暴力的編集ですが、短編だから許されるはず。
「うぼぁー……」
第9階層、バー。
キノコ頭の副料理長がやっている。
シャルティアはそこで飲んだくれていた。
「邪魔するよ、ピッキー」
「いらっしゃいませ、デミウルゴス様」
「おや、シャルティアじゃないか」
「デミウルゴス……」
ジトッ、とシャルティアが恨めしそうな目を向けてきた。
「おんし、アルベドの後押しをしてアインズ様とうまいことくっつけなんしたくせに、わらわの後押しはしてくれんせんでありんすか?」
「ああ……その事かね」
「何でありんす? 想定済みです、みたいな顔して」
「想定済みですから」
「想定済みでありんすか」
「ええ。想定済みです」
「…………」
「…………」
「じゃあ何か後押ししてくれんせんの!? なんでそこで無言でありんす!?」
ガクガクガク!
やめてくれたまえ。首がもげる。君、1対1では守護者最強なの忘れてないかね? こっちは直接戦闘では守護者最弱だよ。
「バーではお静かに」
ピッキーが釘を差した。
「まあ、そうだね」
ピッキーを一瞥して、シャルティアに死線を向けて言う。
どっちに同意したとも取れるように。
両方に同意したんだが。
「確認しておきたいんだが、シャルティア、君はアインズ様の后になりたいのかね?」
「当然でありんす」
「ペロロンチーノ様の后になるよりも?」
「う……!? そ、それは……」
「両方の后に……なんて考えるのは、やめておきたまえ。
おそらくアインズ様は、そういう態度をお好みにならないだろうからね」
「アインズ様が? どうしてでありんす?
至高の御方に后が1人だけなんて、おかしいじゃありんせんの?」
「おそらくアインズ様は独占欲が強いタイプだ。
役にも立たないスクロールをコレクションなさるし、ガゼフとかの弱者でもレアだからと集めたがるご様子。
それにパンドラズ・アクターだ。他の至高の御方々の姿と能力をコピーしている。あれもコレクションの一環といえるだろう」
「アインズ様に独占されたいと思われるなんて、ご褒美でありんす。でへへへ……」
「ペロロンチーノ様がお戻りになったら、どちらか一方を選ばなくてはならないという事だよ?
アインズ様の后になれば独占されてペロロンチーノ様には渡さないと仰るだろうし、ペロロンチーノ様の后になるのならアインズ様に独占されるわけにはいかないからね」
「あー……! それは悩ましいでありんす……!」
「それに、アインズ様の后になるなら第2妃だ。すでにアルベドといい感じになっておられるからね。
一方で、ペロロンチーノ様なら第1妃……正妃を狙えるだろう。シャルティアの在り方はペロロンチーノ様の趣味全開とアインズ様も仰っていただろう?」
「ああ、はいはい。前にそう仰っていんした。
となると、ペロロンチーノ様に狙いを定めるほうが、勝率も高くて、ライバルも居ないという事に……」
「そういう事だよ、シャルティア。
たっち・みー様とウルベルト様がどうやらこの世界に転移しておられるようだから、いずれペロロンチーノ様も見つかる可能性は高いと言える。
よく考えて行動するんだね」
「うー……! でもでも、わらわは死体愛好癖をペロロンチーノ様から与えられていんす。好みだけで言えばアンデッドであるアインズ様のほうが……いや、でも創造主であるペロロンチーノ様も捨てがたい……あー、悩ましいでありんす……!」
「はぁ~……君は本当に恋多き女だね」
◇
数年後の話。
ランポッサが退位または崩御して、ザナックが即位することになった。
アインズ様は周辺国に神として認識され、王権神授説を使ってザナックに王位を授けることに。
そのザナックの戴冠式を前に、アインズ様とザナックが打ち合わせを行う。
