そういえば昨日はカスポンドについて全く触れていませんでした。
とはいえ、原作から特に改変するところがありませんね。死んでないので妹カルカに王位を任せて貴族として生きています。
政治家としては「きれい」すぎるカルカに適度な「よごれ」を提案できる相談役といったところですね。カリスマの妹と、実務の兄。適切な両輪かと思います。カスポンドくんシゴデキ。
さて、今回はもう少しアインズ様を喜ばせてみましょうか。
先触れのメッセンジャーモンスターって、てっきり「レギオン」という種族名だと思っていました。特に名前ないんですね。
帝国がワーカーを雇って、ナザリック地下大墳墓に差し向ける。
その作戦は実行された。
しかし「神の居城」として演出するため、少しばかり工夫する。
玉座の間に続く扉には、るし★ふぁー様がデザインなさった天使と悪魔のレリーフがある。出来栄えが非常に良く、原作でもジルクニフがこれに感動する描写がある。
そのオマージュで、2体のモンスターを配置する。
まず天使として、門番の智天使。レベル80台。キリスト教では第2位の天使だ。ニグンが奥の手として威光の主天使を召喚し、最高位天使、魔神をも倒した、と自慢していたが、主天使はキリスト教では第4位の存在なのでレベルは70台かもっと低いだろう。つまり智天使は現地人にとって「天使の一種らしいが見たこともない存在」ということになる。
もう1体は奈落の支配者。レベル80。web版でデミウルゴスの配下として登場している。レベルで合わせた悪魔系のモンスターだ。こちらも現地人には「悪魔の一種らしいが見たこともない存在」ということになるだろう。
で、この2体は、要するに門番だ。仁王像と同じである。その奥にいる主の代理として、リザードマンの集落に宣戦布告したときのメッセンジャーモンスターを配置。
「――聞け、我は偉大なる御方に仕えしもの。先触れとして来た。
このナザリック地下大墳墓とその主たる神アインズ・ウール・ゴウン様は、あらゆる生物と環境の保護を良しとされるが、まだ生きているお前たちがここへ来ることは歓迎しない。
なぜなら、ここは神の居城にして死者の安寧を約束する場所。まだ生きている者たちの来るところではない。人の子らよ、生きよ! お前達がここへ来るべき時は、精一杯生きた後である。速やかに帰れ。ここへ来ることを急ぐな。いつか命尽きたときは、お前たちもここへ来ることになるのだから」
言うだけ言って、さっさと引っ込める。
ちょっとためらったワーカーたちは、しかし結局、進むことにした。
◇
天武。
エルヤーはハムスケと戦うことになった。
「ぐぼあ!?」
尻尾の一撃で吹っ飛ばされる。
エルヤーにとってハムスケは格上の強敵だ。
ハムスケは、フル装備ガゼフより弱いが、ノーマルガゼフより強い。
そしてエルヤーはガゼフと互角を自称しているが、原作ではここでハムスケに殺された。つまりノーマルガゼフと同じかそれ以下の強さということ。
ハムスケにとって、無視して無防備に攻撃させるほど弱くはないが勝てる相手、ということになるだろう。
「うーん、また失敗でござる。難しいでござるなー、武技は」
ちょうどいい練習相手。
そんな認識で挑んだハムスケは、武技・斬撃の練習中だ。
基本的に戦闘=命の奪い合いという野生動物生活だったハムスケは、自然体がすでに命懸けだ。ゆえに油断はないが、緊迫感もなかった。だらけない程度の緊張感は必要だが、体がこわばったり思考に柔軟性がなくなったりするほどの緊張は生存率を下げるだけだと体験的あるいは本能的に理解している。ガゼフあたりが見たら「人間だったらそういうのは一流の戦士にだけ備わる精神状態だ」と賛辞を送るだろう。
一方、相手の立場になって考える能力をもたない上に、精神的に極めて未熟なエルヤーからすると、その態度はナメているように感じられた。
エルヤーという男は、真剣勝負に価値を感じるような武人タイプではなく、「自分のほうが上だ」と感じて喜ぶことが常態化しており、奴隷に対する態度がアレなのもその一環である。戦うこと・活躍することは「周囲に自分を認めさせる手段」に過ぎない。
そして「自分のほうが上」という前提に立つので、対戦相手は恐怖・緊張・警戒といった色を浮かべているべきであり、それが見られないということは「上だ」と思われていないということ。
ゆえに「ナメられた」と感じ、癇癪を起こす。
「この私を武技の練習台に? ふざけやがって!
