デミウルゴスに憑依した一般読者   作:目ん玉

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デミウルゴスに憑依した一般人読者

 溶岩が流れる灼熱の光景。

 この地形はどこかで見たような……?

 というか、なぜ俺はここに……?

 戸惑う俺の耳元に、まるでスマホやイヤホンから聞こえるようにして声が届いた。

 

「デミウルゴス。モモンガ様がお呼びよ。各階層守護者は1時間後に第6階層に集合せよと」

 

 この声。

 アニメで聞いたこの声は。

 そして「デミウルゴス」「モモンガ様」という固有名詞。

 ……なるほど。そういうことか。

 なぜだか分からないが、俺はオーバーロードの作中に出てくるデミウルゴスに憑依しているらしい。

 そして玉座の間ではなく第6階層に集まれという指示は、原作の最初に出てくる主要キャラの登場シーンだ。

 モモンガ様は今頃、あの闘技場でご自身の魔法を確認する作業に入っておられるはず。

 

「承知しました。1時間後に第6階層ですね」

 

 メッセージを切って――自然とやり方が分かった――俺は考え込んだ。

 どう動くべきか。

 デミウルゴスといえば、ナザリックが世界征服に動き出した最初のきっかけを生み出した男。全ての不幸の生みの親。

 世界征服なんて面白いかもしれないな、とつぶやいたモモンガ様の言葉の、そこに表れていた真意を読み取れなかった愚か者。頭は良いのに、良すぎて空回りした挙句、モモンガ様を振り回すトリックスター。

 そのデミウルゴスに憑依した今、俺がどう動くかでナザリック全体の行動方針や最終目標さえも変更できる。

 

「……どう動くか……?

 ……愚問ですね」

 

 自然と自嘲の笑みが浮かぶ。

 NPCとしての本能――あるいはデミウルゴスの人格か。

 至高の御方のお役に立つこと。

 それ以外にどう動くなどという規範はない。

 そこに「同じ人間としての人格」である俺の意識が入ったなら、もっとマシな受け取り方ができる。

 さて、俺もデミウルゴスの能力をきちんと使えるか、確認しておくとしよう。

 

 

 ◇

 

 

「では最後に、守護者各位にとって私とは、どのような人物だ?」

 

 モモンガ様がお尋ねになった。

 それぞれに美辞麗句を並べていく守護者達。

 どうやら俺以外に「誰かが憑依したキャラ」は居ないようだ。

 それとも未来の改変を恐れて、原作通りに動いているのか?

 

「デミウルゴス」

 

 モモンガ様がお呼びになった。

 原作では、極めて優れた知恵者であると評価していたが。

 ここで少しモモンガ様の信用を稼いでおくことにしよう。

 そのほうが今後、動きやすくなるはずだ。

 

「我々シモベ一同にとっては絶対の支配者であられる事に疑いはありません。

 ですが――」

 

 これは他のNPCたちへの牽制。

 そして、ここからがモモンガ様へのアピールだ。

 

「それはモモンガ様と我々シモベとの関係という、単なるひとつの側面に過ぎません。

 至高の御方々同士であれば、『まとめ役』ではあっても『支配者』ではない――少なくともモモンガ様ご自身はそのように振る舞っておられ、また他の至高の御方々もモモンガ様に対してそのように振る舞っておられたと記憶しております。

 そして――」

 

 ああ……と納得するような気配が、周囲の守護者たちから漏れる。

 一方でアルベドは少し不快そうにしていた。

 モモンガ様の問いは「お前たちにとって私はどのような人物か」だ。

 俺の答えは、その範囲から外れる。

 だがモモンガ様が本当に聞きたいのは「シモベからの評価」ではない。

 こいつら信用していいのだろうか――だ。

 

「改めて『モモンガ様とはどのような人物であるか』を考えますに、他の至高の御方々とともに冒険されることを何よりも楽しみとされる冒険者であり、他の至高の御方々がナザリックを去ってしまわれた後も、ともに築いたこのナザリック地下大墳墓を愛し、宝物とされる留守居役。

 冒険者・留守居役などと、そのお立場を小さくしてしまったような言い方になり恐縮ですが、恐れながら申し上げますと――」

 

「デミウルゴス。言葉が過ぎるのではなくて?」

 

 我慢できずにアルベドが言う。

 そういう所だぞ。

 まあ、おいおい手を加えていくとしよう。

 

「よい。続けよ」

 

