デミウルゴスに憑依した一般読者   作:目ん玉

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楽しいことだけが「よい思い出」とはいえない。
目ん玉はそう思います。
失敗は将来の糧になり、苦労はいつか笑い話になる。
いずれも人生を豊かにする効果的なスパイスだと思います。


ドワーフ国、エルフ国

「アインズ様、冒険に行きましょう」

 

「デミウルゴス? 急に何を言う?」

 

「一通りの作戦は完了しました。

 ナザリックはこの世界で立場を確立し、名前を轟かせました。周辺諸国にいらっしゃるであろう至高の御方々も、遠からずお気づきになるでしょう。

 あとはお戻りになるのを待つだけです。

 時間が出来ましたので、アインズ様は自由に冒険できます。

 転移した直後、私は申し上げました。

 至高の御方々に話して聞かせる大冒険をいたしましょう、と。

 そして、たっち・みー様とウルベルト様の存在がほぼ確実になった今、まだ至高の御方々に話して聞かせるような冒険ができておりません」

 

 ナザリックの暴走を抑えるために始めた宗教団体という方針。

 ネイアを取り込んで布教を加速し、ナザリックはここにあるぞと御方々に知らせる誘導灯。

 これらは「冒険するための前提」に過ぎない。

 

「すぐにでも帰ってこられるかもしれない御方々に備えて、急いで冒険譚を作りましょう」

 

「なるほど……それは確かに急がなくてはな」

 

 ……あれ? 王国と帝国をどうにかしたら忙しくなくなるはずだったのに……。

 デミウルゴスはどうやっても忙しくなる運命なのか???

 まあいい。今は考えないことにしよう。

 

「それで? さしあたり、どこへ出かけるべきだと思う?」

 

「全体像として、冒険譚は1つか2つでよろしいかと。

 それ以上は、御方々がお戻りになってから、ご一緒にお楽しみいただくべきでしょう。

 そういったわけで、さしあたりは近隣……ドワーフ国はいかがでしょうか? 優秀な鍛冶師たる種族ですから、何か面白い武器など発見できるかもしれません」

 

「よし、いくか。

 となると、供回りをどうするか……」

 

「アウラとマーレ、あとはシャルティアでいかがでしょう?」

 

「3人もか?」

 

「ドワーフ国の正確な場所が分かりませんので、アウラ配下の魔獣のなかで鼻が利くものがお役に立てるかと。

 あとはシャルティアに空からの偵察を。

 それからドワーフは鍛冶と採掘を得意とする種族ですので、活動範囲が地下に及んでいる可能性は非常に高いかと。そうなりますと、マーレの能力はお役に立つのではないかと愚考いたします」

 

 大地の大波とか使えるので、崩落したような場合でも迅速に対応できるのではなかろうか。

 

「ふむ……なるほどな。

 よし、その3名を連れて行くとしよう」

 

 

 ◇

 

 

 ドワーフ国。

 原作通り、出かけた先でゴンドと出会って、ドワーフの窮状を知ったアインズ様は――

 

「というわけで、クアゴアとかいう種族がいるらしいのだが。

 こいつらをどうするのが良いか、デミウルゴス、お前に相談しようと思ってな」

 

 わざわざ俺にメッセージをよこした。

 

「お好きなように冒険なさってください」

 

「しかし殲滅するのでは、ナザリックの方針と合わないだろう?」

 

「今そこにいらっしゃるのは、ナザリックの神たるアインズ様ではなく、冒険する一介の旅人です。

 いたずらに虐殺するのは避けるべきですが、アインズ様であれば殺さないように手加減しつつ撃退することは可能ではございませんか?」

 

「それは、まあ……。

 しかし数が多いようでな。剣でちまちま叩いていると、つい魔法をぶっ放したくなってしまいそうだ」

 

「それでも加減できるのでしたら、お好きなように」

 

「間違いなく殺してしまうだろう。

 デミウルゴス。意地悪を言わないで、知恵を貸してくれ。

 お前は私の参謀だろう?」

 

「神様業を休んで冒険をお楽しみいただくために出かけていただきましたのに、そのせっかくの休暇に仕事をなさろうと仰るのですか……まったく、どの口が『ブラック労働はダメだ』などと……」

 

「うぐっ……そ、それは……」

 

「まあ、いいでしょう。私のほうは仕事中ですし。

 そこにシャルティアが居ますね?」

 

「うむ」

 

「竜王国の東、ビーストマンの領域にゲートをつなげるように指示なさってください。

 それからアウラやマーレと協力して、追い込み漁的にゲートへ突入させ、クアゴアを物理的に移動させてしまいます」

 

「なるほど。そうすればドワーフはクアゴアの脅威から解放されるわけだな。

 しかし、なぜビーストマンの所に?」

 

「ビーストマンは金属を必要としないので、クアゴアが鉱石を食い散らかしても問題ないからです」

 

 ビーストマンの詳細な情報はないが、姿を見る限り、人間のように金属で武装している様子はない。

 だから金属を必要としない生活をしているはずなのだ。

 どんな技術も、まず軍事利用される。それから医療やエロスだ。

 軍事利用されるべき物質が、軍事利用されていない。それは、必要ないからと考えるのが妥当だろう。

 

