「今日は助けてくれてありがとうございますなのだわ!」
「いや、そんな畏まらんでも…。
本間にたまたま近くにいただけですし…。」
さっきの一件の後、わたしは初心者狩りに襲われていたクスィー・ガンダムのダイバーをセントラルエリアのロビーまで送り届けたのだが、到着するなりこうして頭を下げられているのだった。
「私、本当に怖くて…。
マリンさんが助けに来てくれた時、すごく嬉しかったのだわ!だから…」
「わかりました、わかりましたから…!
そろそろ頭上げてくれると、わたしも嬉しいかな〜、なんて…。」
何事かとこちらを見ている周囲のダイバーたちの視線がそろそろ痛くなってきたので、わたしは目の前にいる"カノン"と名乗った、腰辺りまでの長さがある綺麗な銀髪と頭についた大きな黒いリボンが特徴の可愛らしい女の子に頭を上げてくれるようにお願いする。
"後で罪悪感でもやもやしたくない"という自分勝手な理由で首を突っ込んだ挙句、残った2人があのまま逃げてくれなければこっちがやられていたかも知れないと思うと、恥ずかしさで死にたくなってくる。
「そうなのだわ…?
なら、お言葉に甘えさせていただくのだわ。」
何とか納得してくれたらしく、カノンは頭を上げる。
うぅ…、カノンの純粋な態度が余計に突き刺さる。
「そ、それではわたしはこの辺で…。」
「ちょっと待って欲しいのだわ!」
何とも気まずくなってしまったので、逃げるようにその場を離れようとするわたしを、カノンが呼び止めた。
「何かありました…?」
「まだしていないのだわ!」
「えっ?」
「フレンド交換、まだしていないのだわ!」
「…ゑ?」
呆気に取られて固まってしまったわたしをよそに、カノンはフレンド申請を飛ばしてきた。
気がつけば、わたしはそれを受理していた。
ーーー
「はぁ、なんか疲れたわ…。」
カノンと別れた後、特に何もせずそのままログアウトしたわたしは、座っている椅子の背もたれに体重を預ける。
首を突っ込んだのは他の誰でもない自分なのだが、慣れないことをした所為かどっと疲れてしまった。
「カノンちゃんやっけか。
めっちゃグイグイ来る子やったなぁ。
可愛らしい子やったけど。」
何言うてんねんと自分でツッコミながら、わたしは今日出会った女の子ダイバーのことを考えていた。
ロビーへと送り届ける時に聞いた話では、つい2日前にGBNを始めたばかりらしい。
「あの子、そのうちわたしより強なるんやろうな。」
ふとそんなことを考えてしまう。
一緒にGBNを始めて、あっという間に強くなってダイバーランクも個人ランクもわたしの手の届かないところに行ってしまった、プレイスタイルの違いとお互いの実生活での忙しさからしばらく疎遠になってしまっているリア友の顔が思い浮かぶ。
「…あかん、これ以上は考えんとこ。
さっさとお風呂入って、ビールでも飲むかな。」
わたしはレヴィアタンをダイバーギアから外し、丁寧にケースに仕舞うとお風呂場へと向かった。
好きなゲームのはずなのに、余計なことを考えてしまう。