化蛇様のリクエストです。
古田さんの懇願によって、教授と女教師による特別講習会とか?
聴講生?受講生に古田爺さんもちゃっかり混ざってるw
帝国魔法省――
「師よ。折り入ってお願いがございます」
フールーダが死獣天朱雀を呼び止めた。
「どうしました?」
「先日『燃焼とは何か』というお話をいただきまして、あれ以来ファイヤーボールなどの火属性魔法が威力を増しておるのです。
この事から、儂は『魔法そのもの』ではなく『起きる現象』の仕組みを理解することが威力の強化につながると推測いたしました」
「ふむ……」
興味深いな、と死獣天朱雀は思った。
ゲームでスキル画面からポチッと選んだだけのプレイヤーには起きないことだ。
しかし選択肢から選ぶ形式だった「星に願いを」が、自由に何でも願いを言える形に変化した事など、ユグドラシル時代とは違っている魔法やスキルが存在する。
また、前提職業なしに上位職業を獲得して、レベル30台なのに忍者になっている人物もいる。
フールーダの言うことが本当だとすると、その変化はどのようにもたらされたのか?
気のせいだ、と一蹴するには、示唆されたメリットが大きすぎる。
すなわち、この問題を理解することで、第0位階魔法を開発した方法や、既存の魔法をアレンジする方法、さらには魔法職のレベルを上げる以外の方法で新しい魔法を修得する手段など、ナザリック勢力のさらなる強化を見込めるのではないか……。
「もし可能でしたら、さらなるご教授をいただきたく、伏してお願い申し上げます」
今のレベルではなく、もっと先の――と、フールーダは望んだ。
それがどんな内容なのかは想像もできないままに、長い人生経験から導き出した答え――死獣天朱雀は、まだ何か隠している。もっと「先」があるのに、あえて「そこまで」しか見せていない者の態度だ、と。
「なるほど……少し、持ち帰って考えてみます」
死獣天朱雀は即答しなかった。
それは、ナザリックで始まっている「小中高大学の学校教育再現計画」に、さらなる付加価値をもたらすのではないか……という予感からだった。
「何卒、前向きにご検討を」
恭しく頭を下げるフールーダ。
死獣天朱雀の態度にフールーダは自分の予感を確信に変え、何としても教わらねばと決意を固めたが。
ペロペロするのを思いとどまったのは、まだ与えられた教本の解読が終わっていない事が影響していた。
歴代の皇帝が「座学なんて嫌だ、剣術をやる」とか、あるいはその逆とか。そういうワガママを言った幼少期に、フールーダは「じい」として物申した。偉大な皇帝になるためにはどれも疎かにしてはならない、と。皇帝が魔術師でも同じことだ。
ちなみに、先に教本を貰っていなければペロペロしていたので、所詮フールーダである。
◇
ナザリック地下大墳墓――
「……というわけで、学校教育再現計画を見直し、従来の計画を『普通科』として『理系コース』の設立を加えようと思うのですが」
「なるほど。教授の言うことには一理ありますね。
ナザリックのシモベたちから魔法職を見繕って生徒に……それと現地人も生徒に加えて、変化の量を比較してみる形が良いでしょうかね」
「モモンガさんの言う通り、比較は大事だよね。
だけど、『理数系』じゃなくて、『理系』に限定なの?」
「やまいこさんの言うことも一理あります。
厳密に言えば、理科と数学は切っても切れない関係ですからね。
なので『理系コース』と『理数系コース』では違いが出るのか? そこも調査するべきだと思います」
「待って、教授。やまちゃんも。
そもそも魔法やスキルや武技が使えてアンデッドやその他のモンスターも居る世界だよ?
地球の物理法則がそのまま使えるとしたら、そういうゲーム的なあれこれは存在できないはずじゃん」
「たしかに茶釜さんの言う通り、魔法が物理現象として発生する以上、そこには未知の物理法則が働いているはずですからね……。
それを解明しないうちに地球の物理法則を教えても、どこかに『間違い』が含まれるはずですよね」
「たっちよー。そういうのは教えてからで良いんじゃねーの?
まずは学んで魔法の威力が上がるかどうか、って話だろ?
地球の科学だって最初から正しいことばっかじゃないんだから、ナザリックの名前を伏せて現地人に発表させたら良いんじゃね?」
「それは……しかし、それでは、あまりに無責任でしょう?