「おお……!」

 

 そもそもクアゴアの生態は、この世界に鉱脈を作るために存在しているとしか思えない。

 金属は生物のように増えないので食ったら減る一方で、いつか枯渇する。そうするとクアゴアは鉱脈がある限り増えるが、最終的には餌がなくなって大量死する。

 そのとき一部は新たな鉱脈を求めて移動し、次の場所で繁殖するだろう。一方、新たな鉱脈にたどり着けなかったクアゴアは、その死体に高純度の金属が宿っており、それが石油のように堆積して新たな鉱脈を形成する。

 つまり本来は、鉱脈が少ない場所で活動するべき種族である。

 ――ということは、どこの鉱石を食ったとて、それは昔のクアゴアの死骸だったもの、という可能性が高い。最初から「共食い」の種族であり、クアゴアはその食性ゆえに死と再生を運命づけられている。

 

「よーし、じゃあパパッとやってくる」

 

 返事も軽やかに、アインズ様は冒険に戻られた。

 ……………………。

 …………。

 ……。

 そのあと霜の竜と出会って、実力差も分からずに襲ってきたので軽くひねってやり、ドワーフ国の首都・宝物庫にあった財宝の一部を、首都奪還の報酬として受け取ってきたのだと、楽しそうに話された。

 霜の竜は、向こうから襲ってきたのなら、正当防衛だろう。ヘジンマールくんは初見で初手土下座のファインプレーをして生き残ったらしい。原作通りだ。

 

「てことで、これがその財宝なのだが……あ、そうそう、ゴンドというドワーフに出会ってな。言ったっけ? そいつがルーン工匠だったんだ。ところがドワーフ国ではルーン技術が廃れていてな」

 

「なるほど……そういうことですか。

 聖王国へ転移させたのですね」

 

「おっ、よく分かったな。

 聖王国はネイアに与えた弓でルーン武器を宣伝してある。ルーン工匠たちも、聖王国なら需要が高いだろう。作れば売れる、認められる。彼らのやる気も出るだろう」

 

 ヤルダバオト作戦がここで生きてくるわけだ。

 

「仰る通りかと。

 やる気が出れば研究も捗り、いずれナザリックに有益な性能まで至る可能性があるやもしれません。

 またその成果によっては、聖王国政府から補助金などが出る可能性もございます」

 

「うむ、たしかに――」

 

「父上、父上」

 

「何だ、パンドラ? 今いい所なのに」

 

「私、父上の息子なのに、土産話の席で放置プレイなのですが」

 

「……ちょっとすまんかった」

 

「ちょっとですか」

 

「あまり反省していない」

 

「あまり反省していない!?」

 

「どうせパンドラだしな」

 

「おゥ……喜んでいいのか、悲しんでいいのか……非常に複雑な心境でございます」

 

 

 ◇

 

 

 エルフ国。

 女性のシモベを供回りにするとデケムから「子種を恵んでやる」的なバカを言われて、主従ともどもブチギレることになる未来しか見えない。

 しかし困ったことに、アインズ様は、

 

「エルフの国なら、アウラやマーレの友達ができるかもしれないな」

 

 と期待しておられる。

 ネイアがシズと親しくなったので、ナザリックでも不可能ではないと証明された。

 

「アインズ様、冒険をお楽しみいただくためには、ある程度『情報が無いまま』であることが必要かと存じます」

 

「ああ、デミウルゴス。その通りだ。

 開拓するべき未知の要素がないのであれば、それは冒険とはいえないだろう」

 

「ですので、なるべくなら知っていても黙っておく方向でおりますが、2点だけお伝えしなければなりません。

 まず、エルフ国は法国と戦争状態にあります。戦時下の国に部外者が入っていくということ。この意味をご理解ください」

 

「アウラやマーレなら同族とみなされて安全ではないか?」

 

「突然攻撃される可能性は低いでしょう。そういう意味では安全かもしれません。

 しかし、友達を作れるかというと、どうでしょう? アインズ様は冒険をしに行かれるのですから、戦争に参加はなさいませんでしょう? しかも戦争の相手がナザリックを信奉している法国なのです。

 ではそれ以外のことをすると、どうなるでしょうか? 戦時下の国で、同族らしき人物が、戦時下らしからぬ動きをしている。スパイと疑われるか、戦争に協力しない非国民と蔑まれるか……あまり友達づくりには効果的に思えません」

 

「なるほどな……今は時期が悪いか」

 

「仰るとおりです。

 まずはセバスあたりを連れて行くのはいかがでしょうか?」

 

「セバスを? なぜセバスなのだ?」

 

