魔法少女@強制就労 作:赤と赤
その日は人生史上最悪とも言っていい日だろう。いや、最悪の始まりと言うべきなのか。ともかく、死ぬまで今日という日のことは忘れられないのだけは確実だ。何故なら──
「おめでとう! 今日から君は魔法少女だ!」
人語を喋り浮遊するぬいぐるみのような物体からそんなことを言われた瞬間、姿を変えられたからだ。
頬をつねる。痛い。次いで謎生物の頬をつねる。夢とか機械とかではない。もう一度自分の頬をつねる。やっぱり痛い。
「そんな念入りに確認しなくても現実だよ?」
現実逃避も虚しく、これが現実であると突きつけられる。刺激的な体験が欲しい人は多いだろうが、少なくとも自分はそんな体験は望んでいない。いや、刺激的な体験を望んでたとしても
「どうしてそんな嫌そうな顔をするのさ。だって魔法少女だよ? やってみたいって子もいるでしょ」
謎生物は話を続ける。
「ボクらは今、とある悪〜い組織に狙われているんだ。捕まっちゃうと酷い目に遭わされちゃうんだよね。でもボクらには戦う力がなくてね。だから魔法少女としてボクらを助けて欲しいんだ」
なるほど、つまりその悪い組織とやらから守って欲しいと。だから突然魔法少女にしたと。なかなかに自分勝手だなコイツ。
「もちろん君達にも利はあるよ? その組織は君達の世界にも来て人間を襲っているからね」
そんな話聞いたことないが? と言うと「まあ今は隠れてこそこそと活動してるからね」などと返ってきた。……凄く疑わしい。事実だとしてもそんなどこにいるのかわからん連中を探し出して戦わないといけないというのか。
「大手を振って人を襲ってくれれば助かるんだけどね〜。まあこそこそ活動してるのだったら探し回ればオーケー! 一緒に頑張ろう!」
勝手なことを言ってくれる。つまりはどこにいるのかわからないということじゃないか。勘弁して欲しい。こちらにだって学生としての本分が……
「あ、言い忘れてたけど魔法少女としての職務を完了しない限りは元の生活に戻れないと思ってね」
「は?」
思わず大きな声が漏れてしまった。……どういうことだ? 元の生活に戻れない?
「どうしてって……ボクとしては魔法少女の仕事に集中して欲しいから……まあ、元の生活に戻りにくくするために
そういうことか。この姿の訳は。つまりは魔法少女をやらせるために
今の自分の姿を確認してみる。フリルのついた緋色のドレス、大きなルビーのような水晶のあるステッキ。まさに魔法少女といった姿だ。女の子であれば魔法少女になれたことに喜んでいたのだろう。女の子であれば。
頑張ります。