お前たち、はやく魔法をよこせ! グズグズするな!」
野良犬ほどにでも精神が成熟していたなら、ここが引き際だと理解して逃げ出していただろう。だがエルヤーは、そうではなかった。
奴隷のエルフに命じて回復魔法と強化魔法を受ける。
これで自分はフル装備ガゼフ並みだ、とでも思っているのだろう。だがおそらくは支援魔法を受けた状態でやっとノーマルガゼフ程度なのだ。
なぜなら原作では、それでも負けた。
エルヤーにとって残念なことに、それは今回も変わらない。
「おおっ、今のは出来たのではござらんか?」
尻尾の一撃を受けて、エルヤーの首は胴体から切り離された。
武技・斬撃の発動である。
「うむ、出来ていたな。今のは確かに武技・斬撃だ」
「ついに修得できたでござるよ~。ザリュース殿の指導のおかげでござる」
「オアアア(殺しちゃダメって言われてたのに)」
「ああっ!? し、しまったでござる! デスナイトくん、どうしようでござるよ……」
どうしようって言われてもどうしようも出来ねえよ。
デスナイトくんは困った顔で佇んだ。
「ん……? あれはエルフなりの弔い方なのでござろうか?」
げしっ、げしっ、げしっ……。
……ふふふ……。
仄暗い笑みが3つ、首から上を失ったエルヤーを見下ろしていた。
◇
ヘビーマッシャー。
リーダーのグリンガムは、メッセンジャーモンスターらが去ったあと、顔を見合わせた。
「汝ら、今の3体に勝てると思うか?」
「無理だろ」
「1体でもきついんじゃないか?」
「きついどころか、手も足も出ないだろうな」
仲間たちの意見にグリンガムはうなずく。
しかしながら現時点では「じゃあ帰ろう」とはならない。
生活の糧として活動しているのだから、赤字で終わるわけにはいかない。しかも冒険者ギルドという後ろ盾がないワーカーは、自分自身の信用だけで仕事を探さねばならないのだ。
調査を依頼したら中にも入らないうちに「ヤバそうだから引き上げた」というのでは、今後の依頼まで失ってしまいかねない。「見たこともないモンスターが3体いた」「アンデッドがはっきりした言葉を発して警告してきた」なんて、報告したところで前代未聞すぎる上に詳細不明すぎて信じてもらえないだろう。
なんというモンスターで、どれほどの強さなのか、どういう攻撃をするのか、どれだけの攻撃なら通用するか……せめてひと当たりして強さの片鱗でも確かめた上でなければ、調査報告として成り立たない。
「神の居城か……そうと教えられて無視するわけにもいくまい。それが真実であろうとなかろうとな」
王国の農家の三男に生まれたグリンガム。
古風な言い回しは、本人なりに「学がありそうな喋り方」だと思っている。
無学な連中だとナメられないようにするための演技だ。
そんなグリンガムだからこその戦略――グリンガムは大きく息を吸い込み、声を張り上げた。
「墳墓の主にご挨拶申し上げる!
神の居城に踏み込む無礼をお許し願いたい。先程の方々は門番のようなものとお見受けするが、我らはこの地の調査を依頼された身。よく分からぬまま言われた通りに引き上げたとあっては、依頼主も再調査に動くであろう。
何度も訪れて神の手を煩わせる事のないように、我らにでも理解できるような調査結果をいただきたい。さすれば依頼主もしつこく訪問する無礼は控えるであろう。ゆえに少しばかり踏み込ませていただく。どうか偉大なる神の慈悲を、我らに与え給え」
そして彼らは地下へと踏み込んだ。
財宝を見つけても手を付けず、鑑定したりスケッチしたりして記録だけを取る。今回は依頼主からの報酬だけで我慢しよう。命を失うよりはマシだ。
それは真摯な学術調査の様相を呈し、ナザリック的に大正解の方法だった。メリットを提示して損害を与えないように、新たな損害を防ぐように立ち回る。
もし財宝だけでなく建造物に対する学術的調査をした上で、それを称賛していたら、シズが1円玉シールを貼るか検討するレベルだ。むさいおっさんのグリンガムは可愛くないので貼らないだろうけど。
迎撃に出たモンスターからも相当優しく手加減してもらう事ができた。緊迫した場面はあったものの、終わってみれば無傷で全員無事。アイテムの記録を取っている間は攻撃を受けなかったほどである。
「人の子らよ、『探検ごっこ』はそのくらいにしてはどうだ?