「アウラとマーレは申し上げた通りの理由で除外。

 シャルティアは前回ドワーフ国に供回りをいたしましたので、続けて連れて行くとなると、アルベドがまた拗ねるかと。

 しかし冒険の供回りとして連れて行くなら、数日に亘ってナザリックを不在にするわけですから、アルベドはダメでしょう。ナザリックの運営が滞ってしまいます。

 コキュートスは姿が姿ですので、エルフたちからのウケが良くないでしょう。

 私は悪魔ですので、ヤルダバオトのことがすっかり忘れ去られるまでは、供回りなどナザリックにとってリスクにしかなりません。

 プレアデスでは、レベルに不安がございます。寿命が長くてレベルを上げる時間が豊富。しかも法国との戦争でレベルアップしやすい可能性がございますので。

 消去法でセバスしかおりません」

 

 人間種には種族レベルが無い。

 なぜか知らないが、そういう設定らしい。

 鉄人とか超人とか神人とか、進化先があってもよさそうなものなのに。

 

「ふーむ……」

 

 セバスなら生き生きと戦うだろう。デケムのことを知れば義憤に駆られるに違いない。そこにアインズ様が居た場合には、主人公補正的な運命のいたずらが働いて、デケムを倒す流れになるだろう。あるいはアインズ様のほうから積極的に向かっていくかも。

 いずれにせよ、デケムを倒されて嫌がるエルフは存在しないだろう。嫌がるのは絶死絶命くらいのものだが、それもデケムが死ぬこと自体は喜ぶだろうし。死体だけ土産に渡したほうがいいかな?

 またエルフたちが「王の相」を見ることにならないため、救うだけ救ってさよならができるはずだ。統治してくれ、とは言い出さないだろう。君臨すれども統治せずの方針にあるナザリックにとって、そういう後腐れは無いほうがいい。

 ……のだが、原作知識ありきの理由は説明できない。デケムの凶行は法国から聞いたという事にする事もできるが、根回しが面倒だ。

 絶死絶命の母親はデケムにやられて絶死絶命を生んだわけで、法国はそれを恨んでいる。エルフ国というよりデケムに敵対していると言っていいまである。全生命の保護を打ち出した神に対して「デケムだけは殺したい」とも言いにくいだろう。根回しはかなり難航するに違いない。

 となると、口八丁で何とかするしかないか。

 

「セバスとともに冒険していただきまして、アインズ様のことですから首尾よくエルフ国を平和にしてしまわれるかと愚考いたします。

 平和になったあとで、アウラやマーレの友達を作りに改めて訪れるのがよろしいかと。

 その際はネイアをお連れください。布教させれば、アウラやマーレの友達づくりも捗るかと存じます」

 

 王を失ってまとまりがなくなったエルフ国に布教して新たな精神的柱とする。

 法国には通達を出せば、徐々に敵視するのをやめるだろう。遠い将来には法国とエルフ国が同じ神を崇める極めて親密な国同士になるかもしれない。

 

「方針に不満はないが、私なら首尾よく平和にしてしまうなんて、そんな期待されても困るぞ」

 

「いえいえ、さんざん各国を平和にしてきて、何をおっしゃいますやら」

 

「すべてお前の入れ知恵ではないか」

 

「私は参考までにご意見させていただいたまで。

 実行なさったのはアインズ様です」

 

「うわぁ、そこで責任を投げてきたか〜。

 よし、それなら遠慮なく相談するとしよう。必要になったらメッセージを送るから、頼むぞ」

 

「いってらっしゃいませ。

 どうぞ、よい冒険を」

 

 

 ◇

 

 

「ないわ〜! アレはない! 何だあれ?」

 

「仰るとおりです。あのような者がなぜ王でいられたのか、理解に苦しみます。

 エルフたちは一斉に蜂起して然るべきかと」

 

「だよな? お前もそう思うか、セバス。

 極端な平和主義なのか? それとも完全に心が折れていたのか?

 どっちにしろ理解できん。クソだなアレは。アウラやマーレの友達づくりに行くつもりだったが、ちょっと考え直すレベルだ」

 

「おかえりなさいませ、アインズ様。

 お楽しみいただけたようで何よりでございます」

 

「おお、デミウルゴス。出迎えご苦労。

 しかし今回は楽しめたとは言えないな。あのエルフ王もエルフ王なら、エルフどももエルフどもだ……!

 お前の言う通り、アウラやマーレを連れて行かなくて正解だった。もし連れて行ったらと思うと……何度『失墜する天空』を撃ち込んでやろうと思ったことか」

 

「それはそれは……。

 いずれ『あれはヒドかった』と笑い話にできるかと。

 成功ばかりでも退屈でございましょう?」

 

「う〜む……たしかに、それはそうだな」

 

「そうでございましょうとも」

 

「でもアレは無い!」




さて、おおかた原作は回収してしまいました。
伏線も撒けるだけ撒きましたし、そろそろ終わりですね。

誤字報告を頂きました。
tino_ue様 暇人@蓮斗様
ありがとうございます。

設定の間違いを報告いただきました。
だんぼるーん様
ありがとうございます。

作者「目ん玉」に石を投げますか?

  • めっちゃ投げる!ふざけんな!
  • ちょっと1発投げさせろ
  • う~ん……
  • いやいや、投げない投げない
  • チョコラータする。よーしよしよしよし
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