そして、打ち合わせの合間に、ザナックは不安を口にした。
「君主として何を求めるべきだろうか? と思いまして」
父ランポッサは国家の安定を求めたが、日和見すぎてうまく行かなかった。
では強硬な姿勢を取れば良かったのだろうか? 兄バルブロを見れば、それではうまく行かないだろうと思える。
かといって妹ラナーを見ると、あれほどの知恵は自分には無い。
そして現状、幸いにして王国は安定した。貴族派閥が消滅し、バルブロが消息不明からの死亡扱いで、国民に人気で異常に知恵が回るラナーは即位する気がない。支持基盤としても血統としても覇権争いとしても、何も問題はない。おまけに八本指が非常に大人しくなった上、他の犯罪勢力が台頭する事態も起きていない。
王国は安定した。
ゆえに次の王として何をするべきか、何を求めるべきか、ザナックは悩んでいた。取り組むべき課題が見当たらないのだ。
「自国民の幸せを。私ならそうするな」
「アインズ様が王国を統治するなら、それはどのように?」
「デミウルゴスに相談しまくり、パンドラに愚痴を聞かせ、アルベドに甘えるだろう。
情けない神だと思うか? だが人間は、そうやって周りを頼ってこそ盤石となる。
そうして最後には、皆にいい所を見せようと何かしら頑張るに違いないのだ。
君にはラナーやレエブン侯がいるだろう? あとは后を迎えると良いのではないかね? そういえば聖王国に3人フリーの女性が……竜王国にも1人いたな。それとも蒼の薔薇の誰かとか? ああ、でも、とりあえず痩せたほうが良いと思うぞ」
ぽよん、としたザナックの腹を見て、アインズ様は言う。
「アインズ様は痩せすぎでは……?」
ザナック王子は肩をすくめて苦笑した。
ぽっちゃり系が痩せようと思って痩せられるなら苦労はないのだ。
「ははは、骨しかないからな。
うむ、愉快なやつだな君は。そのトーク力を女性に使えばよかろうに。ああ、しかし、結婚したとたんに付き合いが悪くなるなんてことはやめてくれよ?
また話そう」
「ありがとうございました」
……意外と普通の人だな。
これなら自分の悩みも理解してもらえるのでは。
その後ザナックは、ラナーとレエブン侯のほかにアインズ様にも相談するようになった。
◇
おまけ。
この世界線のガゼフは、たぶんこう。
「ガゼフ。王が交代したところで、私のもとへ来ないかね?」
「申し訳ない。
誘ってくれることは嬉しく思うし、恩もたくさん受けたが、私は王国で新たな王を支えていきたい」
「残念だ」
「何より、あなたの下についたのでは、アインズ『殿』とは呼べなくなる。
勝手ながら友人だと思っているアインズ殿に対して、上下の関係ができるのは遠慮したいのだ」
「ははははは! それは確かに。ああ、そうだ。たしかにそうだ。まさにその通りだとも。
私もガゼフに『様』とは呼ばれたくないな。
では、これからも良い付き合いを頼む……友よ」
◇
「デートに行きたいわ」
ある日、アルベドが唐突に言った。
なお、この場にいるのはアルベドと俺だけだ。
「デミウルゴス。デートに行きたいの」
「そうかね」
「デミウルゴス。私はデートに行きたいのよ」
「うん、3度も言わなくても、もう分かったよ」
「じゃあデートに行かせてもらえるかしら?」
「私で良ければ付き合うよ」
「殺すわよ?」
「アインズ様と行きたいならアインズ様をお誘いすればいいじゃないかね」
「今は忙しいからダメって仰るのよ!
なんとかしてよ、デミえもん!」
「誰がデミえもんですか」
「なんとかしてよぉ~! デートに行きたいのよぅ!」
「はぁ~……アインズ様のスケジュール調整ならセバスに言えば良いでしょう?