他人の家をそうウロチョロするものではない。
これをやるから、もう帰りなさい」
とユグドラシル金貨を1人1枚ずつ土産に持たされ、丁寧に見送られて生還した。
なおユグドラシル金貨は王国金貨とは異なり、中身まで完全な純金である。そして金貨の価値は、素材そのものの価値で決まる。王国や帝国の金貨に比べて、その価値はおよそ2倍だった。
日本円にすれば約20万円と推測される。飴玉みたいに人数分与えるような代物ではない。
彼らがその事に気づいて驚くのは、もう少し先である。
◇
地下に入らなかった「竜狩り」は、地上でナザリックオールドガーダーと戦闘になり、殺さないように手加減された結果、かなり粘り強く戦った。
しかし最終的に疲れて諦め、帰ることにした。
「は~、しんとい。寄る年波には勝てんわい」
「老公……」
「よし、帰るそ。これ以上粘っても無駄しゃ」
「え?」
「進めもしない墳墓なと、いくら挑んても得るものなとありゃせんわい」
リーダーのパルパトラ・オグリオンは、80歳を超える老人で、利益を得る機会を失っても仲間を失ったことはないというのを誇りにしている。引き際は間違えない。
ちなみに「墓地でメイドってセンスを疑うな」と言うはずだった人物は、最初に「神の居城だ」という情報を得たおかげで、その発言をしなかった。プレアデスの怒りを買わずに済んだため見逃されたのである。
◇
そしてフォーサイトは、第6階層の闘技場に招かれた。
仲間のアルシェが借金まみれのため、彼らはここまでの道中で見つけた財宝を回収しており、ナザリック的には「泥棒」扱いで今回の侵入者のうち最もヘイトを買っている。
「この不愉快な奴らも殺しはしないでやる……だが、せめて糧にしてやろう。与える財宝と同じくらいは、こちらもメリットを受けて良いはずだ」
と静かにキレ散らかしたアインズ様の意向で、原作と同じように、アインズ様は経験値増加の首輪を装備して、軽装戦士の格好で登場した。いわずもがな近接戦闘の訓練をするためだ。
ついでにボコってやればいくらかスッキリするだろうし、もし殺してしまったとしても、できるだけの努力はしたと言い訳が立つ。強盗が来たので追い払おうとしただけ(正当性)。精一杯手加減するように攻撃力の低い軽装戦士の格好で、能力低下のデバフ効果まである首輪を装備した(手加減)。近接戦闘は本職ではなく訓練中だった(手加減+情状酌量)。
原作と同じ嘘をつくだろうフォーサイトに対して、殺さずに追い返すだけにとどめるというのはアインズ様にかなり我慢を強いる。今回の装備と理論武装は、アインズ様がやりすぎないように抑えていただくためのギリギリのラインだった。
そして両者は対峙する。
「まずは謝罪をさせていただきたい。アインズ・ウール……殿」
「アインズ・ウール・ゴウンだ」
「失礼。アインズ・ウール・ゴウン殿。
この墳墓にあなたに無断で入り込んだことは、謝罪いたします」
このセリフに対して、原作でのアインズ様は次のように答える。
「お前たちはアレか? 家の食べ物に蛆が湧いたとき、殺すのではなく外に優しく解放するような事をするのか?
いや、蛆は産み付けた親蠅が悪いと言えなくもないが、お前たちは違う。金銭欲というくだらない欲望を満たすために、この墳墓を襲撃した」
これは人間に対する見方がナーベラルと同じようなレベルになってしまったから出た表現といえよう。
だが、もう少し人間的な表現にしたところで、実質的な内容はあまり変わらない。
「お前たちはアレか? 自分の家に土足で入り込んだ強盗を、殺すのではなく外に優しく解放するような事をするのか?
いや、力が足りず追い払うだけに終わることもあるだろうが、それでは安心して住み続けられない。お前たちのように金銭欲というくだらない欲望を満たすために襲撃してくる輩が生きている限りはな」
「もし、許可があったとしたら?」
「くだらん……あまりにもくだらん……! 完全なブラフだ……!」
ただの嘘ならブチギレ案件だ。しかし本当ならば、とアインズ様はためらう。
ユグドラシル終了と同時に転移したのだ。
その瞬間にログインしていなかったギルメンが、同じように転移しているとは考えにくい。
しかし「あの瞬間にログインしていれば同じように転移できた」という保証もないのだ。転移の原因や条件はわからないのだから。だからこそ、その逆――ログインしていなくても転移してきている可能性は否定できない。
「真実だとしたら?」
「いいや……いいや、ブラフだ。
念のために聞いてやろう。誰が許可を出した?」
「あなたがご存知じゃないんですか、彼らを」
彼「ら」???
