからない、と半ば呆れながら、ことねは席を立つ。
それは終始婉曲的なやり取りだったが、プロデューサーの言いたいことが彼女にはわかっている。
今回の失態は、藤田ことねの覚悟の足りなさが招いた結果だ。
本当に稼げるアイドルになりたいのであれば、それこそ寮長の言っていた通り、アルバイトなどに傾倒している場合ではない。
半端ではどうにもならないというのは、ここ3年でことねも痛感しているところである。
だからこそ、今ここで改めて自分のプロデュースについてくる覚悟を決めろ、と、プロデューサーはそう言っているのだ。
「プロデューサー」
選択肢はふたつにひとつ。
彼の手を取って駆け上がるか。彼の手を払いのけて這い上がるか。
春休みのあの日に問われた命題と、ことねは再び直面している。
そして、その答えは今も変わることはない。
藤田ことねはこのプロデューサーに人生を賭けると決めたのだ。
であるならば、彼への返答は明白。
我こそは一番星になってみせるのだという、彼女の覚悟を示す言葉である。
「花海ちゃんに勝って、月村ちゃんも説得して、H.I.Fで優勝して、そしたらい〜っぱい稼ぎましょうね!」
────────────────────────────────
結論から言えば、3日間という猶予期間は藤田ことねの才覚にとってあまりに長すぎた。
休暇が2日目に突入した時点で、ことねの肉体は並外れた回復を自覚し、本日、その効果は精神にまで及んだ。
病は気からとはよく云うが、その逆で、一時的であれど万全に近づいた身体は彼女の自己不信さえもみ消してしまったらしい。
「びっくりしたぁ。あんなに自信がなさそうだったのに…………あなた、一昨日とはまるで別人じゃない! いったい、なにがあったの!?」
そんな対戦相手の変貌に気が付かない咲季ではなく、放課後、一緒にダンスレッスン室へ向かう道すがら、嬉々としてその理由を問い詰める。
余談だが、この日、自己紹介を交えたHRの後、クラスメイトが懇親会を開こうとしていたのをにべもなく断って抜け出してきたのはまた別の話である。
「ふっふっふ。花海ちゃんがあたしに勝てたら教えてあげよっかナ〜」
それはそれとして、そんな咲季の好奇心をニヒルな笑みでひらりと躱すことね。
客観的に見て挑発的な返答と取れるが、彼女にとっては『アルバイトを休んでしっかりと休養をとったらめちゃ絶好調』なんて馬鹿げた解決策を教えたくないという、照れ隠し以上の意味はない。
プロデューサーから咲季が元アスリートであることは聞いている。
そんな彼女から自己管理不足を非難されようものなら、今の藤田ことねの好調を成立させている自信は容易く崩れてしまうだろう、と予期してのことだ。
一方で、咲季は当然その言葉を前者の意味で汲み取ったし、かつ、それは大変彼女好みの回答で。
「いいわね……! 俄然あなたとの勝負が楽しみになってきたわ!ことね」
「はいはい、お手柔らかにぃ。その代わりあたしが勝ったら〜、き〜っちり約束守ってもらうからナ〜!」
「ええ、望むところよ!」
一連のやり取りにキラキラと目を輝かせる学年首席。
その対象が流行りのスイーツであればきっと等身大の女子高生だったろうに、と。
年相応な表情にことねは思わず息を呑んだが、むしろそう考えてみれば彼女の勝負への執着は理解しやすいもので。
同年代の少女らが甘味を語り合う仲を友と呼ぶように、咲季にとっては対等に競い合える相手こそがそれに類する存在となるのだ。
「────────────」
そのような視点に立つと、雲の上のように思えた咲季の存在も、ことねはどこかとても近しいもののように思えてしまった。
以前そこそこ失礼な物言いをされたり無愛想な態度を取られたりしたことに対する溜飲も下がり切ってしまうほど、呆気なく。
もっとも、ここで抱いた親近感はそう遠くない未来、花海姉妹のストイックな日常の全貌を知ったときに泡と消えるのだが。
「それにしても、花海ちゃんはダンスレッスン室を使ったことあるの?」