 モモンガ様が許された。

 聞きたいだろうな。

 他の守護者たちの評価は、モモンガ様にとって過剰に持ち上げた内容。

 しかし俺の評価は、モモンガ様ご自身の評価に近いはずだ。

 俺は一礼して言葉を続けた。

 

「恐れながら申し上げますと、ただ独り残られたあとも、このナザリック地下大墳墓を維持するためにご尽力してこられた事から、モモンガ様は去ってしまわれた至高の御方々がいつかお戻りになる日が来ると信じて――あるいは少なくとも期待して、待っておられるのではないでしょうか」

 

 ここで少しアルベドに対する牽制も加えておこう。

 

「であればモモンガ様は他の至高の御方々と仲違いされたわけではなく、また他の至高の御方々がこのナザリックを捨てたわけでもない……おそらくナザリックの外でナザリックを守るため、外に出ない我らシモベに代わり、今なおナザリックに戻る暇もなく奮闘しておられるのではないか、と愚考いたします」

 

 他に大事なことがあったから、などと言えば「やっぱり捨てられた」と落ち込むだろう。だからプレーヤーの視点には立たず、ナザリックNPCの視点で言葉を整えた。

 アルベドがショックを受けた顔をした。

 他の守護者たちは半泣きだ。

 去ってしまった=捨てられた、と単純に考えているNPCたち。

 それが、自分たちを守るために帰ってこられないのだという考え方は、アルベドの怒りや恨みを根本から打ち砕き、捨てられたと悲しむNPCたちに「自分たちが不甲斐ないから」と自責の念を与える。

 彼らは、いうなれば「親離れできていない子供」のようなものだ。親には親の価値観があり、それは子供の価値観とは違うものだ、という事を理解できていない。一部のNPCは話せば理解はできるだろうが、受け入れることは無理だろう。

 モモンガ様はNPCたちに精神的な成長を望まれる。それはシモベが唯々諾々と従うだけの存在ではなくなり、かつてのギルメンのように時には言い合うような生き生きとした関係性を望んでおられるからだろう。そんなモモンガ様にとっても、この考え方は慰みになり、否定するほどのものではないはずだ。

 

「今、ナザリック地下大墳墓はどことも知れぬ草原に転移しており、モモンガ様と我々もまたナザリック地下大墳墓とともに転移しました。……これは、他の至高の御方々もどこかに転移しておられるのではないか、という可能性を示唆しています。

 すでにだいぶご質問の答えから外れていて恐縮ですが……モモンガ様。ぜひ冒険をいたしましょう」

 

「冒険?」

 

「散らばってしまった宝物を――他の至高の御方々を探し、集めるのです。

 セバスが外を調べに出ていけたことから分かる通り、今なら我々シモベも外へ出ることができます。

 草原を越えていきましょう。

 山へ登りましょう。

 海を探しましょう。

 空を飛びましょう。

 至高の御方々の代わりには物足りないでしょうが、どうか我らをお連れください。

 いつか再び至高の御方々がお揃いになったときのために、話して聞かせるに足る大冒険をいたしましょう。

 今、私から見るモモンガ様は、ナザリック探検隊の隊長であらせられます」

 

 デミウルゴスの創造主ウルベルト様は「悪」にこだわる方だった。

 悪とは秩序を乱すもの。

 秩序とは、あらゆる生物が望む規範。

 ウルベルト様は、秩序そのものを冒険しておられたのだろう。

 

「デミウルゴスよ」

 

「はい」

 

「我が意を見たか」

 

「恐れ入ります。至高の御方のお役に立つことこそ我らシモベの望み。モモンガ様にお楽しみいただけるように、今後も精進してまいります」

 

「うむ……」

 

 お前たちの考えは十分に分かった、とモモンガ様は転移していかれた。

 最後に答えるはずだったアルベドが、答える機会を失ってしょげている。

 シャルティアはうずくまったままだ。

 面倒な言い争いが始まる前に、さっさと状況を動かしてしまおう。

 

「アルベド。命令をくれないかね」

 

「モモンガ様……私の答えは……」

 

「聞くまでもないのだろうね。

 絶対の支配者が命じたのだから、シモベは従って当然。

 つまり、『こう思え』と命じられた以上『どう思うか』など聞くに値しないのだよ。

 君はモモンガ様から直々に、命じられたのではないかね?