提唱するのではなく、教える立場で行くなら、正しいことを教えないと」
「いや、たっちさん、待ってください。
ウルベルトさんの言う通り『身代わり』を立てることで『実は間違ってた』と分かったときに、神様としてのナザリックが傷つくのを防げる」
「ペロロンチーノさんの言う通りですね。
そして、間違っていても良いから科学的な知見を与えることで、この世界の正しい物理法則を解明しようとする動きも生まれるはず……という事ですか。
モモンガさん?」
「教授……分かりました。
では『理系コース』と『理数系コース』を設立しましょう。
ただ、教授は3倍忙しくなりますよ?」
「3コース抱えることになりますからね。
まあ、でも、1日に3コマ講義するくらいは普通ですよ」
「ボクの負担は増えるのかな?」
「いえ、やまいこさんはそのままです。
小学校レベルの内容に『コース』はありませんからね」
「よかった~。
小学校で3クラスの担任とか死ねるよ~」
「まあ、生徒は分別のある大人になるはずなので、そこまで大変ではないでしょう」
「だといいけどね~」
◇
というわけで、諸々の準備が終わり、まずは小学校教育の再現から始めることになった。
算数・理科・体育・社会・道徳……色々とある教科のうち、採用されたのはこの5教科だ。
国語が見送られたのは、フールーダに日本語を教えたくないからである。時間稼ぎのために与えた教本を、あっさり解読されては意味がない。それに言語学でいうと、むしろモモンガたちのほうが現地の文字を教えてほしいくらいである。
採用された教科のうち、算数と理科は言わずもがな。
体育は戦士系の職業に対する内容で、たとえば走り込みをやらせたら武技・疾風走破とか覚えるんじゃないか、という実験である。
社会と道徳は、全生命と環境の保護を打ち出している教義への理解を深めるため。この点を大切にしないとどうなるかを、リアルの歴史とともに学んでもらう。
そしてモデルケースとして、様々なタイプの生徒が集められた。中には座学が苦手な者もいて……
「ぐー……」
「ブレイン・アングラウス!」
「ひゃいっ!?」
「毎度毎度寝てからに! そんなに退屈なら、この問題を解いてみなさい!」
「すみません! わかりません!」
「ノータイムで!?
問題を読みもせずに『わかりません』とは、良い度胸だ。
つまりお前は、最初から取り組む気がないという事だな」
ガチャガチャ。
青筋を立てて真っ赤な巨大ガントレットを取り出すやまいこ。
「そ、そのガントレットは……! 『女教師怒りの鉄拳』!?
や、や、やまいこ様、それはいくらなんでも……死んでしまいます!」
「大丈夫。このガントレットは、ほとんど攻撃力ないから」
「ノックバック特化でしょう!?
殴られるダメージは無くても、吹き飛んで壁にぶつかるダメージは普通に――」
「鉄☆拳☆制☆裁!」
ドカン!
「ぎゃああああっ!」
ピク……ピク……
「せ、先生……あれは死んだのでは……?」
フールーダが恐る恐る尋ねた。
しかしやまいこはケロッとしている。
「吸血鬼だから大丈夫。
はい、次いくよー」
その後の授業はとてもスムーズに進んだという。
「リアルでもこれができたらなー……」
深いため息をつくやまいこ。
しみじみとうなずく死獣天朱雀。
あー……と声を漏らしながらも、問題児だらけのギルメンをまとめる立場として気持ちが分かるだけに「ほどほどに」とは言えないモモンガであった。
◇
心は永遠の中学二年生様のリクエストです。
「せっかくユグドラシルのシステムに縛られてない世界に来たんだし、宇宙戦艦作ってみねぇ?」みたいなことを誰かが言いだし、普段はブレーキ役のたっちさんが妙にノリノリで不審に思ったモモンガさんが聞いてみると宇宙戦艦ヤマトを布教(洗脳)され、宇宙戦艦作る派閥が多数派になる。
で、いざ作ろうとしたら、各々が思い描いてた宇宙戦艦がヤマトだったり銀英伝だったりガンダムだったりスターウォーズだったりマクロス(お前は超時空要塞です!)だったりしてして即行内部分裂して計画が頓挫するのを見たいですw
作者注:ごめんなさい。目ん玉は、どれも履修していません。
「宇宙開拓?」
「はい。アダマンタイトより固い金属が見当たらないのは、この惑星には無いから、という可能性が。
しかし他の星ならあるいは……と思いましてね」
「いや、ファンタジーの世界観!
