今回も「逃げ」です。
すみません。
心は永遠の中学二年生様のリクエストです。
純現地素材のみで地下ダンジョン作ってみるとかどうでしょう?
(中略)
最下層(10層)に近づくにつれて難易度が上がり
(後略)
「……というリクエストが来ているのですが」
「そういう回か。
ドワーフ国みたいなものをイメージしているということか?
でもそれを人工的に作る……? 無理だろ」
「無理ですね。
収益を得る用に、ダンジョンなら作ってございますし。(ショートショート詰め合わせその10参照)
今更もうひとつ、現地素材のみにこだわって作る理由がございません」
建築技術の格差というものがある。
むやみに地下を掘ると、陥没事故が起きる。
現代の技術力をもってしても、埼玉県八潮市道路陥没事故や博多駅前道路陥没事故のような事が起きる。
それを地下10階……しかも現地素材のみで。
コンクリートがあっても崩落するのに、梅田駅や新宿駅などよりさらにもっとの地下構造。
建築の専門教育なんて受けてなくても分かる。物理的に不可能である。
実際に作るとどうなるかというと、水中建築と同じで、深い所ほど高い圧力がかかる。強く押し固められているので掘ること自体が難しくなるのはもちろん、崩落しようとする力も強くなるため相応に強靭な支えが必要だ。水が出た場合に備えて排水・防水も考えなくてはならない。
「純現地素材のみというのは、魔法による強化もしないという事だろう?」
「ナザリックの手勢で、という意味でしたら、はい。
たとえばマーレ様のスキルや魔法で補強するのはナシという事になります。
掘る作業も同様ですから魔法の痕跡を残さないために手作業で掘ることになります。かといってスケルトンを使った人海戦術は、狭い地下空間では効果がそれほど期待できません。かなり時間がかかりますね」
「うむ」
「ただし、完全な魔法禁止という縛りではございません」
「そうなのか?」
「ドワーフ国では坑道の補強はトンネルドクターと呼ばれる魔法詠唱者が、魔法で補強を行っておりますので」
「ああ、なるほど」
「ドワーフには大きな恩を売ってございますので、依頼すれば受けてくれるとは思いますが……もちろん、タダで、とは行かないでしょう。彼らにも生活があります」
「それはそうだな」
「ただ、頼んだところで実現には技術的な困難が伴うかと。
ドワーフ国がアゼルリシア山脈の地下に4つの都市を築いたのは、まだルーン技術が隆盛していた時代のことではないかと推測されます。
現在は最後に残った都市『フェオ・ジュラ』のみに住んでいたところを、モモンガ様のご活躍で首都奪還を果たしましたが……建築当時はドワーフに王族が存在し、おそらく技術的に優れた人物だったのでしょう。人口も多かったはずで、技術的に今より優れていたはずです」
ドワーフ国の4つの地下都市というのは、今のドワーフでは到底及ばない実力をもったドワーフ王族の中に、広範囲の地下探知ができる個体が居た(または長い歴史の中で偶然発見した)せいで実現したのではなかろうか。
もともと存在していた巨大な地下空洞に都市を作った(都市を作るために掘ったわけではない)と考えるほうが、物理的に自然だ。
都市と呼べるほど人口があっても呼吸できる空気が確保できたという点から考えて、密閉された空間ではありえない。厳密にいうと「地下空間」ではなく「大地の裂け目」に近い構造だろう。
ドワーフたちには、かつては王族が存在したが、200年前の魔神の襲撃の際に、ルーン工王以外の血筋が途絶えてしまった。そのルーン工王も魔神討伐のために旅立って、現在は不在。
ルーン工王は、魔神討伐に行こうと考える程度には、技術力・戦闘能力が高かったと推測できる。レベル40台の霜の竜に支配される程度のクアゴア(統合氏族王ペ・リユロでもレベル38)相手に困窮していた今のドワーフ(ゴンドでレベル11)では、まったく及ばない実力ということだ。
今はそれぞれの分野の8人の摂政会で政治を行っており、話し合いと多数決で決定を下している模様で、王族は不在である。
モモンガ様が首都奪還を果たしてやったとはいえ、まだ人口が回復したり衰退した技術が復活したりというレベルには到達していない。200年前の魔神の襲撃を皮切りに次々と都市を放棄、または廃都となって国力が衰退している状態だ。
「じゃあ無理だろ」
「無理ですね。
坑道程度の規模だとしても、実際あのようなものは非常に狭く、冒険者が挑むダンジョンとしては、まったく広さが足りません」
「武器も振り回せないし、換気できるシステムがないと酸欠で死ぬだろうしな。
そんなふうに穴が小さいからこそ、構造体として崩落せずに済むわけだが」
「仰る通りです」
「作れるとしたら、ドワーフたちの技術が復興して人口増加と失業率に悩むようになってから、だな」
「それに備えて金貨を確保しておかねばなりませんね」
「遊びで使うには大きすぎる金額だな」
「相応に収入を増やさなくてはなりません。
実現するには、信者の数をもっと増やさなくては……そのためには食料生産や住居建築の技術進歩が必須です。億単位の金額を遊びで使えるようになるには、この世界は人口密度が低すぎますので」
