「マリンさん、大丈夫なのだわ…?」
「…うん?
あぁ、わたしは大丈夫やで。」
ふと前を見ると、カノンが心配そうにわたしの顔を覗き込んでいた。
タクトくんの一件が何とか片付き、イベントミッションを終えたわたしたちは、ミッション前にもいたカフェスペースにいた。
あれから結構時間が経ったということなのか、フォースフェスエリアの空は既に暗くなりかけていた。
「それよりごめんな、初めてのフォースフェスやったのに、こんなことになってしもて…。」
「そんな…!
マリンさんが謝ることじゃないのだわ!
それに、今日はマリンさんと一緒に遊べて、十分楽しかったのだわ。」
「…ありがとうな、カノンちゃん。」
あの後、イベントミッションはブレイクデカール騒ぎの為に結局お流れになったので、優勝も賞品である"マーメイドズゴックのぬいぐるみ"も取り逃してしまった。
「優勝は無かったことになっちゃったけど、代わりに"これ"を貰えたから、嬉しいのだわ。」
「せやなぁ。」
そう言いながら、カノンは抱き抱えている"ゴッグのぬいぐるみ(島ver)"をわたしに見せる。
なぜか本体の色が肌色一色になって腰には紺色のエプロンが巻いてあり、独特の愛嬌がある。
今回のイベントミッション中止の件で、急遽参加者全員に配布されたものだ。
かく言うわたしも、今両手で抱っこしている。
「…それよりも、タクトくんがブレイクデカールを使うだなんて…。
知っている人がマスダイバーだったのは、ショックだったのだわ…。」
「そうやな…。
あんなもん、自分のことしか考えてないようなヤツらが使うもんやとばっかり思ってたけど…。」
タクトくんがブレイクデカールを使ったという事実は、マスダイバーは簡単に強くなりたい、気持ち良くなりたいという自分勝手な連中だけではなく、タクトくんのように、どうしても強くなりたくて思い詰めた結果、ブレイクデカールに行き着いてしまったマスダイバーもいるということを、わたしたちに突きつけた。
「フウカさんたち、これからどうなっちゃうのかしら…。」
「どうやろうな。
さっき聞いて来たんやけど、ブレイクデカールって使ってもログが残らんらしい。
やから、本人が使ったっていう証拠がないから、現状は運営もお咎めなしにするしかないみたいやわ。」
「そうなんだ…。」
「とはいえ、GBNも色んな人のやってるオンラインゲームや。
一度ブレイクデカールを使ったとなると、肩身は狭くなるやろうな…。」
運営から特にペナルティが無くても、あの場でブレイクデカールを使ったところは、わたしを含めて色んなダイバーが見ている。
証拠は無くても、使ったという事実は残るのでタクトくんは元マスダイバーだし、フウカさんもマスダイバーの関係者になる。
フウカさんの為に強くなろうとブレイクデカールを使った結果、フウカさんの経歴に傷をつけることになってしまったのだ。
「…何だか悲しいのだわ。」
「楽しく、GBNで遊びたいだけなんやけどな…。」
これから先、ミッションやイベントをやる度にこんなことになるかもしれないと思うと、気が重くなってくる。
こんな時、わたしもマギーさんや、前に出会ったフォース"ヴァイスガード"のクーロウさんたちみたいに強ければ、こんな思いをしなくて済んだのだろうか。
「…あかん。わたしらがしょぼくれてても、何にもならんわ。
せっかくフェス来たんやし、時間いっぱいまで遊ぶで!」
「マリンさん…。
そうなのだわ、ラストは花火も上がるみたいだからそれも観なきゃなのだわ!」
「よっしゃ。
行くで、カノンちゃん!」
「はいなのだわ!」
どれだけ考えたとて、今のわたしにはどうすることも出来ない。
わたしたちは、最後までフォースフェスを楽しむべく、カフェスペースを後にした。
いー○までもー た○ることなくー