 ……愛せ、と」

 

 最後だけ小声でアルベドに言う。

 

「それは……なぜデミウルゴスがそれを知っているの?」

 

「ただの推測だよ。君の態度だけが他と違い、君だけ扱われ方が他と違うからね。

 とくに重要なことは順番だ。

 モモンガ様は『誰が適任か』を、今お確かめになった。

 他の至高の御方々が去ってしまって淋しいからというのなら、おそらく今回の返答で私が選ばれるだろう。これは単に適性の問題だから、良いも悪いもない。

 しかし君は、その適性を確認される前に命令をいただいた。つまり『淋しいから』ではないということ。

 アルベド。君が受けた命令は特別なものだよ」

 

「特別……くふふふ……!」

 

「ひとつアドバイスをしておくがね、君は自分から迫るべきではない」

 

「どういうこと?」

 

 ぎゅるん、と恐ろしい速さで振り向いた。

 アルベド、君の首は捻挫とかしないのか? しないのだろうな。守護者最強の防御力だし。

 

「モモンガ様が他の至高の御方々をどのようにまとめてこられたか、思い出してみたまえ。

 どなたかが『あれをやろう。一緒に行こう』とぐいぐい迫ったとき、モモンガ様はどのような反応だったか」

 

 ノリノリで賛同することは稀で、流されたり押し切られたり、あるいは慈悲や友情ゆえに付き合ったり……そういう事が多かったはずだ。

 モモンガ様はいわゆるパリピではなく、どちらかといえば陰キャである。

 

「……確かに。

 え……? でも、モモンガ様ならお許しになるのでは……いえ、そこに甘えるのはシモベとして……でも……」

 

「愛情というのは相手が望むことを察して与えるものだよ」

 

「悪魔のあなたが愛情を説くの?」

 

 ひどく訝しげな目を向けられた。

 無理もない。

 

「ははは……! 悪魔にだって愛情は分かるとも。なにしろ察して与えるというのは愛情が必要なんだ。悪魔である私は、その点を逆に利用して『最も望まないことを与える』のだよ。

 だから、やや厳しい言い方をすれば『このくらいならいいか』と仕方なく付き合ってくれるというのは、友情であって愛情ではない。

 君に与えられた命令は、いわゆるセフレではないのだろう?

 ぐいぐい迫るよりは、さりげなく支えるようなアピールのほうが良いだろうね。

 いや、サキュバスである君には釈迦に説法というものか。

 とにかくモモンガ様がお喜びになるアプローチの方法を考えるべきだと思うよ」

 

「……貴重な意見をありがとう、デミウルゴス」

 

「いいとも。

 だが、いつまでも考えている時間はない。

 さあ、アルベド。命令をくれないかね」

 

 てきぱきと指示を始めたアルベド。

 セバスはモモンガ様を追った。

 

 

 ◇

 

 

 その夜、モモンガ様は単独で外へ行こうとされた。

 原作の、例のイベントだ。

 

「宝石箱みたいだ」

 

「お望みとあらばナザリック全軍を率いて手に入れてまいります」

 

「いまだこの世界にどのような存在がいるかも分からない段階でか?

 しかし、そうだな……世界征服なんて、面白いかもしれないな」

 

 面白いかもしれないな――モモンガ様の言葉で、最も重要なのはこの部分だった。

 世界征服でなくても良いのだ。

 面白いことをしたい。

 つまりそれは、ギルメンといっしょに楽しい時間を過ごしたいという事にほかならない。

 

「仰る通り、この世界には他に転移してきた誰かが居るかもしれず、またナザリックが所有していないワールドアイテムさえも存在する可能性があります。

 従って行動は慎重に、大義名分が立つ形で……というのが良策かと」

 

「ワールドアイテム……」

 

 モモンガ様は考え込んだ。

 ここでワールドアイテムを警戒してもらえば、シャルティア洗脳イベントは防げるかもしれない。

 欲を言えば、そのときに斥候能力に優れたシモベを同行させるように進言したいところだが、あまり言いすぎるのも怪しまれてしまう。

 ……いや、言い方を工夫すれば。

 

「冒険をいたしましょう。

 まずは目立たぬシモベを……低レベルのスケルトンや、恐怖公の眷属などが良いでしょう。各地に派遣して、状況を調べ、できれば現地の生物にとって脅威になる存在を発見し、これを討伐してみせるという形が望ましいでしょう。

 そういう存在が見つからない場合は、『養殖の冒険』になってしまいますが、調査のために送り込んだスケルトンなどを『それを討伐するために追ってきた』という形で介入するのはいかがでしょうか」