「問題が山積だな……」
◇
無意味に古代遺跡みたいなものを作って放置しておく。
まるでここに超古代先史文明でもあったかのように
(中略)
後年の歴史家たちを盛大に悩ませてやろうと、悪乗りで過去捏造遺跡計画(ユグドラシル産だと未来の連中にバレるとまずいから純現地産で)を発動する。
「……というリクエストも来ているのですが」
「いや、だから無理だろ」
「無理ですね。現地の素材でとなりますと、普通に朽ちるかと。
ユグドラシル素材でしたら、天空都市のような事例もございますが」
「うむ……あー、でも、この『無意味に』というのは、唯一可能性があるか?」
「なるほど……そういう事ですか」
というわけで、アゼルリシア山脈。岩が露出した地点。
石材であれば、ピラミッドなどに代表されるように、数百年、数千年と残るだろう。
そして3名の御方々にお集まりいただいた。
「ご協力ありがとうございます、たっち・みー様、武人建御雷様、るし★ふぁー様」
「それで、何をするんだい?」
「たっちと勝負するって話だったけど、なんでるし★ふぁーも居るんだ?」
「勝負なの? 僕はイタズラだって聞いたけど」
「それぞれにお伝えした情報に嘘はございません。
実はかくかくしかじかというリクエストを頂きまして、最終目標は『未来の人が戸惑うような遺跡』の作成でございます。つまりイタズラですね。
作って頂くのは、ストーンヘンジです」
「ああ、イギリスにあるっていう、あれか」
「そうです。それでございます。
全く同じものを作るわけではございませんので、古代の神殿というイメージで、るし★ふぁー様にはストーンサークルに飾るにふさわしい彫刻をお願いできればと」
ストーンサークルは世界各地にある。日本にもある。
つまり文化を選ばず古代人に共通の発想として出てくるわけだ。
ならば人間がいる異世界に同じような遺跡があっても、地球人がやったとは断定できないはず。
彫刻を神像として飾れば、なおさらだ。石の配置も「環状」以外の部分は足したり引いたりして変更すれば良い。
「なるほどね~」
「たっち・みー様と武人建御雷様には、ストーンサークルに使う岩……石板の作成を競っていただきたく。
据物斬りによる剣の腕前の競い合いという形式でございます。
歪み無くまっすぐに切断すること、岩の結晶構造と強度を見極めて思わぬ方向に割れるのを防ぐこと、サイズを揃えること……といった具合に、難しい点がいくつがあるかと存じます」
「精密さを競うわけか。
面白い。やってみようぜ、たっち」
「わかりました。負けませんよ」
このあと2人とも綺麗に切断しすぎて勝負がつかなかった。
ストーンサークルが完成しても勝負がつかない上に、むきになった2人が岩を斬りまくって、大量に石板ができてしまった。
……まあ、これはこれで「謎の資材置き場」みたいな感じになって良いか……?
古代人はどんぶり勘定で、必要な資材の量を把握せずに建築していた……なんて悪評が立ったりして。
◇
レクターのジョブにまさかのワールドレクターなるものが生えて、至高の御方とかいう仮面全部脱ぎ捨てて狂喜乱舞するのが見たいです。
ワールド職で全レベルカンストできるかとか、知らんジョブの発掘に大盛り上がりしそう。
「……というリクエストが来ているのですが」
「ぶふっ……! ワールドレクター……w」
「ワールドチャンピオンやワールドディザスターみたいなことでしょうね。
個人名が付いているのは、モモンガ玉みたいな事でしょうか」
「ああ、一部のワールドアイテムには獲得者に命名権があるからな」
正式名称は「○○○○・オブ・モモンガ」らしい。
〇〇の部分は不明である。
「職業にそういうものは無かったと思うのですが」
「そもそも何する職業なんだ? ワールドレクターwって」
「世界級の読者という事ですよね。
読者なので『読む』能力でしょうか? それこそアカシック・レコードみたいな?」
記憶操作の魔力消費が激しいという話だったのに、アカシック・レコードなんか読んだら一瞬で魔力が枯渇するのではなかろうか。
「ああ……読むのに時間がかからず、きちんと内容を把握できるとしたら、相手の行動を精密に予測できるかもしれんな」
「慣れ親しんだ家族や親友のように、という事ですね。
そこそこ……いえ、かなり厄介な能力かもしれませんね」
「ほとんど未来予知みたいなものだからな。
それに、諜報活動とか全く必要なくなるな」
「それは便利ですね。
でもニグレドの役割とかぶるような……」
「かぶるどころか上位互換だな」
「困りましたね。
そうすると機密保持のためにナザリックの外には出してもらえなくなりそうです」
「それはそう」
「まあナザリックにはほとんど何でもあるので、退屈するには相当な時間がかかると思いますが」
「逆に無いものって、なんだろうな?」
「海……とかですかね」
「湖なら第6階層にあるが」
「ええ。
プールとか作りますか? 風呂と違って、男女混合でも使えますし、コキュートスも一緒に遊べるかと」