教授、それはもうSFじゃないですか」
「いや、意外と無視できない問題かもよ? モモンガさん」
「どういうことですか、ヘロヘロさん?」
「この世界には、ユグドラシルからプレイヤーやギルド拠点が転移してくる。
でも、ユグドラシル以外から転移してくる可能性は?
しかもジャンル違いの、それこそ宇宙戦争とかやってるゲームから来たら……?」
「……無い、とは言い切れませんね」
「それって、そんなに問題か?」
「ウルベルトさん?」
「惑星破壊攻撃みたいなのは脅威だし対策しておかないとだけど、それが実装されてるゲームなんて少数派だろ?
それに、こっちは転移魔法とかあるんだぜ?
遠隔視の鏡で覗いて、ゲートでアンデッド送り込んだら良いんじゃね?」
宇宙戦艦に突如現れるアンデッド。戦艦同士の戦いのはずが、艦内での白兵戦に早変わり。デスナイトなんか送り込んだ日には、スクワイア・ゾンビやゾンビがねずみ算的に発生して、どんどんアンデッドが増える地獄絵図だ。
となると、お互いに、相手に気づかれる前に必殺の一撃を叩き込めるかどうかが勝利の鍵になるだろう。スナイパー対決みたいな感じだ。
あとは遠隔視の鏡がどこまで映せるか。ゲートがどこまで届くか。届きさえすれば、SFに魔法への対策は無いだろうから、転移阻害もできないだろう。
「身も蓋もない!
……まあ、でも、それは有効な手段でしょうね」
SFの醍醐味に付き合って滅ぼされたのでは目も当てられない。
そもそも、相手の情報をとにかく収集し、奇襲でもって勝負を付ける。これが「誰でも楽々PK術」によるギルドの基本戦術である。
「宇宙戦艦とか作ってみたかったけどなー」
「ペロロンチーノさん……技術も知識もないのに作れませんて。
ロケットエンジンとか気密性とか問題だらけですよ」
「そこは魔法で強化したりとかさ。
ぶっちゃけ高山フィールド用の防御固めたら、フライで宇宙まで行けるんじゃない?」
「それならゲートで十分でしょうに」
「わかってないなぁ。
宇宙戦艦ってところにロマンがあるんじゃないか〜」
「愚弟の妄想はともかく、宇宙開拓は一考の価値あるかもよ?」
「茶釜さん?」
「資源獲得のためには、て事だね。
対抗勢力もないわけだし、今のうち、かな」
「やまいこさんまで……」
「PVPにおいて重要なのは、虚偽の情報をどれだけ相手に上手くつかませるか。
偽ナザリックを作ったのと同じように、偽物の拠点惑星を作っておくのは良い手じゃないかな」
「ぷにっと萌えさん……それは確かに……。
ですが、そうなるとテラフォーミングする事になりますよ。かなりの規模です」
「冒険というには山も落ちもない作業ですし、アンデッドを送り込めば宇宙対策装備なども不要でしょうから、始めるなら今すぐでも良いでしょうね。
かなりの規模だからこそ、始めるのは早いほうが良いでしょう」
「教授……では、決を採りましょうか。
宇宙開拓を開始するのに賛成の人は挙手してください。
……満場一致で開始します」
「宇宙戦艦を作るのに賛成の人は挙手してください」
ペロロンチーノが言う。
ズラッと挙がっていた手が、一斉に下がった。
「……なんで!? ロマンあるでしょ!?」
「魔法で無理やり飛ばす宇宙戦艦にロマンは無いかな〜。
ハリボテじゃん」
「ガチで作るには学問の発展と普及が全く足りませんしね。
あまのまさんや鍛冶長なら加工できるだけの腕前があるかもしれませんが、どんな形の部品をどんな大きさで作ればいいのか分かりませんから」
「物理法則に違う所があるはず、て話をこの前したばっかりですからね。
生身での宇宙進出は、そのあたりを解明してからにするべきです」
「全部が全部うまくいったとしても、宇宙戦艦なんて何の素材で作るんですか?
並大抵の素材では、シモベたちが納得しないでしょう?
