カノンと別れた後、少しぼーっとしていた所為で後ろから来たダイバーとぶつかってしまったのだが、そのダイバーは前にわたしがフォースを組んで一緒にGBNをプレイしていたゲッカだった。
「…えっと…。」
「…。」
気まずい空気が流れる。
あの日以来、GBNで会うことも無かったし、リアルでも連絡を取っていなかったのでこれが久しぶりの再会なのだが、あんな別れ方をしてしまったが故にどうしたら良いかわからず、次の言葉が出てこない。
「…ごめん。」
「あ、ちょっと…、ゲッカ…!」
呼び止めようとしたものの言葉が続かず、ゲッカはそのまま足早にロビーの人混みの中に消えていってしまった。
ーーー
「はぁ…。」
「センパーイ、どうしたんですかー?
なんか今日、朝から辛気臭いですねぇ。」
ひょんなことからゲッカと再会した次の日、わたしのリアルでの職場である、とあるレジャー施設に併設されているプールの事務所でお昼を食べながらぼんやりと前の日のことを考えていると、後輩のフジタが顔を覗き込んできた。
「うわっ、近いわ!
急に人の顔覗き込まんといてくれる?」
「別に良いじゃないですか〜、減るもんじゃないし〜。
それにしても、何かあったんですか?」
フジタはそう言いながら、わたしの後ろの自分の席へと戻る。
はぁ、めんどくさいのに見つかってしもたなぁ…。
「別になんもないよ。
ちょっとぼーっとしとっただけ。」
「えー?なんか怪しいなぁ…。
…もしかしてぇ、好きな人でも出来ちゃいました?」
「ぶふぉっ!!」
「え!?
マリンちゃんもついに好きな人が出来ちゃったの!?」
適当に誤魔化そうと思ったのだが、話が思いもよらない方向に飛んでしまって、口にしていたお茶を危うく吹き出しそうになってしまった。
全く、いきなり何を言い出すんだか。
同僚のリナまで変に食いついてくるし。
「…ちょっとフジタ!
変なこと言わんといてくれる!?
リナも気にせんで大丈夫やから!
…ちょっとあんまり会いたくないタイミングで昔の知り合いに会っただけやから。」
「あら、そうだったの…。
ごめんね、何だか変に首突っ込んじゃって…。」
「なーんだ、つまんないのー。
あのモテないマリンセンパイにも、やっと春が来たのかなって思ったのにー。」
「…フジタぁ、ちょっと表出よかぁ?」
こいつほんまええ性格してるよなぁ。
悪い子ではないし、仕事の方もちゃんとしているし、人当たりも良くお客さんにも人気なのもわかっているので複雑である。
「今日は随分賑やかだね、3人とも。
さぁ、そろそろ遅休憩組と交代だし、プール戻ろうか。」
「あっ、マオセンパーイ!
助けてくださいよ〜!マリンセンパイがイジメてくるんです〜!」
「こら、フジタぁ!
今日という今日は許さんからなぁ!」
「ふふふ。
さぁさぁ、コトミちゃんもマリンちゃんも早く行きましょ?」
いつものように調子に乗るフジタを懲らしめようとしていると、リナと同じく同僚のマオがわたしたちを呼びに戻って来た。
さて、午後からもプールの安全のために頑張りますか。
マリンちゃんのリアルでのお仕事は、レジャー施設にあるプールの監視員さんです。