 

「ふむ……」

 

「世界征服は平和裏におこなうのが最上かと。

 もし他の至高の御方々が見つかった場合、お望みに合わせてどのような方向にでも転換できます。

 敵対的に侵略していく形をとりますと、それをお望みにならない至高の御方がおられた場合、方針転換が困難ですが、その逆は容易です。

 冒険をいたしましょう。

 現地の文化を味わい、ナザリックのほうが上だと分かるものがあれば、経済的に、あるいは文化的に、武力を伴わずに侵略していくことができます」

 

「確かにな」

 

 

 ◇

 

 

 カルネ村での一悶着を終えて帰還されたモモンガ様は、アインズ様と名を変えられ、ナザリックを普遍の伝説にせよと大号令を出された。

 ここでデミウルゴスの発言が、その後のシモベたちの行動目標になる。

 だが俺は世界征服の話をしないことにした。

 

「普遍の伝説にせよ……このご命令が意味するところ、どういう結果だと思うね?」

 

「デミウルゴス。考えがあるなら言ってちょうだい」

 

 アルベドが答えを急ぐ。

 モモンガ様へのアプローチを抑えろと言ったから、代わりにこういう所が積極的になってしまったのだろうか。

 まあ、話が早いのは望むところだ。

 

「あらゆる方法で支配領域を広げるというのはモモンガ様……失礼、アインズ様が仰った通りだ。

 しかし国を興して帝国主義的に征服していこうというのでは、支配下に置いた現地人どもを我々がわざわざ手をかけて管理してやらねばならない。

 なぜ我ら栄光あるナザリックの者が、外の下等生物などに手をかけ管理してやらねばならないのかね?」

 

 これはNPCたちのナザリック至上主義に合わせた言い方だ。

 わざと名前を間違えたのは、アルベドに対する配慮である。

 

「では、どうするのが良いんでありんすか?」

 

「シャルティア。君なら血を吸った相手を配下にできる。

 そして配下になった者は、君に対して自ら尽くすようになる。

 そうだね?」

 

「多少の教育は必要でありんすが、まあその通りでありんすね」

 

「それを世界規模でやるんだよ」

 

「全員、吸血鬼にしようってことじゃないよね?」

 

「あの……ど、どういう事でしょうか……?」

 

「アウラ、マーレ。君たちは宗教というものを知っているかね?」

 

「ナザリックを宗教に……アインズ様を神として現地人どもに崇めさせるということ?」

 

「アルベド。まさにその通りだよ。

 これには3つの利点がある」

 

 俺にとっては4つだが、これはNPCたちには言えない。

 それは、ナザリックを宗教団体にすることで、デミウルゴスの仕事量を減らせるということ。

 本物と違って憑依した俺はそんなに頭が良くないし、ワーカホリックでもない。

 アインズ様がデミウルゴス(本物)の深読みを利用して「よくぞ私の考えを見抜いたな」とか言うのと同じように、俺はアルベドの横取り癖を利用する。

 

「そうね。

 普遍の伝説にせよとのご命令に対して、文字通り伝説にしてしまえば良いということ。

 ナザリックを宗教にするなら、現地人に手をかけて管理する必要はないということ。

 お布施などの形で自発的に金銭が集まること」

 

「そう。王権神授説を利用すれば、世界中のあらゆる国家は、アインズ様の承認を受けて王を即位させることになる。アインズ様は各国の王の上に立つ存在であり、アインズ様こそ世界の頂点。これは当然のことだね。

 そして思想を支配することで、現地の人間たちは『自分たちの王に命じられたから』ではなく、1人1人が直接アインズ様の御威光にひれ伏し感謝するようになる。

 そして自分から財産を差し出すようになり、信者が増えるほどに集まる財産も増える。それをエクスチェンジボックスに入れることで、ナザリックの維持費を賄えるようになり、節約のために現在停止しているギミックも動かせるようになってナザリックはますます万全の体制になるというわけさ」

 

 そして布教のためには英雄が必要だ。

 アインズ様に心ゆくまで冒険していただければ、自然とアインズ様が英雄として見られるようになる。

 現地人どもはアンデッドに対して忌避感があるようだから、そのあたりは少し演出や偽装が必要だろうが、ナザリックはそういうのが大得意だというのは原作の通りである。

 

「侵入者ヨ、来イ……ナドト不敬ナ考エヲ抱イテシマッテイタガ、マスマス縁遠クナリソウダナ」

 