そういうのは執事の仕事ではないかね?」
「そうだけどぉ~。デミえもんのほうが何とかしてくれそうなんですもの~」
「だからデミえもんはやめなさいと……。
それにしても、ついに私へそういう事を言うようになりましたか」
「だって、あなたを通すほうが話が早いわ」
「はぁ〜……お役に立てて何よりです」
「そう。ならどうしてため息を? 何とかしてよ」
「あとでセバスに刺されそうです」
「執事なのに主人の予定とか把握してないものね。ぷぷぷ」
「把握してますよ? ちゃんと情報共有してますからね。そのはずです」
「あらそうなの? まあ、どっちでもいいわ。じゃあよろしくね」
やれやれだ。
俺は諦めてアインズ様のスケジュール調整と説得に向かった。
そして――
「私はアインズ様の参謀であって執事でないのですがね……」
事後バーでセバスに愚痴る。
このぐらいは、させてほしいものだ。
「自慢ですか?」
「違うから、その恨めしそうな目はやめてくれたまえ」
◇
ソリュシャンは嗜虐心を満たす場面がない。
「褒美を与えよう。何か望むものがあれば言ってみよ」
「では生きた人間を幾人か。可能であれば無垢な子供ですと幸いです」
「あー……それは宗教団体として『善』のイメージで売り出しているナザリックには不可能な願いに思えるな」
「申し訳――」
「待て待て、こういう時のデミえもんだ」
「デミえもん!?」
「あっ……」
アインズ様がサッと視線をそらした。
そらした先で視線がアルベドと絡み合い、急にピンク色の空気になる。
……なるほど。そういう事ですか。
デミえもんはやめたまえと言ったのに、アルベドのやつ!
「いや……ンンッ!
デミウルゴス。知恵を貸せ」
「はい、では……」
シモベに褒美を与える場面で助言する権利。
俺はこれを褒美として獲得している。
……そのはずなのに、なんか最近アインズ様のほうから助言を求められているような。
褒美とは……。
いやまあ、シモベとしては最高のご褒美ですけども。
「まず確認だが、ソリュシャンが欲しいのはニグレドの守備範囲よりも少し上で間違いないかね?
わけもわからずグチャグチャに混乱しながら苦痛に泣き叫ぶ姿を楽しみたいというわけで、具体的にはまともに自我がある2歳以上から、5歳くらいまでの『世の中は理不尽で意のままにはならない』ということを知らない子供が最良だと思うが、どうだろう?」
「はい、デミウルゴス様。その認識で間違いございません」
「うん。しかし現在のナザリックでは、そのような人間を適当にさらってきて与えるのは方針と合わない。
犯罪者や死刑囚ですら、苦しめて殺すというのは至高の御方々がお戻りになったとき、お叱りを受ける可能性が高いと思われる。
ここまでは良いかね?」
「はい。勝手なことを申しまして申し訳ありません」
「いやいや、君は『そうあれ』と創られているのだから、何も悪いことはないとも。
そして君の素晴らしいところは、そのような攻撃性を持ちながらも、完璧に制御し我慢できるところだ。その攻撃性と自制心のバランス、そこが最高に素晴らしい。
そうでございましょう、アインズ様?」
「うむ。ソリュシャンに苦労させられた記憶は1度もないな」
思い出すように斜め上を見上げて、アインズ様は片手を差し出した。
そして指を折り始める。
「ナーベラルのように暴言や機密漏洩をしないし」
「ぐっ……!?」
「セバスのように勝手に人間を拾ってくることもないし」
「ぐはっ……!?」
「アルベドやシャルティアのように、むやみに迫ってくることもないし」
「「ぎゃふん……!?」」
「ルプスレギナのように任務を正しく理解していないという事もないし」
「ぐげらばっ……!?」
「パンドラみたいに変な癖もないし」
「変!?」
「コキュートスは……まあ、そういう姿だから仕方ないとして」
「オソレイリマス」
「うむ……アウラやマーレと同じく、部下としては非常に使いやすいな」
「えへへ……」「わはぁ……!」
「過分なお言葉をいただき、身に余る光栄ですわ」
「それで、デミウルゴス。
そんなソリュシャンの性質を、どう活かすというのだ?」
「はい、アインズ様。
ソリュシャンがなぜそのような精神性を与えられているか。
そして、それとは正反対になるニグレドやペストーニャといったシモベが存在するのはなぜか。
それは多様性だとか二律背反だとかいう事ではなく、1つの目的に向かっている複数の要素だからという事ではないでしょうか」
「ほう……?」
「どういう事でしょうか、デミウルゴス様?