「まだないわよ。どうして?」
「いやぁ、そのわりには道に迷う素振りがないナ〜って。ほら、初星学園って意外と広いし」
「特別教育棟に限れば教室からそんなに遠くないでしょ? オリエンテーションの時に案内だってしてもらったし」
「それはそうかもしれないけど」
それでも、ことねが中等部に入学してしばらくはよく迷子になったものだ。
第一、レッスン室とトレーニングルームで棟が見事に分かれているのは、今でもちょっと不親切だと思う。
「それに敷地内は一通り下見をして道を覚えたもの」
「え、すご。それって、実際に学園生活を送り始めてから迷わないようにってこと?」
「それもあるけど……妹に道を聞かれたときに、わたしまで迷ったら格好がつかないでしょう?」
「へぇー、花海ちゃんって妹いるんだ。その妹ちゃんも初星に入学するつもりなの?」
「もうしてるわよ、隣の2組にね」
「同学年の年子ってやつ? 妹と同じアイドル養成校の同じ学年、か……」
咲季の言葉に相槌を打ちながら、ことねはそのような状況をシミュレートしようとして、ついには身震いしてしまった。
特別仲が悪いわけではないものの、例えば自分の妹が同じ教室で授業を受けている状況というのは想像するだけでも奇妙な感覚だ。
そもそも年の離れた藤田姉妹をこの例に当てはめて考えるのは少々無理があるし、そういうのは慣れの部分も大きいのだろうけれど。
しかしながら、ことねが最も共感しがたいのは、姉妹揃ってアイドルを目指しているという点である。
これまでの過酷な3年間を経験した彼女としては、仮に妹がアイドルを目指したいと言い出しても安易に賛成することはできない。
当然、それも年子の花海姉妹とはかなり事情が異なってしまうのだが。
「うーん、あんまり想像できないなぁ」
「もしかして、ことねにも妹がいるの?」
「まぁね。花海ちゃんと違って年はそこそこ離れてるケド」
「なら、あなたとはいつかお姉ちゃんとして勝負する日が来るかもしれないわね」
「いやねぇだろ」
咄嗟に素の口調でツッコミを入れることね。
さきほどの同年代らしい感情表現然り。妹の話然り。
咲季のことを全く理解できない世界の人間だとは思わないが、それでも彼女の独特の思考回路にはついていけない。
この後彼女に勝利したとして、今後このような会話劇に巻き込まれることを考えると、それはそれで気後れしそうになるのは道理だった。
だが、それでいて実際に気後れしないのが藤田ことねである。
プロデューサーに成功を約束してもらった以上、他アイドルとの軋轢など彼女にとっては些細な問題なのだ。
そうこう言葉を交わしている内に、件のダンスレッスン室はもう目前。
更衣室で着替えを済ませた少女らは、意気揚々と戦いに挑む兵士のような面持ちで戦場へと突撃する。
「プロデューサー、お疲れ様で~す!」
「お疲れ様! プロデューサー」
教室の扉を跨げば、仲良く廊下を歩いてきたクラスメイトはもう彼女らの隣に立っていない。
そのときレッスン室の中で待っていたプロデューサーが目撃したのは、絶妙な距離感で互いを牽制し合うアイドルたちの姿である。
「お疲れ様です。藤田さん、咲季さん」
調子はいかがですか? と確認するプロデューサーに対して、ふたりは誇らしげに肯定を示す。
プロデューサーが特に見ていたのはことねのコンディションだが、期待以上の結果が得られたからか、彼は気付かれない程度に口角を上げながらよろしい、と頷いた。
「ところでダンス勝負って話だったけど、どうやって勝敗を決めるの?」
「おふたりには、ここで順番にパフォーマンスを披露してもらい、審査員が勝敗を決めます」
「審査員はプロデューサーが?」
「いえ、咲季さんに務めていただきます」
「えっ……?」
ほんの確認程度の質問だったのだが、予想外の返答がかえってきて咲季は戸惑っている。
選手当人が勝敗の決定権を握るというのは、本来なら勝負の場においてあってはならないことだ。