コキュートスは熱い湯が苦手なので水風呂しか入りたがらない。
「面白いかもしれないな。
デミえもんは泳げるのか?」
「小学校の必須科目でした」
「小学校で? 私の時代には無かったな」
「アーコロジーでは水の大量使用は難しいでしょうね。
あ、そうそう。知らない職業の発掘作業というリクエストですが」
「それを実行するには被検体が必要だ」
「誰か居ましたっけ?」
「……とりあえずハムスケに頑張ってもらうくらいか?」
◇
特に意味もなく武術大会inナザリックを開いて、それぞれのスキルにない方法でトーナメントを開いても面白そう。
たっちさんが近接攻撃禁止でウルベルトさんが魔法攻撃禁止みたいなの。
原作でやったモモンのように、それぞれできないことを工夫して戦って優勝を目指す。
「……というリクエストが来ているのですが」
「まあ確かに、普段と違う役割を体験してみるのは勉強になるが。
この世界線でも、冒険者モモンとして活動はしたしな。
とはいえ……」
「何か問題が?」
「ペロロンチーノさんが万能すぎる」
「ああ……」
種族特性で飛べる上に、弓使いのくせに近距離戦闘もこなす。
得意分野を縛るという方針に従えば、魔法職のマネをする形になるだろうか。
しかし地上戦でも近距離戦闘ができる実力なので、フットワークがある限り、弓を杖に持ち替えた程度では縛りにならないだろう。
「それでいうと弐式炎雷様もですね」
「優勝者は弐式さんか」
「攻撃が当たらない相手に勝ち目はありませんからね。
弐式炎雷様であれば手裏剣の投擲などもなさるでしょうから、杖に持ち替えたとて遠距離の命中率が低いわけではないでしょうし」
「うむ。遠距離から一方的にチクチク攻撃されるだろう」
「ところで……魔法職でいらっしゃるモモンガ様は、ご自身の魔法で作った武具でなければ剣や鎧は装備できないという仕様があったかと」
「そうだな」
「その逆、というのは、できるものでしょうか?」
戦士職が魔法職の武具を装備ということだ。
たぶん、できないだろう。
そうでなければ、モモンガ様が剣を装備できたって良いはずだ。
もっとも、魔法で作った武具は装備できるのだから、戦士職にも魔法職装備を再現する方法はあるのかもしれないが。
「……一応、もともと聖騎士は『その他系魔法』を使えるが……」
「『神の御旗の下に』などですね。
魔力系魔法が西洋系のもの、精神系魔法が東洋系のもの、信仰系魔法が神官・森祭司・司祭などが使うもので、僧侶は精神系に分類される……でしたか。
その他系は、その3つ以外のもの、という分類でしたね」
「うむ」
「魔法の分類は職業の分類とほぼ同じで、魔力系魔法を使うから魔力系魔法詠唱者なのではなく、魔力系魔法詠唱者だから魔力系魔法を使えるという関係性かと存じます。
であるならば、その他系魔法は、おそらく『ターンアンデッド』的なもの、あるいは『聖属性付与』といった感じの効果が中心では?
直接攻撃する魔法は無いのではありませんか?」
「私は使えないから詳しくないが、たしかに思い当たらないな。
そして攻撃魔法が使えないとなると、試合にならない……か」
「『完全なる戦士』の別バージョンで『完全なる魔術師』というのがあっても良さそうではありますが……」
「あっても意味ないんじゃないか?
『完全なる戦士』は、使用中に魔法を使えないし、戦士系スキルも手に入らない。
ということは『完全なる魔術師』があっても、使用中に戦士系スキルを使えなくなるし、魔法職が覚える魔法も手に入らないことになるだろう」
「そうなりますと、ただの弱体化ですね。
魔法職用のアイテムを装備できるようになる、という効果はあるかもしれませんが」
「その状態でスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンのように『武器そのものに魔法が込められているアイテム』を使えば、ものによっては使用者のステータスを参照して威力が変わるかもしれないな」
威力が変わらない魔法の例としては、召喚魔法だ。
陽光聖典が召喚した天使たちについて、モモンガ様の反応から察するに種類ごとにレベルが固定であると思われる。
アニメではスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使って根源の火精霊(レベル87)を召喚したが、たとえギルド長をたっち・みー様に変更して使っても、根源の火精霊(レベル87)が召喚されるはずだ。
「そういう細部の調査を兼ねて、大会をやってみますか?」
「まあ、悪くはないか……」
魔法職だけで出かけて魔法禁止に追い込まれる、などという状況は考えにくい。必ず護衛がつくし、そんなバランスの悪い護衛チームにはしないからだ。
従って、調べたところで、どこで使うんだよ、という感じではあるが。
どうせ遊びだし、という事で開催に至った。
なお、かなりグダグダな内容になったので、シモベたちは戸惑った。
一方、根拠もなく「遥か高みにいる絶対支配者」というレッテルを剥がすのには一役買ったので、モモンガ様は満足なさったご様子だった。