 ぶしゅー、と冷気を吐き出してコキュートスが言う。

 

「お役に立つ活躍をしたいと望むのは不敬ではないだろう。

 しかし侵入者を望む必要はないよ。

 布教活動のため、アインズ様には御心のままに冒険していただく。

 そうなれば当然、供回りは必要だろう? 人間相手に布教するなら人間に見える者が供回りをするべきだが、この世界にはコキュートスのほうが適任という種族だって暮らしているかもしれない」

 

 リザードマンの集落とかね。

 

「ナルホド……」

 

 ぶしゅー。

 コキュートスが大興奮だ。

 あんまり期待させると「爺」の妄想に入るみたいにトリップしてしまうかもしれない。

 

「ただし、アインズ様の活躍を目立たせ、神格化されるほど英雄視させるためには、供回りの人数は少ないほうがいい。人数が多かったから勝てた、などと思われたのでは布教活動にならないからね。現地人では不可能な状況を突破する……そう見えるように演出が必要だ」

 

 そこでチラリとアルベドを見る。

 彼女は静かに頷いた。

 アインズ様の警備が薄いというのは守護者達にとって受け入れがたいことだが、少数精鋭でもあらゆる相手に後れは取らないと自負するだけの自信はある。そこに「ほとんど2人きりで出かける」という利点が加われば。

 効果的なタイミングは、他の守護者たちと冒険に出て、そういうことに慣れていただいた後。

 それまでの間にさり気なくアピールしておけば、少しばかり開放的になったとて受け入れていただけるだろう。

 開放的になりすぎるとダメだろうし、さりげないアピールがどこまで我慢できるかも分からないが、それはアルベドが頑張るべきことだ。

 

「練習が必要かもしれないね。

 我々は、現地の人間たちに比べると強すぎる。丁度良い手加減というのは、意外と難しいものだ。

 それにアインズ様の供回りを務めるに当たって、警護に弱点があるようでは話にならない。索敵が得意なもの、探知妨害ができるものなど、火力以外の面でも抜かり無く整えておかないと。

 そのうえで、アインズ様に向けられるべき信仰心が、供回りの守護者に向いてしまった、などという事態は避けなくてはならない」

 

 フラグはしっかりへし折っていく。

 これだけ言っておけば、シャルティアも少しは考えるだろう。洗脳イベントを叩き潰すのだ。

 ザイトルクワエとの戦いで「チーム戦を」と命令されたときに備えて、アインズ様に失望されないための予行練習としても多少の効果を発揮するかもしれない。

 

「それとセバス。君のカルマ値は善良そのもの。

 ナザリックを宗教団体にするという今後の方針からすると、君の性格は非常に好都合だ。

 カルマ値が『悪』に寄っている者や、現地人に対して友好的な振る舞いが苦手な者に、振る舞い方の演技指導をしてもらえないかね?

 救いを求めて集まる子羊たちに向かって『ボウフラごときが気安く声をかけるな』などと言ってしまうようでは、今後のナザリックにとって不利益だ。もちろん犯罪者などはその限りではないがね」

 

 ナーベラルとかね。

 ルクルット? あいつだけの特殊性癖だろ。

 

「承知しました」

 

 さて、こう言っておけば、セバスはツアレのことをすぐに報告するかもしれない。

 お手本の実演として開示する可能性さえあるだろう。

 駆け込み寺的な存在として成立するには、駆け込んできた現地人を保護できるだけの生活基盤が必要だが、アインズ様ご自身がカルネ村を救済なさったので場所はすでに用意されている。あの村は帝国兵に偽装した法国兵によってかなりの人数が虐殺され、人手不足になっているから、駆け込み寺としてちょうどいい。

 

「さて……」

 

 デミウルゴスの仕事……次はスクロールの素材か。

 しかし例の「羊」を使うのは、他の至高の御方がご覧になったときに不快に思われるかもしれない。

 どうせ実行しても低位のスクロールしか作れないのだから、わざわざナザリックで作ることもないだろう。

 八本指だか六腕だかを掌握したら、そっち経由で資金調達させて現地人が作ったスクロールを仕入れるようにすればいい。

 セバスとソリュシャンが丁度そっち系の動きをするから、準備できたら大量に買い集めてもらおう。

 

「あとは良いかな?

 ではアインズ様のご命令を遂行するべく、頑張ろうじゃないか」

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