「え~ッ!? そのコがズルして『自分の勝ち~』って言うかもしれないじゃないですかぁ!」
「ありえません。こと勝負において……彼女は誰よりも公平ですから。信用できます」
「…………プロデューサーがそう言うなら、いいですけど」
ことねから抗議の声が上がるのは道理。
それでも、咲季においてはそのような間違いが起こることはありえない、と譲らないプロデューサー。
ことねの才能に対しての盲信具合もさることながら、彼は花海咲季の人間性をよっぽど信頼しているらしい。
「そっちこそ、負けたときズルいとか言わないでよね」
「言わねーし!」
「そ。なら、さっそくわたしから」
そう言って、咲季は壁一面の大型鏡の前に移動し、やがてプロデューサーへアイコンタクトを送る。
それが楽曲開始の合図。
瞬間、流れ出す課題曲とともに、ダンスレッスン室の一画はライブステージへと早変わりした。
「────────────────」
課題曲のダンスの振り付けは基礎的な動きの連続である。
いくら咲季が並外れた身体能力を持っているとはいえ、それだけで勝敗が左右されるということはあり得ない。
基礎的な動きには、そういった応用的な技量ではなく基礎的な要点が強く求められるのだ。
第一に、音楽性。
楽曲の音の流れや強弱を全身で表現できているか否か。メリハリ、リズム感と言い換えてもいい。
「は────────は────────」
咲季の息遣いが音に乗る。
落ち着いた腹式呼吸でゆっくりと拍を刻みながら、彼女は力強く、されどしなやかに体を動かしていく。
研ぎ澄まされた集中力はアスリート時代の経験の賜物か、振るった手の指の先まで咲季が気を緩めることはない。
少女はその小さな体をフルに活用して、雄大に曲を描いていた。
それが第二の評価基準、楽曲を表現するための正確な身体コントロールである。
「……すっご。ほんとに新入生?」
観客席からそんな感嘆の声が漏れるのも無理はない。
彼女の演技はすでに在校生と比べても遜色ないレベルに達している。
きっと入学するまでの半年、誰よりも本気でプロよりも濃密に、練習を積み重ねてきたのだろう。
プロデューサーの予測通り、疲弊したままのことねでは見事に敗北していたはずだ。
否、勝負以前の問題。
こうして咲季のパフォーマンスを見せつけられた時点で、劣等生の心はぽっきりと折れていたに違いない。
“────────だけど”
不思議と、ことねには依然として勝機が見えていた。
確かに咲季のダンスは上々の出来であるし、体幹や体力といった観点ではやはり大きく負けているかもしれない。
しかしそれは、
持てる能力をいかにして演技に反映させるのか。
より正確に表現するのであれば、自身の長所をどのように最大化して魅せつけるのか。
ことねの内側で息をひそめている潜在的なセンスの部分は、未だ自信を失っていない。
「ふぅ……どう? プロデューサー、わたしのダンスは!」
「期待以上です」
「そ、そう。ふぅ~ん…………そんなによかったんだっ、ひひっ」
やがて、咲季のダンスが終了する。
終始集中を途切れさせなかったのにも関わらず、元気に問いかける余力があるのはさすがと言うべきだろう。
プロデューサーの評価にも偽りはなく、入学試験の成績以上に彼女は実力を伸ばしていた。
だが、咲季は称賛の声に顔を綻ばせる一方で、勝利を確信してはいなかった。
正面から自身のパフォーマンスを眺めることねの瞳が最後まで挑戦的で、自信に満ち溢れているのを感じ取っていたからである。
「じゃっ! 次はあたし~ですネっ♡」
「藤田さん、信じています」
「ほ~い、いってきまっす! プロデューサー!」
プロデューサーと言葉を交わしてから、今度はことねが鏡の前に赴く。
今にも飛び跳ねそうな足取りは、さながらオープニングアクトと入れ替わる演者のように軽やかなものだった。
極端な話、咲季のパフォーマンスが良かっただの良くなかっただのは、彼女にとっては些事である。
ことねの目的は自身の実力を咲季に思い知らせること。それを以て、咲季を説得できたといえる。