御方々を乗せるのに、そんな程度の低い素材では……て言うに決まってますよ。
でも宇宙戦艦を作るほど大量に消費して良い上位素材なんてありませんし」
総スカンだった。
ペロロンチーノはハンカチを噛んで悔しがった。
◇
心は永遠の中学二年生様のリクエストです。
ディストピアなリアルから来てるんで、大昔の『目玉焼きにはなにかけるか戦争』なんてホントに起きるのかちょっと検証してみたら、ガチに大戦争クラスの言い合いになって、アインズ・ウール・ゴウン崩壊の危機になって、レクターがピコピコハンマー(原作でツアーの鎧をノックバックさせたヤツ)で全員しばき倒して正座させて一時間説教して、他のシモベが「不敬」とか言うかと思いきや、アインズ・ウール・ゴウン崩壊の危機を防いだ英雄として予想外に超一目置かれる感じのが読んでみたいです。
「目玉焼きに何をかけるか論争?」
「はい。ございませんでしたか?」
「いや、そもそも『目玉焼き』って何?」
御方々がリアルで食べていたものといえば、ドロドロの名状しがたい何か。
一方、ナザリックで「目玉焼き」なんて簡単すぎる料理が出てくるわけもなく。
「なん……だと……」
ガビーンとしたレクターは、シホウツ・トキツに目玉焼きを作ってもらった。
実際に食べてみれば、それぞれ何が好みか別れるだろう。
頼まれたシホウツ・トキツも宇宙猫になっていたが――
「なぜそんなものを?」
「御方々の好みを知るには良い方法だと思いませんか?
醤油がお好きなら和風。
ソースがお好きなら洋風。
塩がお好きなら素材の味。
ステーキなどをお出しするときにも、参考になるのでは?
「なるほど……!」
という形で、レクターは押し切った。
そして御方々の前に、目玉焼きとアレコレが並び、一通りの試食が終わった。
「俺は醤油ですかね」
「俺はソースかな」
「私は塩がいいな」
バチッ、と視線が交差し、火花が飛んだ。
「塩はまだ分かりますが、ソースは無いでしょう?」
「なんだと? 醤油はまだ分かると思ったのに、そういう事を言うのか!
ていうか、塩は無いだろ、塩は」
「何をー! 醤油やソースじゃあ素材の味が分からないでしょーが!」
言い争う御方々。
オロオロするシモベたち。
「おお〜……100年後でもこうなりますか」
レクターだけが、妙に感慨深い声を漏らした。
そこで御方々は、はたと我に返る。
そもそも目玉焼き論争があったのか、という問いから始まった事だ。目玉焼きを知らなかったから答えは「ない」だが、知ってみると起きてしまったので今この瞬間から「ある」に変わった。
「こうなると、キノコたけのこ論争もどうなるか興味深い……」
「レクター様、おやめください。
御方々を分裂させるような真似は……」
と何かを察したセバスがアワアワしながら懇願するが。
「キノコたけのこ論争?」
「なんだい、それ?」
「また何か知らない食べ物の話か?」
興味津々の御方々。
目玉焼きそのものは、美味しかったのだ。
高度な調理をされていない、単純に焼くだけというのも良かった。素朴な味なんて、このナザリックでは望めない。
ディストピア飯からナザリックの超一流の料理では、落差が大きすぎて味の繊細さが分からない。食べると気絶するレクターと、食べても気絶しない御方々の違いは、意外とそんな所にあった。
それに、高度な調理をされた料理は、最終的にジュレとかの素材の原形がない料理になりがちで、見た目ディストピア飯だったりする。
つまりナザリックの料理は、御方々には早すぎた。離乳食の幼児を一流ホテルに連れて行くようなものだ。
「火種を蒔くのはいかがなものか、とは思うが、御方々が楽しそうになさっているなら止めるわけにもいかないね。
それに、火消しもうまい……」
一言で論争を止めたレクターを評価して、デミウルゴスは少し悔しそうに言った。
終わりの挨拶というのは本来、お世話になった方々にきちんとお礼を申し上げるところではございますが、色々と感無量でどのように表現したらよいものか分かりかねております。
なので、ありきたりなご挨拶ですが、ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。楽しんでいただけたなら幸いです。
では、本作はこれで終了いたします。
誤字報告をいただきました。
tino_ue様
ありがとうございます。
ん最後まで締まらない!(ノД`)シクシク