プレアデスでないシモベと組むことを想定されていた、と……?」
「あくまで例外的な場面としての想定だろう。
しかし、おそらくは『組み合わせを変えて使う』というのは想定されていた事だ。プレアデスとプレイアデスのようにね。
ニグレドの対象年令は2歳まで。3歳になるととたんに興味を失う。
これは『上限』ばかりが注目されがちだが『まだ生まれていない胎児』は対象外という事も忘れてはならない」
「デミウルゴス、それは――」
「はい、アインズ様。
私はソリュシャンに治療院を任せるのが適切かと」
「治療院……」
「そうとも、ソリュシャン。教会の機能の1つとして治癒魔法を有料で施すというのがあっただろう? あれの拡張版だよ。
世の中には、望まない妊娠というものがある。強姦被害の結果はもちろん、酔った勢いなどで一夜の過ちが命中してしまったとか、交際中は良い人だったのに結婚したとたんに豹変したので別れたいとか、あるいは生きるために娼婦になった女性たちが客との間にデキてしまったという事もあるわけだね」
「あ……」
「さらに子供を含む老若男女すべてに言えることだが、人間どもはレベルが低く、病気耐性も高くない。様々な病気にかかって、外科的な『除去』が必要になる場合があるわけだよ。
そうした場合に、嗜虐趣味を持ちながら完璧に自制できる君はまったく冷静に『処置』ができる。患者に対して一切同情心を抱かず、泣こうが叫ぼうが治すのに必要なだけの処置をためらいも間違いもなく施せるというのは、医者として極めて有能だ」
「あ、あ……!」
「そして、その傷口はペストーニャが治癒できる。
また患者の捜索と発見はニグレドが得意だ。
唯一の懸念点は、患者が君たちのもとへ来る移動手段だが、そこはアインズ様がソウルイーターに馬車を引かせるなどして、いくらでも対応可能というわけだよ」
「なんという……」
「やや拡大解釈だが胎児もまた『無垢な子供』といえるし、君の好みの年齢層にある子供にも『処置』が必要な者は現れるだろう。
しかもこれは、やればやるほどアインズ様のお役に立てる。名声を高め、いくらか金銭も稼ぐことになる。世界でただ1人、ソリュシャンにしか出来ない処置となれば、押し寄せる患者の数は膨大だろう。つまりはそれだけお役に立てるということ。
どうだろう? こんなところで我慢してくれないかね?」
「我慢など、とんでもない。
デミウルゴス様のお知恵と導きに、深く感謝申し上げます」
ソリュシャンからキラキラした目で見られた。
やめてくれ、仕事が増える。
これがシモベから一身に忠誠を受けるアインズ様のお気持ちか。
「いやいや、すべては『そうあれ』と創造してくださった至高の御方々のお恵みだよ。
私はそれを少しばかり理解できたに過ぎない」
ソリュシャンとシモベたちがキラキラした目でアインズ様を見た。
よしっ。
「…………」
アインズ様の視線がちょっと恨めしそうだ。
ごめん、アインズ様。あとで愚痴は聞くから。
その後、法国にある教会本部にソリュシャン治療院の窓口が創設された。
餓食狐蟲王。君だけは何ともならん。すまない。
ニューロニスト「暇ねぇ……」
君は仕事がないから褒美もないのだよ。
作者「目ん玉」に石を投げますか?
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めっちゃ投げる!ふざけんな!
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ちょっと1発投げさせろ
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う~ん……
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いやいや、投げない投げない
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チョコラータする。よーしよしよしよし