つまるところ、彼女が為すべきことはただひとつ────ステージの上から観客席に向かって、藤田ことねのありったけをぶつけることである。
「っ────────!」
課題曲の開始に合わせて、少女はステップを踏み始める。
途端、すぐに咲季は眉を顰めた。
軽快な足運びに反するような重々しい踏み込み。
繰り返される静と動。
しなやかに上げられた腕はほどよく脱力していながらも、綺麗な形状を作り続けている。
動きはすべてにおいて丁寧かつ大胆に。
彼女は振りを最大限に大きく魅せながら、それ以外の部位の動作を最小限に抑えている。
そのパフォーマンスに内在するノイズの少なさに、まるで少女の魅せたい部位へ勝手に視界が吸い寄せられるような錯覚さえ咲季は抱いた。
“見事なアイソレーションね…………”
ことねの演技に見惚れながら、咲季は感心している。
体の特定部位を独立して動かす身体コントロール────アイソレーション。
入学前から研鑽に努めてきた彼女は、当然この技術をよく知っていた。
付言するなら、それはダンスの習熟において咲季が最初に苦戦した技能なのだ。
個は動とし、他は静とする。
ひとつの動作に全身をフル活用するのはおおよそのスポーツに共通するセオリーだが、言ってしまえばアイソレーションはそのセオリーとはまったく真逆の技能で。
彼女がアスリート時代に築き上げてきた感覚は、この技能の習得にとって最大の障壁となった。
とはいえ、あくまでもこれは超早熟型な咲季にとっての話であり、客観的に見れば、他の初学者とは比べ物にならない速度で彼女はこの障壁を克服している。
実際に、今回咲季が披露した演技にはしっかりとその技術が組み込まれていた。
ことねが本当に新入生なのかと疑いたくなったのも、プロデューサーが期待以上と評価したのも、彼女のその徹底っぷりを見せつけられてのことである。
しかし────────
“────────────────あたしを、見ろ!”
「………………………………ッ!?」
悲しきかな、藤田ことねの才覚はそれを遥かに上回っている。
あまりの眩さについ逸らしたくなる視線を彼女の所作は許さない。
さながら動作の節々に呪いでも唱えているかの如く、ことねのダンスは咲季とプロデューサーの目を奪い続ける。
落ちこぼれの少女がダンスの技量に並んで唯一自信を手放さなかったもの。
ビジュアルの数値だけでは説明しきれない、トップアイドルにすら匹敵し得るソレ。
天性の才能とも呼ぶべき圧倒的な“かわいい”を振り付けに織り込み、暴力的なまでに観客の瞳孔に焼き付けていく。
咲季とことねのダンスにおいて決定的な違いがあるとすれば、この技能に他ならない。
ダンスに求められる第三の評価基準、表現力────楽曲のテーマに沿って、見るものの感情を動かす力である。
かくして、可憐なアイドルは自らの強みを明確に誇示し。
咲季とプロデューサーに一時の瞬く暇すら与えず、ことねのパフォーマンスは終了した。
「ふぅ~~~~~~~~~~~っ、つ……つっかれたぁ~~~~~~~~~~~~~~~!」
バタリ、と倒れこみそうになるのをすんでの所で持ち堪える。
膝に手をついた少女は、ぜえー、はあー、と荒い呼吸を繰り返しながら、必死に肺に酸素を送り込んでいた。
余力を残した咲季とは対極的に、すべてを出し尽くしたことねにはこれが限界。
そもそもこんなに全力で踊ったのは久々なもので、プロデューサーからの休養命令に関わらず、明日は筋肉痛で動けないだろう。
今現在においても、少し気を緩めれば酸欠で視界がホワイトアウトしてしまいそうなのだ。
「藤田さん、水分補給を」
「あ、あざっす……ぷろでゅーさー」
こうなることを予期して準備していたのか。
速やかに渡されたペットボトルを奪い取るようにしてことねは水を呷る。
プロデューサー相手にはもう少し愛嬌のある対応を取りたかったのだが、そのような余裕はない。
彼女の生存本能はなによりも水分を欲している。
