魔法少女@強制就労 作:赤と赤
第1話 魔法少女の誕生
俺は頭を抱えた。早起きして登校をしたばっかりにこんな目に遭うなんて。何が早起きは三文の徳だ、三文どころか三両貰ったって割に合わないぞこんなの。
「はあ……だから俺は魔法少女としてその〜悪の組織? とやらを倒せばいいのか?」
「そ。悪の組織『ラア』。生物に宿るエネルギーを悪用して悪さをしてる連中なんだ」
「生物に宿るエネルギー? 魔力的なやつか?」
「君ら人間界的に表現すればそうなるね。ボクらはその魔力が豊富にあるから連中に狙われてしまってね、自衛しようにも攻撃手段を持てないボクらは連中の魔の手から身を守れない。だからボクらに次いで魔力の多い人間を魔法少女にして戦ってもらおうと思い付いたのさ!」
「いや話すっ飛ばし過ぎだし結論よ!」
とんでもないことに巻き込まれた。こちらの意思は関係ない通り魔的な巻き込まれ方だが。だからこそやりたくない。やるならばせめて意思を確認してからだ。
「それって……辞退とか出来ない?」
「契約済みだから辞めたければ働いて貰うよ〜」
外道とは正にこのことか! 勝手に契約をして辞めたければ働けとは、ブラック企業以上の極悪っぷり……むしろコイツが悪の組織側なのでは?
「せめて……せめて魔法少女に変身していない時は男に戻れたりはしないか?」
納得はしていない。してはいないが魔法少女をやらざるを得ないというのであれば次に重要になるのはそこだ。戻れるのであればまだマシな方だが、コイツはさっき「元の生活に戻りにくくする」と言った。最悪とも言える程に悪い予感がする。
「戻れないよ。戻りたいなら働いて貰うよ〜」
「くっ……! や、やっぱりそうなるかぁ……!」
俺は膝から崩れ落ちる。勝手に女の身体にされた挙句、男に戻れず魔法少女をやるハメになる。厄日だ厄日、お祓いしたってし足りない。
「まあまあ、そんなショックを受けずに。良いことだってあるんだからさ」
俺の気持ちを知ってか知らずか謎生物……いやもう害獣と言っていい。その害獣が話かける。良いことが何か気になるがその前に──
「ていうか、お前の名前って何? 名前がないなら害獣って呼ぶね」
「ボクは害獣じゃないわ! そうだねぇ……アドムとでも」
今考えたな、考えた間が合ったぞ。アドム……どういった意味の名前なのだろうか。聞けば「赤」らしい。俺の魔法少女の姿が緋色基調だからか? でもそれなら緋色で良いのではないだろうか。
「何か呼び難いし害獣って呼んでいい?」
「何で? やめてよね」
このくらいの抵抗は許して欲しい。
「男に戻るためにはやるしかないってのはわかった。んじゃあその間の生活はどうするのさ? 家族に説明でもすればいいのか?」
「あ、もちろんだけど魔法少女たるからには正体がバレるのはNGだよ。姿が変わったことも含めてね」
ふざけていやがる。家に……家に帰れない! 流石に生きて行く上で家を失うのは色々と問題が多い。コイツマジで害獣なのでは……?
一旦冷静になって整理してみよう。まず身体が女になった、しかも戻れない。次に魔法少女にされた、悪の組織とやらと戦わないといけないらしい。バレるのはNG、つまり隠し通さないといけない。そして男に戻るためには魔法少女として戦う必要がある。……どうしてこうなった。
「……ちなみに正体がバレたら?」
「君の存在が世界から忘れ去られる」
……本当にどうしてこうなった。
「え、俺消えるの……?」
「いや? ただこの世界の生き物から君の記憶が消されて、あらゆる記録からも存在を抹消されるだけで存在自体は消されないから安心していいよ」
「安心出来るかぁこの害獣がッッッッ!」
俺は一思いにテルラックスをぶん殴る。奴は殴られた勢いに任せて吹っ飛んでいった。痛いなぁとは呻いていたがそのくらい我慢してもらいたい。
頭を抱える。くそ、本当にどうしてこうなった。やるしかないのか? やらなければいけないのか?
「じゃあ……魔法少女やろうか……」
奴がフラフラとしながらこちらに戻って来る。次はもっと遠くに殴り飛ばしてやろうかなどと考えるも、もはや俺に残された選択肢は一つだけなのだと思わされる。
「……やればいいんだろ、やれば……!」
こうして、最悪な誘いから一人の魔法少女が誕生したのだった。