「彼ら? それはどんな外見だ? 言ってみろ」
「……キラキラ……していましたね」
テカテカじゃないのか???
「キラキラ……ふむ……それで? どんな事を言っていた?
お前たちが本当に仲間たちの許可を受けたのならば、無事は保証される。
お前に会った者は、何と言っていたか聞かせろ」
「『困っている人がいたら助けるのは当たり前』と言っていましたね」
「なん……だと……?」
それは、あの人の……!
「実は私の仲間、こちらのアルシェ・イーブ・リイル・フルトは、親の浪費癖がひどいために借金まみれでして。
このままでは幼い妹たちまで売り飛ばされかねないのです。
金銭欲をくだらないと仰りましたが、それは仲間とその家族を守るため。
キラキラした鎧姿の方は『ナザリック地下大墳墓を探しなさい』と。そこなら十分な財宝があると教えてくれました。ここがそうなのですよね?
キラキラした長い爪の黒い方には『欲をかきすぎるな』とも言われましたが、なるほど、こういう事でしたか」
「名前は!? 彼らの名前は聞いているか!?」
「きちんと名乗っては、いただけませんでした。
知らないほうが良いと。
しかし『たっち』『ウルベルトサン』と呼び合っていましたね」
「よーし、中止! 作戦中止だ! お前達、彼らを歓迎しろ!
おい、君たち、詳しく聞かせてくれ。どこで会った? いつのことだ? 他に誰が? 全部で何人いた? 彼らは今どこにいるんだ?」
◇
「本当にやるんですか、ウルベルトさん」
「やらいでか。自分の贅沢のために子供を売る親なんて、存在していいはずがない」
「はぁ……これは止められないか。
先に私が話してみますから、それで反省するようなら我慢してください。いいですね?」
「……わかった。
今までの分をぶん殴ってやりたいが、本当に反省するなら様子を見てやろう。
だけどな、子供を売ろうなんて性根の腐った奴が、そう簡単に反省すると思うか?
反省したフリに騙されるようなら、お前も殴るからな」
「だからって殺そうとするのはダメでしょう」
「子供が親を『自分の手で殺してやりたい』と思うようになるよりマシだ」
「それは……! しかし……!
いえ……そうか……そのために名乗らなかったんですね?」
「恨む相手がはっきり分からないままなら、モヤモヤしながらでも前を向いて生きるしかないからな」
「はっきり分かってしまうと復讐に生きてしまうかもしれない、と……。
分かりますけど……分かりますけども……!
あなたのその覚悟はもう少し優しい方向にならないんですか」
「何言ってんだ? これ以上ないほど優しいだろ」
「ぐぬぬぬ……」
このあと彼らが何をしたのかは、誰も知らない。
しかしフルト家が借金から解放されたことだけは確かだ。
◇
「迎えに行くぞ!」
「お待ちください。行き違いになりかねません。待つべきです。
それにいずれお戻りになるはず。必要なら先にお戻りになってアインズ様に協力を求めるでしょう。そうなさらないという事は、少数で隠密になさりたい事があるのやも。邪魔してはいけません。お二方も再会を心待ちにしていらっしゃるでしょうに、台無しになさるおつもりですか?」
「ぐぬぬぬ……!」
「アルベド、抱きしめて上げなさい。こう、顔を胸に埋める感じで」ヒソヒソ
「アインズ様、どうか落ち着いてください。
ほんの少し再会するのが先に延びるだけです」むにゅっ
「……う……むむむ……」
まだ合流はしません。
「エルヤー? 誰それ? ああ、あの事故死1の報告にあったやつか」
「殿、殺すなとのご命令を守れず申し訳ないでござるよ」
「そんな事より武技は修得できたのか?」
愛情の対義語は憎悪ではない。無関心である。
エルヤー涙目。
誤字報告をいただきました。
佐藤東沙様
いつもありがとうございます。熱心に読んでいただいて嬉しい限りです。
誤字報告をいただきました。
tino_ue 様
ありがとうございます。初めてではありませんね。助かっております。
誤字報告をいただきました。
トッシュ様
しかしながら、ご指摘のセリフは、これを言ったキャラクターが「濁点を発音できない」というのが原作通りの設定なのです。80歳を超える老人で、前歯がないせいで、らしいです。
作者「目ん玉」に石を投げますか?
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めっちゃ投げる!ふざけんな!
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ちょっと1発投げさせろ
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う~ん……
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いやいや、投げない投げない
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チョコラータする。よーしよしよしよし