「……すみません、咲季さんの分も用意しておくべきでしたね。失念していました」
「お気遣いどうも。でも大丈夫よ、プロデューサー。自前のドリンクがあるから」
そう言って、咲季がどこからともなく取り出したのは、青とピンクに発光する謎のボトルだった。
プロデューサーがつい「む」と声を漏らしたのは、その見た目があまりにこの世のものとは思えなかったからなのだが、そんなバカ正直な第一印象は咲季の耳には届かなかったらしく。
スポーツ飲料を口にするのと同じ要領で、彼女はそれを喉奥へと流し込んでしまった。
開いた口が塞がらないというのは、きっとこのときのプロデューサーの表情を表すために生まれた常套句に違いない。
「ん────────ん────────ぷはっ、はぁ…………」
一方、同じように初星水を流し込んだことねは、その怪奇的な光景に目を向ける余裕もなく。
300mL程度の水分量を一気に飲み干すと、ついには膝から崩れ落ちて、乱れた呼吸を成すがままにしている。
体はこれでもかというほど悲鳴を上げているというのに、彼女の胸は弾んでいた。
トクトクと脈打つ心音は、まるでさきほどまでのダンスの余韻に浸っているようだ。
“久しぶりに────────気持ちよく踊れた気がする”
有り余る高揚感にことねは思わず笑みを溢す。
やはりと言うべきか、このとき彼女にとっては咲季との勝負などどうでもよくなっていた。
なによりも自らの思い描いた通りのダンスができたことが嬉しく、燻っていたアイドルへの情熱が昂るのを深く噛みしめていたのだ。
けれど、これで終いというわけにはいかない、と。
夢見心地から少女を連れ戻すように、その目前へ手が差し出される。
「────ほら」
それは疲れ果てた彼女を立ち上がらせるものか、あるいは彼女と握手を交わそうとするものか。
どちらにせよ、それは咲季からのことねのパフォーマンスに対する称賛の意志に他ならなかった。
「……あ、ありがと」
それを気恥ずかしそうに受け取って、ことねはゆっくりと立ち上がる。
対戦相手を認める咲季の温かな視線が、彼女にとっては少しばかりくすぐったかった。
「え~と…………どう、だった?」
宿敵は互いに、同じ目線に立って並び立つ。
ことねの問いを受けて、咲季はう~ん、と長い唸り声を上げながら改めて熟考を開始した。
否、その声は論考というよりも、どうやら葛藤の音に近しい。
まず、ことねが足手まといになるという意見については、すでに訂正するつもりでいた。
3日前の自信なさげな少女ならともかくとして、今日の彼女ははっきりとアイドルの顔をしている。
それこそ、勝負をする前からライバルとして認めてしまうくらいには。
だから、ここでの勝敗がどうなろうとも、咲季はプロデューサーの提案を聞き入れる心構えをしていたのだ。
つまるところ、彼女にとってこれは、ことねを認めるか否かという話ではなく、単にダンスの技量の優劣を語る審査なのである。
しかし結果は火を見るより明らかだろう、と咲季は思う。
不安げにこちらの返答を待つことねの態度がかえって癪に障ってしまうほど、彼女の演技は圧倒的だった。
仮にプロデューサーから勝敗を告げられたにせよ、花海咲季は異論をはさむことなく納得できるはずだ。
そう考えると、あえて自身にこの役割を押し付けてきたプロデューサーの性格の悪さにも少々腹が立ってしまう。
それでも引き受けた以上、どんな結果でも告げるのが審査員としての務めだろう、といよいよ腹を括って。
「────────わたしの負け!!!」
声を大にして、彼女は自らの敗北を宣言した。
「想定内よっ! わたしよりもず~っと早くから、本気でアイドル活動に取り組んできた人たちが、たくさんいるんだもの! いまのわたしが、いきなり全員に勝てるなんて、一番になれるなんて、思ってなかった……!」
「ひひ~、強がるなって~。超くやしそーじゃん」
「悔しいに決まってるでしょ! わたしは負けるのが世界で一番嫌いなの!
くやしい、くやしい……悔しい悔しい悔しい悔しい~~~~~~~~~~~ッ!」
全身で地団駄を踏みながら、少女は咆哮する。
負ければきちんと悔しがるのが花海姉妹────いや、花海家のルーティン。
もっとも、大抵の場合はさらに下位の選手がいることが多く、そういうときは場所を選ぶ必要があるのだが。
今回は完全なタイマン勝負ゆえ、そんな他者への配慮は一切無用。
咲季は涙すら流しながら、渺茫たる悔恨を表明している。
傍から見れば、駄々をこね始めた子どものような印象を受けてしまうが、彼女にとっては次に進むための大切なステップなのだ。
そうして感情を割り切っている以上、切り替えも恐ろしいほどに早く。
涙を引っ込めた咲季は改めてことねに向き直ると。
「……足手まといなんて言って、ごめんなさい」
「いーよもう、別に気にしてないし」
「これからは、ことね先輩って呼ぶから」
「な、なんで先輩?」
「アイドルとしての、尊敬する先輩という意味よ!」
「留年した人みたいじゃん! マジやめて!」
「じゃあ他の呼び方を考えておくわ」
「普通に名前で呼びゃいーだろ! こっちもそー呼ぶし!」
極限の疲労困憊はどこへやら。
負けを認めてしおらしくなったと思えたのも束の間、やっぱり常識外れな咲季の言動につい怒鳴り声をあげてしまうことねだった。
「そう? じゃあ、ことね、この前はどうして自信なさそうにしていたの?」
「あー……えと、それは…………というか! それは咲季があたしに勝てたら教える約束だったろ?」
「それはそうだけど」
気になるものはしかたない、と咲季はことねを見据える。
本当はさらに強く問い詰めたいところなのだが、勝てば教えてもらえるという約束をしてしまった手前、咲季からそれ以上の追及は難しかった。
それを────────
「休養して、コンディションが回復しただけです」
「ちょ、プロデューサー!?」
「つい先日まで、藤田さんは複数のアルバイトを掛け持ちしていました。なのにレッスンや仕事の量も、他の生徒よりも多いくらいでした。休日など一切なかったはずです。
睡眠不足、過労……コンディション不良ゆえの成績不振────からのさらなる練習量増加。この悪循環が藤田さんの自信喪失の原因でした」
「……………………」
ことねが隠匿したがっていたのを知ってか知らずか。
毒気のない表情ですべてを説明してしまうプロデューサー。
勝負前にことねの危惧した通り、その全容を聞いた咲季が何の反応も示さないなんてことはなく。
意味ありげに少し黙り込んだ末、彼女が口にしたのは。
「自分の体調もわかってなかったとか……さては、あなたバカでしょ?」
「うっさいなァ! 聞いたとき自分でもそう思った! しょーがねーだろー! お金が欲しかったの!」
「それにしたって、バカよ。ほんっと、バカ。信じらんないバカ。うちの妹と同レベルのバカ」
「ぐぬぬ……! あたしに負けたくせに、言いたい放題言いやがってぇ……!」
このように、簡単化された暴言の嵐であった。
幸い、ことねが勝利を収めているのでかすり傷で済んでいるものの、敗北後にこんな暴力的な正論を浴びせられたのであれば、きっと致命傷になっていたに違いない。
もちろん咲季側にそんなつもりは毛頭ないし、むしろそういった愚直さを持ち合わせた人物のことを、彼女自身なかなか嫌いになれなかったりする。
なので────────
「好きよ、あなたみたいなやつ。これからよろしくね! ことね」
恥ずかしげもなく、咲季は高らかに告白する。
ことねからしてみれば前後の文脈は見事に分断されているのだが、それ以上に彼女から素直な好意を向けられたのが嬉しくもあった。
「…………あーもー、調子狂うなーっ!」
ひとまず、咲季の思考回路についての理解は保留とする。
そもそも生きてきた世界が違うのだし、なにより最後の言葉が本心なのだけははっきりと伝わっている。
そのありがたいお言葉に免じて、ことねは直前の罵詈雑言を水に流すことにした。
「気を取り直して……咲季、こっちこそよろ!」
微笑みを投げる咲季に、彼女も同じく笑顔を返す。
あるいは苦笑だったのかもしれないが、あれだけ火花を散らしていた中でのダンス勝負の幕引きとしては申し分ない。
歪ではあれど、彼女らふたりの絆はこうして結ばれたのだった。
03 好調